44 / 65
第二章
第二十話 さて、どの辺で許してやろうかな?
しおりを挟む
「さてさてさ~てと、次はどうしてやろうかねぇ?」
伯爵令嬢の件で一度は本当に解散を考えた。
最初に出会ったあの時にブレイドを拒否していたら、多分ブレイドはあの場で餓死して死んでいただろう。
ダーネリアとルーナリアも、あの時に声に気付かなければ他の魔物に喰われていたかもしれないというのに。
調子に乗ったのは別に良い、ただし1度ならね。
だが、2度目にやられた時には本当に腹が立った。
だからもう少し絶望を与える位、別に良いよな?
僕は馬車の小窓から3人が村に到着して、この馬車を見付けて向かって来たので、僕は偽装魔法で商人に変身してから馬車から降りて馬を撫でていた。
「すまないが君は誰だ?」
「藪から棒になんですか?僕は旅の商人ですが。」
「いや、この馬車の馬を撫でていたので…」
「だって、この馬車は僕の馬車ですから。」
「いや、この馬車は俺達の馬車だったんだが。」
「今は僕の馬車ですよ!昨日英雄様が、1人旅にこんな大きい馬車は必要ないと言われて、僕が貰ったのです。いやぁ、運が良かったですよ!大事な商売道具の馬車が魔物の襲撃に遭って壊されて途方に暮れていた所に英雄様が使っていた馬車を譲り受ける何て!」
「な…なんだと⁉」
「英雄様は仰ってましたよ、仲間に軽んじた扱いをされて大変御立腹だったと。かつての仲間達は、英雄様が声を掛けていなければ既にこの世にはいない筈だったのに、仲間達はその事を忘れて馬鹿にした表情で酷い扱いをされたとね。」
村人の青年の話を聞いて、ブレイド達は落ち込んでいた。
そこでブレイド達は思い出していた。
よしよし、自分の立場を思い出したようだな。
「英雄様はこの馬車を手放す時にこう仰っていました。かつて勇者パーティーに追い出され、そして新たに仲間を得たがその者達からもないがしろにされて、この馬車はその仲間達と一緒に過ごした馬車だったけど、もう仲間はいないから持っていても仕方が無いし、この馬車に乗っていると仲間達だった者達の事を思い出すからと。」
「英雄様とはテイトの事だよな?」
「はい、そうですが?」
「今何処にいるか分かるか?」
「英雄様は、これからの旅に必要な食材を手に入れる為に、先程雑貨屋に行くと仰ってましたから、多分探せば見つかるかもしれませんが…ですが、仮に貴方達がその仲間だとして、英雄様に会って何を話されるのですか?」
「そ…それは、あの時の事を謝罪して誤解だったという事を。」
「ブレイド様、それよりもテイト様を探しに行きましょう!」
「この村にいるのなら、テイト君に会えるかもしれませんし!」
ブレイド達は村の広場の方に走って行った。
僕はブレイド達を見送りながらこう言った。
「残念ながら、僕はこの村の雑貨屋には行って無いんだよね。会えると良いよね、英雄様に!」
ブレイド達の性格では、雑貨屋で見つからなければ村中を探し回るだろう。
さて、次に戻って来たらどんな悪戯を仕掛けてやろうかな?
あ、そうだ!
3人は金がない筈だから、こんな悪戯を仕掛けると効果的かもしれないな。
僕は空間魔法からオーガストリザードの肉の塊を剣に刺してから、焚火に掛けてじっくりと焼き始めた。
更にもう1つの焚火に鍋を置いてから、ハルーラ村でミレイ達に作って貰った、ハルーラ食材の野菜煮込みシチューを温め始めた。
「さてと、早く戻って来ないかな?」
戻って来たら、3人の前で美味そうに食べてやろう。
3人は金も食料も持っていないだろうから、食べたくて仕方がない筈だ!
