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第二章
第十七話 トンビがタカを産む?
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僕はミファレトの執事のカルロアを連れて伯爵家の屋敷の前にいた。
現在僕の目の前には、多くの騎士と家に仕える老執事が目の前にいた。
「カルロア、この方は一体どなたですか?」
「ダルロス様、この方は今巷で噂をされておられる英雄テイト様でございます。お嬢様の件で旦那様にお取次ぎを願いたいのですが…」
「お前はミファレトお嬢様と一緒では無いのか?」
「英雄テイト様の転移魔法で、ハルーラ村から来たのです。」
「なんと!英雄様は伝説の転移魔法を使われるのか⁉」
「2人だけで会話をしていないで、いい加減屋敷に通してくれないかな?」
「はっ!申し訳ありません。こちらで御座います。」
僕はカルロアを連れて、ダルロスの案内で家主であるソラシド伯爵の部屋に通された。
ダルロスが部屋に入った瞬間に、ソラシド伯爵に話をしてくれたお陰で手間が省けた。
「英雄テイト様、ようこそいらっしゃいました。」
「その反応をしているという事は、僕の事は大体知っているという事だよね?」
「勿論で御座います!現在Sランク冒険者で、爵位は侯爵位を取得されておられる方ですよね?」
「そこまで解っているのなら説明が省けて助かるよ。今回此方に来た要件は、伯爵の馬鹿娘について抗議しに来たからね。」
ミファレトの話を聞いて、ソラシド伯爵は頭を悩ませていた。
この反応からすると、また何かやらかしたか…という感じだった。
「英雄様、抗議というのは娘の事ですよね?」
「そうですね、順を追って話をしましょう。僕達がバルーデンの街からハルーラ村に向けて馬車を走らせている際に、伯爵家の馬車がオーガストリザード3体に襲われていて、騎士団でも手に余る様な感じだったので助けました。」
「それは、危ない所をありがとうございます!」
「ところが問題はその後です、僕達の素性が分かるとおたくのお嬢様は、僕の仲間達を馬車に招き入れました。僕はオーガストリザードの解体をしてから馬車に向かうと、英雄様のパーティーの方と話しているので従者の方は御遠慮くださいと言われました。」
「・・・・・・・・・」
「次に訪ねると、従者風情が身の程を弁えろと罵られました。」
「・・・・・・・・・」
「僕は事を荒立てたくなくて、その場は従いましたが…一向に仲間が開放されないので、痺れを切らしてまた話し掛けると、衛兵たちを呼んで僕に罰を与えろという命令をしていましたね。」
その話を聞いたソラシド伯爵は、段々と顔が青くなっていた。
僕はあの時にやった魔力を最大放出して威嚇をした。
「人の話を聞かないで一方的に喋るというのは、貴族の方ではよくある話ですが…貴族位の侯爵位のある僕に対して、伯爵令嬢如きが従者風情とか、身の程を弁えろとか、無礼者扱いをして罵られたのですが、この件に関しては伯爵様はどう思われましたかね?」
「我が娘の教育が行き届かない事で、英雄様には大変な御迷惑を…」
「まさかそれで済ませる気では無いですよね?つい先日、ベルガロン子爵家の屋敷が跡形もなく消えた話は御存知ですか?」
「は…はい、存じ上げております!」
「あれはホーンコッツという子爵令息が僕の怒りを買いまして、子爵家の屋敷を崩壊させて子爵と子爵令息は始末しました。もしも伯爵様が…娘と同じで人の話を聞かずに一方的に話をする人間だったら、この伯爵家も崩壊させようかとも思ったのですが、伯爵様はその様な方では無いですよね?」
その後僕は、ソラシド伯爵から謝罪を受けてミファレトに関する話を色々と聞いた。
ミファレトは今回だけではなく、自分の勝手な思い込みと一方的な性格により、結構抗議が後を絶たないという話だった。
ソラシド伯爵はそんな娘の行動を許していたらしい。
「伯爵様と話をしていて思ったのですが、貴方の様な人格者からよくあんな馬鹿女が育ちましたね?」
