29 / 65
第二章
第五話 フォンクオーツという男
しおりを挟む
「さて、どうしますかねぇ?」
僕は麓の場所にある風の壁を見上げながら言った。
壁が何mあるのかが見えない位に分厚い壁の様だった。
「魔法を放って敗れるか試しますか?」
「いや、ガルーダのこの風の壁には索敵魔法の様な物を施されている筈だ。これに接触すると、ガルーダに伝わるようになっていると思う。」
「なら、ガルーダの機嫌が直る迄は足止めですか?」
「ここから脱出方法は2つある。」
僕がそう言うと、3人は聞いて来た。
「1つは転移魔法でこの山から脱出するという事なんだけど、行ける場所がハーネスト村になるので、またあの場所から移動する事になる。」
「あの村に転移ですか?他には何があるのですか?」
「地面に穴を掘って風の壁の下を通って向こう側に抜けるという方法だ!」
この場合、地面の深さは2m程度で問題はないが、問題は距離だ。
この風の壁が何mあるのかが解らない。
この場所の地盤がどれ程硬いかにもよるが…?
仮に20m位を掘り進んで行くとしいたら、5日から1週間は見ておいた方が良いだろう。
「後は倒すか…ですか?」
「倒せれば…の話だけどな。奴のレベルを鑑定はしていないが、恐らく進化した事により僕のレベルに近いレベルになっていると思う。」
「レベル200近くあるという訳か。」
「加えてあの厄介な攻撃だ!上手く地面に落とせれば勝機もあるのだろうけど。」
「あのガルーダというのは魔獣なのですか?」
「グリフォンの時は魔獣だっただろう。だが、進化後のガルーダは…魔獣というよりは上位精霊か、もしくは魔神に近い強さとも言えるかもな。」
山の周囲を風の壁で囲めるほどの力があるものなら精霊以上の存在だろう。
仮に魔神だとして、どうやって対処したら良い物だろうか?
「誰かこっちに走って来るよ!」
「誰かって、この山にいるのは僕達かアイツ等しかいないだろ。此方に向かってくるという事は、アイツ等はまだ生きていたのか。」
フォンクオーツ達は、僕達の姿を見ると上空に爆発魔法を打ち上げた。
まさかとは思うが…それがガルーダに知らせる合図だったのだった。
「お前等は一体何がしてぇんだよ‼」
「あの魔獣が言ったんだ、お前達を探して合図をすれば生かしておいてやると!」
「お前…馬鹿か?その相手が見つかったら、お前達を生かしておく理由がなくなるだろ!」
「だがあの魔獣はそう言った!」
「おめでたい頭をしているな!魔物相手に交渉が通じる訳がないだろ‼」
「言い争いはそれ位にしろ!来たぞ‼」
ガルーダは先程の合図で此方に来た。
さすがにこの場所だと、逃げられる場所はない。
転移魔法も一瞬で出来る訳ではないので、発動までの時間を考えると相手は待ってはくれないだろう。
「さぁ、お目当ての奴等は探したぞ‼」
「ヨクヤッタ…」
「なら俺達は助かるよな?」
「キサマハ…ワガコヲコロシタモノタチダ!コヤツラヲシマツシタラ、ツギハオマエタチノバンダ‼」
「な…何だと⁉」
ブレイドの言った通り、やっぱりコイツは馬鹿だったか。
魔物や魔獣に交渉事は、対価を用意しないと確立しない事を知らないのか?
…と言っている場合ではないな!
