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第二章
第五話 フォンクオーツという男
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「さて、どうしますかねぇ?」
僕は麓の場所にある風の壁を見上げながら言った。
壁が何mあるのかが見えない位に分厚い壁の様だった。
「魔法を放って敗れるか試しますか?」
「いや、ガルーダのこの風の壁には索敵魔法の様な物を施されている筈だ。これに接触すると、ガルーダに伝わるようになっていると思う。」
「なら、ガルーダの機嫌が直る迄は足止めですか?」
「ここから脱出方法は2つある。」
僕がそう言うと、3人は聞いて来た。
「1つは転移魔法でこの山から脱出するという事なんだけど、行ける場所がハーネスト村になるので、またあの場所から移動する事になる。」
「あの村に転移ですか?他には何があるのですか?」
「地面に穴を掘って風の壁の下を通って向こう側に抜けるという方法だ!」
この場合、地面の深さは2m程度で問題はないが、問題は距離だ。
この風の壁が何mあるのかが解らない。
この場所の地盤がどれ程硬いかにもよるが…?
仮に20m位を掘り進んで行くとしいたら、5日から1週間は見ておいた方が良いだろう。
「後は倒すか…ですか?」
「倒せれば…の話だけどな。奴のレベルを鑑定はしていないが、恐らく進化した事により僕のレベルに近いレベルになっていると思う。」
「レベル200近くあるという訳か。」
「加えてあの厄介な攻撃だ!上手く地面に落とせれば勝機もあるのだろうけど。」
「あのガルーダというのは魔獣なのですか?」
「グリフォンの時は魔獣だっただろう。だが、進化後のガルーダは…魔獣というよりは上位精霊か、もしくは魔神に近い強さとも言えるかもな。」
山の周囲を風の壁で囲めるほどの力があるものなら精霊以上の存在だろう。
仮に魔神だとして、どうやって対処したら良い物だろうか?
「誰かこっちに走って来るよ!」
「誰かって、この山にいるのは僕達かアイツ等しかいないだろ。此方に向かってくるという事は、アイツ等はまだ生きていたのか。」
フォンクオーツ達は、僕達の姿を見ると上空に爆発魔法を打ち上げた。
まさかとは思うが…それがガルーダに知らせる合図だったのだった。
「お前等は一体何がしてぇんだよ‼」
「あの魔獣が言ったんだ、お前達を探して合図をすれば生かしておいてやると!」
「お前…馬鹿か?その相手が見つかったら、お前達を生かしておく理由がなくなるだろ!」
「だがあの魔獣はそう言った!」
「おめでたい頭をしているな!魔物相手に交渉が通じる訳がないだろ‼」
「言い争いはそれ位にしろ!来たぞ‼」
ガルーダは先程の合図で此方に来た。
さすがにこの場所だと、逃げられる場所はない。
転移魔法も一瞬で出来る訳ではないので、発動までの時間を考えると相手は待ってはくれないだろう。
「さぁ、お目当ての奴等は探したぞ‼」
「ヨクヤッタ…」
「なら俺達は助かるよな?」
「キサマハ…ワガコヲコロシタモノタチダ!コヤツラヲシマツシタラ、ツギハオマエタチノバンダ‼」
「な…何だと⁉」
ブレイドの言った通り、やっぱりコイツは馬鹿だったか。
魔物や魔獣に交渉事は、対価を用意しないと確立しない事を知らないのか?
…と言っている場合ではないな!