それに最後に食べた物といえば、あのクッソ不味い柿だろうしな。
僕のストレージの中には、まだ食べるには熟さない野菜や果物が入っていた。
何故そんな物を入れているかというと、それは神託で与えられたあまり使い道がないスキルの1つが絡んでいるからだった。
低レベル時代は、地面に植えた種が芽を出すだけの【植物成長】というスキルだったが、レベル上がった状態に確認すると、種を植えてから植物成長のスキルを使うと、芽を出すどころか大木にまで成長するスキルに変わっていた。
それ以外にも、まだ青い果実に植物成長をすると完熟するという特性もあったからだった。
なので、お店でも格安で売れ残りそうな未熟な野菜や果物を格安で手に入れて、ストレージに収納してあるのである。
「あ、戻って来たな!」
僕がそう言うと同時に、ブレイド達は戻って来た。
僕はオーガストリザードの肉の表面を炙った所をナイフで削ぎ落としてから、パンに挟んで食べると…美食家が好むという意味が解る位に美味しい物だった。
薄切れの肉の筈なのに、溢れ出る肉汁と弾力のある噛み応えがある肉、それをハルーラ食材の野菜煮込みシチューの中に入れてから食べると、味は更に絶品な物に仕上がっていた。
「さっすが、オーガストリザードは美味いな!それに、ハルーラ食材の野菜煮込みシチューも絶品だ!」
「オーガストリザード?ハルーラ食材の野菜煮込みシチューだって⁉それらをどうしたんだ⁉」
「英雄様から馬車を貰う際に戴いたんですよ。仲間達と一緒に食べようとしていたらしいのですが、その仲間がいなければこんなに持っていても意味が無いからといってね。馬車の中には他にも、ワイバーンの肉やマウンテンキャンサーなんかも入っていましたし、当分の間は金を使わなくても済みそうです。」
「ぐっ…!」
「ところで英雄様には会えましたか…って、聞くまでもないですね。」
「あぁ、どこを探しても見付からなかった。」
「…という事は入れ違いでしたか、先程英雄様は次の目的地のテオドール温泉村に旅立つと言っておられましたからね。僕も同じ目的地なので護衛の為に一緒に行きませんか?と尋ねたのですが、その馬車を見ると仲間達の事を思い出すと言って旅立たれて行きました。」
3人は膝から崩れて地面に手を付いた。
そして体は正直なのか…この料理の匂いを嗅いだ所為か、腹が鳴っていた。
僕は気にせずに、オーガストリザードの肉を削ぎ落としてから口に入れて、ハルーラ食材の野菜煮込みシチューを飲んだ。
「す…すまないが、少し分けて貰う事は出来ないか?」
「では、銅貨10枚でスープを。銀貨2枚でオーガストリザードを分けましょう。」
僕は3人が金のない事を知っている上で、敢えてそう言ってみた。
さて、どうするのかな?
「実は、俺達は金が無くてな。」
「そうですか、それは残念ですね。」
「何か…代わりになる物で取引をしないか?」
「では何がありますか?」
ブレイドは道具袋の中身を取り出して見せた。
そこには…特にこれといって値打ち物はなかった。
僕はブレイドに、薬草や毒消し草やポーションなどは必要が無くてもストックしておけと伝えておいたはずだが?
魔物の討伐証明部位も無いし…この村に来るまでに魔物とかには出遭っている筈なのに、それらしき物は見当たらなかった。
まさか、倒すだけ倒して入手していないのか?
「何もなさそうですね?女子の2人は何かありますか?」
「私達は…」
ダーネリアとルーナリアも道具袋から全部取り出した。
だが、入っていた物といえば…化粧道具と紙やタオル類、下着だけで討伐証明部位の類は入っておらず、更には薬草や毒消し草、ポーションなども一切入っていなかった。
まさか…この村に来るまでに薬草や毒消し草を食べながら来たのか?
あんなクソ不味い物をそのままで?
まぁ、それだけ必死だったという事だけは分かったが。
「女性達も何もなさそうですね。」
「では…」
腹を満たすのに武器を手放すとか言ったらぶっ飛ばそう。
武器さえあれば、どうにかなるのだから。
「私達の今履いている下着でどうでしょうか?」
「ブーーーッ!」
まさか…そう来るとは思わなかった。
僕はあまりの驚きに、口の中に入っているスープを吹き出した。
確かに男なら女の子の履いている下着を欲しがる者もいるだろうが、僕にはそっちの趣味は無い。
そんな物を貰っても嬉しくは無いし、大体そんな物を貰って何に使えるというんだ?
それにしても、僕はヒントを与えている筈なのに…何故それに気付かないかなぁ?
「そんなもんはいらん!」
「なら、他にはどんなものが?」
ブレイドは両手剣を取り出して握りしめていた。
まさか、武器を手放すとか言わないよな?
仕方ないから与えていたヒントを伝えてやるか。
「僕はこれからテオドール温泉村に資材を運ぶ仕事があるんですが、テオドール温泉村まで護衛をするという事で食料を分けてあげますが如何でしょうか?」
「あぁ、テイトがそこに向かっているのなら、俺達の目的地も同じだ。」
「なら、護衛の件は引き受けてくれますか?それなら食材はお分けし、旅の道中での食事や報酬の金額も用意致しましょう。」
「そんな事で報酬が貰えるなら引き受けよう!」
ダーネリアとルーナリアも頷いてみせた。
僕は肉を切り分けてから、スープを皿によそって与えた。
3人は久々にまともな物を食べた所為か、無我夢中で腹に入れていた。
そして食べ終わってから食休みが終わった後に、出発の準備を始めた。
「ところで、依頼主の貴方の事は何て呼べば良いんだ?」
「僕の名前は…トイテと申します。トスネーハ村の商人のトイテです。」
我ながら咄嗟に付けた名前とはいえ、随分安直な名前を付けたな。
すぐにバレるかと思っていたが、3人は気付く様子が無くて自己紹介をしてきた。
意外にこの3人は馬鹿なのだろうか?
「では、出発しますね。護衛の方を宜しくお願いします!」
「お願いがあるのですが、ダーネリアとルーナリアの2人は馬車に乗せては貰えませんか?」
「は?何を仰っているのか良く解りませんが、何を言っておられるのですか?」
「2人は疲労が溜まっていて、俺は大丈夫なのですが今迄の旅で少し無理がたたっていて…」
「どこの世界に護衛する冒険者が依頼者の馬車に乗るだなんて…そんな話は聞いた事がありませんよ?」
今迄の旅では、馬車に結界を張っていた為にその方法が許されていたが、別な馬車の護衛ではそうはいかない。
3人には認識の甘さが残っている様だった。
「馬の前にブレイドさん、両側面にダーネリアさんとルーナリアさんでお願いします。」
「ルーナリアが中に入れば、馬車に結界を張れますので…」
「必要ありません!馬車の中には結界石という術式を施した魔道具が設置しておりますので、ですがそれでも後方から襲われたらひとたまりもありませんからね。その為の護衛ですけど…僕は何か間違った事を言っていますか?」
「いえ、申し訳ありませんでした!その陣形で参りたいと思います。」
誰が中に乗せるかっつーの!
それに中に乗せたら復讐にならねぇだろ!
ヒントを振っているのにそれに気付いているのなら、馬車の中という事も考えたけど、そのヒントに気付かなかったから馬車に乗せる必要はない!
さてと、あとは何処で仕掛けてやろうかな?
ブレイドとダーネリアとルーナリアの3人は、いつ僕の事に気付くだろうか?
タイムリミットは、テオドール温泉村に着くまでとしようか!
僕のやっている事は、まだ甘いかな?
伯爵令嬢の件で一度は本当に解散を考えた。
最初に出会ったあの時にブレイドを拒否していたら、多分ブレイドはあの場で餓死して死んでいただろう。
ダーネリアとルーナリアも、あの時に声に気付かなければ他の魔物に喰われていたかもしれないというのに。
調子に乗ったのは別に良い、ただし1度ならね。
だが、2度目にやられた時には本当に腹が立った。
だからもう少し絶望を与える位、別に良いよな?
僕は馬車の小窓から3人が村に到着して、この馬車を見付けて向かって来たので、僕は偽装魔法で商人に変身してから馬車から降りて馬を撫でていた。
「すまないが君は誰だ?」
「藪から棒になんですか?僕は旅の商人ですが。」
「いや、この馬車の馬を撫でていたので…」
「だって、この馬車は僕の馬車ですから。」
「いや、この馬車は俺達の馬車だったんだが。」
「今は僕の馬車ですよ!昨日英雄様が、1人旅にこんな大きい馬車は必要ないと言われて、僕が貰ったのです。いやぁ、運が良かったですよ!大事な商売道具の馬車が魔物の襲撃に遭って壊されて途方に暮れていた所に英雄様が使っていた馬車を譲り受ける何て!」
「な…なんだと⁉」
「英雄様は仰ってましたよ、仲間に軽んじた扱いをされて大変御立腹だったと。かつての仲間達は、英雄様が声を掛けていなければ既にこの世にはいない筈だったのに、仲間達はその事を忘れて馬鹿にした表情で酷い扱いをされたとね。」
村人の青年の話を聞いて、ブレイド達は落ち込んでいた。
そこでブレイド達は思い出していた。
よしよし、自分の立場を思い出したようだな。
「英雄様はこの馬車を手放す時にこう仰っていました。かつて勇者パーティーに追い出され、そして新たに仲間を得たがその者達からもないがしろにされて、この馬車はその仲間達と一緒に過ごした馬車だったけど、もう仲間はいないから持っていても仕方が無いし、この馬車に乗っていると仲間達だった者達の事を思い出すからと。」
「英雄様とはテイトの事だよな?」
「はい、そうですが?」
「今何処にいるか分かるか?」
「英雄様は、これからの旅に必要な食材を手に入れる為に、先程雑貨屋に行くと仰ってましたから、多分探せば見つかるかもしれませんが…ですが、仮に貴方達がその仲間だとして、英雄様に会って何を話されるのですか?」
「そ…それは、あの時の事を謝罪して誤解だったという事を。」
「ブレイド様、それよりもテイト様を探しに行きましょう!」
「この村にいるのなら、テイト君に会えるかもしれませんし!」
ブレイド達は村の広場の方に走って行った。
僕はブレイド達を見送りながらこう言った。
「残念ながら、僕はこの村の雑貨屋には行って無いんだよね。会えると良いよね、英雄様に!」
ブレイド達の性格では、雑貨屋で見つからなければ村中を探し回るだろう。
さて、次に戻って来たらどんな悪戯を仕掛けてやろうかな?
あ、そうだ!
3人は金がない筈だから、こんな悪戯を仕掛けると効果的かもしれないな。
僕は空間魔法からオーガストリザードの肉の塊を剣に刺してから、焚火に掛けてじっくりと焼き始めた。
更にもう1つの焚火に鍋を置いてから、ハルーラ村でミレイ達に作って貰った、ハルーラ食材の野菜煮込みシチューを温め始めた。
「さてと、早く戻って来ないかな?」
戻って来たら、3人の前で美味そうに食べてやろう。
3人は金も食料も持っていないだろうから、食べたくて仕方がない筈だ!
それに最後に食べた物といえば、あのクッソ不味い柿だろうしな。
僕のストレージの中には、まだ食べるには熟さない野菜や果物が入っていた。
何故そんな物を入れているかというと、それは神託で与えられたあまり使い道がないスキルの1つが絡んでいるからだった。
低レベル時代は、地面に植えた種が芽を出すだけの【植物成長】というスキルだったが、レベル上がった状態に確認すると、種を植えてから植物成長のスキルを使うと、芽を出すどころか大木にまで成長するスキルに変わっていた。
それ以外にも、まだ青い果実に植物成長をすると完熟するという特性もあったからだった。
なので、お店でも格安で売れ残りそうな未熟な野菜や果物を格安で手に入れて、ストレージに収納してあるのである。
「あ、戻って来たな!」
僕がそう言うと同時に、ブレイド達は戻って来た。
僕はオーガストリザードの肉の表面を炙った所をナイフで削ぎ落としてから、パンに挟んで食べると…美食家が好むという意味が解る位に美味しい物だった。
薄切れの肉の筈なのに、溢れ出る肉汁と弾力のある噛み応えがある肉、それをハルーラ食材の野菜煮込みシチューの中に入れてから食べると、味は更に絶品な物に仕上がっていた。
「さっすが、オーガストリザードは美味いな!それに、ハルーラ食材の野菜煮込みシチューも絶品だ!」
「オーガストリザード?ハルーラ食材の野菜煮込みシチューだって⁉それらをどうしたんだ⁉」
「英雄様から馬車を貰う際に戴いたんですよ。仲間達と一緒に食べようとしていたらしいのですが、その仲間がいなければこんなに持っていても意味が無いからといってね。馬車の中には他にも、ワイバーンの肉やマウンテンキャンサーなんかも入っていましたし、当分の間は金を使わなくても済みそうです。」
「ぐっ…!」
「ところで英雄様には会えましたか…って、聞くまでもないですね。」
「あぁ、どこを探しても見付からなかった。」
「…という事は入れ違いでしたか、先程英雄様は次の目的地のテオドール温泉村に旅立つと言っておられましたからね。僕も同じ目的地なので護衛の為に一緒に行きませんか?と尋ねたのですが、その馬車を見ると仲間達の事を思い出すと言って旅立たれて行きました。」
3人は膝から崩れて地面に手を付いた。
そして体は正直なのか…この料理の匂いを嗅いだ所為か、腹が鳴っていた。
僕は気にせずに、オーガストリザードの肉を削ぎ落としてから口に入れて、ハルーラ食材の野菜煮込みシチューを飲んだ。
「す…すまないが、少し分けて貰う事は出来ないか?」
「では、銅貨10枚でスープを。銀貨2枚でオーガストリザードを分けましょう。」
僕は3人が金のない事を知っている上で、敢えてそう言ってみた。
さて、どうするのかな?
