特殊スキル持ちの低ランク冒険者の少年は、勇者パーティーから追い出される際に散々罵しった癖に能力が惜しくなって戻れって…頭は大丈夫か?

アノマロカリス

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第二章

第二十三話 あれ?

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 トール達の乗合馬車は、ギャルクラド山に到着しました。
 テオドール方面の山道があるギャルクラド山ですが、本来山を登るのは冒険者がレベルを上げる為に登るのであって、乗合馬車や商人達は近道をする為に山を登る…という事はせずに、山の麓から反対側に通れるトンネルがあるのです。
 このトンネルは、主に王国が運営する乗合馬車や貴族馬車、商人馬車しか通れない為に冒険者には秘匿とされていました。
 その為にギャルクラド山を登る必要はなく、あっという間に山を抜けてバルーデンの街に着きました…が、それを知らないトール達はバルーデンの街で一応テイト達を探しました。
 ですが、そこで入手出来た情報は…テイト達は故郷のハーネスト村に戻るという情報しか得られませんでした。
 トール達がハーネスト村でガイソンからテオドール温泉村に行くという話を聞いていなければ、コロッと騙されてハーネスト村に向かっていたでしょうが、情報を入手している今ではハーネスト村に行く事はありません。
 そして、乗合馬車はバルーデンの街ではちょっとした手続きだけで長居をする訳ではないので、次の中継地点のハルーラ村に急ぐ事になりました。
 
 「結局テイト達の情報も空振りか!」
 「数日前まではいたみたいだが、今は出発した後という話だ。」
 「しかもその行き先がハーネスト村だってよ!テイトの策なんだろうが、当てが外れたな。」
 「ハーネスト村には絶対に寄らない、そしてここでハーネスト村に戻ると聞けば私達が迷い出すとでも思っていたのかしら?」
 「もしもあの時にハーネスト村でシャリガルに声を掛けられずに外で野営をしていたら、師匠から目的地がテオドール温泉村に行くという話も聞けないで、私達はハーネスト村に戻っていたかもしれなかったわね。」
 「あの地獄を味わったのはアレだが、その分の収穫は得たから良しとしよう。」

 乗合馬車の中でそんな話をしながら、ハルーラ村を目指した。
 一方、テイト達はというと?
 丁度この時にハルーラ村から出発していた時だった。
 この場所でも追い付けなかったが、確実にテイト達に近付いているのだった。
 そして乗合馬車はここで停泊する事になった。

 「皆様に朗報です!この村では、バルーデンの街でしか食べれなかったハルーラ食材の野菜煮込みシチューを食べられる店がオープンしたそうです。」
 「ハルーラ食材の野菜煮込みシチューって、勇者時代にバルーデンの街で食べたあの絶品料理か?」
 「私達5人で来た時に、テイトだけを宿に残して私達だけで食べに行ったお店よね?」
 
 トール達はミレイの店に入った。
 そこでハルーラ食材の野菜煮込みシチューを注文したのだが?

 「申し訳ありません、次のハルーラ食材の野菜煮込みシチューを仕込む為には明日までお待ちする事になってしまうのです。」
 「そうなのか、残念だな!」
 「本当に申し訳ありません。本当なら数日分を作っておいたのですが、全て買われてしまってしまって…」
 「この量を全部か?どこの貴族が購入して行ったんだ?」
 「いえ、英雄テイト様です。以前バルーデンの街にお越し頂いた際に、元勇者パーティーの方々に嫌がらせを受けて食べられない事を悔やんでいたらしいので、それを取り返す為にと全て買って行かれたのです。」
 「あいつ…まだ根に持っていたのか。だが、店側では普通は断るのだろう?無理矢理奪って行ったのか?」
 「いえ、全ての食材もこの店を新たに開店する資金も全て出してくれましたので、此方としては断る理由も無くて、それに命の恩人でもありましたし。」

 その話を聞いてトールは、気に喰わない顔をした。
 ハルーラ食材の野菜煮込みシチューを食べれなかったのもそうだが、根に持っていた事とテイトの慈善活動が何故か気に入らなかった。

 「という事は、テイトは数日前までこの村に居たのか?」
 「はい…ですが、故郷に戻る用事が出来たのでハーネスト村という場所に行くそうです。」
 「テオドール温泉村に行く…ではなくてか?」
 「はい、それからしばらく過ごした後に、マクファーレン港から他の大陸に移ると。」

 これがミレイとテイトの打ち合わせの内容だった。
 テイトを訪ねて来る者が居たら、ハーネスト村に戻ってからマクファーレン港で他の大陸に渡るという打ち合わせを事前にしていたのだった。
 そして元勇者パーティーの特徴も添えて…。
 ミレイはテイトの事を聞いて来なければ、トール達が元勇者メンバーだとは分からなかったが、テイト達の事を聞かれた事により思い出したのだった。
 そしてミレイは話し終えると、そのまま厨房のある部屋に行ったのだった。

 「店員の話をどう見る?」
 「嘘を言っている様には見えないわね?」
 「そういえば師匠から、テイト達が何故テオドール温泉村に行くのか聞いた奴はいるか?」
 「そういえば、何が目的なんだろう?温泉に入りたかったからとか?」

 ガイソンからテイト達の目的地はテオドール温泉村にというのは分かったが、その詳しい詳細は聞く事が出来なかった。
 
 「俺達がこの村に来る事を知っていて…罠に嵌める為に虚偽の証言を吹き込んだか?」
 「ただ、故郷に戻る用事と言っていたぞ。テイトの性格上、あの几帳面なテイトが故郷からこっちに向かっているのに、用事ができたからと言って戻ると思うか?」
 「という事は、店員が嘘を付いているという事になるわね?」
 「とりあえず、乗合馬車はテオドール温泉村に向かっているんだし、一応行ってみるとしよう。そこで空振りなら痕跡を探して追えば良い。」

 テイトの策も失敗に終わったのだった。
 翌日、トール達はテオドール温泉村に向かって出発する事になった。
 一方、テイト達はというと?
 テオドール温泉村に見える場所でテイトが変装しているトイテと話し合っている所だった。

 トール達はもうすぐそこまで来ている。
 テイト達とトール達はどこで再会出来るのだろうか?
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