僕達は武器を構えた。
戦法はまだ思い付いてはいない…。
「お前等…アイツと戦う気か?勝てると思っているのか⁉」
「さぁな、このままでは殺されるのがオチだからな。倒せるかは解らんが、やってみるだけだ‼」
「倒せるのなら倒してくれ‼」
「倒したら、次はお前の番だからな!罠に嵌めてアイツを此方に呼び寄せたんだ、覚悟は出来ているんだろ?」
僕がそういうと、フォンクオーツ達は山頂に向かって走りだして行った。
そしてしばらく上った場所で止まってから此方を窺っていた。
ガルーダは敢えてフォンクオーツ達を見逃していた。
ガルーダの速度なら、僕達を倒した後でも十分に追い付くだろうからだ。
「アイツ…マジで後でシバく‼」
「生きていたら、自分も付き合うぞ‼」
「ダーネリアとルーナリアは、先程のバフのフルコースを頼む!」
「「はい!」」
ダーネリアとルーナリアは、再びバフを発動した。
これで少しは有利になると良いが。
ダーネリアは火球魔法を放ったが、ガルーダに届く前に風の障壁で弾き飛ばされた。
僕はそれを見て、有効な属性魔法を探した。
「あの高さの距離だと、生半可な魔法では届かないか。奴の頭上から魔法を落とせれば問題は無いのだろうけど。」
「なら極大雷魔法を試してみようと思うけど、テイト君…良いかな?」
「このままでは打つ手が無いからやってくれ!」
ダーネリアは詠唱を始めた。
ルーナリアはダーネリアの前に立つと、守護結界を発動した。
僕等も何とか攻撃を仕掛けたい所だが、あの距離では武器が届かなかった。
するとガルーダは腕を払ってくると、そこからソニックブームの刃が此方に向かって来た。
僕は刀身にオーラを纏わせてからソニックブームを上空に向かって放つと、ガルーダのソニックブームを相殺した。
ガルーダは再び両腕を払うと、此方に2つのソニックブームの刃が飛んできた。
「ブレイド、出来るか?」
「すまん、自分には出来ん!今度教えてくれ‼」
「わかった、これは僕が防ぐ!」
僕は空間魔法からもう1本の剣を取り出すと、左右の剣の刀身にオーラを纏わせてから、ガルーダのソニックブームを受けた。
僕のソニックブームは連射が出来ない。
なのでこうして受け止めているのだが、中々弾けずにいた。
「頼むから辞めてくれよ…」
僕の祈りは通じずに、ガルーダはまた腕を払ってソニックブームを放って来た。
完全に遊ばれていたのだった。
「テイト君、準備完了よ!」
「特大のを放て‼」
「天光満つる処に我はあり、黄泉の門を開く処に汝あり、出でよ雷神の一撃…インデグネィション‼」
ガルーダの遥か頭上で黒雲が発生すると、巨大な雷がガルーダの頭から直撃して地面まで貫いた。
ガルーダは凄まじい叫び声を発すると、そのまま地面に墜落し…そうになった所を羽ばたかせて回避しようとしていたが、同時にルーナリアの数百のホーリーランスが翼や体を貫いて行った。
すると、ダーネリアとルーナリアは地面に座り込んだ。
「2人はそこで休んでいろ!ブレイドやるぞ‼」
「あぁ!」
ガルーダは地面に激突したと同時に、僕は二刀でガルーダの翼を滅多切りにしてから離脱すると、ブレイドは大きく振り被ってからガルーダの首に向かって剣を振り下ろした。
だが、ガルーダの首は簡単には落ちなかった。
僕はブレイドの肩に足を掛けてから飛び上がり、そのままブレイドの剣に僕の剣を合わして力を込めた。
すると、2人の力でガルーダの首を切断して倒したのだった。
「これで…終わりだよな?」
「あぁ、さすがに首を落とされたら生きてはいないだろう。」
僕とブレイドは拳を合わせた。
そしてバフの効果が切れて体に負荷が掛かったのか、そのまま座り込んだのだった。
「ガルーダが山頂でやったあの技が出なくて良かった。」
「アレをやられていたら、この場所では対処出来なかっただろうな。」
「恐らくだが、アレはガルーダに取って大技だったんだろう。それと、僕達があの時に逃げた事で、あそこまでの大技を出す必要が無いと思ったんだろう。」
「…という事は、奴の油断が自分達の勝利に繋がったという事か?」
正直言って、ガルーダが驕っていたお陰で助かった。
僕は何ともなかったが、3人はレベルアップで動けずにいた。
「ブレイド、レベルは幾つになった?」
「自分は…レベル126だ!」
「「私達は117です!」」
「という事は、【獲得経験値数〇倍】の効果は、数十倍が発動したのか。」
僕はそう言い終わると同時に、ガルーダの死体を空間魔法に収納した。
かなりの巨体だったが、ストレージなので問題なく入ったのだった。
「さて、立ち上がれる様になったら先に進むよ。風の壁も消え失せたしね。」
「フォンクオーツ達は良いのか?」
「アイツ等はもう逃げただろう。余程の馬鹿じゃなければ姿を現したりは…」
「いやいや、お見事です!まさか…あの災害級クラスの化け物を討伐出来るとは‼」
どうやら本物の馬鹿だったみたいだな。
フォンクオーツは拍手をしながら此方に向かって来たのだった。
「一体何をしに…」
「最後のトドメは君達2人だったみたいですが、魔法の複数のバフや極大魔法を使うなんて…貴女達2人の力が大きいみたいですね!」
「「「「はぁ?」」」」
「そこで俺は考えた!そこの美しいお嬢さん方、俺のパーティーに入らないかい?」
「「「「・・・・・・・・・」」」」
やっぱ馬鹿なんだな、しかも大か神が付く位の馬鹿だな。
今迄の事や今回の事を含めて、何故彼女達が頷くと思うのだろうか?
