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第二章

第二十一話 全ては3人の成長の為に!…っていう理由は苦しいかな?

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 数々の嫌がらせをして来た僕だが、勘違いしないで欲しい。
 多少私怨も混じってはいたが、全ては3人の認識の甘さを捨てさせる為の訓練だった。
 
 「僕は10個の内容を用意していたが、どれも全て出来ていなかったな。ダーネリアとルーナリアは仕方無いとしても、まさかブレイドまで冷静な判断が出来ないとは!」

 前回の話で答え合わせをしよう。
 皆さんは幾つ分かるでしょうか?

  まず1つ目は、落とし穴だ。
 ブレイドも焦っていたのは仕方がないにしても、周囲を警戒する事を怠り過ぎだ。
 普段のブレイドなら、決して罠に嵌る様な事は無かっただろう。

 2つ目は、ダーネリアの魔法のコントロールだ。
 冷静を乱して魔力操作を疎かにして無駄打ちを続けて行った結果、あっという間に拘束された。
 どんな相手にも慎重に…という教えを忘れている感じだった。

 3つ目は、ルーナリアの結界魔法の対応の遅さ。
 穴の中に油を注がれた時点で、次の行動を予測しろよ。
 敵は悪党なんだから、次の攻撃位わかりそうなものだけど?

 4つ目は、自分の身が危なくなるとすぐに僕を頼り過ぎ。
 冷静に対処をすれば、活路は見出せた筈なのになぁ。
 それ相応のレベルがあっても、実戦がまだ乏しかったかな?

 5つ目は、僕の頭の偽装だ。
 ダーネリアにはディスペルを、ルーナリアには解呪で偽装を簡単に解除が出来る筈なのに、冷静な判断を失って罠に見事に嵌った事だね。
 僕の強さを信じていないという事になる。
 悲しい事だ…。

 6つ目は、睡眠魔法に掛かり過ぎ。
 眠らされた後に何をされるかという事を考えずに寝ちゃった事だね。
 冷静さを掻いた3人の落ち度だ。

 7つ目は、僕がデュラハンになって現れた時の事。
 顔見知りだからって、対抗位しろよ!
 目の前に居たのは、生きている僕ではなく魔物の僕だぞ!
 武器を抜くとか、身構えるとかしろよ。
 攻撃を仕掛けられたらどうするつもりだったんだ?

 8つ目は、あれだけ長い時間眠っていた癖に再度睡眠魔法に掛かるか?
 僕も態とそう演出したから、悲しみを誘って精神にダメージを与える事はしたけどさ。
 睡眠魔法は、長い睡眠の後には掛かる人は極端に少ないというのに。

 9つ目は、魔物を討伐したら必ず討伐証明部位は入手する事だ。
 倒すだけ倒してそのまんま…って、新人冒険者じゃないんだから!
 金が無いのが解っているなら、そうやって工面しないと…って、僕と合流出来たら生活の心配がないとでも思っていたのかねぇ?
 
 10個目は、目先の欲に眩んで人の話を聞かなさすぎ。
 せっかくヒントを投げ掛けているのに、それに気付かない何てどれだけ鈍感なんだよ。
 それに、護衛をする対象の馬車に仲間を乗せてくれって…?
 僕の教えた事が何1つとして身に付いてない証拠だ!
 
 そして僕は、現在新たな11個目を実行している。
 それは、馬車を態と加速させて走らせているという行為だった。
 護衛の依頼は、あくまでも依頼を出した者が上の立場である。
 理不尽な要求には逆らっても構わないが、基本的は依頼者の言う事が絶対である。
 
 「済まないが、仲間が追い付いて来れなくなってきている。もう少し速度を落とす事は可能か?」

 ブレイドは頭がおかしいのだろうか?
 依頼者の理不尽な要求以外は絶対なのに、依頼者に逆らおうとする発言をしている。
 なら、ここで発破をかけるとしよう。

 「この程度の速度で着いて来れない何て…貴方達は本当に英雄様のパーティーだったのですか?僕は貴方達の事を思って速度を上げているのですが…どうやら貴方達は、英雄様に寄生していただけの存在だったようですね。」
 「くっ…!」