「お恥ずかしい限りです。」
「伯爵様に免じて、伯爵家の屋敷を潰すというのはやめておきます。」
「あ…ありがとうございます!」
「ですが、娘さんに関しては話は別です。これにはそれ相応の対応をして戴かないと…」
「まず英雄様には謝礼金をお支払い致します。」
「はした金では無いですよね?」
「勿論で御座います!そして娘には厳しく躾けをして行きたいと思います。」
「具体的にどんな?」
「一から家庭教師を付けて礼儀作法や接し方の…」
「ヌルいですね、それが厳しい躾けですか?」
「ではどの様に?」
僕は貴族令嬢が厳しい躾けをする為はどうしたら良いかというのを考えた。
以前実家の宿屋を手伝っていた時に、旅人さんが僕にくれた物語の内容を思い出して話した。
「まず、部屋とドレスと装飾品は没収し、部屋は平民暮らしの様な狭い部屋に机と椅子と粗末なベッドを用意します。次に領地経営を学ばせてから、領地経営に貢献出来たら給料を渡すというシステムにします。欲しい物は給料から購入する様にとね。」
「娘に平民の暮らしをさせるのですか?」
「あのひん曲がった性格は、そうでもしないと治りませんよ。なまじ裕福だから図に乗るのですから、平民と同じ扱いをさせて、物が欲しければ働いて稼がせる。自分の事は自分でやらせ、メイドや執事を一切頼らずに生活をさせるという風にさせるんです。平民はそうして生活をしていますからね。」
「しかしそれでは、娘があまりにも不憫で…」
「なら伯爵家を潰しますか?屋敷を失い、爵位を失えば平民の暮らしをする以外に生きる術が無くなりますからね。ただその場合、虐げられてきた平民は元貴族に対して復讐をしに来ますよ。伯爵様はどうかは分かりませんが、娘さんは間違いなくタダでは済まないでしょうし、下手すれば奴隷落ちで貴族の玩具にされて一生過ごしていくでしょう。」
この話を聞いて、ソラシド伯爵は今迄如何に娘を甘やかして来たのかを再確認したみたいだった。
「部屋を没収というより、寧ろ屋敷から追い出すという方が良いかもしれませんね。」
「娘に外で寝泊まりさせろと?」
「いえ、屋敷の敷地内で小屋を建ててそこに住まわせるんです。湯浴びをしたければ、自分で井戸から水を汲んでから沸かしたりとか、食事は質素な物でパンとスープのみ、服は10着を与えてから汚れたら自分で洗濯させて、メイドや執事は一切付かせない。屋敷に入ったらペナルティと…」
「それはあまりにも厳しすぎるのではないかと思うのですが。」
「では今のままで社交場に出しますか?そして無礼を働いたという事で侯爵家や公爵家を敵に回して伯爵家を崩壊させますか?今のままでは確実にそうなる未来しか見えませんよ。」
「なまじその可能性がありそうで…わかりました、その案を受け入れさせて戴きます。」
「後はモチベーションを保たせる為に、ある程度の金額に達したらとか、どれだけ領地に貢献が出来たかによって屋敷住まいを許すとかですね。性格が変わってない場合は、目標金額に達していても屋敷には戻さないとか、屋敷に戻っても以前と同じ性格なら、また平民暮らしに戻すとか。」
「確かに、目標があればやる気を出さざるおえませんね。」
ソラシド伯爵は早速行動に移した。
2人の執事は、文句や意見を言わずに行動をしていた。
すぐに文句を言わずに動けるという事は、この2人もミファレトに振り回されて迷惑を被っていた者達だからだろう。
僕は謝礼金を受け取ってからソラシド伯爵に別れを告げると、ハルーラ村に転移をした。
ブレイド達が駆け寄って来たがそれを無視して、ミファレトに声を掛けた。
「伯爵家を潰すというのは、ソラシド伯爵との会話で無しになった。」
「それは、ありがとうございま…」
「礼を言うのはまだ早いよ、ミファレト嬢は屋敷に帰ったら面白い事が待っているから楽しみにしていると良い。」
僕の笑みを浮かべた顔でミファレトにそう言うと、ミファレト達はハルーラ村から出て行った。
この先に何が待ち構えているかも知らずに…。
「さてと、そろそろハルーラ食材の野菜煮込みシチューが完成したかな?」
「テイト、今回の事は本当に済まなかっ…」
「あれ?まだいたの?別に待っていなくても良いのに…」
「テイト君、私は…」
「テイト?誰それ?僕の名前は従者君じゃなかったっけ?」
「テイト様、あの実は…」
「何となく理由は解るよ、あの伯爵令嬢が一方的に喋って話を聞き入れてくれなかったんだろ?だけど、僕は今回の事で本気でキレました。許して欲しければそれ相応の対応をしてくれ、でなければ本当にここでパーティーは解散し、お別れだ。」
僕はそれだけ言うと、落ち込んでいる3人を放って置いてからミレイの店に入って、念願のハルーラ食材の野菜煮込みシチューを食べたのだった。
野菜の甘みが溶けだしたシチューに、とろとろに溶けた肉、料理が得意な僕でもこの味の再現は絶対に不可能な絶品な品だった。
ブレイド達にも作っただろうその量を、僕は全て受け取ってから空間魔法のストレージに入れた。
そして僕は馬車に入ってから眠りに就こうとしたら、扉をノックされた。
「何?」
「テイト話がしたいんだが…」
「今日は色々あって眠いから明日にしてくれ!」
「ならせめて、馬車の中に入れてくれないか?」
「なんで?」
「この村には宿が無くてな…」
「村の中なんだし、完全に安全とは言えないが雑魚寝していても問題ないだろ?それにパーティーメンバーでもない者達に何故僕の馬車に招かないといけないんだ?」
「その件の話をする為にもだ!」
「それは明日にしてくれといったろ?」
僕はそれだけ言うと、扉を閉めて鍵を掛けた。
そして対物理結界と遮音結界を施してから眠りに就いた。
翌日、僕は起きてから馬車の周囲を見渡してからブレイド達を大木の下で寝ているのを確認すると、ミレイ達に別れを告げてからハルーラ村から出発した。
出発する際には、音を遮断させる魔法のサイレントを使用して。
次の目的地は伝えてあるし、本人達の意思があれば着いて来るだろうし、着いて来なければ本当にお別れだ。
僕はすぐに追い付けない様に、馬と馬車にバフを掛けた。
そしてハルーラ村が薄っすらしか見えなくなった辺りで、ブレイド達は目覚めて馬車が無い事を確認したのだった。
ブレイド達はミレイに話を聞くと、挨拶をして村を出て行くと言って既に発った後だという事を知った。
そして村の外に出てから車輪の後を追って、ブレイド達は馬車を追い掛けるのだった。
果たして、ブレイド達は何処で追い付くのだろうか?
~~~~~一方、屋敷に帰ったミファレトが待っていたのは?~~~~~
ミファレトは屋敷に辿り着くと、屋敷に入る前に小屋に案内されてからメイド達にドレスを脱がされて平民の服に着替えさせられた。
訳も分からずに立ち尽くしていると、小屋にソラシド伯爵が入って来て告げた。
「ミファレト、お前にはしばらくの間は反省の意味を含めてこの小屋で平民と同じ暮らしをして貰う。屋敷には入れず、メイド達がお前を手伝う事もない、自分の事は自分でやるのだ。」
「お父様、納得がいきませんわ!」
「これがテイト様から提案されたお前への処罰だ。テイト様は大変御立腹でな、本来ならベルガロン子爵家を潰した様に我が屋敷も潰そうと決めていたらしいのだが、何とか免れる事が出来た。だが、お前に対して何のペナルティが無しで貴族の暮らしをさせる訳にはいかないので、この方法を取らせて貰った。屋敷に戻りたければ、机の上に書かれている事を実行して見事果たしてみよ!」
ソラシド伯爵はそれだけ言うと、小屋から出て行った。
ミファレトは悲壮感に浸りながらも、机の上の紙を読んだ。
そこには今のミファレトでは到底成しえない様な内容が書かれていた。
ミファレトは3日3晩を泣いて過ごして、誰も助けが来ない事を知ると、机の上の紙通りに行動を始めるのだった。
そして近い未来、ミファレトはテイト達とまた会う事になるのだが?
果たして、その頃までにミファレトは変われているのだろうか?
~~~~~更に、トール達の元勇者パーティーは?~~~~~
マクファーレン港を経て、ハーネスト村に辿り着いた。
当然、故郷の村に帰って来て何も起こらない筈がない!
次回、元勇者パーティーは故郷でどうなる?
お楽しみに!
現在僕の目の前には、多くの騎士と家に仕える老執事が目の前にいた。
「カルロア、この方は一体どなたですか?」
「ダルロス様、この方は今巷で噂をされておられる英雄テイト様でございます。お嬢様の件で旦那様にお取次ぎを願いたいのですが…」
「お前はミファレトお嬢様と一緒では無いのか?」
「英雄テイト様の転移魔法で、ハルーラ村から来たのです。」
「なんと!英雄様は伝説の転移魔法を使われるのか⁉」
「2人だけで会話をしていないで、いい加減屋敷に通してくれないかな?」
「はっ!申し訳ありません。こちらで御座います。」
僕はカルロアを連れて、ダルロスの案内で家主であるソラシド伯爵の部屋に通された。
ダルロスが部屋に入った瞬間に、ソラシド伯爵に話をしてくれたお陰で手間が省けた。
「英雄テイト様、ようこそいらっしゃいました。」
「その反応をしているという事は、僕の事は大体知っているという事だよね?」
「勿論で御座います!現在Sランク冒険者で、爵位は侯爵位を取得されておられる方ですよね?」
「そこまで解っているのなら説明が省けて助かるよ。今回此方に来た要件は、伯爵の馬鹿娘について抗議しに来たからね。」
ミファレトの話を聞いて、ソラシド伯爵は頭を悩ませていた。
この反応からすると、また何かやらかしたか…という感じだった。
「英雄様、抗議というのは娘の事ですよね?」
「そうですね、順を追って話をしましょう。僕達がバルーデンの街からハルーラ村に向けて馬車を走らせている際に、伯爵家の馬車がオーガストリザード3体に襲われていて、騎士団でも手に余る様な感じだったので助けました。」
「それは、危ない所をありがとうございます!」
「ところが問題はその後です、僕達の素性が分かるとおたくのお嬢様は、僕の仲間達を馬車に招き入れました。僕はオーガストリザードの解体をしてから馬車に向かうと、英雄様のパーティーの方と話しているので従者の方は御遠慮くださいと言われました。」
「・・・・・・・・・」
「次に訪ねると、従者風情が身の程を弁えろと罵られました。」
「・・・・・・・・・」
「僕は事を荒立てたくなくて、その場は従いましたが…一向に仲間が開放されないので、痺れを切らしてまた話し掛けると、衛兵たちを呼んで僕に罰を与えろという命令をしていましたね。」
その話を聞いたソラシド伯爵は、段々と顔が青くなっていた。
僕はあの時にやった魔力を最大放出して威嚇をした。
「人の話を聞かないで一方的に喋るというのは、貴族の方ではよくある話ですが…貴族位の侯爵位のある僕に対して、伯爵令嬢如きが従者風情とか、身の程を弁えろとか、無礼者扱いをして罵られたのですが、この件に関しては伯爵様はどう思われましたかね?」
「我が娘の教育が行き届かない事で、英雄様には大変な御迷惑を…」
「まさかそれで済ませる気では無いですよね?つい先日、ベルガロン子爵家の屋敷が跡形もなく消えた話は御存知ですか?」
「は…はい、存じ上げております!」
「あれはホーンコッツという子爵令息が僕の怒りを買いまして、子爵家の屋敷を崩壊させて子爵と子爵令息は始末しました。もしも伯爵様が…娘と同じで人の話を聞かずに一方的に話をする人間だったら、この伯爵家も崩壊させようかとも思ったのですが、伯爵様はその様な方では無いですよね?」
その後僕は、ソラシド伯爵から謝罪を受けてミファレトに関する話を色々と聞いた。
ミファレトは今回だけではなく、自分の勝手な思い込みと一方的な性格により、結構抗議が後を絶たないという話だった。
ソラシド伯爵はそんな娘の行動を許していたらしい。
「伯爵様と話をしていて思ったのですが、貴方の様な人格者からよくあんな馬鹿女が育ちましたね?」
「お恥ずかしい限りです。」
「伯爵様に免じて、伯爵家の屋敷を潰すというのはやめておきます。」
「あ…ありがとうございます!」
「ですが、娘さんに関しては話は別です。これにはそれ相応の対応をして戴かないと…」
「まず英雄様には謝礼金をお支払い致します。」
「はした金では無いですよね?」
「勿論で御座います!そして娘には厳しく躾けをして行きたいと思います。」
「具体的にどんな?」
「一から家庭教師を付けて礼儀作法や接し方の…」
「ヌルいですね、それが厳しい躾けですか?」
「ではどの様に?」
僕は貴族令嬢が厳しい躾けをする為はどうしたら良いかというのを考えた。
以前実家の宿屋を手伝っていた時に、旅人さんが僕にくれた物語の内容を思い出して話した。
「まず、部屋とドレスと装飾品は没収し、部屋は平民暮らしの様な狭い部屋に机と椅子と粗末なベッドを用意します。次に領地経営を学ばせてから、領地経営に貢献出来たら給料を渡すというシステムにします。欲しい物は給料から購入する様にとね。」
「娘に平民の暮らしをさせるのですか?」
「あのひん曲がった性格は、そうでもしないと治りませんよ。なまじ裕福だから図に乗るのですから、平民と同じ扱いをさせて、物が欲しければ働いて稼がせる。自分の事は自分でやらせ、メイドや執事を一切頼らずに生活をさせるという風にさせるんです。平民はそうして生活をしていますからね。」
「しかしそれでは、娘があまりにも不憫で…」
「なら伯爵家を潰しますか?屋敷を失い、爵位を失えば平民の暮らしをする以外に生きる術が無くなりますからね。ただその場合、虐げられてきた平民は元貴族に対して復讐をしに来ますよ。伯爵様はどうかは分かりませんが、娘さんは間違いなくタダでは済まないでしょうし、下手すれば奴隷落ちで貴族の玩具にされて一生過ごしていくでしょう。」
この話を聞いて、ソラシド伯爵は今迄如何に娘を甘やかして来たのかを再確認したみたいだった。
「部屋を没収というより、寧ろ屋敷から追い出すという方が良いかもしれませんね。」
「娘に外で寝泊まりさせろと?」
「いえ、屋敷の敷地内で小屋を建ててそこに住まわせるんです。湯浴びをしたければ、自分で井戸から水を汲んでから沸かしたりとか、食事は質素な物でパンとスープのみ、服は10着を与えてから汚れたら自分で洗濯させて、メイドや執事は一切付かせない。屋敷に入ったらペナルティと…」
「それはあまりにも厳しすぎるのではないかと思うのですが。」
「では今のままで社交場に出しますか?そして無礼を働いたという事で侯爵家や公爵家を敵に回して伯爵家を崩壊させますか?今のままでは確実にそうなる未来しか見えませんよ。」
「なまじその可能性がありそうで…わかりました、その案を受け入れさせて戴きます。」
「後はモチベーションを保たせる為に、ある程度の金額に達したらとか、どれだけ領地に貢献が出来たかによって屋敷住まいを許すとかですね。性格が変わってない場合は、目標金額に達していても屋敷には戻さないとか、屋敷に戻っても以前と同じ性格なら、また平民暮らしに戻すとか。」
「確かに、目標があればやる気を出さざるおえませんね。」
ソラシド伯爵は早速行動に移した。
2人の執事は、文句や意見を言わずに行動をしていた。
すぐに文句を言わずに動けるという事は、この2人もミファレトに振り回されて迷惑を被っていた者達だからだろう。
僕は謝礼金を受け取ってからソラシド伯爵に別れを告げると、ハルーラ村に転移をした。
ブレイド達が駆け寄って来たがそれを無視して、ミファレトに声を掛けた。
「伯爵家を潰すというのは、ソラシド伯爵との会話で無しになった。」
「それは、ありがとうございま…」
「礼を言うのはまだ早いよ、ミファレト嬢は屋敷に帰ったら面白い事が待っているから楽しみにしていると良い。」
僕の笑みを浮かべた顔でミファレトにそう言うと、ミファレト達はハルーラ村から出て行った。
この先に何が待ち構えているかも知らずに…。
「さてと、そろそろハルーラ食材の野菜煮込みシチューが完成したかな?」
「テイト、今回の事は本当に済まなかっ…」
「あれ?まだいたの?別に待っていなくても良いのに…」
「テイト君、私は…」
「テイト?誰それ?僕の名前は従者君じゃなかったっけ?」