それに…。
「お前、冒険者ギルドの規則を読んだ事があるのか?ソロではない限り、パーティーからの勧誘は禁止されていれるんだぞ!」
「悪いが君とは話していないのだよ。俺は彼女達に話してしているんだ‼」
「お前馬鹿だろ?えーと…名前なんだっけか?あ、ポンコツだっけか?」
「誰がポンコツだ!俺の名前はフォンクオーツだ‼」
「はいはい分かったよ、ポンコツ君。それはそうと、お前のやった行為を考えて、彼女達が頷くと思っているのか?」
「フォンクオーツだと言っているだろ‼ふっ…まぁ良い!俺はな、全てが許されるんだよ!」
「はぁ?許される訳ねぇだろ?頭が沸いているのか…いや、ポンコツ思考だったな。」
本当にこのポンコツは頭大丈夫か?
ガルーダを倒したら、次はお前の番だと言われたのを忘れたのか?
「俺はこの通りに顔が良いのさ!その顔の良さに、女の子達は僕の全てを許すんだよ!おっと、僻まないでくれよ…君は顔が悪いからってね!」
「ブレイド、コイツ…マジで殺して良いか?」
「やっても構わない。というか、自分も加わっても良いか?」
僕とブレイドがフォンクオーツの元に向かって行くと、奴のパーティーメンバーが前に立ち塞がった。
そしてフォンクオーツは、ダーネリアとルーナリアの前で跪いてから手を差し伸べて言った。
「あんな見てくれが悪い奴よりも、俺の方がマシだと思わないかい?」
「はぁ?何を言ってんのよ?貴方なんか、トロールよりはマシだけど、オークと同等じゃないのよ!」
「そうね、ゴブリンよりはマシな程度よね!」
うちの女子達は容赦ねぇな!
少しはスッとした。
「やはり…見てくれの悪いパーティーの女は思考もおかしいみたいだ!」
「それはそうと、お前はいつまで好き勝手な事をほざいていやがる?」
「そうだな、フォンクオーツ…いや、ポンコツだったな!」
「スウォードお前も…」
「自分がどうした?」
僕とブレイドは、フォンクオーツの元に向かおうとするが…奴のパーティーメンバーの女達に邪魔されていた。
僕は彼女達の体に触れてから、闇魔法のライフドレインとマジックアスピルを放った。
それを受けた彼女達は、膝から砕けて地面に寝そべっていた。
「彼女達に何をした⁉」
「HPとMPを限界まで吸わせて貰った!先の戦闘で結構喰ったからな。」
「まぁ、自分達の事をモンパレしようとしたくらいだ、命を取らなかった分だけありがたいと思え!」
「それとお前だが…余程顔に自信があるようだな?」
「そうだな、君達2人に比べたらな!」
「そうか、なら整形してやるよ‼」
僕はフォンクオーツの顔面を力の限り殴り飛ばした。
そして地面に倒れたフォンクオーツをブレイドに押さえて貰いながら、何度も何度も顔を殴っていた。
殴る度に骨が折れる音がして、顔の形が変わって行ったのだった。
「そ、そんな事をしても無駄だよ。回復魔法で全て元通りさ!」
「あぁ、顔全体に掛ければな…だが、こうして部分部分を回復魔法で骨を繋げると…」
回復魔法は骨折すらも治せる。
だけど、一度回復魔法で変な骨のくっつけた状態にすると、それ以降は体がその状態を記憶して全体に回復魔法を掛けても変な骨の状態になるというもので二度と戻る事は無いのだった。
つまり、どういう事かというと…?