 その言葉が効いたのか、ブレイド達はそれ以上文句を言わなくなっていた。
 追い付いて来れなければ、魔法で身体強化をすれば良いんです。
 それすらも思い付かない何て…僕の教育方法も甘すぎたようだな。
 それから少し進んだ場所で休憩を取る事にした。
 ブレイドも結構きつかったらしく、肩で呼吸をしていた。
 ダーネリアとルーナリアは明らかに疲労の色が見えた。

 「このままのペースで行けば、後2日くらいでテオドールには着くでしょう。今は休憩時間ですので、十分に体を休めておいて下さいね。休憩後は、またこのペースで走りますので。」

 3人は声を上げれう事が出来ない位に疲労していた。
 今の3人を見ていると、僕にはもう復讐や悪戯を仕掛けるという考えは消えていた。
 だが、次からは甘えを消す為に厳しくする事にしたのだった。
 この3人は、どう考えても考え方が甘すぎる傾向がある。
 せめて、一般の冒険者レベルに育ててみないと、僕に何かあった場合に生き残る術が見出せなさそうな気がする。
 僕は植物成長で促進させた西瓜を切ってから、種を取り出してから塩で炒めた物を3人に出した。

 「西瓜で水分補給を、西瓜の種でタンパク質…と言っても解らないか、体に必要な状態に戻す為の栄養がありますので休憩中に食べておいて下さいね。これで、先程よりは幾らかマシになると思いますので。」

 3人は西瓜を食べた後に、西瓜の種を嚙み砕いて飲み込んだ。
 西瓜の種には、高タンパク質な要素がある為にこれでカロリーが幾らか摂取出来るのだった。
 さてと、次はどうしようかな?
 僕は少しでも急いでテオドール温泉村に着ける様に走り出していた。
 さすがにもう速度を落とせとか、馬車の中にという言う事は無くなった。
 
 「もう少し行った先に安全エリアと呼ばれる洞穴がありますので、そこで野営をしましょう。」
 「わかりました。」
 「まだ夕方なのにですか?」
 「ダーネリア、黙っていてくれ。わかりました、それで構いません。」

 ブレイドはどうやら冷静に対処が出来ているようだ。
 山に向かう山道は、夕方以降になると魔物が活発に動くという事を知っているみたいだった。
 それにここまで来るまでに、魔物にも数回出くわしたが…ちゃんと討伐証明部位の入手も出来ている。
 後は12個目のある事が出来れば…だが、ダーネリアの発言を聞くに若干の不安要素が頭をよぎった。
 大丈夫だとは思うが。

 「では、夕食です。今回はワイバーンシチューを用意致しました。付け合わせはパンです。僕は馬車に居ますので、見張りの方を宜しくお願いします。」

 外の様子が気になったので透視魔法で様子を見た。
 しっかりと見張りが出来ている様だった。
 後は何かを話している感じだったが、恐らく問題は無いだろうと思っていた。

 「ブレイド様、あの馬車を取り戻す方法は無いのですか?」
 「テイトが考え直したら、もしかしたらな。」
 「テイト様は、再びパーティーを組んで下さるでしょうか?」
 「それにかんしては、本人に尋ねてみない事にはどうにもならないだろう。」
 「かなり怒っておいでの様でしたからね、ダーネリアの所為で…」
 「反省はしたんだろ?ならもう良いじゃないか!後は、テイトがどう判断するかだ。」
 
 翌日、前日にかなり速度を上げて走っていた甲斐があり、テオドール温泉村にかなり近づいている感じになった。
 そしてテオドール温泉村が目と鼻の先に見えた場所で、最後の仕掛けを発動した。
 それは馬車の車輪に細工をしてあったのが発動したのだった。
 さて、どう出るかな?

 「テオドール温泉村がもう見えているのに…」
 「すいませんねぇ、しっかり整備しておいた筈なんですが…」
 「あそこにテイト君がいるんだね?」
 「はい、英雄様は長居はしないが寄るとは言っておりましたから。」
 「長居はしない?」
 「本来なら仲間達の為に、テオドール温泉村に行くというのが理由だったみたいですが、その仲間がいないので…もしかすると、もう発たれているかもしれませんね。」

 僕は敢えて、意地悪く言ってみた。
 探している仲間があの場所にいると知ったら、すぐにでも飛び出して行きたいはずだ。
 だが、依頼を請けておいて途中放棄は許されない。
 さて、どう出ますかね?

 「こんな所でモタモタしていたら、テイト君が旅立っちゃうよ!」
 「だが、依頼人を放って置いて俺達だけ行く訳にはいかない。」
 「込み入った事情があるのでしたら、僕は別に構いませんよ。最悪は街に出向いて行ってから助けを呼ぶ事が出来ますし。」
 「なら、私達はテオドール温泉村に行ってから門番に報告をして…」
 「商人からの依頼でそれはやってはならないんだ。もしも俺達が持ち場を離れた隙に魔物が襲って来るとも限らないしな。」
 「ブレイド様は良く御存知で!もしもこのままいかれた場合には、冒険者で依頼を途中で中断したと報告せざる負えませんでしたからね。」
 「そうなったら、俺達のランクは下がるんだ。」
 「下がったら、また上げれば良いんじゃないの?」
 「信用が無くなるからな、簡単には上がらないし、下手したらクエストも請けられなくなる。」

 さて、どうする?
 ブレイドは立場が分かっているみたいだったが、ダーネリアとルーナリアは街の方を見てソワソワしている感じだった。
 
 「俺が此処に残るから、お前達はテオドール温泉村の門番に報告に行って助けを呼んで来てくれ。」
 「でも、その間にテイト君が…」
 「今回は諦めよう。村の人達に尋ねて、次の目的地の場所を聞いて回れば良いさ。」
 
 良く出来ました!
 ブレイドも中々苦渋な選択を迫られていたみたいだったけど、護衛の方を優先した事は見事です。
 では、僕も仲間の元に戻るとしますか。

 「おや?車軸が痛んでいたみたいですが、応急処置を済ませましたので、村までは大丈夫みたいですね。」
 
 僕はそう言って馬車を走らせた。
 そしてテオドール温泉村に到着すると、ダーネリアとルーナリアは村の中に走り去って行った。
 そしてブレイドは依頼達成の報告を済ませると、報酬を受け取ってから走って行った。
 ブレイドは報酬を確認しなかったが、与えた袋の中にはブレイド達の財布を入れておいたので、開けた時に気付くだろう。
 僕は変身を解いてから、馬車を少し手を加えた。
 車軸は別に問題は無いし、あれは演技だったので元から何の影響も無かった。
 馬車の中身や外装を少し弄ってから、しばらくすると3人は元の場所に戻って来た。

 「あれ?テイト君⁉」
 「よぉ、久しぶりだな!」
 「テイト様、トイテ様とその馬車は?」
 「あれ?彼から聞いていなかった?この馬車はテオドール温泉村に荷物を運ぶのに量が多かったので、僕の馬車を貸してあげたんだよ。元々、テオドールに着いたら返却するのを理由にな。」
 
 最初はトイテは僕でした!
 …とバラそうとも思ったんだけど、後々の事を考えると面倒になるので黙っている事にした。
 
 「テイト、今回の事は本当に済まなかった!」
 「別に良いよ、もう怒って無いから。次に同じ事をしようものなら…」
 「今度はもう無い!これから俺は心を入れ替えてお前の盾になると誓う!」
 「ルーナリアは?」
 「私もテイト様を裏切らないと誓います!だからこれからも仲間としてお願いします。」
 「さて、では行くとするか!」
 「あのテイト君、私は?」
 「おやおや誰かと思ったら、命の恩人に対して下に見た発言をしたダーネリアさんではないですか!どうかしたのですか?」
 「今回の事は調子に乗って申し訳ありませんでした。以後、この様な事が無いように努めます。」
 「わかりました、今回の事は不問に致します…が、次に同じ事をしたら解っていますね?」
 「はい。」

 ダーネリアにだけ少し意地悪な反応をしてしまった。
 まぁ、もう全て許していたし、ただ少しくらいの反撃は良いよね?

 「では、まずはこの村の温泉宿に行きますか。そこはうちの両親と縁のある方が経営している宿なので。」
 「両親に縁のある人とは?」
 「行ってみればわかる。温泉と料理を楽しもう!」

 その数日後、僕等はある者達と出会う。
 それは序章のアイツ等だった…のだが?

 次回、故郷に帰った元勇者パーティーは?二日目をお楽しみに!
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