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第三章
第三話 チザンの街と…
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【チザンの街】
この大陸の中央にある王国から北方方面は王国が管理し、南方半分は公爵が管理している。
チザンの街は元々公爵家が管理をしていたが、ここまで豊かではなかった。
それが現国王の兄君であらせられる第一王子のラージバルが国王になる筈だったのだが、遊びと浪費癖が目に余り公爵家に婿養子として送られたのだった。
だがラージバルはただ遊びと浪費癖が激しかったのではない。
誰よりも国と民を思い、それを生かす為の策を練っていた。
そしてチザンの公爵家に送られたラージバルは、頭脳と手腕をフルに生かして様々な物を作りだした。
商業施設や娯楽施設などを作りだして外国からの旅人を呼び込む事に成功した。
他にも貿易を確立させて商人も数多くこの街に来る様になった。
ただ、本人が遊びたいという理由もあった。
何故なら、ラージバルはカジノで良く目撃されるという話らしい。
ラージバルのお陰で、あまり目立たなかったチザンは、王国に次ぐ…いや王国を凌ぐほどの街へと発展させたのだった。
「要は道楽息子なんだな。」
「その呼び方には…否定出来ないな。」
「現国王の兄君という事は、今幾つだ?」
「リージダル国王が43歳位だという話だから、45か6歳位だろう。」
「たった20年足らずでここまで発展させたのか!」
ある意味、眠らない街の不夜城と呼ばれるくらいに昼夜問わずに活気がある街だった。
これなら、この街に訪れる者達も少なくは無いだろうな。
「そして僕達は、このおっさん…公爵様に捕まっていると。」
「あぁ、ラージバル様だな。本当にカジノにいるとはな。」
「英雄殿もグリネシールの子倅も喰え!そして飲め!」
豪快で見た目的には王族だったとは思えない位に品がなさそうだが、漂っている風格やオーラはただ者じゃない気配を感じた。
そしてなぜこの様な事になっているのかというと、話は少し前に遡る。
~~~~~ほんの10分前~~~~~
ダーネリアの要望通りに、冒険者ギルドで用を済ませてから宿を取って、その後にカジノに来たのだった。
ダーネリアとルーナリアは、来た早々に早速所持金をチップに交換しに行った。
僕とブレイドは、レストランに座って料理を頼もうと思って注文したのだった。
「あの仕切りの向こうが高級料理のレストランか?」
「あぁ、特定のチップ数以上に稼げた者だけが入れるVIPルームのレストランだ。」
「何を食べているか…とか、メニューは流石に見れないか!」
「完全封鎖されているからな。稼がないと入れない様になっている。」
高級食材を使用しているからといって、必ず口に会うとは限らない。
現に貴族の晩餐会を開かれている料理は、あまりにも味気なく、貴族は手を付けるというよりは酒と人脈を増やす事に勤しんでいるからだった。
料理人によっては美味い物もあるが、それでも持ち帰ろうとする貴族はいない。
なので、何を食べているのかとかメニューが見れないと、イマイチ不安が残るのだった。
まぁ、道楽息子がプロデュースしている料理なら、不味い事は無いだろうが。
「お、来たな!」
「お待たせ致しました。フェルブラーネソースのローストブルで御座います。」
僕とブレイドが頼んだのは1品料理と飲み物だけだった。
カジノのレストランは、料理の値段が馬鹿高い上に品数も少ない。
なので、適当に食べれる物を頼んだのだが?
「フェルブラーネというのは聞いた事が無いな?」
「こちらは、他大陸のフェルブという柑橘系の果物を使用したソースで御座います。」
「なるほど。」
僕とブレイドは食べてみた。
濃厚な味わいのあるソースにほのかな酸味を感じるローストブルは、噛む毎に弾力があり口の中に広がる肉の甘みが特徴の料理だった。
ただ…量が少なかった。
別に金が無い訳ではないが、1品がこの量だと腹を満たせる程の量を注文するとかなりの金額が飛ぶと思った。
なのでここはこれで我慢するしかないと…思っていたのだが?