フォンクオーツの顔面を骨折させてから、本来の場所の骨をくっつけずに別な場所の骨をくっつけて行った結果…顔が変形した状態になるというものだった。
「ほら鏡だ!自分の顔を鏡で見てみろ!」
「な…なんだこれは⁉」
確かにイケメンだったフォンクオーツの顔は醜く変形をしていたのだった。
それはもう、ゴブリンと似た様な顔付に…。
「お前は普通に殺すより、その顔で生きていく方が地獄だろう!」
「確かに、その顔では女は寄り付かないわな!」
「た…頼む、回復魔法を掛けて戻してくれ‼」
僕はフォンクオーツに回復魔法を掛けてやった。
だが、顔は元に戻らずに変形した顔のままだった。
フォンクオーツは何度も鏡を確認していたが、自分の顔だとは信じられなくてパーティーメンバーの女達を起こし始めた。
すると、目を覚ました女達は…フォンクオーツの顔を見ると悲鳴を上げて逃げ出して行ったのだった。
それを追うフォンクオーツの泣き叫ぶ姿を見て、僕達は大爆笑したのだった。
「確かにこれなら、ただ殺すより余程効果的だな!」
「恐らくあの状態では、家に帰った所で追い出されるだろうしな!」
「それにしても、回復魔法にあんな使い方があるんですね?」
「以前に闇医者から話を聞いた事があってね。犯罪者が逃亡する為に顔の形を変えてでも生きたい者がやる方法なんだと。僕もやるのは初めてだったけど、まさか本当に上手く行くとは思わなかった!」
「あれじゃあ本当にゴブリンと同等な顔になったわね!」
僕達はしばらくしてから山を下りた。
そして適当な安全地帯でキャンプをすると、翌日にテオドール温泉村を目指して歩き出した。
「そういえば、昨日は色々あって忘れていたけど?テイト君、キスは?」
「あ、そうですよ!テイト様、キスをお願いします!」
僕は2人の後ろを指差して意識を逸らしてから無言で逃げ出すと、2人は後を追って来た。
僕は冗談で言ったつもりだったのだが、彼女達は本気にしていたみたいだった。
そして彼女達に追い付かれた僕の取った行動は…?
それはまた別のお話。
僕は麓の場所にある風の壁を見上げながら言った。
壁が何mあるのかが見えない位に分厚い壁の様だった。
「魔法を放って敗れるか試しますか?」
「いや、ガルーダのこの風の壁には索敵魔法の様な物を施されている筈だ。これに接触すると、ガルーダに伝わるようになっていると思う。」
「なら、ガルーダの機嫌が直る迄は足止めですか?」
「ここから脱出方法は2つある。」
僕がそう言うと、3人は聞いて来た。
「1つは転移魔法でこの山から脱出するという事なんだけど、行ける場所がハーネスト村になるので、またあの場所から移動する事になる。」
「あの村に転移ですか?他には何があるのですか?」
「地面に穴を掘って風の壁の下を通って向こう側に抜けるという方法だ!」
この場合、地面の深さは2m程度で問題はないが、問題は距離だ。
この風の壁が何mあるのかが解らない。
この場所の地盤がどれ程硬いかにもよるが…?
仮に20m位を掘り進んで行くとしいたら、5日から1週間は見ておいた方が良いだろう。
「後は倒すか…ですか?」
「倒せれば…の話だけどな。奴のレベルを鑑定はしていないが、恐らく進化した事により僕のレベルに近いレベルになっていると思う。」
「レベル200近くあるという訳か。」
「加えてあの厄介な攻撃だ!上手く地面に落とせれば勝機もあるのだろうけど。」
「あのガルーダというのは魔獣なのですか?」
「グリフォンの時は魔獣だっただろう。だが、進化後のガルーダは…魔獣というよりは上位精霊か、もしくは魔神に近い強さとも言えるかもな。」
山の周囲を風の壁で囲めるほどの力があるものなら精霊以上の存在だろう。
仮に魔神だとして、どうやって対処したら良い物だろうか?