僕達は武器を構えた。
戦法はまだ思い付いてはいない…。
「お前等…アイツと戦う気か?勝てると思っているのか⁉」
「さぁな、このままでは殺されるのがオチだからな。倒せるかは解らんが、やってみるだけだ‼」
「倒せるのなら倒してくれ‼」
「倒したら、次はお前の番だからな!罠に嵌めてアイツを此方に呼び寄せたんだ、覚悟は出来ているんだろ?」
僕がそういうと、フォンクオーツ達は山頂に向かって走りだして行った。
そしてしばらく上った場所で止まってから此方を窺っていた。
ガルーダは敢えてフォンクオーツ達を見逃していた。
ガルーダの速度なら、僕達を倒した後でも十分に追い付くだろうからだ。
「アイツ…マジで後でシバく‼」
「生きていたら、自分も付き合うぞ‼」
「ダーネリアとルーナリアは、先程のバフのフルコースを頼む!」
「「はい!」」
ダーネリアとルーナリアは、再びバフを発動した。
これで少しは有利になると良いが。
ダーネリアは火球魔法を放ったが、ガルーダに届く前に風の障壁で弾き飛ばされた。
僕はそれを見て、有効な属性魔法を探した。
「あの高さの距離だと、生半可な魔法では届かないか。奴の頭上から魔法を落とせれば問題は無いのだろうけど。」
「なら極大雷魔法を試してみようと思うけど、テイト君…良いかな?」
「このままでは打つ手が無いからやってくれ!」
ダーネリアは詠唱を始めた。
ルーナリアはダーネリアの前に立つと、守護結界を発動した。
僕等も何とか攻撃を仕掛けたい所だが、あの距離では武器が届かなかった。
するとガルーダは腕を払ってくると、そこからソニックブームの刃が此方に向かって来た。
僕は刀身にオーラを纏わせてからソニックブームを上空に向かって放つと、ガルーダのソニックブームを相殺した。
ガルーダは再び両腕を払うと、此方に2つのソニックブームの刃が飛んできた。
「ブレイド、出来るか?」
「すまん、自分には出来ん!今度教えてくれ‼」
「わかった、これは僕が防ぐ!」
僕は空間魔法からもう1本の剣を取り出すと、左右の剣の刀身にオーラを纏わせてから、ガルーダのソニックブームを受けた。
僕のソニックブームは連射が出来ない。
なのでこうして受け止めているのだが、中々弾けずにいた。
「頼むから辞めてくれよ…」
僕の祈りは通じずに、ガルーダはまた腕を払ってソニックブームを放って来た。
完全に遊ばれていたのだった。
「テイト君、準備完了よ!」
「特大のを放て‼」
「天光満つる処に我はあり、黄泉の門を開く処に汝あり、出でよ雷神の一撃…インデグネィション‼」
ガルーダの遥か頭上で黒雲が発生すると、巨大な雷がガルーダの頭から直撃して地面まで貫いた。
ガルーダは凄まじい叫び声を発すると、そのまま地面に墜落し…そうになった所を羽ばたかせて回避しようとしていたが、同時にルーナリアの数百のホーリーランスが翼や体を貫いて行った。
すると、ダーネリアとルーナリアは地面に座り込んだ。
「2人はそこで休んでいろ!ブレイドやるぞ‼」
「あぁ!」
ガルーダは地面に激突したと同時に、僕は二刀でガルーダの翼を滅多切りにしてから離脱すると、ブレイドは大きく振り被ってからガルーダの首に向かって剣を振り下ろした。
だが、ガルーダの首は簡単には落ちなかった。
僕はブレイドの肩に足を掛けてから飛び上がり、そのままブレイドの剣に僕の剣を合わして力を込めた。
すると、2人の力でガルーダの首を切断して倒したのだった。
「これで…終わりだよな?」
「あぁ、さすがに首を落とされたら生きてはいないだろう。」
僕とブレイドは拳を合わせた。
そしてバフの効果が切れて体に負荷が掛かったのか、そのまま座り込んだのだった。
「ガルーダが山頂でやったあの技が出なくて良かった。」
「アレをやられていたら、この場所では対処出来なかっただろうな。」
「恐らくだが、アレはガルーダに取って大技だったんだろう。それと、僕達があの時に逃げた事で、あそこまでの大技を出す必要が無いと思ったんだろう。」
「…という事は、奴の油断が自分達の勝利に繋がったという事か?」
正直言って、ガルーダが驕っていたお陰で助かった。
僕は何ともなかったが、3人はレベルアップで動けずにいた。
「ブレイド、レベルは幾つになった?」
「自分は…レベル126だ!」
「「私達は117です!」」
「という事は、【獲得経験値数〇倍】の効果は、数十倍が発動したのか。」
僕はそう言い終わると同時に、ガルーダの死体を空間魔法に収納した。
かなりの巨体だったが、ストレージなので問題なく入ったのだった。
「さて、立ち上がれる様になったら先に進むよ。風の壁も消え失せたしね。」
「フォンクオーツ達は良いのか?」
「アイツ等はもう逃げただろう。余程の馬鹿じゃなければ姿を現したりは…」
「いやいや、お見事です!まさか…あの災害級クラスの化け物を討伐出来るとは‼」
どうやら本物の馬鹿だったみたいだな。
フォンクオーツは拍手をしながら此方に向かって来たのだった。
「一体何をしに…」
「最後のトドメは君達2人だったみたいですが、魔法の複数のバフや極大魔法を使うなんて…貴女達2人の力が大きいみたいですね!」
「「「「はぁ?」」」」
「そこで俺は考えた!そこの美しいお嬢さん方、俺のパーティーに入らないかい?」
「「「「・・・・・・・・・」」」」
やっぱ馬鹿なんだな、しかも大か神が付く位の馬鹿だな。
今迄の事や今回の事を含めて、何故彼女達が頷くと思うのだろうか?
