特殊スキル持ちの低ランク冒険者の少年は、勇者パーティーから追い出される際に散々罵しった癖に能力が惜しくなって戻れって…頭は大丈夫か?

アノマロカリス

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第二章

第十話 恨み晴らすべし!

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 バルーデンの街から3日ほど馬車で移動した所に、ダーネリアとルーナリアが奴隷商人に売られる前に住んでいたハルーラ村があるという。
 そこでは、ダーネリアとルーナリアとミレイという子達は幼馴染で良く一緒にいたという。
 そしてダーネリアとルーナリアが奴隷商に売られる少し前に、ミレイとその家族がバルーデンの街に移り住んで、そこからハルーラ村で食堂を経営していたので、バルーデンの街でも食堂を開いて始めたという。
 オープンしてから数年は軌道に乗って経営も順調だったらしいが、流行り病で母親が亡くなり、その2年後の約半年前に父親も過労で亡くなった。
 その後は、ミレイとラキが食堂を経営しながら生活をしていたのだが…?
 とある厄介な貴族に目を付けられて、色々嫌がらせを受ける様になったという話だった。
 
 「もう…私はこの街では食堂の経営を諦めて、ハルーラの村に帰りたいと思っていたのですが、貴族が要求して来たのは私で、貴族の元に私が行けば…これ以上の嫌がらせを辞めてやると。」
 「なにそれ、信じられない!」
 「私達が乗り込んで黙らせましょうよ!」
 「いやいや、落ちつけ!ゴロツキのアジトなら壊滅させても構わないが、貴族が絡んでくると話は違って来る。」
 「どうして?ミレイがこんなに辛い思いをしているのに⁉」
 「なぁ、ミレイさん…その貴族って、どんな奴?」
 「子爵家の令息で、名前はホーンコッツと言って…自称ナルシストみたいな感じの人です。」
 「自称ナルシストって…どんな感じだ?」
 「俺のこの美顔は全てを許されるのさ!…っていう人です。」

 僕達は「ん?」という感覚に陥った。
 ついこの間も、それと似た様な話を聞いた気がする。
 僕はブレイドに確認をしようとして振り向くと、ブレイドは頭を押さえていた。

 「ブレイド、何か知っているのか?」
 「いや、アイツ以外にも同じことを言う奴がいるんだな…と思ってな。」
 「名前も似た様な感じだし、あのポンコツの親戚か何かか?」
 「いや…う~ん?」
 「ブレイドが隠していたいみたいだったから聞かなかったけど、ブレイドは貴族出身だろ?」
 「「「!?」」」

 何で驚いた顔しているんだろう?
 ダーネリアとルーナリアも気付いていると思っていたが、もしかして気付いていたのは僕だけか?

 「テイト、いつから気付いていた⁉」
 「ブレイドと行動する様になってから、1週間後くらいには。」
 「自分は…貴族の振る舞いをテイトには見せた事は無いぞ‼」
 「食べる時の姿勢や礼儀作法、たまに感じる品性とかでね。生まれてから長年貴族の習慣は、すぐには消えないものだよ。」
 「はぁ、バレていたのなら仕方がない。そう、自分は元は貴族だ。男爵家の三男で、親も兄妹も自分には関心が無くてな、それで廃嫡されたので冒険者になった。」
 「なるほどな…で、フォンクオーツは?」
 「アイツは子爵家で、ホーンコッツはフォンクオーツの従兄弟だ。」
 「なるほどね。って、ルーナリアどうした?」
 「いえ…」

 さすがにショックだったのかな?
 これで関係がギクシャクしなければ良いが…。

 「さて、子爵家ともなると少し厄介だな。ただ、手下がゴロツキなのが少し妙だが?」
 「安価で雇えるからだろう。上位貴族ともなると関係を持っていると品格を落とすが、下位貴族は気にしない傾向があるからな。使えるモノは何でも使うのが下位貴族のやり方だ。」
 「なるほどね。それで、申し訳ないのだが…僕達は冒険者なので、依頼の報酬の話をしたいと思うのだが?」
 「テイト君、彼女達の境遇を聞いても尚、報酬を求める気?」
 「知り合いだからとか、顔馴染みだとかタダ働きは御免という事さ。ミレイさん、報酬は何を支払える?」
 「冒険者様にし払えられる程の金額は…」
 「いやいや、さすがに金銭は要求しないよ。食堂なんだよね?そこで店自慢の料理1品で手を打とう!」