「誰かこっちに走って来るよ!」
「誰かって、この山にいるのは僕達かアイツ等しかいないだろ。此方に向かってくるという事は、アイツ等はまだ生きていたのか。」
フォンクオーツ達は、僕達の姿を見ると上空に爆発魔法を打ち上げた。
まさかとは思うが…それがガルーダに知らせる合図だったのだった。
「お前等は一体何がしてぇんだよ‼」
「あの魔獣が言ったんだ、お前達を探して合図をすれば生かしておいてやると!」
「お前…馬鹿か?その相手が見つかったら、お前達を生かしておく理由がなくなるだろ!」
「だがあの魔獣はそう言った!」
「おめでたい頭をしているな!魔物相手に交渉が通じる訳がないだろ‼」
「言い争いはそれ位にしろ!来たぞ‼」
ガルーダは先程の合図で此方に来た。
さすがにこの場所だと、逃げられる場所はない。
転移魔法も一瞬で出来る訳ではないので、発動までの時間を考えると相手は待ってはくれないだろう。
「さぁ、お目当ての奴等は探したぞ‼」
「ヨクヤッタ…」
「なら俺達は助かるよな?」
「キサマハ…ワガコヲコロシタモノタチダ!コヤツラヲシマツシタラ、ツギハオマエタチノバンダ‼」
「な…何だと⁉」
ブレイドの言った通り、やっぱりコイツは馬鹿だったか。
魔物や魔獣に交渉事は、対価を用意しないと確立しない事を知らないのか?
…と言っている場合ではないな!
僕達は武器を構えた。
戦法はまだ思い付いてはいない…。
「お前等…アイツと戦う気か?勝てると思っているのか⁉」
「さぁな、このままでは殺されるのがオチだからな。倒せるかは解らんが、やってみるだけだ‼」
「倒せるのなら倒してくれ‼」
「倒したら、次はお前の番だからな!罠に嵌めてアイツを此方に呼び寄せたんだ、覚悟は出来ているんだろ?」
僕がそういうと、フォンクオーツ達は山頂に向かって走りだして行った。
そしてしばらく上った場所で止まってから此方を窺っていた。
ガルーダは敢えてフォンクオーツ達を見逃していた。
ガルーダの速度なら、僕達を倒した後でも十分に追い付くだろうからだ。
「アイツ…マジで後でシバく‼」
「生きていたら、自分も付き合うぞ‼」
「ダーネリアとルーナリアは、先程のバフのフルコースを頼む!」
「「はい!」」
ダーネリアとルーナリアは、再びバフを発動した。
これで少しは有利になると良いが。
ダーネリアは火球魔法を放ったが、ガルーダに届く前に風の障壁で弾き飛ばされた。
僕はそれを見て、有効な属性魔法を探した。
「あの高さの距離だと、生半可な魔法では届かないか。奴の頭上から魔法を落とせれば問題は無いのだろうけど。」
「なら極大雷魔法を試してみようと思うけど、テイト君…良いかな?」
「このままでは打つ手が無いからやってくれ!」
ダーネリアは詠唱を始めた。
ルーナリアはダーネリアの前に立つと、守護結界を発動した。
僕等も何とか攻撃を仕掛けたい所だが、あの距離では武器が届かなかった。
するとガルーダは腕を払ってくると、そこからソニックブームの刃が此方に向かって来た。
僕は刀身にオーラを纏わせてからソニックブームを上空に向かって放つと、ガルーダのソニックブームを相殺した。
ガルーダは再び両腕を払うと、此方に2つのソニックブームの刃が飛んできた。
「ブレイド、出来るか?」
「すまん、自分には出来ん!今度教えてくれ‼」
「わかった、これは僕が防ぐ!」
僕は空間魔法からもう1本の剣を取り出すと、左右の剣の刀身にオーラを纏わせてから、ガルーダのソニックブームを受けた。
僕のソニックブームは連射が出来ない。
なのでこうして受け止めているのだが、中々弾けずにいた。
「頼むから辞めてくれよ…」
僕の祈りは通じずに、ガルーダはまた腕を払ってソニックブームを放って来た。
完全に遊ばれていたのだった。
「テイト君、準備完了よ!」
「特大のを放て‼」
「天光満つる処に我はあり、黄泉の門を開く処に汝あり、出でよ雷神の一撃…インデグネィション‼」
ガルーダの遥か頭上で黒雲が発生すると、巨大な雷がガルーダの頭から直撃して地面まで貫いた。
ガルーダは凄まじい叫び声を発すると、そのまま地面に墜落し…そうになった所を羽ばたかせて回避しようとしていたが、同時にルーナリアの数百のホーリーランスが翼や体を貫いて行った。