それに…。
「お前、冒険者ギルドの規則を読んだ事があるのか?ソロではない限り、パーティーからの勧誘は禁止されていれるんだぞ!」
「悪いが君とは話していないのだよ。俺は彼女達に話してしているんだ‼」
「お前馬鹿だろ?えーと…名前なんだっけか?あ、ポンコツだっけか?」
「誰がポンコツだ!俺の名前はフォンクオーツだ‼」
「はいはい分かったよ、ポンコツ君。それはそうと、お前のやった行為を考えて、彼女達が頷くと思っているのか?」
「フォンクオーツだと言っているだろ‼ふっ…まぁ良い!俺はな、全てが許されるんだよ!」
「はぁ?許される訳ねぇだろ?頭が沸いているのか…いや、ポンコツ思考だったな。」
本当にこのポンコツは頭大丈夫か?
ガルーダを倒したら、次はお前の番だと言われたのを忘れたのか?
「俺はこの通りに顔が良いのさ!その顔の良さに、女の子達は僕の全てを許すんだよ!おっと、僻まないでくれよ…君は顔が悪いからってね!」
「ブレイド、コイツ…マジで殺して良いか?」
「やっても構わない。というか、自分も加わっても良いか?」
僕とブレイドがフォンクオーツの元に向かって行くと、奴のパーティーメンバーが前に立ち塞がった。
そしてフォンクオーツは、ダーネリアとルーナリアの前で跪いてから手を差し伸べて言った。
「あんな見てくれが悪い奴よりも、俺の方がマシだと思わないかい?」
「はぁ?何を言ってんのよ?貴方なんか、トロールよりはマシだけど、オークと同等じゃないのよ!」
「そうね、ゴブリンよりはマシな程度よね!」
うちの女子達は容赦ねぇな!
少しはスッとした。
「やはり…見てくれの悪いパーティーの女は思考もおかしいみたいだ!」
「それはそうと、お前はいつまで好き勝手な事をほざいていやがる?」
「そうだな、フォンクオーツ…いや、ポンコツだったな!」
「スウォードお前も…」
「自分がどうした?」
僕とブレイドは、フォンクオーツの元に向かおうとするが…奴のパーティーメンバーの女達に邪魔されていた。
僕は彼女達の体に触れてから、闇魔法のライフドレインとマジックアスピルを放った。
それを受けた彼女達は、膝から砕けて地面に寝そべっていた。
「彼女達に何をした⁉」
「HPとMPを限界まで吸わせて貰った!先の戦闘で結構喰ったからな。」
「まぁ、自分達の事をモンパレしようとしたくらいだ、命を取らなかった分だけありがたいと思え!」
「それとお前だが…余程顔に自信があるようだな?」
「そうだな、君達2人に比べたらな!」
「そうか、なら整形してやるよ‼」
僕はフォンクオーツの顔面を力の限り殴り飛ばした。
そして地面に倒れたフォンクオーツをブレイドに押さえて貰いながら、何度も何度も顔を殴っていた。
殴る度に骨が折れる音がして、顔の形が変わって行ったのだった。
「そ、そんな事をしても無駄だよ。回復魔法で全て元通りさ!」
「あぁ、顔全体に掛ければな…だが、こうして部分部分を回復魔法で骨を繋げると…」
回復魔法は骨折すらも治せる。
だけど、一度回復魔法で変な骨のくっつけた状態にすると、それ以降は体がその状態を記憶して全体に回復魔法を掛けても変な骨の状態になるというもので二度と戻る事は無いのだった。
つまり、どういう事かというと…?
