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第二章

第十一話 ブレイド…キレる!

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 僕とブレイドはあけぼの食堂に戻って来ると、そこにはミレイ達4人とホーンコッツらしき奴とゴブリンとゴロツキ2人がミレイとルーナリアを人質に取っていた。

 「今…俺の事をみて、ゴブリンと思わなかったか?」
 「ゴブリン醜悪が嫌なら、オーク醜豚顔の方が良いか?」
 「どっちも変わんねぇじゃねぇか‼」
 「そかそか…で、何故ゴブリンが街の中にいる?良く街の中に入れたな?」
 「貴様の変な魔法の所為でこの顔になったんだよ‼」
 「…という事はお前は、ポンコツか?」
 「フォンクオーツだ‼」

 従兄弟同士のポンコツが手を組んだのか。
 
 「それで、何となく予想は出来るけど…何故ルーナリアまで捕まっているんだ?」
 「ミレイが捕まってから、武器を捨てないとミレイを殺すと脅されて…」
 「それで武器を手放したのか。おい、そこのゴロツキ!先程お前達のアジトは破壊したので、その子爵の命令を聞く必要はないぞ。さっさと2人を離せ‼」
 「お前達、ハッタリだ!それにこのミレイはこれから俺の屋敷で可愛がるのだから…」
 「お前の屋敷ももう無いぞ!先程潰して来たし。」
 「それもハッタリだろ?」
 「いや、お前の親父もマンホールの中に放り込んで来た。死にたくなければ2人を離せ!おい、そこのポンコツゴブリン、ガルーダを倒した俺が嘘を言うと思ったか?」
  
 ホーンコッツはフォンクオーツを見て確認をすると、フォンクオーツは頷いてみせた。
 だが…?

 「仮にその話が本当であっても、此方に人質がいる限りお前達は手を出せないだろう!」
 「テイト様、ブレイド様、私は構いませんのでこの人達を…」
 「うるせぇ‼」

 ポンコツゴブリンのフォンクオーツは、ルーナリアを力一杯に平手打ちをした。
 ルーナリアは口の中を切ったらしく、血を流していた。
 それを見たブレイドは、雄叫びを上げたのだった。
 そしてブレイドはポンコツゴブリンのフォンクオーツに殴り掛かって行き、顔の原型を潰す様に殴り倒した。
 
 「お…おい、ブレイド…殺すなよ。」
 「あぁ⁉コイツを生半可に生かしておいたのは間違いだったんだよ‼あの時に殺しておけば良かったんだ‼」
 「あぁ…ブレイドの奴、マジギレしているな。おい、ゴロツキ…さっさと2人を離さないと、次はお前等を標的にするぞ‼」
 
 ゴロツキは、ポンコツゴブリンのフォンクオーツが見るも無残な肉の塊になりつつある姿を見て、恐ろしくなって2人を手放して逃げ去って行った。
 ダーネリアはルーナリアとミレイに駆け寄っていた。

 「ちっ…役に立たない奴め!だがな、俺様に楯突いたらどうなるかどうなるか解っているのか⁉」
 「お前こそ、このままだとブレイドに殺されるぞ。解っているのか?」
 「平民が!身の程を知れよ‼俺様は子爵家の…」
 「だからその子爵家がもう無いんだよ。だから、お前ももう子爵令息ではなくなっているんだよ。」

 ブレイドを見ると…ポンコツゴブリンのフォンクオーツが完全に痙攣すらしない程い動いていなかった。
 そしてブレイドは、ホーンコッツの方に向くと叫んだ。

 「よくも…俺の愛しいルーナリアを怪我させてくれたな‼テメェは、フォンクオーツよりも酷い目に遭わせてやるよ‼」
 「ブレイド、落ち着けって‼」

 本来は僕が切れた時にブレイドがストッパーの役目をする筈なのだが、それが立場が逆になった。
 ブレイドはタンクという役割の為に、常に冷静沈着という感じだが…キレるとここまで厄介な奴だという事を改めて知ったのだった。
 