すると、ダーネリアとルーナリアは地面に座り込んだ。
「2人はそこで休んでいろ!ブレイドやるぞ‼」
「あぁ!」
ガルーダは地面に激突したと同時に、僕は二刀でガルーダの翼を滅多切りにしてから離脱すると、ブレイドは大きく振り被ってからガルーダの首に向かって剣を振り下ろした。
だが、ガルーダの首は簡単には落ちなかった。
僕はブレイドの肩に足を掛けてから飛び上がり、そのままブレイドの剣に僕の剣を合わして力を込めた。
すると、2人の力でガルーダの首を切断して倒したのだった。
「これで…終わりだよな?」
「あぁ、さすがに首を落とされたら生きてはいないだろう。」
僕とブレイドは拳を合わせた。
そしてバフの効果が切れて体に負荷が掛かったのか、そのまま座り込んだのだった。
「ガルーダが山頂でやったあの技が出なくて良かった。」
「アレをやられていたら、この場所では対処出来なかっただろうな。」
「恐らくだが、アレはガルーダに取って大技だったんだろう。それと、僕達があの時に逃げた事で、あそこまでの大技を出す必要が無いと思ったんだろう。」
「…という事は、奴の油断が自分達の勝利に繋がったという事か?」
正直言って、ガルーダが驕っていたお陰で助かった。
僕は何ともなかったが、3人はレベルアップで動けずにいた。
「ブレイド、レベルは幾つになった?」
「自分は…レベル126だ!」
「「私達は117です!」」
「という事は、【獲得経験値数〇倍】の効果は、数十倍が発動したのか。」
僕はそう言い終わると同時に、ガルーダの死体を空間魔法に収納した。
かなりの巨体だったが、ストレージなので問題なく入ったのだった。
「さて、立ち上がれる様になったら先に進むよ。風の壁も消え失せたしね。」
「フォンクオーツ達は良いのか?」
「アイツ等はもう逃げただろう。余程の馬鹿じゃなければ姿を現したりは…」
「いやいや、お見事です!まさか…あの災害級クラスの化け物を討伐出来るとは‼」
どうやら本物の馬鹿だったみたいだな。
フォンクオーツは拍手をしながら此方に向かって来たのだった。
「一体何をしに…」
「最後のトドメは君達2人だったみたいですが、魔法の複数のバフや極大魔法を使うなんて…貴女達2人の力が大きいみたいですね!」
「「「「はぁ?」」」」
「そこで俺は考えた!そこの美しいお嬢さん方、俺のパーティーに入らないかい?」
「「「「・・・・・・・・・」」」」
やっぱ馬鹿なんだな、しかも大か神が付く位の馬鹿だな。
今迄の事や今回の事を含めて、何故彼女達が頷くと思うのだろうか?
それに…。
「お前、冒険者ギルドの規則を読んだ事があるのか?ソロではない限り、パーティーからの勧誘は禁止されていれるんだぞ!」
「悪いが君とは話していないのだよ。俺は彼女達に話してしているんだ‼」
「お前馬鹿だろ?えーと…名前なんだっけか?あ、ポンコツだっけか?」
「誰がポンコツだ!俺の名前はフォンクオーツだ‼」
「はいはい分かったよ、ポンコツ君。それはそうと、お前のやった行為を考えて、彼女達が頷くと思っているのか?」
「フォンクオーツだと言っているだろ‼ふっ…まぁ良い!俺はな、全てが許されるんだよ!」
「はぁ?許される訳ねぇだろ?頭が沸いているのか…いや、ポンコツ思考だったな。」
本当にこのポンコツは頭大丈夫か?
ガルーダを倒したら、次はお前の番だと言われたのを忘れたのか?
「俺はこの通りに顔が良いのさ!その顔の良さに、女の子達は僕の全てを許すんだよ!おっと、僻まないでくれよ…君は顔が悪いからってね!」
「ブレイド、コイツ…マジで殺して良いか?」
「やっても構わない。というか、自分も加わっても良いか?」
僕とブレイドがフォンクオーツの元に向かって行くと、奴のパーティーメンバーが前に立ち塞がった。
そしてフォンクオーツは、ダーネリアとルーナリアの前で跪いてから手を差し伸べて言った。
「あんな見てくれが悪い奴よりも、俺の方がマシだと思わないかい?」
「はぁ?何を言ってんのよ?貴方なんか、トロールよりはマシだけど、オークと同等じゃないのよ!」
「そうね、ゴブリンよりはマシな程度よね!」
うちの女子達は容赦ねぇな!