フォンクオーツの顔面を骨折させてから、本来の場所の骨をくっつけずに別な場所の骨をくっつけて行った結果…顔が変形した状態になるというものだった。
「ほら鏡だ!自分の顔を鏡で見てみろ!」
「な…なんだこれは⁉」
確かにイケメンだったフォンクオーツの顔は醜く変形をしていたのだった。
それはもう、ゴブリンと似た様な顔付に…。
「お前は普通に殺すより、その顔で生きていく方が地獄だろう!」
「確かに、その顔では女は寄り付かないわな!」
「た…頼む、回復魔法を掛けて戻してくれ‼」
僕はフォンクオーツに回復魔法を掛けてやった。
だが、顔は元に戻らずに変形した顔のままだった。
フォンクオーツは何度も鏡を確認していたが、自分の顔だとは信じられなくてパーティーメンバーの女達を起こし始めた。
すると、目を覚ました女達は…フォンクオーツの顔を見ると悲鳴を上げて逃げ出して行ったのだった。
それを追うフォンクオーツの泣き叫ぶ姿を見て、僕達は大爆笑したのだった。
「確かにこれなら、ただ殺すより余程効果的だな!」
「恐らくあの状態では、家に帰った所で追い出されるだろうしな!」
「それにしても、回復魔法にあんな使い方があるんですね?」
「以前に闇医者から話を聞いた事があってね。犯罪者が逃亡する為に顔の形を変えてでも生きたい者がやる方法なんだと。僕もやるのは初めてだったけど、まさか本当に上手く行くとは思わなかった!」
「あれじゃあ本当にゴブリンと同等な顔になったわね!」
僕達はしばらくしてから山を下りた。
そして適当な安全地帯でキャンプをすると、翌日にテオドール温泉村を目指して歩き出した。
「そういえば、昨日は色々あって忘れていたけど?テイト君、キスは?」
「あ、そうですよ!テイト様、キスをお願いします!」
僕は2人の後ろを指差して意識を逸らしてから無言で逃げ出すと、2人は後を追って来た。
僕は冗談で言ったつもりだったのだが、彼女達は本気にしていたみたいだった。
そして彼女達に追い付かれた僕の取った行動は…?
それはまた別のお話。
僕は麓の場所にある風の壁を見上げながら言った。
壁が何mあるのかが見えない位に分厚い壁の様だった。
「魔法を放って敗れるか試しますか?」
「いや、ガルーダのこの風の壁には索敵魔法の様な物を施されている筈だ。これに接触すると、ガルーダに伝わるようになっていると思う。」
「なら、ガルーダの機嫌が直る迄は足止めですか?」
「ここから脱出方法は2つある。」
僕がそう言うと、3人は聞いて来た。
「1つは転移魔法でこの山から脱出するという事なんだけど、行ける場所がハーネスト村になるので、またあの場所から移動する事になる。」
「あの村に転移ですか?他には何があるのですか?」
「地面に穴を掘って風の壁の下を通って向こう側に抜けるという方法だ!」
この場合、地面の深さは2m程度で問題はないが、問題は距離だ。
この風の壁が何mあるのかが解らない。
この場所の地盤がどれ程硬いかにもよるが…?
仮に20m位を掘り進んで行くとしいたら、5日から1週間は見ておいた方が良いだろう。
「後は倒すか…ですか?」
「倒せれば…の話だけどな。奴のレベルを鑑定はしていないが、恐らく進化した事により僕のレベルに近いレベルになっていると思う。」
「レベル200近くあるという訳か。」
「加えてあの厄介な攻撃だ!上手く地面に落とせれば勝機もあるのだろうけど。」
「あのガルーダというのは魔獣なのですか?」
「グリフォンの時は魔獣だっただろう。だが、進化後のガルーダは…魔獣というよりは上位精霊か、もしくは魔神に近い強さとも言えるかもな。」
山の周囲を風の壁で囲めるほどの力があるものなら精霊以上の存在だろう。
仮に魔神だとして、どうやって対処したら良い物だろうか?