「お待たせ致しました、こちらベルーガ産のモロゴラーダで御座います。」
「こんな物は注文してないけど?」
「あちらのお客様から…」
ウェイターの刺した方向を見ると、金髪の長髪で貴族のコートをだらしなく着ている男がワインのボトルとグラスを持って来た。
ブレイドは急に立ち上がり、貴族の礼を行ったのだった。
「ブレイド、このおっさんは知り合いか?」
「テイト、この方はこの街の領主様でラージバル公爵様だ!」
「城から追い出された道楽息子の?」
「道楽息子とは言ってくれるな!なぁ、英雄殿よ!」
ラージバル公爵は、大声で笑い始めた。
ブレイドを見ると、汗を以上に掻いていた。
「済まないな公爵様よ、僕は貴方の顔を知らなくてね…ブレイドと違って貴族ではないので。」
「ブレイド…何処かで見た事あると思ったら、グリネシールの三男坊か!」
「はっ!閣下に置かれましては…」
「そんな堅苦しい挨拶をするな!お前も英雄のパーティーの一員なのだから、胸を張れ!」
…と言われても、ブレイドの表情は硬いままだった。
それもそうだ、ブレイドは元貴族とはいえ男爵家でラージバルは元王子で今は公爵なのだから、身分差で畏まるのは仕方がない。
ラージバルは緊張を解かせる為に、数多くの料理と酒を注文してテーブルに並んで行ったのだった。
そして、冒頭に戻る。
「僕も閣下とお呼びした方が?」
「やめろやめろ!俺はここでは遊び人のラジさんで通っているんだ。俺の正体は店員しか知らん!」
「ではラジさん、僕に何の御用ですか?」
「新聞で見ていた英雄殿がこの街に来たのを知ってな、是非一度話をしてみたかったんだよ。噂に違わず大したたまの様だったな!」
「それはどうも…って、どんな噂なんだ?」
そんな話をしていると、ダーネリアとルーナリアが戻って来た。
「おかえり、成果はどうだった…と聞くまでもないな。」
「途中までは良かったんだけどね。」
「やはりテイト様のいう通りの展開になって来て。」
「所持金を全てチップにしてなければ別に良いさ。」
「うん、白熱してそうしようと思っていた所を止めました。」
「なんだ、英雄殿もグリネシールの子倅もギャンブルはやらないのか?」
「テイト君、この人は?」
「遊び人のラジさんだ。先程知り合いになった。」
ダーネリアとルーナリアは2人してラージバルに挨拶をした。
ラージバルは2人を見て言った。
「そなたらも英雄のパーティーメンバーか!中々に美しいな!」
ダーネリアとルーナリアは照れた表情をしていた。
…が?
「だが、何処かで見た顔だよな?お前達の両親の名前は?」
「私達には両親はおりません。」
「子供の頃に捨てられたので、今では生きているかどうか…」
「お前達の両親の名前がライズとメリダなら、生きているしこの街にいるぞ!」
ダーネリアとルーナリアの表情が一瞬強張った。
2人の反応を見る限り、それが両親の名前で間違いなさそうだった。
「失礼ですが…ラジ様、その者達はこの街で何を?」
「このカジノで遊びが過ぎてな、奴隷として借金返済されるまで働いているんだが。会いたいのか?」
「ラジさん、この2人は…」
「あぁ、解っている!あの2人が奴隷落ちした際に、色々尋問したら過去に娘を奴隷商に売ったという話を聞いたからな。」
「では彼女達も会いたくない事を御理解してくだ…」
「いえ、会いたいですね。」
「そうですね、今更家族としての想いとか情は一切ありませんが…奴隷落ちしたのでしたら、目の前で嘲笑ってあげようかと。」
「ふっ…2人共良い性格をしているな!よし、ライズとメリダを呼べ!」
「はっ!直ちに…」
ラージバルはウェイターに命令すると、2人は手錠をされたまま連れて来られて連れて来させられた。
首には奴隷の証の首輪をはめられていて跪かされた。
「ラジ様、どの様な御用でしょうか?」
「お前達に会いたいという女性が居てな…それで呼んだんだよ。」
ライズとメリダは顔を上げると、そこにいる僕達の顔を見て言った。
「この方達はどなたでしょうか?」
「今巷で騒がれている英雄様御一行の方達だよ。」
「この御方達が私共にですか?」
「正式には英雄様ではなく、こちらのお嬢さん達だ。」
ライズとメリダはダーネリアとルーナリアを見た。
ライズとメリダは2人を見ても首を傾げていた。
「初めまして、ダーネリアと申します。」
「初めましてルーナリアと申しますわ!」
「「はぁ…」」
「この名前では解らないみたいですね?では、黒と白だと解りますか?」
「「!?」」
ライズとメリダの表情を見て、ラージバルは笑みを浮かべた。
さて、これからどんな事が起きるのだろうか?
