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第一章

第十九話 久々の故郷の散策?

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 「じゃあ、父さん、母さん行って来るね!」
 「あぁ、行って来い!」
 「待ってテイト、これお供え物ね。」
 「母さんありがとう!行って来る!」

 僕は宿屋を出た。
 そして1人で村を散策しながら歩いていた。
 
 「おや?テイトか!久しぶりだな!」
 「ジャンか?懐かしいな!」

 ジャンはこの村での幼馴染だ。
 ジャンは僕より1つ上だった。

 「トール達も帰ってきているのか?」
 「勇者を剥奪された奴が村に帰って来れると思うのか?」
 「俺だったら、帰れないよな。」
 「僕はトールのパーティーから追い出されたんだよ。その後にトールが勇者を剥奪されたから、僕は何もお咎めされる事もない!」
 「あ、それでか…ダールさん達が木漏れ日の日向亭に行ったという。」
 「僕がパーティーを抜けたからトールは勇者を剥奪されたとか言われて、僕にパーティーに戻れとか言われたんだよ。追い出したのはアイツ等なのに戻る訳ないじゃん!」
 
 そして僕達は小一時間話をした。
 するとジャンは、僕の手にお供え物に気が付いた。

 「テイト、それは…彼女にか?」
 「あぁ、久々に帰って来たからね。最初は村を散策しようと思ったけど、どうせなら久々に報告をしようと思ってさ。」
 「そうか…引き留めていて悪かったな!」

 僕はジャンと別れると、村の方に行った。
 僕の背後で3人が着いて来ている事は気付かなかった。

 「村の方も随分久しぶりだなぁ!」

 僕の家の宿屋は、村の入り口の近くに建っている。
 なので、昨日はトールの親父さん達に見付からずに帰って来れたと思っていたが、父さんが必要以上に店の雑貨店で品物を多く購入した事で何かを察したんだろう。

 「おや、テイトかい?」
 「久しぶりだね、おっちゃん、おばちゃん!」
 
 村の雑貨店の老夫婦だ。
 この雑貨店は、村の中では一番古い店だった。

 「テイト、昨日はダールたちが向かって行ったが、大丈夫だったか?」
 「うん、僕の所為でトールが勇者を剥奪されたから今すぐ戻れとか言われたけどね。」
 「全く勝手なもんだよな!ダールの所の息子が勇者に選ばれたら、自宅を改造して勇者記念館とかいうのを作ってしこたま儲けていたんだよ。勇者が剥奪されてからはパッタリと客足が途絶えたんで、また稼ぐ為にテイトに無理を言ったのだろうがな。」
 「やっぱり、勇者剥奪はおっちゃんの所にも影響が出たりした?」
 「いんや…うちは変わんねぇえが、ダールやその他の親達は勇者の仲間の家とかいって見学料を取っていて、結構儲けていてな…それを村にまわす訳でもなく自分達だけで豪遊費用に当てていたので、剥奪されていい気味だと思ったよ。」
 「それでか、何かにつけて僕に絡んで来たのは…」

 一度味を占めたら、二度目も縋ろうとするのが人間の悪い癖だ。
 これなら剥奪されて正解だったな。

 「テイト、おんめぇ…それは?」
 「あぁ、彼女にね。」
 「ならテイト、この花も持って行き!」
 「じゃあ、幾らかな?」
 「金は要らないよ!」

 僕はおばちゃんに礼を言うと、店から出て行ったのだった。
 
 ~~~~~???~~~~~

 「テイト様は花を買って行かれましたね?」
 「まさか、テイト君はこの村に好きな女の子が⁉」
 「2人共、見失うぞ!」

 3人はテイトから目を離さない様にこっそりと着いて行った。

 ~~~~~テイト~~~~~

 僕は山道を歩いていた。
 そして周りを見渡した。

 「ここは、今も昔も変わらないなぁ!」

 この山には、いつも僕達6で良く体を鍛えると言って何度も山の往復をした。
 あの時は…僕よりもリガートが一番遅かったっけ?

 「この山…子供の頃はあんなに高いと思っていたのに、意外に低かったんだな。」

 子供の頃は身長が低かったせいもあった所為か、高く感じたのだが。
 あの時に登ったみたいに小走りで行くと、あっという間に山頂に着いた。
 この見晴らしの良い高台は、村の墓地になっている場所だった。

 「帰って来ていたとは聞いていたが…ラティナにか?」
 「ランディ!良いか?」
 「あぁ、ラティナも喜ぶと思う。」

 ランディも幼馴染だった。
 というか、この村で育った子供達は皆幼馴染だ。
 ランディは僕よりも3つ年上の青年だった。
 ランディと二三言葉を交わすと、ランディは離れた所で待っていてくれた。

 「ラティナ!久しぶりだね‼」

 僕はラティナと書かれた墓石に話し掛けた。
 そして雑貨屋のおばちゃんから貰った花と母さんから貰ったお供え物を供えた。
 
 「実はさ、僕はトール達のパーティーから追い出されてさぁ、その後に僕もパーティーを作ったんだよ。それでね…!」

 ~~~~~???~~~~~

 「テイト君は…いた!けど、あれは?」
 「お墓だね、誰のかな?」
 「お前達はテイトの仲間か?」

 3人は振り返ると、そこにはブレイドと同じ位の背丈の長身の男が立っていた。
 
 「あぁ、自分等はテイトの仲間だ。」
 「そうか…悪いが今はテイトとラティナの2人きりにしてくれ。」
 「ラティナ…さんって?」
 「ラティナは俺の妹で、テイトの…婚約者だった子だ。」
 「「「!?」」」

 3人はテイトの方を見守っていた。