「誰かこっちに走って来るよ!」
「誰かって、この山にいるのは僕達かアイツ等しかいないだろ。此方に向かってくるという事は、アイツ等はまだ生きていたのか。」
フォンクオーツ達は、僕達の姿を見ると上空に爆発魔法を打ち上げた。
まさかとは思うが…それがガルーダに知らせる合図だったのだった。
「お前等は一体何がしてぇんだよ‼」
「あの魔獣が言ったんだ、お前達を探して合図をすれば生かしておいてやると!」
「お前…馬鹿か?その相手が見つかったら、お前達を生かしておく理由がなくなるだろ!」
「だがあの魔獣はそう言った!」
「おめでたい頭をしているな!魔物相手に交渉が通じる訳がないだろ‼」
「言い争いはそれ位にしろ!来たぞ‼」
ガルーダは先程の合図で此方に来た。
さすがにこの場所だと、逃げられる場所はない。
転移魔法も一瞬で出来る訳ではないので、発動までの時間を考えると相手は待ってはくれないだろう。
「さぁ、お目当ての奴等は探したぞ‼」
「ヨクヤッタ…」
「なら俺達は助かるよな?」
「キサマハ…ワガコヲコロシタモノタチダ!コヤツラヲシマツシタラ、ツギハオマエタチノバンダ‼」
「な…何だと⁉」
ブレイドの言った通り、やっぱりコイツは馬鹿だったか。
魔物や魔獣に交渉事は、対価を用意しないと確立しない事を知らないのか?
…と言っている場合ではないな!
僕達は武器を構えた。
戦法はまだ思い付いてはいない…。
「お前等…アイツと戦う気か?勝てると思っているのか⁉」
「さぁな、このままでは殺されるのがオチだからな。倒せるかは解らんが、やってみるだけだ‼」
「倒せるのなら倒してくれ‼」
「倒したら、次はお前の番だからな!罠に嵌めてアイツを此方に呼び寄せたんだ、覚悟は出来ているんだろ?」
僕がそういうと、フォンクオーツ達は山頂に向かって走りだして行った。
そしてしばらく上った場所で止まってから此方を窺っていた。
ガルーダは敢えてフォンクオーツ達を見逃していた。
ガルーダの速度なら、僕達を倒した後でも十分に追い付くだろうからだ。
「アイツ…マジで後でシバく‼」
「生きていたら、自分も付き合うぞ‼」
「ダーネリアとルーナリアは、先程のバフのフルコースを頼む!」
「「はい!」」
ダーネリアとルーナリアは、再びバフを発動した。
これで少しは有利になると良いが。
ダーネリアは火球魔法を放ったが、ガルーダに届く前に風の障壁で弾き飛ばされた。
僕はそれを見て、有効な属性魔法を探した。
「あの高さの距離だと、生半可な魔法では届かないか。奴の頭上から魔法を落とせれば問題は無いのだろうけど。」
「なら極大雷魔法を試してみようと思うけど、テイト君…良いかな?」
「このままでは打つ手が無いからやってくれ!」
ダーネリアは詠唱を始めた。
ルーナリアはダーネリアの前に立つと、守護結界を発動した。
僕等も何とか攻撃を仕掛けたい所だが、あの距離では武器が届かなかった。
するとガルーダは腕を払ってくると、そこからソニックブームの刃が此方に向かって来た。
僕は刀身にオーラを纏わせてからソニックブームを上空に向かって放つと、ガルーダのソニックブームを相殺した。
ガルーダは再び両腕を払うと、此方に2つのソニックブームの刃が飛んできた。
「ブレイド、出来るか?」
「すまん、自分には出来ん!今度教えてくれ‼」
「わかった、これは僕が防ぐ!」
僕は空間魔法からもう1本の剣を取り出すと、左右の剣の刀身にオーラを纏わせてから、ガルーダのソニックブームを受けた。
僕のソニックブームは連射が出来ない。
なのでこうして受け止めているのだが、中々弾けずにいた。
「頼むから辞めてくれよ…」
僕の祈りは通じずに、ガルーダはまた腕を払ってソニックブームを放って来た。
完全に遊ばれていたのだった。
「テイト君、準備完了よ!」
「特大のを放て‼」
「天光満つる処に我はあり、黄泉の門を開く処に汝あり、出でよ雷神の一撃…インデグネィション‼」
ガルーダの遥か頭上で黒雲が発生すると、巨大な雷がガルーダの頭から直撃して地面まで貫いた。
ガルーダは凄まじい叫び声を発すると、そのまま地面に墜落し…そうになった所を羽ばたかせて回避しようとしていたが、同時にルーナリアの数百のホーリーランスが翼や体を貫いて行った。
