特殊スキル持ちの低ランク冒険者の少年は、勇者パーティーから追い出される際に散々罵しった癖に能力が惜しくなって戻れって…頭は大丈夫か?

アノマロカリス

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第一章

第九話 双子の奴隷の少女

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 僕は耳を澄ませて周りを探っていると、ブレイドも辺りを見渡し始めた。
 中衛職の僕と前衛職のタンクとの違いは、感覚の鋭さにある。
 タンクは敵からの攻撃を受ける為や注意を向ける為に存在する…と考えている者が多いが、実は敵をいち早く感知したり場所を把握するという索敵能力が優れているのだ。
 僕の場合は索敵魔法を展開しなければならない様な物でも、ブレイドには感覚的に察知出来ているのだった。

 「テイト、この先から2人の女の子の泣く声がする。」
 「この先って…獣道か?」

 何故そんな場所に女の子の声がするのかは謎だが、放っておける訳もないので僕とブレイドは警戒を怠らずに接近していった。
 すると、首輪をした少女が首輪から伸びた鎖で木に結ばれている所を発見したのだった。
 周りには肉食系の魔物の残骸が散っていたのだった。

 「これは…内側から破裂した様な痕が見受けられるな。」
 「こっちは、浄化された様な感じだな。」

 明らかに魔法と法術士が使う能力だった。
 こんな場所で鎖に繋がれているとしたら、あまり考えたくはないが…魔物の群れから逃げる為の生贄として使われたんだろうな。
 同じ顔をした…恐らく双子だろうと思われる子達は、互いを抱きしめ合いながら震えていた。
 二人とも下着姿であちらこちらに魔物の血痕が付着していたので、僕は水魔法で体を流してあげてから、風魔法で乾かしてあげた。

 「2人とも話は出来るかな?」
 「はい、洗って下さりありがとうございます。」
 「私達はこれからどうなるのですか?」

 まぁ…見ず知らずの人間が来たらこういう反応になるよな。
 僕は2人を怖がらせない様に話した。

 「安心して、見捨てる様な真似はしないから。ブレイド、周りを敵が来たら頼む!」
 「あぁ、任せろ!」

 この双子の女の子の容姿や首輪に胸元にある紋章からすると、恐らく奴隷の子達だろう。
 綺麗な顔をしているが、ここに2人で捨てられた理由があるとすれば…彼女達の体に問題があるんだろうな。
 2人共、すっごい巨乳だからだ。

 この世界はどういう訳か、巨乳の子はあまり好かれない。
 不人気ナンバーワンといっても過言ではないのだ。
 見た目が良くて、プロポーションが抜群でも…巨乳の子はあまり好かれない。
 逆に貧乳やスレンダーがやたらと人気がある。
 中には巨乳の子が好きだという男もいるが、結婚して妻にでもならない限りは街で一緒に歩くという事はあまりない。
 僕は生まれてこの方…女性にもてる何ていう経験は無いので、世間で言われる様な偏見な目で女の子を見たりはしないのだが。

 「これは…呪印が施されているな。」
 「はい。商人様が私達をここに縛り付けて逃げられないようにし、後ろから追ってくる魔物達の餌になれ!…と魔法でここに縛り付けました。」
 「そして私達は魔物に襲われそうになった時に、死にたくないという一心で何かが体から出て…気付いたら魔物達がこんな風になっていました。」
 「恐らく黒髪の子は魔力を発し、白い髪の子の方は聖力を発したんだろう。それによって魔物を撃退したんだろうね。」
 「私達にそんな力が⁉」
 「私達は無能の子として両親に売られたのです。それ以外にも、双子は不吉の象徴だからと…」

 双子が不吉の象徴というのはこの世界では確かにある。
 ましてや、姉妹で髪の色がこうまで違うとそう思われても仕方がない。
 恐らくは生まれ持った性質の所為で髪の色が反映されたのだろう。
 そして魔物の群れの前で死にたくないという強い思いが突然開花したという感じだろうか?
 そうでなければ、魔力持ちや聖力持ちの子が捨てられたり売られたりされる訳が無いからだ。

 「呪印の解除は難しいな…鎖を斬るより木を斬った方が早い気がするが?」
 「テイトの能力でも難しいのか?」
 「呪印の解除はそれなりに難しいんだよ。扉に複数の種類の鍵を同時に解除する位にね。」
 