この大陸の中央にある王国から北方方面は王国が管理し、南方半分は公爵が管理している。
チザンの街は元々公爵家が管理をしていたが、ここまで豊かではなかった。
それが現国王の兄君であらせられる第一王子のラージバルが国王になる筈だったのだが、遊びと浪費癖が目に余り公爵家に婿養子として送られたのだった。
だがラージバルはただ遊びと浪費癖が激しかったのではない。
誰よりも国と民を思い、それを生かす為の策を練っていた。
そしてチザンの公爵家に送られたラージバルは、頭脳と手腕をフルに生かして様々な物を作りだした。
商業施設や娯楽施設などを作りだして外国からの旅人を呼び込む事に成功した。
他にも貿易を確立させて商人も数多くこの街に来る様になった。
ただ、本人が遊びたいという理由もあった。
何故なら、ラージバルはカジノで良く目撃されるという話らしい。
ラージバルのお陰で、あまり目立たなかったチザンは、王国に次ぐ…いや王国を凌ぐほどの街へと発展させたのだった。
「要は道楽息子なんだな。」
「その呼び方には…否定出来ないな。」
「現国王の兄君という事は、今幾つだ?」
「リージダル国王が43歳位だという話だから、45か6歳位だろう。」
「たった20年足らずでここまで発展させたのか!」
ある意味、眠らない街の不夜城と呼ばれるくらいに昼夜問わずに活気がある街だった。
これなら、この街に訪れる者達も少なくは無いだろうな。
「そして僕達は、このおっさん…公爵様に捕まっていると。」
「あぁ、ラージバル様だな。本当にカジノにいるとはな。」
「英雄殿もグリネシールの子倅も喰え!そして飲め!」
豪快で見た目的には王族だったとは思えない位に品がなさそうだが、漂っている風格やオーラはただ者じゃない気配を感じた。
そしてなぜこの様な事になっているのかというと、話は少し前に遡る。
~~~~~ほんの10分前~~~~~
ダーネリアの要望通りに、冒険者ギルドで用を済ませてから宿を取って、その後にカジノに来たのだった。
ダーネリアとルーナリアは、来た早々に早速所持金をチップに交換しに行った。
僕とブレイドは、レストランに座って料理を頼もうと思って注文したのだった。
「あの仕切りの向こうが高級料理のレストランか?」
「あぁ、特定のチップ数以上に稼げた者だけが入れるVIPルームのレストランだ。」
「何を食べているか…とか、メニューは流石に見れないか!」
「完全封鎖されているからな。稼がないと入れない様になっている。」
高級食材を使用しているからといって、必ず口に会うとは限らない。
現に貴族の晩餐会を開かれている料理は、あまりにも味気なく、貴族は手を付けるというよりは酒と人脈を増やす事に勤しんでいるからだった。
料理人によっては美味い物もあるが、それでも持ち帰ろうとする貴族はいない。
なので、何を食べているのかとかメニューが見れないと、イマイチ不安が残るのだった。
まぁ、道楽息子がプロデュースしている料理なら、不味い事は無いだろうが。
「お、来たな!」
「お待たせ致しました。フェルブラーネソースのローストブルで御座います。」
僕とブレイドが頼んだのは1品料理と飲み物だけだった。
カジノのレストランは、料理の値段が馬鹿高い上に品数も少ない。
なので、適当に食べれる物を頼んだのだが?
「フェルブラーネというのは聞いた事が無いな?」
「こちらは、他大陸のフェルブという柑橘系の果物を使用したソースで御座います。」
「なるほど。」
僕とブレイドは食べてみた。
濃厚な味わいのあるソースにほのかな酸味を感じるローストブルは、噛む毎に弾力があり口の中に広がる肉の甘みが特徴の料理だった。
ただ…量が少なかった。
別に金が無い訳ではないが、1品がこの量だと腹を満たせる程の量を注文するとかなりの金額が飛ぶと思った。
なのでここはこれで我慢するしかないと…思っていたのだが?