すると、ダーネリアとルーナリアは地面に座り込んだ。
「2人はそこで休んでいろ!ブレイドやるぞ‼」
「あぁ!」
ガルーダは地面に激突したと同時に、僕は二刀でガルーダの翼を滅多切りにしてから離脱すると、ブレイドは大きく振り被ってからガルーダの首に向かって剣を振り下ろした。
だが、ガルーダの首は簡単には落ちなかった。
僕はブレイドの肩に足を掛けてから飛び上がり、そのままブレイドの剣に僕の剣を合わして力を込めた。
すると、2人の力でガルーダの首を切断して倒したのだった。
「これで…終わりだよな?」
「あぁ、さすがに首を落とされたら生きてはいないだろう。」
僕とブレイドは拳を合わせた。
そしてバフの効果が切れて体に負荷が掛かったのか、そのまま座り込んだのだった。
「ガルーダが山頂でやったあの技が出なくて良かった。」
「アレをやられていたら、この場所では対処出来なかっただろうな。」
「恐らくだが、アレはガルーダに取って大技だったんだろう。それと、僕達があの時に逃げた事で、あそこまでの大技を出す必要が無いと思ったんだろう。」
「…という事は、奴の油断が自分達の勝利に繋がったという事か?」
正直言って、ガルーダが驕っていたお陰で助かった。
僕は何ともなかったが、3人はレベルアップで動けずにいた。
「ブレイド、レベルは幾つになった?」
「自分は…レベル126だ!」
「「私達は117です!」」
「という事は、【獲得経験値数〇倍】の効果は、数十倍が発動したのか。」
僕はそう言い終わると同時に、ガルーダの死体を空間魔法に収納した。
かなりの巨体だったが、ストレージなので問題なく入ったのだった。
「さて、立ち上がれる様になったら先に進むよ。風の壁も消え失せたしね。」
「フォンクオーツ達は良いのか?」
「アイツ等はもう逃げただろう。余程の馬鹿じゃなければ姿を現したりは…」
「いやいや、お見事です!まさか…あの災害級クラスの化け物を討伐出来るとは‼」
どうやら本物の馬鹿だったみたいだな。
フォンクオーツは拍手をしながら此方に向かって来たのだった。
「一体何をしに…」
「最後のトドメは君達2人だったみたいですが、魔法の複数のバフや極大魔法を使うなんて…貴女達2人の力が大きいみたいですね!」
「「「「はぁ?」」」」
「そこで俺は考えた!そこの美しいお嬢さん方、俺のパーティーに入らないかい?」
「「「「・・・・・・・・・」」」」
やっぱ馬鹿なんだな、しかも大か神が付く位の馬鹿だな。
今迄の事や今回の事を含めて、何故彼女達が頷くと思うのだろうか?
それに…。
「お前、冒険者ギルドの規則を読んだ事があるのか?ソロではない限り、パーティーからの勧誘は禁止されていれるんだぞ!」
「悪いが君とは話していないのだよ。俺は彼女達に話してしているんだ‼」
「お前馬鹿だろ?えーと…名前なんだっけか?あ、ポンコツだっけか?」
「誰がポンコツだ!俺の名前はフォンクオーツだ‼」
「はいはい分かったよ、ポンコツ君。それはそうと、お前のやった行為を考えて、彼女達が頷くと思っているのか?」
「フォンクオーツだと言っているだろ‼ふっ…まぁ良い!俺はな、全てが許されるんだよ!」
「はぁ?許される訳ねぇだろ?頭が沸いているのか…いや、ポンコツ思考だったな。」
本当にこのポンコツは頭大丈夫か?
ガルーダを倒したら、次はお前の番だと言われたのを忘れたのか?
「俺はこの通りに顔が良いのさ!その顔の良さに、女の子達は僕の全てを許すんだよ!おっと、僻まないでくれよ…君は顔が悪いからってね!」
「ブレイド、コイツ…マジで殺して良いか?」
「やっても構わない。というか、自分も加わっても良いか?」
僕とブレイドがフォンクオーツの元に向かって行くと、奴のパーティーメンバーが前に立ち塞がった。
そしてフォンクオーツは、ダーネリアとルーナリアの前で跪いてから手を差し伸べて言った。
「あんな見てくれが悪い奴よりも、俺の方がマシだと思わないかい?」
「はぁ?何を言ってんのよ?貴方なんか、トロールよりはマシだけど、オークと同等じゃないのよ!」
「そうね、ゴブリンよりはマシな程度よね!」
うちの女子達は容赦ねぇな!