 双子の女の子達は不安そうな顔で僕を見ていた。
 僕は安心させる為に笑顔を見せた。

 「無意識でしか使った事が無かったけど、やってみるか! スキル【派生】発動!」

 呪印の解除は聖属性が最も効果的だ。
 僕は回復魔法が使えるので、そこから【派生】を使って辿ってみる事にした。
 
 「回復魔法…光…聖…と、これじゃないか! 聖属性から反属性の闇属性…魔属性……‥これか?」

 僕は魔属性を鎖に放つと、鎖は黒い霧を発しながら消滅していった。
 次に双子の女の子の首輪に触れながら魔属性を放つと、首輪も黒い霧となって消滅したのだった。

 「これで自由にはなったけど、さらに…ね。」

 僕は彼女達に触れてから魔属性を流し込んだ。
 黒髪の子の方は問題が無かったが、白い髪の子の方は聖力とぶつかっていたらしく苦しんでいる表情をしていた。
 僕は奴隷の紋章の解読が終わると、彼女達の胸元から奴隷の紋章が消失したのだった。

 「はぁ……凄く疲れた!」
 「お疲れさん!それにしてもテイトは凄いな…奴隷商人にしか解除出来ない呪印を解除出来るなんて!」
 「今回が初めてだったからね。何度かやればもっと早くに解除出来たと思うんだが。」

 双子の女の子は立ち上がってから、僕に頭を下げてお礼を言って来た。
 僕は2人に言った。

 「これで君達は自由だよ。ただ、君達は両親に売られたと言っていたけど…何処か行く当てはあるのかい?」
 「私達はもう誰も頼れません。」
 「開放してくれた事は感謝していますが、行く当てもなく頼れる人もおりません。」
  
 2人は不安そうな顔でこちらを見ている。
 まずい…生半可に野良犬に餌を上げて懐かれた様な目をしている。
 僕はブレイドを見ると、ブレイドは頷いた。

 「仕方ないか…このまま、ハイさよならという訳にもいかないし、一緒に来るかい?」
 「宜しいのですか⁉」
 「嬉しいです!」
 「そういえば、君達の事を何て呼べばいい?」
 「両親からは黒と白って呼ばれていました。」
 「犬の名前かよ⁉あー黒髪の子の方は、夜の闇という意味でダーネリア、白い髪の子の方は、月の光の意味でルーナリアというのはどうかな?」
 「ダーネリア…それが私の新しい名前!」
 「ルーナリア…ご主人様、感謝致します!」
 「ご…ご主人様⁉2人は僕とブレイドの旅に着いて来て欲しいんだよ。仲間としてね!」
 「わかりました…こんな醜い体で申し訳ありませんが、夜の方の務めをさせて戴きます。」
 「私は御主人様達を守る為に盾となります!」
 
 僕は頭を押さえた。
 そして溜息を吐いてから2人に言った。

 「僕やブレイドはそんな事を望んではいない!純粋に旅の仲間としいて扱うからそのつもりでね。」
 「私達を人として扱って下さるのですか⁉」
 「そんな人…初めてです!」
 「それと、これから旅をするに当たって色々覚えて貰う事があるからそのつもりでね。」
 「夜の相手を務める為の…ですか?」
 「だから、ちっがーう‼ダーネリアには魔法を、ルーナリアには法術を覚えて貰うからね。仲間になるのなら、最低限の戦いの仕方を学んで欲しいからそのつもりで!」

 2人は頷いた。
 それと下着姿では不憫だったので、僕は空間魔法から予備のマントを取り出して2人に羽織らせた。
 それから街に連れてから冒険者ギルドで2人の登録を済ますと、親方の店に再び訪れて2人の装備を誂えて貰った。
 金を払うと言っても、親方は一切受け取らなかった。
 僕はその行為に甘えて店を出ると、2人の日用品を揃えてから、食材を多めに購入した。
 その後に魔道具店に行ってから魔導書を購入して、宿に泊まる事になった。

 「明日からやる事が多いから、2人は食事が終わったら早めに寝る事!」
 「「はい、わかりました!」」

 その後…就寝中に彼女達が僕のベッドに入って来たのは言うまでもない。
 僕はそんな事を望んでは無いとハッキリ言うと、彼女達は自分のベッドに入って眠りに就いた。
 
 もう…色々と疲れた1日だった。
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