 先程の話を聞く限りでは、金銭はたかが知れている。
 僕は美味い物が食べられれば、それが原動力になるからね。

 「では、ハルーラ食材の野菜煮込みシチューはどうでしょうか?ミートオークを一緒に煮込んだ店自慢のメニューなのですが…」
 「ハルーラ食材の野菜煮込みシチュー⁉世界グルメ紀行に乗っていた2つ星の料理が…君の食堂だったのか⁉」
 「はい、元は父が考案した料理ですが…」

 まさか…あの料理を口に出来るとは思わなかった。
 その地方に行ったら、絶対に食べてみたい一品だったからだ!
 それを…あのポンコツの所縁の奴の所為で喰えなくなるだと⁉
 子爵家をぶっ潰すか‼

 「十分過ぎる報酬だ!この依頼を引き受けよう‼」
 「あ…ですが、食材が無いんです。ホーンコッツの嫌がらせで、食材の流通を止められていて…」
 「なら、子爵家とゴロツキのアジトの2つをぶっ潰してやる‼」
 「テイト、お前さっきは…貴族に関わるのは厄介とか言っていなかったか?」
 「そんな昔の事は、忘れちまったなぁ!」
 「いや、つい数分前の話なんだが?」
 「ハルーラ食材の野菜煮込みシチューは、この世で絶やしてはいけない料理だ‼その為なら、僕は王国すらも跡形もなく消し飛ばす覚悟だ‼」
 「お前は世界的犯罪者にでもなるつもりか⁉まぁ、ホーンコッツがやり過ぎなのは認めるがな。」
 
 あ、でもこれだけは聞いておかないとな。
 出来の悪い息子の所為で子爵家を潰すのは…?

 「なぁ、ブレイド…ホーンコッツの親の子爵はどういう感じの人間だ?」
 「性格か?息子の事を溺愛していて、息子の不祥事を金で解決させるという事をしている奴だとは聞いている。」
 「なんだ、十分悪党じゃないか!なら、子爵家を潰すどころか、この世から消してしまっても文句は無いだろう。寧ろ今迄の被害者にとっては、泣いて喜ぶだろうしな!」
 「結構物騒な事を言っているが…」
 「子爵家は潰し、ホーンコッツはゴブリンフェイスの刑だ‼」
 「フォンクオーツにやったあれか?まぁ、他でも悪事を働いているだろうから構わないとは思うが…」
 「それと、今迄の迷惑料を全て奴の金庫から押収してきてやる!それ位の物を貰っても罰は当たらないだろう。」
 「いや、十分犯罪行為になると思うが?」

 僕達は、ミレイが経営している「あけぼの食堂」に向かった。
 すると、店は入り口が破られていて、中からゴロツキが嘲笑いながら出て来ると、僕等の方を見て言った。

 「初めから素直にいう事を聞かないからこうなるんだ!これで、店はもう終わりだな‼」
 「な…何て事を!父さんと母さんの思い出の店が…」

 ミレイには、ダーネリアとルーナリアが寄り添っていた。
 僕はゴロツキを容赦なく半殺しにした。
 そして比較的重症ではないゴロツキに話をした。

 「お前等のアジトを教えろ!」
 「こんな事をしてタダで済むと思っているのか?俺達には貴族様が後ろ盾になっているんだぞ‼」
 「お前等のアジトを潰したら、次はその貴族の番だ!後ろ盾を失ったお前達は、今後どういう生活を送って行くんだろうな?」

 僕とブレイドは、ゴロツキのアジトを聞いた場所に赴いた。
 僕1人でも良いと言ったのだが、ブレイドは何故か着いて来た。
 そして街はずれの建物に行くと、そこには多くのゴロツキが出入りをしていた。

 「ここか!奴等のアジトは…」
 「それで、テイトこれからどうするんだ?」
 「決まっているだろ?ぶっ潰す‼」

 僕は体中にオーラを纏ってから、建物の中に入って行った。
 そして目に付くゴロツキを片っ端から半殺しにしてから最上階に行くと、そこには金貨を数えていた親玉がいた。

 「な…何だテメェは⁉」
 「お前等の所為で、ハルーラ食材の野菜煮込みシチューが喰えなくなったんだぞ!その報いを受けさせる!」
 「良いのか?俺達の後ろには貴族が…」
 「ここを潰した後に、その貴族も潰すつもりだ!死にたくなければ、さっさと金庫から金を出せ‼」
 「調子に乗るなよ小僧…俺様が誰か解っているのか⁉」
 「知るかボケェ‼ハルーラ食材の野菜煮込みシチューに比べたら、お前がどこの誰だろうが知った事じゃない‼」

