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第二章

第二十二話 故郷に戻った元勇者パーティーは?二日目…

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 翌日、テイトの母親…女将はトール達に回復魔法を施した。
 テイトの母親…女将のマルグレーテは、元は殴りヒーラーだった。
 ヒーラーなのに桁違いの腕力で敵を屠るアタッカーでもあった彼女は、かなり恐れられた存在だった。
 まぁ、【暴虐の女王】という二つ名もある位だ。
 そしてマルグレーテはこの村では宿屋の女将であり、この村の子供達の師匠でもある。
 旦那のガイソンも…あ、テイトの父親ね。
 彼も子供達の師匠で、主にタンク職のリガートやシャリガルを教えていた。
 ガイソンも二つ名があり、【絶対防壁の守護者】という。
 何故、テイトの両親の紹介をしたかというと?
 怪我が治ったトール達の目の前に、その2人が立っていた。

 「さて、怪我も治ったし…トール君達は久々に俺が揉んでやろう。あ、女の子達の体を揉むという意味ではないぞ!」
 「あなた…テイトがあんな目に遭っているのに、良くそういう冗談が言えるわね。」
 「お前が昨日トール君達をボコボコにした所為で、怖がっている様に見えたからな。少しでも冗談で和ませようとしたんだよ。」
 
 パーティー時代のガイソンはおちゃらけキャラで、パーティーでは冗談を言いながら和ませていた。
 ただし、戦闘の時は別人の様に振舞うがそれ以外ではこんな感じだった。
 なので、テイトがこの村に帰って来た時に夫婦のどつき漫才が見れたのである。
 
 「それにな、テイトがそんな目に遭っていたのはテイトの自業自得だ。奴も利用されるだけという事になり果てたのは、仲間を…幼馴染を信用し過ぎた所為だ。子供の頃から俺達の冒険譚を聞かせすぎた所為か、仲間を絶対に裏切るなと教えたがあそこまでお人好しになり過ぎて道を見失うとはな。」
 「そんなテイトの心を利用し続けたトール君達には、罰を与えないと…って思っているんだけど。」
 「あれだけボコボコにしておいて、まだ何かするつもりか?」
 「一方的に殴るという行為は昨日でおしまい。次はね、戦闘訓練で扱いてあげるだけよ。」
 「冒険に出る前にやったあれか?まぁ、あの時はまだ子供だったから大分手加減してやったが…」

 トール達は信じられない顔をしていた。

 「あれで手加減していたのか!」
 「まぁ、そのお陰で何に対しても怯まない精神力をを培ったけどな。」
 「師匠達と戦うって…勝てる訳ないでしょ!」
 「私達はまた殺されるのね。」
 「貴方達、私がいつ貴方達を殺したっていうの?」
 「あれは半殺しで殺した事に入らないぞ!だが、この戦闘訓練では生半可な事をしたら死ぬかもしれないからそのつもりでな。」

 ガイソンはパーティー時代に使用していた巨大なランスを、マルグレーテもパーティー時代に使用していた巨大メイスを構えた。
 そして2人の前で素振りをすると、振動で空気が唸っていた。

 「トール君達にルールを話しておくね。この戦闘訓練では、本気で私達に向かって来る事。倒れても5秒以内に立ち上がってから向かって来る事。逃げたり立ち上がる時が遅かったら、容赦なく打ち込むからそのつもりでね。」
 「それってある意味死刑宣告では?それに俺達は、テイトのお陰で勇者になっていた時のレベルより遥かに低いのですが…」

 トールはギルドカードを2人に提示しようとしていた。
 だが、マルグレーテは首を振って「必要ない」といって答えた。

 「さて、始めましょうか!」
 「どうしてもやるのですか?」
 「大丈夫だ、大怪我をしても妻が治してくれる。」
 「戦わない選択肢はないのですか?」
 「テイトを散々利用しておいて捨てた癖に、その理由が通じるとでも思うの?」
 
 トール達4人は覚悟を決めた。
 そして始まる一方的な…?
 村中に痛ましい音が鳴り響いた。
 キリアの魔法は弾かれ、カルネアの弱体魔法は効果が無く、リガートの能力はガイソンに突破されて、トールの能力もマルグレーテには通用せずに…まさに一方的な暴力をトール達は受けていた。

 「はい、回復しましたから2回戦行くよ!」
 「すいません師匠達、テイトにした事は謝りますから許して下さい!」
 「謝る必要はない!あれはテイトの自業自得だからな。」
 「では、何故俺達はこんな事をしているのでしょうか?」
 「貴方達の実力を見る為によ。ほら掛かってらっしゃい、この国の勇者パーティー!」
 「元だよ、元勇者パーティーだ!」

 そしてトール達はというと?
 どこかの小説の主人公がキレた時の様に、回復してはボコられ、また回復してはボコられが続いて行き…。
 かれこれ53回繰り返したのちに、やっと解放されたのである。

 「私のMPがないから、これで終わりね。それで、貴方達はこれからどうするの?」
 「俺達は勇者に返り咲きたくて…」
 「それでテイトを探しているのね?でもあの子はもう、新たなパーティーを手に入れているわよ?」
 「まだ付き合いがないから、俺達にもチャンスは…」
 「ある訳ないでしょう!自分達がやった事を考えて、まだチャンスがあると思っているの?それに貴方達はこの国での信用を失ったのだから、再び勇者に返り咲くにはまず、王国側に信用出来る何かを示さないと無理よ。」
 「それにな、レベルの高さ云々を覗いてもお前達の技術ではテイトのパーティーメンバーには勝てんよ。軽く手合わせしたが、多少の難ありだがお前達より遥かに強い。」
 
 その言葉を聞いて、リガートはやはりという顔をした。
 だが、トールには何か考えがあるらしいく、笑みを浮かべていた。
 
 「では師匠、上手く説得出来ればテイトを再び加入させる事の許可を戴けませんか?」
 「無理だと思うけど、やれるならどうぞ!私達は子供達のやる事に干渉をしないから。」
 「何を考えているかは知らんが、行動を起こすなら早めにした方が良いぞ。テイト達はテオドール温泉村を目指しているからな。」

 丁度この時、テイト達はバルーデンの街を出発した辺りだった。
 トール達はそれを聞いて、進路を真っ直ぐテオドール温泉村に向けたのだった。
 だけど…乗合馬車の為に真っ直ぐには向かわないので、それは我慢するしかなかった。

 「よし、すぐに準備をしろ!それでテイトに追い付くぞ!」
 「すぐに準備と言っても、出発は明日だぞ?」
 「なら今日は、やれる事をやって…」

 トールは親に再び勇者を目指すと言って金を借りた。
 リガートは、食料確保として野菜を大量に入手した。
 キリアとカルネアの2人は、ラティナの墓にお参りに行った。
 そして翌日、4人はハーネスト村から出発する事になった。

 さて、トール達は無事にテイトに辿り着けるのだろうか?
 まぁ、辿り着けないと話が終わってしまうのだが。
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