「テイト様、あの実は…」
「何となく理由は解るよ、あの伯爵令嬢が一方的に喋って話を聞き入れてくれなかったんだろ?だけど、僕は今回の事で本気でキレました。許して欲しければそれ相応の対応をしてくれ、でなければ本当にここでパーティーは解散し、お別れだ。」
僕はそれだけ言うと、落ち込んでいる3人を放って置いてからミレイの店に入って、念願のハルーラ食材の野菜煮込みシチューを食べたのだった。
野菜の甘みが溶けだしたシチューに、とろとろに溶けた肉、料理が得意な僕でもこの味の再現は絶対に不可能な絶品な品だった。
ブレイド達にも作っただろうその量を、僕は全て受け取ってから空間魔法のストレージに入れた。
そして僕は馬車に入ってから眠りに就こうとしたら、扉をノックされた。
「何?」
「テイト話がしたいんだが…」
「今日は色々あって眠いから明日にしてくれ!」
「ならせめて、馬車の中に入れてくれないか?」
「なんで?」
「この村には宿が無くてな…」
「村の中なんだし、完全に安全とは言えないが雑魚寝していても問題ないだろ?それにパーティーメンバーでもない者達に何故僕の馬車に招かないといけないんだ?」
「その件の話をする為にもだ!」
「それは明日にしてくれといったろ?」
僕はそれだけ言うと、扉を閉めて鍵を掛けた。
そして対物理結界と遮音結界を施してから眠りに就いた。
翌日、僕は起きてから馬車の周囲を見渡してからブレイド達を大木の下で寝ているのを確認すると、ミレイ達に別れを告げてからハルーラ村から出発した。
出発する際には、音を遮断させる魔法のサイレントを使用して。
次の目的地は伝えてあるし、本人達の意思があれば着いて来るだろうし、着いて来なければ本当にお別れだ。
僕はすぐに追い付けない様に、馬と馬車にバフを掛けた。
そしてハルーラ村が薄っすらしか見えなくなった辺りで、ブレイド達は目覚めて馬車が無い事を確認したのだった。
ブレイド達はミレイに話を聞くと、挨拶をして村を出て行くと言って既に発った後だという事を知った。
そして村の外に出てから車輪の後を追って、ブレイド達は馬車を追い掛けるのだった。
果たして、ブレイド達は何処で追い付くのだろうか?
~~~~~一方、屋敷に帰ったミファレトが待っていたのは?~~~~~
ミファレトは屋敷に辿り着くと、屋敷に入る前に小屋に案内されてからメイド達にドレスを脱がされて平民の服に着替えさせられた。
訳も分からずに立ち尽くしていると、小屋にソラシド伯爵が入って来て告げた。
「ミファレト、お前にはしばらくの間は反省の意味を含めてこの小屋で平民と同じ暮らしをして貰う。屋敷には入れず、メイド達がお前を手伝う事もない、自分の事は自分でやるのだ。」
「お父様、納得がいきませんわ!」
「これがテイト様から提案されたお前への処罰だ。テイト様は大変御立腹でな、本来ならベルガロン子爵家を潰した様に我が屋敷も潰そうと決めていたらしいのだが、何とか免れる事が出来た。だが、お前に対して何のペナルティが無しで貴族の暮らしをさせる訳にはいかないので、この方法を取らせて貰った。屋敷に戻りたければ、机の上に書かれている事を実行して見事果たしてみよ!」
ソラシド伯爵はそれだけ言うと、小屋から出て行った。
ミファレトは悲壮感に浸りながらも、机の上の紙を読んだ。
そこには今のミファレトでは到底成しえない様な内容が書かれていた。
ミファレトは3日3晩を泣いて過ごして、誰も助けが来ない事を知ると、机の上の紙通りに行動を始めるのだった。
そして近い未来、ミファレトはテイト達とまた会う事になるのだが?
果たして、その頃までにミファレトは変われているのだろうか?
~~~~~更に、トール達の元勇者パーティーは?~~~~~
マクファーレン港を経て、ハーネスト村に辿り着いた。
当然、故郷の村に帰って来て何も起こらない筈がない!
次回、元勇者パーティーは故郷でどうなる?
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