 僕は親分をボッコボコの半殺しにしてから金庫の扉を無理矢理こじ開けて、中の金を全て奪った。
 そして入り口に戻ってから、ゴロツキの前で言った。

 「お前等の仕出かした事を悔やみながら後悔しろ!そして絶望を知れ…ブラックホール‼」

 僕は建物に向かって闇魔法のブラックホールを放つと、ゴロツキのアジトは全て吸い込まれて更地になったのだった。
 ゴロツキの親分とその部下は、何が起きたのかが理解出来ていなかった。
 だが、僕の顔を見るなり恐怖で逃げ出して行ったのだった。
 
 「テイト、そんな魔法もあったんだな?」
 「周囲のものを全て吸い込む魔法だから、使い勝手が悪くてね。ここなら、ゴミ掃除に役立つと思って。」
 「確かにこの規模の建物が全て綺麗さっぱりなくなるのなら、使いどころも考えないとだが…」
 「よし、ブレイド!次は子爵家だが、場所を知っていたら教えてくれ!」
 「本当にやるのか?…って、聞くまでもないか!こっちだが、誰も殺すなよ。」

 僕はブレイドに案内して貰い、子爵家の前に辿り着いた。
 ハルーラ食材の野菜煮込みシチューが食べられなくなった僕の恨みは恐ろしいぞ!
 そして僕は、先程と同じ感じで子爵家に乗り込むと、出迎えた騎士や兵士を片っ端から戦闘不能にさせた。
 先に進んで行くと、この屋敷の当主の子爵がいたので、挨拶代わりに顔が変形するまでぶっ飛ばした。

 「こんな事をして…」
 「黙れ‼お前がどうなると知った事は無い。死にたくなければ全財産を寄越せ‼」
 「くっ…調子に乗るなよ、ワシを怒らせるとお前なんか…」

 僕は剣で子爵の腕を斬り飛ばした。

 「誰が発言を許した?金を払わなければ、次は足を斬りおとす!」
 「貴様は何が目的だ?」
 「貴様の馬鹿息子の所為でな、ハルーラ食材の野菜煮込みシチューが食べれなくなったんだよ!」
 「そんな物の為に…」
 「そんな物だと⁉お前、僕がどんなに楽しみにしていたと思っているんだ‼︎」

 僕は子爵に対して腹を蹴りまくった。
 そして顔面を踏み付けると、子爵は言った。

 「わ…悪かった!それで、幾ら欲しいんだ?」
 「全財産だ!」
 「へ?」
 「全財産だよ!早くしろ…」

 僕は子爵から金庫室の場所を聞くと、全ての金品を空間魔法に収納した。
 そして屋敷を出てから、先程と同じ絶望を味わせる為に子爵に屋敷を見せながら…?

 「良く見ておけ!お前の悪行が身を亡ぼす瞬間を!極大消滅豪炎魔法…タワーインフェルノ‼」
 
 子爵家全体が炎に包まれると、上空に向かって炎が柱となって伸びて行った。
 そして建物が跡形もなく消滅したのだった。

 「わ…ワシの屋敷がぁぁぁぁぁぁ!!!」
 「あとはお前の処遇だが…?」
 「こんな事をしてタダで済むと…」
 「そうだな、ゴミはゴミらしく、奴等に任せよう!」

 僕はマンホールのふたを開けてから子爵を放り込んだ。
 マンホールには多くのウェアラットやスライム等がいる。
 その他にも…冒険者なら対処出来るが、ブクブク太った一般人では出口に出るまでには確実に殺される。
 それが解った上で、下水道に落としたのだった。

 「よし、これでゴミ掃除は終わったと思いたいが…ホーンコッツという奴がいなかったな?」
 「確かに見てないがテイト、自分は誰も殺すなと言わなかったか?」
 「ん?僕は誰も殺してないぞ?半殺しにはしたが…」
 「だって子爵の事を。」
 「子爵はマンホールから落とす迄は生きていたからな。セーフだ!」
 「いや、どうみてもアウトだよ‼どうするんだ、これ?」
 「ハルーラ食材の野菜煮込みシチューが食べられないかもしれない事に比べたら大した事ではない。後は、ホーンコッツを探すぞ!」

 僕達はあけぼの食堂に戻るのだった。
 そこでホーンコッツは見付かったのだが?
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