「実は、俺達は金が無くてな。」
「そうですか、それは残念ですね。」
「何か…代わりになる物で取引をしないか?」
「では何がありますか?」
ブレイドは道具袋の中身を取り出して見せた。
そこには…特にこれといって値打ち物はなかった。
僕はブレイドに、薬草や毒消し草やポーションなどは必要が無くてもストックしておけと伝えておいたはずだが?
魔物の討伐証明部位も無いし…この村に来るまでに魔物とかには出遭っている筈なのに、それらしき物は見当たらなかった。
まさか、倒すだけ倒して入手していないのか?
「何もなさそうですね?女子の2人は何かありますか?」
「私達は…」
ダーネリアとルーナリアも道具袋から全部取り出した。
だが、入っていた物といえば…化粧道具と紙やタオル類、下着だけで討伐証明部位の類は入っておらず、更には薬草や毒消し草、ポーションなども一切入っていなかった。
まさか…この村に来るまでに薬草や毒消し草を食べながら来たのか?
あんなクソ不味い物をそのままで?
まぁ、それだけ必死だったという事だけは分かったが。
「女性達も何もなさそうですね。」
「では…」
腹を満たすのに武器を手放すとか言ったらぶっ飛ばそう。
武器さえあれば、どうにかなるのだから。
「私達の今履いている下着でどうでしょうか?」
「ブーーーッ!」
まさか…そう来るとは思わなかった。
僕はあまりの驚きに、口の中に入っているスープを吹き出した。
確かに男なら女の子の履いている下着を欲しがる者もいるだろうが、僕にはそっちの趣味は無い。
そんな物を貰っても嬉しくは無いし、大体そんな物を貰って何に使えるというんだ?
それにしても、僕はヒントを与えている筈なのに…何故それに気付かないかなぁ?
「そんなもんはいらん!」
「なら、他にはどんなものが?」
ブレイドは両手剣を取り出して握りしめていた。
まさか、武器を手放すとか言わないよな?
仕方ないから与えていたヒントを伝えてやるか。
「僕はこれからテオドール温泉村に資材を運ぶ仕事があるんですが、テオドール温泉村まで護衛をするという事で食料を分けてあげますが如何でしょうか?」
「あぁ、テイトがそこに向かっているのなら、俺達の目的地も同じだ。」
「なら、護衛の件は引き受けてくれますか?それなら食材はお分けし、旅の道中での食事や報酬の金額も用意致しましょう。」
「そんな事で報酬が貰えるなら引き受けよう!」
ダーネリアとルーナリアも頷いてみせた。
僕は肉を切り分けてから、スープを皿によそって与えた。
3人は久々にまともな物を食べた所為か、無我夢中で腹に入れていた。
そして食べ終わってから食休みが終わった後に、出発の準備を始めた。
「ところで、依頼主の貴方の事は何て呼べば良いんだ?」
「僕の名前は…トイテと申します。トスネーハ村の商人のトイテです。」
我ながら咄嗟に付けた名前とはいえ、随分安直な名前を付けたな。
すぐにバレるかと思っていたが、3人は気付く様子が無くて自己紹介をしてきた。
意外にこの3人は馬鹿なのだろうか?
「では、出発しますね。護衛の方を宜しくお願いします!」
「お願いがあるのですが、ダーネリアとルーナリアの2人は馬車に乗せては貰えませんか?」
「は?何を仰っているのか良く解りませんが、何を言っておられるのですか?」
「2人は疲労が溜まっていて、俺は大丈夫なのですが今迄の旅で少し無理がたたっていて…」
「どこの世界に護衛する冒険者が依頼者の馬車に乗るだなんて…そんな話は聞いた事がありませんよ?」
今迄の旅では、馬車に結界を張っていた為にその方法が許されていたが、別な馬車の護衛ではそうはいかない。
3人には認識の甘さが残っている様だった。
「馬の前にブレイドさん、両側面にダーネリアさんとルーナリアさんでお願いします。」
「ルーナリアが中に入れば、馬車に結界を張れますので…」
「必要ありません!馬車の中には結界石という術式を施した魔道具が設置しておりますので、ですがそれでも後方から襲われたらひとたまりもありませんからね。その為の護衛ですけど…僕は何か間違った事を言っていますか?」
「いえ、申し訳ありませんでした!その陣形で参りたいと思います。」
誰が中に乗せるかっつーの!