少しはスッとした。
「やはり…見てくれの悪いパーティーの女は思考もおかしいみたいだ!」
「それはそうと、お前はいつまで好き勝手な事をほざいていやがる?」
「そうだな、フォンクオーツ…いや、ポンコツだったな!」
「スウォードお前も…」
「自分がどうした?」
僕とブレイドは、フォンクオーツの元に向かおうとするが…奴のパーティーメンバーの女達に邪魔されていた。
僕は彼女達の体に触れてから、闇魔法のライフドレインとマジックアスピルを放った。
それを受けた彼女達は、膝から砕けて地面に寝そべっていた。
「彼女達に何をした⁉」
「HPとMPを限界まで吸わせて貰った!先の戦闘で結構喰ったからな。」
「まぁ、自分達の事をモンパレしようとしたくらいだ、命を取らなかった分だけありがたいと思え!」
「それとお前だが…余程顔に自信があるようだな?」
「そうだな、君達2人に比べたらな!」
「そうか、なら整形してやるよ‼」
僕はフォンクオーツの顔面を力の限り殴り飛ばした。
そして地面に倒れたフォンクオーツをブレイドに押さえて貰いながら、何度も何度も顔を殴っていた。
殴る度に骨が折れる音がして、顔の形が変わって行ったのだった。
「そ、そんな事をしても無駄だよ。回復魔法で全て元通りさ!」
「あぁ、顔全体に掛ければな…だが、こうして部分部分を回復魔法で骨を繋げると…」
回復魔法は骨折すらも治せる。
だけど、一度回復魔法で変な骨のくっつけた状態にすると、それ以降は体がその状態を記憶して全体に回復魔法を掛けても変な骨の状態になるというもので二度と戻る事は無いのだった。
つまり、どういう事かというと…?
フォンクオーツの顔面を骨折させてから、本来の場所の骨をくっつけずに別な場所の骨をくっつけて行った結果…顔が変形した状態になるというものだった。
「ほら鏡だ!自分の顔を鏡で見てみろ!」
「な…なんだこれは⁉」
確かにイケメンだったフォンクオーツの顔は醜く変形をしていたのだった。
それはもう、ゴブリンと似た様な顔付に…。
「お前は普通に殺すより、その顔で生きていく方が地獄だろう!」
「確かに、その顔では女は寄り付かないわな!」
「た…頼む、回復魔法を掛けて戻してくれ‼」
僕はフォンクオーツに回復魔法を掛けてやった。
だが、顔は元に戻らずに変形した顔のままだった。
フォンクオーツは何度も鏡を確認していたが、自分の顔だとは信じられなくてパーティーメンバーの女達を起こし始めた。
すると、目を覚ました女達は…フォンクオーツの顔を見ると悲鳴を上げて逃げ出して行ったのだった。
それを追うフォンクオーツの泣き叫ぶ姿を見て、僕達は大爆笑したのだった。
「確かにこれなら、ただ殺すより余程効果的だな!」
「恐らくあの状態では、家に帰った所で追い出されるだろうしな!」
「それにしても、回復魔法にあんな使い方があるんですね?」
「以前に闇医者から話を聞いた事があってね。犯罪者が逃亡する為に顔の形を変えてでも生きたい者がやる方法なんだと。僕もやるのは初めてだったけど、まさか本当に上手く行くとは思わなかった!」
「あれじゃあ本当にゴブリンと同等な顔になったわね!」
僕達はしばらくしてから山を下りた。
そして適当な安全地帯でキャンプをすると、翌日にテオドール温泉村を目指して歩き出した。
「そういえば、昨日は色々あって忘れていたけど?テイト君、キスは?」
「あ、そうですよ!テイト様、キスをお願いします!」
僕は2人の後ろを指差して意識を逸らしてから無言で逃げ出すと、2人は後を追って来た。
僕は冗談で言ったつもりだったのだが、彼女達は本気にしていたみたいだった。
そして彼女達に追い付かれた僕の取った行動は…?
それはまた別のお話。
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なんの取り柄もないおっさんが偶然拾ったネックレスのおかげで無双しちゃう
平 信之は、会社内で「MOBゆき」と陰口を言われるくらい取り柄もない窓際社員。人生はなんて面白くないのだろうと嘆いて帰路に着いている中、信之は異常な輝きを放つネックレスを拾う。そのネックレスは、経験値の間に行くことが出来る特殊なネックレスだった。
経験値の間に行けるようになった信之はどんどんレベルを上げ、無双し、知名度を上げていく。
もう、MOBゆきとは呼ばせないっ!!
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Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
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シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
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これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
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ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
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俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
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朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
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欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
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チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
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