 ~~~~~テイト~~~~~

 「それでね、腹を空かせたブレイドという仲間に御飯を与えたら仲間になって、山道で拾った女の子には凄い才能があって仲間にして、今は4人で旅をしているんだ。トール達なら勇者になって魔王を討伐するというのが目的だけど、僕達の旅には魔王を倒すというのは決めていないで、世界を巡って色んな食べ物を食べて、世界の美しい景色を見てからラティナに教えてあげようと思っていてね。」

 ダーネリアとルーナリアとブレイドは、あんな風に笑って話すテイトを見るのは初めてだった。
 すると、ランディが3人に言った。

 「ラティナは、生きていればこの村から旅立って行ったテイト達と共に旅をする筈のメンバーの1人だった。ラティナは斥候のジョブを神託の儀で得てな。村ではいつも6人で行動をしていたのだが、ある時魔熊が村に現れて…トール達と共に戦ったのだがラティナが魔熊に殺されて、テイトの両親が助けに入って他の5人は助かったが、ラティナだけが…」

 ランディは目頭を押さえていた。
 3人はそれを聞いて立ちつくしていた。
 いつも明るく振舞っていて、細かい所でも注意して気を遣うというのは、幼い頃に婚約者が死んだ所為から来ていたのだったのかもしれないと。

 「そんな感じでね、今のメンバーは頼れる仲間なんだ!だから仲間と一緒に世界中を巡って見聞きして体験した事を、いつかまた話に来るよ!」

 僕は立ち上がると、ランディの方を見た。
 すると、そこには…なぜか涙を流しているダーネリアとルーナリア、そして暗い顔をして居るブレイドが立っていた。
 僕は3人の元に行き、3人をラティナの墓の前に連れて来て言った。

 「こいつ等が僕のパーティーメンバーで、まだ日は浅いけど…掛けがいのない仲間さ!」
 
 3人は跪いてラティナに祈りを捧げていた。
 そして祈りが終わると、僕達はランディに挨拶をしてから墓場を離れて、宿屋に帰って行った。
 宿屋に帰ると、まだ日があったので…遅い昼食を食べてから軽く夕方まで戦い方を両親から学んでいた。
 ブレイドは父さんからタンクの指導をして貰っていた。
 ダーネリアとルーナリアは、実戦形式の立ち回り方を母さんから学んでいた。
 その後、僕達は夕食を食べてから僕はブレイドと同じ部屋に、ダーネリアとルーナリアは別な部屋に入って眠りに就い?

 ~~~~~テイトとブレイド~~~~~

 「テイトの親父殿は素晴らしいタンクだな!」
 「そうなの?親の事はあまり良く解らなかったけど…」
 「タンクとしての知識から、その立ち回りなど…学ぶべき所が多くて非常に楽しかった!」
 「これからの戦闘に役立てそうな知識は得られた?」
 「親父殿の様な鉄壁の守りをしろと言われたら、悪いが自分位は出来ない。だが、両手剣でもタンクの立ち回り方の知識もあったので学ばせて貰った。出発が明日でなければ、もっと多くの知識を得たい所だったが…」

 ブレイドはそれだけ言うと、いつの間にか眠りに就いていた。
 それだけ訓練がきつくて楽しかったのだろう。

 ~~~~~ダーネリアとルーナリア~~~~~

 「テイト君が頑なに私達に手を出さないのは、ラティナさんの事があったからなんだね。」
 「それを知らないで私達は…テイト様に謝りましょう!」
 
 2人は今後、テイトに対する態度を改めようとしていた。

 「それにしてもテイト様は凄い方ですね。」
 「私はラティナ様が羨ましいと思いました。」
 「「亡くなられても思われ続ける強い絆に!」」
 「それにしても私にライバルはラティナさんかぁ~手強いなぁ!」
 「テイト様の想いがいつかは無くなる…いえ、これは考えてはいけませんね。」

 2人は天井を見上げて溜息を吐いた。

 「それにしてもお姉ちゃん、最近はどうなの?」
 「最近は…って何が?」
 「最初はテイト君の方をいつも見ていたけど、最近ではブレイド様の方を見ている時が多いよね?」
 「ダーネリア、気付いていたの⁉」
 「白状しなよ、お姉ちゃん!」
 
 ルーネリアはもじもじとしていた。
 
 「クラーケンとの戦いで船が揺れてバランスを崩した時に、私は海の方に落とされそうになったんだけど…その時にブレイド様が私の腕を掴んで抱き寄せてくれて…その姿がとても凛々しかったの。」
 「それからかぁ、お姉ちゃんがブレイド様の方を見る様になったのは…告白はしたの?」
 「ま…まだよ!」
 「まぁ、ブレイド様は真面目で堅そうだからねぇ?お姉ちゃんもお姉ちゃんで厄介な人に惚れちゃったのね。」
 
 いつかは…そう、いつかは振り向かせてみせる!
 2人はそう誓いながら眠りに就いたのだった。

 翌日…良く晴れたこの日!
 僕達はテオドール温泉村に旅立つ事になるのだった。
 だけど、そこまでに向かうまでには結構険しい道のりになるのだった。
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