それに中に乗せたら復讐にならねぇだろ!
ヒントを振っているのにそれに気付いているのなら、馬車の中という事も考えたけど、そのヒントに気付かなかったから馬車に乗せる必要はない!
さてと、あとは何処で仕掛けてやろうかな?
ブレイドとダーネリアとルーナリアの3人は、いつ僕の事に気付くだろうか?
タイムリミットは、テオドール温泉村に着くまでとしようか!
僕のやっている事は、まだ甘いかな?
14
お気に入りに追加
1,968
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【完結】異世界転移特典で創造作製のスキルを手に入れた俺は、好き勝手に生きてやる‼~魔王討伐?そんな物は先に来た転移者達に任せれば良いだろ!~
アノマロカリス
ファンタジー
俺が15歳の頃…両親は借金を膨らませるだけ膨らませてから、両親と妹2人逃亡して未だに発見されていない。
金を借りていたのは親なのだから俺には全く関係ない…と思っていたら、保証人の欄に俺の名前が書かれていた。
俺はそれ以降、高校を辞めてバイトの毎日で…休む暇が全く無かった。
そして毎日催促をしに来る取り立て屋。
支払っても支払っても、減っている気が全くしない借金。
そして両親から手紙が来たので内容を確認すると?
「お前に借金の返済を期待していたが、このままでは埒が明かないので俺達はお前を売る事にした。 お前の体の臓器を売れば借金は帳消しになるんだよ。 俺達が逃亡生活を脱する為に犠牲になってくれ‼」
ここまでやるか…あのクソ両親共‼
…という事は次に取り立て屋が家に来たら、俺は問答無用で連れて行かれる‼
俺の住んでいるアパートには、隣人はいない。
隣人は毎日俺の家に来る取り立て屋の所為で引っ越してしまった為に、このアパートには俺しかいない。
なので取り立て屋の奴等も強引な手段を取って来る筈だ。
この場所にいたら俺は奴等に捕まって…なんて冗談じゃない‼
俺はアパートから逃げ出した!
だが…すぐに追って見付かって俺は追い回される羽目になる。
捕まったら死ぬ…が、どうせ死ぬのなら捕まらずに死ぬ方法を選ぶ‼
俺は橋の上に来た。
橋の下には高速道路があって、俺は金網をよじ登ってから向かって来る大型ダンプを捕らえて、タイミングを見てダイブした!
両親の所為で碌な人生を歩んで来なかった俺は、これでようやく解放される!
そして借金返済の目処が付かなくなった両親達は再び追われる事になるだろう。
ざまぁみやがれ‼
…そう思ったのだが、気が付けば俺は白い空間の中にいた。
そこで神と名乗る者に出会って、ある選択肢を与えられた。
異世界で新たな人生を送るか、元の場所に戻って生活を続けて行くか…だ。
元の場所って、そんな場所に何て戻りたくもない‼
俺の選択肢は異世界で生きる事を選んだ。
そして神と名乗る者から、異世界に旅立つ俺にある特典をくれた。
それは頭の中で想像した物を手で触れる事によって作りだせる【創造作製】のスキルだった。
このスキルを与えられた俺は、新たな異世界で魔王討伐の為に…?
12月27日でHOTランキングは、最高3位でした。
皆様、ありがとうございました。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~
椿紅颯
ファンタジー
目標である登録者3万人の夢を叶えた葭谷和昌こと活動名【カズマ】。
しかし次の日、身に覚えのない大炎上を経験してしまい、SNSと活動アカウントが大量の通報の後に削除されてしまう。
タイミング良くアルバイトもやめてしまい、完全に収入が途絶えてしまったことから探索者になることを決める。
数日間が経過し、とある都市伝説を友人から聞いて実践することに。
すると、聞いていた内容とは異なるものの、レアドロップ&レアスキルを手に入れてしまう!
手に入れたものを活かすため、一度は去った配信業界へと戻ることを決める。
そんな矢先、ダンジョンで狩りをしていると少女達の危機的状況を助け、しかも一部始終が配信されていてバズってしまう。
無名にまで落ちてしまったが、一躍時の人となり、その少女らとパーティを組むことになった。
和昌は次々と偉業を成し遂げ、底辺から最速で成り上がっていく。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる