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第二章

第十四話 一方、元勇者パーティーは?

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 トール達は、冒険者ギルドの料理を食べて…驚愕の事実を知ったのだった。

 「都会のでーこんは…あの村のでーこんに比べると味が落ちるな!」
 「肥料が悪いのか、痩せ細っているな。」
 「味にコクもないし…」
 「食感も悪いわね!シャキシャキとした歯応えが無いわ。」

 テゐトの村で別れる際に、ボアの肉と村の野菜を物々交換していた。
 野菜は馬車の道中に食べ尽くしてしまったが、残り3日で王都に着くと解った彼らは、いち早く野菜を口に入れたかったと思いながら、念願の野菜を口に入れたが不満しか出なかった。
 余程、あの村の野菜の味に慣れ親しんだのだろう。

 「不味いな…!」
 「そうだよな、でーこんもにーじんも味が悪いからな。」
 「いや、そっちの話じゃなくて…テイトの話だ!」
 「テゐトかぁ…元気にしているかなぁ?」
 「そっちのテゐトじゃなくて、幼馴染の方のテイトだ!」
 「あぁ、そっちか…名前も発音も一緒だから、間違えたわ。紛らわしいわね!」

 テイトを探す為に、バルファザリア地方の村まで1か月掛けて馬車で揺られて行った。
 肝心のテイトは見付からずに無駄足かとも思われたが、あの村での収穫は予想以上の物だった。
 俺は一刻も早く王都に戻りたかったが、リガートとキリアとカルネアが名残惜しそうな顔をしていた。
 リガートは何気にあの村では生き生きとしていた。
 すぐに村の住人とも打ち解けたり、競い合ったりして意気投合していた。
 キリアも畑の水やりに貢献したり、何より村人全員から告白をされるというモテまくりだったからだ。
 スレンダーが好まれる世界では、あの村だけは別でキリアの体系は村人の理想その者だったという。
 逆にカルネアはスレンダー体系だった所為か、村人の者達からは一切見向きもされずに不満を漏らしていた。
 だが、治癒術士としての能力を活用して年配者の治療を行って感謝されて喜んでいた。
 俺達のパーティーの時も回復はしてくれたが、礼を言うほどのものではないので、礼を言われるという事が嬉しかったのだろう。

 「この‥魔王の配下に近い実力の魔神ガルーダの討伐をして、今この世界で魔王を討伐出来る有力な候補という話が信じられねぇんだよ!」
 「これじゃあ、もう国が勇者と認定する日も近いだろう。」
 「でも、当の本人は勇者になるのを辞退したって書いてあるわよ。」
 「そして…この2つの英雄の称号だ。【民を苦しめていた海の悪魔を倒した英雄】と【天災級の魔神を討伐した英雄】だ。仮にテイトが戻って来てくれたとして俺達がレベルを上げても、国は勇者を選ぶとしたら間違いなくテイトに傾くだろうな。」
 「トールには、勇者の認定があったが英雄の称号は無かったからな。」
 「災害級の討伐はしているのにね。」

 トール達が討伐した災害級の相手とは、ナーゴンという数千匹の群れで行動する虫の魔物だった。
 蟲の魔物1匹自体は大した強さが無いが、群れで襲ってくる為に災害級認定されていたのだった。
 物凄く食欲が旺盛で、畑の作物はおろか家や家畜、はたまたは人まで襲い掛かるという厄介な虫だった

 *イナゴだと思って下さい。

 テイトが2つの薬草や毒草で対抗策の薬品を作った。
 1つは虫寄せの薬品で、もう1つは殺虫剤だった。
 本来ならテイトの手柄になる筈だったのだが、トールはさも自分が活躍して退けたと国に報告をしていた。
 そのお陰でトールは国から認められて勇者に認定されたのだった。
 トール曰く…パーティーの活躍は俺の活躍という性格だった為に、それを信じた国はトールを勇者として認めたのだった。
 更に、一番貢献していたテイトの名前は一切出さずに、テイト以外の仲間のサポートのお陰だと話をして、テイトは日の目を見ずに仲間が脚光を浴びたのだった。
 今思うとこんな奴が良く勇者に認定されたのも驚きだが、それを見抜けない国もロクな国ではないのだろう。
 
 「それにしても、今テイトがいる場所が…バルーデンの街か。」
 「王都から乗合馬車でバルーデンに向かうとしても、通るわよね…私達の故郷のハーネスト村を。」
 「俺が勇者になってから、観光名所になったらしいからな。」
 「通るどころか、停泊しますわよ。私達があの村で素性がバレたら…?」
 「言うな、恐ろしい事しか待っていない。」

 4人はそれぞれ意見を出し合って考えた結果…
 1.ハーネスト村に入る前に村には入らずに野営をする。
 2.宿ではフードを被ったままで、一切の接触を断つ。

 「1に関しては…多分怪しまれるだろうな。他に街では泊まれるのに、ハーネスト村だけは避けるって…」
 「乗合馬車の料金に、宿泊料金も含まれているからね。キャンセルは出来ないし…」
 「かといって、ハーネスト村から他の乗合馬車は出ていないだろうしな。」
 「それに問題は2だ!テイトの両親から素性を隠すのは、まず不可能に近いぞ!」
 「冒険の心得を教えて貰った師匠達だからな。フードで顔を隠して宿に居たら、絶対に怪しまれるだろうし。」
 「酒で酔っぱらった冒険者を押さえ付けたらしいからな。勇者時代のレベルならともかく、今の俺達では絶対に歯が立たん!」
 「それにテイトが故郷に帰ったという事は、私達がテイトを追い出した事も話されているだろうし、師匠2人ならまだ両親の方が躱しやすいからな。」

 テイトの両親は元冒険者で、一時期はSランクパーティーに所属していたという猛者だったという話だ。
 逆らった所でまず勝ち目が無いどころか、勇者時代のあのレベルでも無理だろう。

 「もう小細工はしないで謝罪するか。」
 「それが現実的だろう。非があるのはこっちだからな。」
 「そしてその後に、バルーデンを目指す訳なのだが…?」
 「問題はテイト達がバルーデンに行ってから会えるかどうかだな。」
 「明確な目的地が解らないと、バルーデンで足止めを喰うからな。」

 王都とマクファーレン港と最南端のベルファレース港からでも他国に渡れる方法がある。
 王都とマクファーレン港を素通りしたという事は、ベルファレース港から他国に渡る事になるのだが、テイトの目的がイマイチ解っていない4人には目的地の先読みが出来なかった。
 そして4人は、王都を出発してバルーデンの街に行く乗合馬車に乗り込んだ。
 
 第二章の序章でテイトと会う事になっているので、会えない事は無いのだが…?
 トール達とテイトは、一体どこで出会うのだろうか? 

 それにしても、師匠達には謝罪をするという考えがあるのに、テイトには思い付かないって一体⁉︎
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