 「お前もさっさと謝るとかした方が良いぞ!」
 「何故俺様が謝らないといけないんだ?俺様は子爵…」
 「こいつを開放するぞ!良いのか?」
 「アイツを殺す!絶対に殺す!殺す!殺す!殺す‼」
 「ブレイドは怒りのあまりに、言語がおかしくなっているな‼」

 さすがに、このままブレイドを開放したら食堂内で殺すかもしれないから…何処か良い場所を思い出す。
 すると、このホーンコッツが絶望する場所で好きなようにさせてやろうと思って、ブレイドを鎖魔法で拘束してから、ホーンコッツとフォンクオーツの首根っこを掴んでから食堂の外に出た。
 そしてブレイドを拘束している魔法を解除すると、子爵家跡地に向かって走りだした。

 「よしよし、ブレイドも着いて来ているな!」

 僕は全速力で子爵家跡地を目指して行った。
 そして子爵家があった場所に着くと、フォンクオーツとホーンコッツを放り投げた。

 「これで分かったろ?ここがお前の子爵家の屋敷があった場所だ。」
 「そ…そんな!」

 僕が破壊したのは邸そのもので、周囲の外壁はそのまま残っていた。
 ホーンコッツは、周囲を見渡しながらそこにあった屋敷が見当たらなくて焦りまくっていた。

 「さて、いつまで待っても謝罪がないので…これからは処刑の時間だ!」
 「は?」

 僕は親指で指さすと、そこには怒り狂ったブレイドが立っていた。
 ブレイドはホーンコッツに向かって、一歩一歩踏みしめながら近付いていた。
 ホーンコッツは青い顔をしながら叫んだ。

 「俺が悪かった!もう二度とあそこには手を出さない‼」
 「残念だが、少し遅かったな。あの時離せと言った際に離していれば…ってもう遅いか。」

 僕はホーンコッツから離れると、ブレイドが向かって行ってからホーンコッツを声を上げる暇を与えずにボコボコの半殺し状態にした。
 そしてしばらくしてから、ブレイドは少しずつ冷静を取り戻しつつあると…ホーンコッツとフォンクオーツをマンホールの中に落とし入れた。
 バルーデンの街の下水道には多くの魔物が生息している。
 スライムやネズミ、そしてゾンビなども徘徊しているという。
 そのゾンビの大半は、ホーンコッツがミレイの様に女を無理やり連れて来てから楽しんだ後に飽きると、マンホールに落としていたという。
 なので、下水道にいるゾンビの発生の原因を作ったのは、ホーンコッツという話なので丁度良い罰になるだろう。
 マンホールの蓋を開けた状態で耳を澄ますと、そこの方からホーンコッツの声が聞こえた。

 「お…お前は、うちのメイドだった女!それに、商人の娘と…やめろ…やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 そこの方で肉を引き千切られる音が聞こえた。
 フォンクオーツの声は聞こえなかったが、両足や両腕を折られた状態では逃げる事は出来ないだろう。
 悪党には丁度良い末路だった。

 「これで終わったな…なぁ、ブレイド。」
 「あ…あぁ、そうだな。」
 「では、戻るとするか。」
 
 僕とブレイドは食堂に戻ると、ルーナリアはブレイドの胸に飛び込んで来た。
 ブレイドは訳が分からない状態で困った様な顔を僕に向けて来た。

 「ルーナリア…一体どうした⁉」
 「あ、そういえば…ブレイドはさっきルーナリアに対して盛大な告白をしたっけ?」
 「お…俺がか⁉」
 「それに一人称も変わっているな…フォンクオーツに殴られたルーナリアを見て、俺の愛しいルーナリアに…と。」
 「あ…あ……あぁっ………!」
 「どさくさに紛れてやるなぁ、色男!」
 
 ブレイドは顔が真っ赤になっていた。
 そしてルーナリアは顔を上げてから話し掛けた。

 「ブレイド様…」
 「ルーナリア、頬は大丈夫だったか?」
 「はい、少し口が切れましたが、今は治っています。」
 
 ルーナリアは目を閉じてみせた。
 ブレイドはルーナリアの唇に指で触れて、唇をなぞってみせた。
 ここまでは良いのだが、ブレイドはこれ以上をどうするのか解らずにこっちを見た。
 僕とダーネリアは、溜息を吐いてからダーネリアを引き寄せて唇にキスをするフリをした。
 さすがにここまですれば、幾ら奥手で不器用なブレイドも気付くだろう。
 ブレイドはそっとルーナリアの顔に近付いて行くが、今一歩が踏み出せなかった。
 ブレイドは僕の顔を見たので、ルーナリアを指さした。
 するとルーナリアは涙を流していた。
 その涙を見て覚悟を決めたブレイドは、ルーナリアの唇に唇を重ねたのだった。
 その瞬間を、僕は懐から取り出した魔道具で撮影した。

 「はぁ、やっとしたか!」
 「おめでとうお姉ちゃん!」
 「白は…いえ、ルーナリアは良い人を見付けたのね!」
 「おい、テイト…いまその魔道具で何をした?」
 「別に…何でもないよ。」

 ブレイドはそう言うと、そのまま顔が真っ赤の状態で後ろにひっくり返った。
 ブレイドはもう限界だったみたいだった。
 そしてルーナリアも、顔を真っ赤にして座り込んでいた。
 ルーナリアも結構一杯一杯だったみたいだったが、何処か嬉しそうだった。

 「さてと、この店だけど…ここでの営業は残念だけどもう無理だな。」
 「はい、ここまで建物や機材を破壊されていると営業は無理ですね。父の包丁は隠してありましたので無事ですが、その他のものが…」
 「ではどうするんだ?」
 「父が死んでから私も父と並ぶ程の腕を持ち、父の客と私の客は確保しました。この街での営業再開は諦めて、故郷のハルーラ村で食堂を営みたいと思います。バルーデンの街のからハルーラ村は割と近いので。」
 「なら、引っ越しを手伝おう。僕等もハルーラ村に行く用事があるし、まだ報酬を貰ってないからな。」
 「ですが、色々機材とかを調達しないといけませんし…」
 「でも、ハルーラにある君の家は無事なんだろ?」
 「はい、あそこは持ち家なので、少し後片付けをしないといけませんが。」
 「なら、調理器具や皿などはこちらで用意しよう。必要なら鍋なども作れるからね。」
 「宜しいのですか?そんなに見ず知らずの人にそこまで…」
 「僕は、ハルーラ食材の野菜煮込みシチューが食べたいんだ!その為なら、幾らでも出資をしよう。これは投資だからね。」

 ミレイとラキは、僕に対してお辞儀をしていた。
 後は、2階にあるミレイの生活用品を収納魔法に入れてから、宿に行って部屋に帰った。
 僕達の部屋はベッドが4つあるが、どれもダブルベッドなので2人位増えても問題は無かった。
 そのベッドに気絶したブレイドを寝かせてから、ミレイとダーネリアとルーナリアには先に入浴をさせた。
 今日は色々あって疲れた。
 この街に滞在する時間はまだあるので、明日こそはゆっくりしようと決めていた。

 ~~~~~一方、下水道では?~~~~~

 ポンコツゴブリンのフォンクオーツがゾンビにホーンコッツが喰われて行くのを見ていた。
 次は自分の番だと思い、喰われたくない一心で逃げようとするが、折れた腕や足では上手く動けなかった。

 「ホーンコッツ、お前の部屋で拝借した魔道具を使わせて貰うぞ!」

 ポンコツゴブリンのフォンクオーツは、ホーンコッツの部屋から盗んだ筒形の魔道具を取り出すと、先端の部分を取り外すと針になっていた。
 その針を首筋に注射してから薬液を体内に流し込むと、両腕と両足が完全に回復した…が?
 その後に体が盛り上がって行き、尻尾が生えてから腕には巨大な爪が生えて、頭からは角が生えていた。
 何の薬品かは分からなかったが、とにかく凄まじい力を得たのだった。

 『この力があれば…奴等に復讐出来る‼』

 フォンクオーツは下水道から上に向かって行く通路を抜けて、マンホールを突き破った。
 そして周囲を見渡すと、街の方に走って行った。
 フォンクオーツの復讐はまだ終わらない。

 次こそが、テイト達とフォンクオーツとの最後の戦いを迎えようとするのだった。
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