「お待たせ致しました、こちらベルーガ産のモロゴラーダで御座います。」
「こんな物は注文してないけど?」
「あちらのお客様から…」
ウェイターの刺した方向を見ると、金髪の長髪で貴族のコートをだらしなく着ている男がワインのボトルとグラスを持って来た。
ブレイドは急に立ち上がり、貴族の礼を行ったのだった。
「ブレイド、このおっさんは知り合いか?」
「テイト、この方はこの街の領主様でラージバル公爵様だ!」
「城から追い出された道楽息子の?」
「道楽息子とは言ってくれるな!なぁ、英雄殿よ!」
ラージバル公爵は、大声で笑い始めた。
ブレイドを見ると、汗を以上に掻いていた。
「済まないな公爵様よ、僕は貴方の顔を知らなくてね…ブレイドと違って貴族ではないので。」
「ブレイド…何処かで見た事あると思ったら、グリネシールの三男坊か!」
「はっ!閣下に置かれましては…」
「そんな堅苦しい挨拶をするな!お前も英雄のパーティーの一員なのだから、胸を張れ!」
…と言われても、ブレイドの表情は硬いままだった。
それもそうだ、ブレイドは元貴族とはいえ男爵家でラージバルは元王子で今は公爵なのだから、身分差で畏まるのは仕方がない。
ラージバルは緊張を解かせる為に、数多くの料理と酒を注文してテーブルに並んで行ったのだった。
そして、冒頭に戻る。
「僕も閣下とお呼びした方が?」
「やめろやめろ!俺はここでは遊び人のラジさんで通っているんだ。俺の正体は店員しか知らん!」
「ではラジさん、僕に何の御用ですか?」
「新聞で見ていた英雄殿がこの街に来たのを知ってな、是非一度話をしてみたかったんだよ。噂に違わず大したたまの様だったな!」
「それはどうも…って、どんな噂なんだ?」
そんな話をしていると、ダーネリアとルーナリアが戻って来た。
「おかえり、成果はどうだった…と聞くまでもないな。」
「途中までは良かったんだけどね。」
「やはりテイト様のいう通りの展開になって来て。」
「所持金を全てチップにしてなければ別に良いさ。」
「うん、白熱してそうしようと思っていた所を止めました。」
「なんだ、英雄殿もグリネシールの子倅もギャンブルはやらないのか?」
「テイト君、この人は?」
「遊び人のラジさんだ。先程知り合いになった。」
ダーネリアとルーナリアは2人してラージバルに挨拶をした。
ラージバルは2人を見て言った。
「そなたらも英雄のパーティーメンバーか!中々に美しいな!」
ダーネリアとルーナリアは照れた表情をしていた。
…が?
「だが、何処かで見た顔だよな?お前達の両親の名前は?」
「私達には両親はおりません。」
「子供の頃に捨てられたので、今では生きているかどうか…」
「お前達の両親の名前がライズとメリダなら、生きているしこの街にいるぞ!」
ダーネリアとルーナリアの表情が一瞬強張った。
2人の反応を見る限り、それが両親の名前で間違いなさそうだった。
「失礼ですが…ラジ様、その者達はこの街で何を?」
「このカジノで遊びが過ぎてな、奴隷として借金返済されるまで働いているんだが。会いたいのか?」
「ラジさん、この2人は…」
「あぁ、解っている!あの2人が奴隷落ちした際に、色々尋問したら過去に娘を奴隷商に売ったという話を聞いたからな。」
「では彼女達も会いたくない事を御理解してくだ…」
「いえ、会いたいですね。」
「そうですね、今更家族としての想いとか情は一切ありませんが…奴隷落ちしたのでしたら、目の前で嘲笑ってあげようかと。」
「ふっ…2人共良い性格をしているな!よし、ライズとメリダを呼べ!」
「はっ!直ちに…」
ラージバルはウェイターに命令すると、2人は手錠をされたまま連れて来られて連れて来させられた。
首には奴隷の証の首輪をはめられていて跪かされた。
「ラジ様、どの様な御用でしょうか?」
「お前達に会いたいという女性が居てな…それで呼んだんだよ。」
ライズとメリダは顔を上げると、そこにいる僕達の顔を見て言った。
「この方達はどなたでしょうか?」
「今巷で騒がれている英雄様御一行の方達だよ。」
「この御方達が私共にですか?」
「正式には英雄様ではなく、こちらのお嬢さん達だ。」
ライズとメリダはダーネリアとルーナリアを見た。
ライズとメリダは2人を見ても首を傾げていた。
「初めまして、ダーネリアと申します。」
「初めましてルーナリアと申しますわ!」
「「はぁ…」」
「この名前では解らないみたいですね?では、黒と白だと解りますか?」
「「!?」」
ライズとメリダの表情を見て、ラージバルは笑みを浮かべた。
さて、これからどんな事が起きるのだろうか?
応援ありがとうございます!
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