上 下
64 / 65
第三章

第十二話 テゐト、冒険者ギルドのテストを淡々とこなして行くが…?

しおりを挟む
 テゐトはテイトと同様に器用に何でもこなす…なんだけど、そんな彼にも苦手な物が存在する。
 冒険者ギルドになる為のテストは、大きく分けて3つある。
 1つは討伐テスト、1つは採取テスト、そして最後は魔法テストである。
 テゐトの場合、討伐テストに関しては全く問題は無かった。
 バルファザリア地方には、畑の作物を狙う大型のボアが良く出現する。
 更に言えば、冒険者ギルドの様な施設もない為に…討伐は各々で対処をしなければならない為に、戦い慣れているのであった。
 そして…その討伐テストの対象のボアは、王都近郊に出現する物に比べ…遥かに小さくて弱かった。
 なのでテゐトには、王都近郊に出現するボアは大した脅威ではなかった。

 「王都のボアは小さいし、弱ぇえなぁ…こんなのに梃子摺るなんて、冒険者って大した事が無いんだな!」

 冒険者の最低ランクはGランクで、最高はSランクである。
 討伐テストのボアは本来はEランクなのであるが…?
 ソロで撃破するのはまず不可能で、テスト生が急造パーティーを組んで討伐するという…冒険者になって仲間同士の協力関係をどれだけ構築出来るというのが課題な訳なのだが、テゐトはそれをソロで成し遂げてしまったのだった。
 なので、討伐テストに関しては…テゐトは最高得点を叩き出していた。

 次に行ったテストは、薬草採取のテストだった。
 冒険者ギルドのテストなので、場所は大きな平原の中で薬草を採取する訳なのだが…?
 薬草が生えていない場所はある訳では無いので、その平原から自力探しだなさなければならいというのがテストの意味だった。
 当然と言うべきか、テストを受けに来ているテスト生には困難を極める内容なのだが?
 テゐトに関しては日常的な事で、薬草がどの辺に生えていそうな場所やどの作物の近くに生えているなんて事は当たり前過ぎて簡単にこなす事が出来ていた。
 冒険者ギルドになる為のテスト…テゐトは難関かと思いきや、手応えの無さに呆れモードになっていたのだった。
 …そう、此処まではね。
 だけど、最後の魔法テストが熾烈を極めた。

 「む、難しいだ…こんな事、出来ねぇべ!」

 テゐトがそう言うのも無理は無い。
 故郷の田舎では、魔法を教えられる者がいなかった。
 なので、魔法を使わない生活が当たり前で…一般的な魔法が一切使えなかった。
 そんなテゐトもキリアから教わった空間魔法の収納魔法は習得出来たんだけど、攻撃に対する魔法が一切会得出来なかった。
 そもそも村の近辺では、魔法を使ってまで討伐をしなければならないという魔物が出現しないからだった。
 この世界の住人は、誰しも身体の中に魔力を保有している。
 ただ、その引き出し方が問題で…ちゃんとした師がいれば問題は無いのだが、独学でやるには困難を極めると言う物だった。

 「テゐト様には、調べた限りでは複数の属性が有るのですが…」
 「そっただ事言っても、村では魔法自体使う事がねぇからなぁ?」

 リーアは対応に困ってしまっていた。
 討伐テストも採取テストも難なくクリアしていたというのに、まさか魔法で挫くとは思っていなかった。
 そうじゃ無くても、ボアを運んだ収納魔法を見せられていたので…その他の属性魔法が使えないとは思いもしなかった。

 「やはり、合格にはならねぇだか?」
 「そうですね、残念ですが…魔法の技術を身に付けてから再度挑戦という形を取って頂きます。代わりに、討伐テストと採取テストは合格という形で。」
 「仕方ねぇだな!」

 此処でゴネていても結果が変わる事はなかったテゐトは、冒険者ギルドで紹介して貰った初心者魔法教室に足を運ぶ形になった。
 冒険者ギルドのテストは、今迄に1発で合格出来た者はあまり多く無い。
 元勇者のトールも、ブレイドも1発で合格する事はなかった。
 ただし、テイトだけはここ数十年で1発で合格した者だった。

 ただ…テゐトは、魔法に関してだけは思った以上に不器用なので、合格するまでにあと何回掛かるのだろうか?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

朝起きたら幼女になっていたのでVtuberをやることにした。

夢探しの旅人
ファンタジー
とある青年が朝起きると幼女に!? とりあえずVtuberになって配信します。

【完結】異世界転移特典で創造作製のスキルを手に入れた俺は、好き勝手に生きてやる‼~魔王討伐?そんな物は先に来た転移者達に任せれば良いだろ!~

アノマロカリス
ファンタジー
俺が15歳の頃…両親は借金を膨らませるだけ膨らませてから、両親と妹2人逃亡して未だに発見されていない。 金を借りていたのは親なのだから俺には全く関係ない…と思っていたら、保証人の欄に俺の名前が書かれていた。 俺はそれ以降、高校を辞めてバイトの毎日で…休む暇が全く無かった。 そして毎日催促をしに来る取り立て屋。 支払っても支払っても、減っている気が全くしない借金。 そして両親から手紙が来たので内容を確認すると? 「お前に借金の返済を期待していたが、このままでは埒が明かないので俺達はお前を売る事にした。 お前の体の臓器を売れば借金は帳消しになるんだよ。 俺達が逃亡生活を脱する為に犠牲になってくれ‼」 ここまでやるか…あのクソ両親共‼ …という事は次に取り立て屋が家に来たら、俺は問答無用で連れて行かれる‼ 俺の住んでいるアパートには、隣人はいない。 隣人は毎日俺の家に来る取り立て屋の所為で引っ越してしまった為に、このアパートには俺しかいない。 なので取り立て屋の奴等も強引な手段を取って来る筈だ。 この場所にいたら俺は奴等に捕まって…なんて冗談じゃない‼ 俺はアパートから逃げ出した!   だが…すぐに追って見付かって俺は追い回される羽目になる。 捕まったら死ぬ…が、どうせ死ぬのなら捕まらずに死ぬ方法を選ぶ‼ 俺は橋の上に来た。 橋の下には高速道路があって、俺は金網をよじ登ってから向かって来る大型ダンプを捕らえて、タイミングを見てダイブした! 両親の所為で碌な人生を歩んで来なかった俺は、これでようやく解放される! そして借金返済の目処が付かなくなった両親達は再び追われる事になるだろう。 ざまぁみやがれ‼ …そう思ったのだが、気が付けば俺は白い空間の中にいた。 そこで神と名乗る者に出会って、ある選択肢を与えられた。 異世界で新たな人生を送るか、元の場所に戻って生活を続けて行くか…だ。 元の場所って、そんな場所に何て戻りたくもない‼ 俺の選択肢は異世界で生きる事を選んだ。 そして神と名乗る者から、異世界に旅立つ俺にある特典をくれた。 それは頭の中で想像した物を手で触れる事によって作りだせる【創造作製】のスキルだった。 このスキルを与えられた俺は、新たな異世界で魔王討伐の為に…? 12月27日でHOTランキングは、最高3位でした。 皆様、ありがとうございました。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...