少しはスッとした。
「やはり…見てくれの悪いパーティーの女は思考もおかしいみたいだ!」
「それはそうと、お前はいつまで好き勝手な事をほざいていやがる?」
「そうだな、フォンクオーツ…いや、ポンコツだったな!」
「スウォードお前も…」
「自分がどうした?」
僕とブレイドは、フォンクオーツの元に向かおうとするが…奴のパーティーメンバーの女達に邪魔されていた。
僕は彼女達の体に触れてから、闇魔法のライフドレインとマジックアスピルを放った。
それを受けた彼女達は、膝から砕けて地面に寝そべっていた。
「彼女達に何をした⁉」
「HPとMPを限界まで吸わせて貰った!先の戦闘で結構喰ったからな。」
「まぁ、自分達の事をモンパレしようとしたくらいだ、命を取らなかった分だけありがたいと思え!」
「それとお前だが…余程顔に自信があるようだな?」
「そうだな、君達2人に比べたらな!」
「そうか、なら整形してやるよ‼」
僕はフォンクオーツの顔面を力の限り殴り飛ばした。
そして地面に倒れたフォンクオーツをブレイドに押さえて貰いながら、何度も何度も顔を殴っていた。
殴る度に骨が折れる音がして、顔の形が変わって行ったのだった。
「そ、そんな事をしても無駄だよ。回復魔法で全て元通りさ!」
「あぁ、顔全体に掛ければな…だが、こうして部分部分を回復魔法で骨を繋げると…」
回復魔法は骨折すらも治せる。
だけど、一度回復魔法で変な骨のくっつけた状態にすると、それ以降は体がその状態を記憶して全体に回復魔法を掛けても変な骨の状態になるというもので二度と戻る事は無いのだった。
つまり、どういう事かというと…?
フォンクオーツの顔面を骨折させてから、本来の場所の骨をくっつけずに別な場所の骨をくっつけて行った結果…顔が変形した状態になるというものだった。
「ほら鏡だ!自分の顔を鏡で見てみろ!」
「な…なんだこれは⁉」
確かにイケメンだったフォンクオーツの顔は醜く変形をしていたのだった。
それはもう、ゴブリンと似た様な顔付に…。
「お前は普通に殺すより、その顔で生きていく方が地獄だろう!」
「確かに、その顔では女は寄り付かないわな!」
「た…頼む、回復魔法を掛けて戻してくれ‼」
僕はフォンクオーツに回復魔法を掛けてやった。
だが、顔は元に戻らずに変形した顔のままだった。
フォンクオーツは何度も鏡を確認していたが、自分の顔だとは信じられなくてパーティーメンバーの女達を起こし始めた。
すると、目を覚ました女達は…フォンクオーツの顔を見ると悲鳴を上げて逃げ出して行ったのだった。
それを追うフォンクオーツの泣き叫ぶ姿を見て、僕達は大爆笑したのだった。
「確かにこれなら、ただ殺すより余程効果的だな!」
「恐らくあの状態では、家に帰った所で追い出されるだろうしな!」
「それにしても、回復魔法にあんな使い方があるんですね?」
「以前に闇医者から話を聞いた事があってね。犯罪者が逃亡する為に顔の形を変えてでも生きたい者がやる方法なんだと。僕もやるのは初めてだったけど、まさか本当に上手く行くとは思わなかった!」
「あれじゃあ本当にゴブリンと同等な顔になったわね!」
僕達はしばらくしてから山を下りた。
そして適当な安全地帯でキャンプをすると、翌日にテオドール温泉村を目指して歩き出した。
「そういえば、昨日は色々あって忘れていたけど?テイト君、キスは?」
「あ、そうですよ!テイト様、キスをお願いします!」
僕は2人の後ろを指差して意識を逸らしてから無言で逃げ出すと、2人は後を追って来た。
僕は冗談で言ったつもりだったのだが、彼女達は本気にしていたみたいだった。
そして彼女達に追い付かれた僕の取った行動は…?
それはまた別のお話。
13
お気に入りに追加
1,957
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。
アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。
それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。
するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。
それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき…
遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。
……とまぁ、ここまでは良くある話。
僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき…
遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。
「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」
それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。
なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…?
2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。
皆様お陰です、有り難う御座います。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる