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第一章

第七話 類は友を呼ぶ? 初めての仲間、その名はブレイド!

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 僕は当てもなく街をブラブラとしていた。
 …というのは、大して目的が無いからだった。

 「魔王を倒すのは勇者の役目で、その勇者パーティーから追い出された僕は何を目指せば良いのだろうか?」

 トール達が依頼を達成して行く事により、勇者に選ばれてからは打倒魔王を掲げて参加をしてきた。
 だけどそれが無くなると、これといってやる事が無いのだった。
 勇者に認定される…というのは勘弁したい。
 勇者に認定されると、国から色々依頼がやっては来るが…主に雑用が多かった。
 それなりの報酬の金額を貰えていた様だったので、くいっぱぐれるという事は無いのだが…それはトールたちだけであって、僕はその後処理の書類の作成ばかりやらされていた。

 「あ、目標が決まった!世界中のグルメ旅行をするというのも良いな!」

 世界を救う…なんていう大層な目的を掲げる必要はない。
 世界は勇者が勝手に救ってくれるだろうから、僕は世界中の未知な魔物の料理を楽しむ旅にしよう!
 今決めたのだった…が?

 「とりあえず、トール達からパーティーを追い出された話だけは親にしておくか。」

 恐らくだが…両親は激怒するだろうな。
 その矛先がトール達の両親に向くだろうが…まぁ、いっか!
 僕は屋台で串焼きを10本購入してから、適当なベンチで座って食べようとした。
 レベルが上がった所為か、パーティーにいた頃よりも腹が減るからだ。
 僕は串焼きを食べると噛み締めた。

 「味はシンプルな塩のみだが、肉汁はそれなりにあるな…?食感からすると、脂身は多少あるが赤みに近い部位なんだろう。これならまだタレの方が味に深みが出るだろうが?」

 この程度の串焼きなら自分でも作れそうだ。
 これが売れるのなら、屋台をやっても請けるというのも手ではある。
 僕は二口目を口に入れると、近くから「グルルルルル…」という腹が鳴った音が聞こえた。
 僕は音のなっている方に振り向くと、そこには黒いマントだがボロボロの布切れに近い物を纏っていた、鼻の上に傷のある男がこちらを見ていた。

 「えっと…食べる?」
 「い…いいのか?」

 僕は串焼きを1本渡すと、男は無我夢中で口に頬張っていた。
 そして男はお礼を言うが、明らかに物足りなさそうな顔をしていたので、串焼きの袋をそのまま渡した。
 男はペコペコと頭を下げながら、残りの串焼きを全て平らげた。
 そして全て食べ終わった男は、土下座をしながら頭を下げて来た。

 「感謝します!命の恩人よ‼」
 「命の恩人って…そんな大袈裟な。」
 「この1週間というもの、喰っていたのは道端に生えていた草だけで飢えを凌いでいたので、久々に肉を食べれたのは嬉しかった!」
 「草って…家畜じゃないんだから。」
 「いや、金はない上に武器も無くて…空腹で困り果てた所に貴方が手を差し伸べてくれて。」
 「そんな大層な事はしてないよ。それよりも、腹は満たしたの?」
 「あぁ、動ける程度に腹を満たす事が出来た!」
 「…嘘だよね?まだお腹が鳴っている音が聞こえるけど?」
 「う…少しは飢えが満たされたが、全然足りません。」
 
 僕は頭を掻きながら男を見た。
 悪い奴ではなさそうなのだが、どうするか?

 「そろそろ街の食堂も開くだろうし、一緒に飯でもどう?」
 「自分は金が無くて…」
 「いや、御馳走するよ。」
 「何故初対面の自分なんかに⁉」
 「何か訳アリみたいだし、話し相手になるよ。」
 
 俺は男を連れて街の食堂に来た。
 そしてボリュームのある料理を注文してから話を聞いた。

 「自分の名は、スウォードという。」
 「僕の名前はテイトだ。」
 
 僕等は互いにお辞儀をした。

 「実は、自分は元々…村から一緒に幼馴染達と冒険者になって魔物を討伐していたのだが、自分はこの通り大食漢で装備代も金が掛かるという欠点があって、パーティー内で疎ましく思われ始めて…」

 スウォードはマントの下の黒い鎧を見せた。
 立派な鎧なのだが傷だらけでガタが来ている感じだった。

 「そんな立派な鎧を身に付けているという事は、スウォードはタンクだったのかい?」
 「あぁ、自分は盾こそ持たないが両手剣を使って敵の注意を集める役割をしていた。」
 「パーティーでは重要な要じゃないか?何でそんな人間があんな所で?」
 「自分の使っていた両手剣が折れてしまい、それでも必死になって魔物の注意を集めていたのだが、振り返るとパーティーメンバーは自分を置いて逃げていて、何とか拠点に戻ると…武器を失った奴に用はない。もう代わりのメンバーは確保したと言われてパーティーを追い出されたのだ。」
 
 なんだかなぁ?
 僕とは境遇が違うんだけど、何か似た様な気がするなぁ。
 他人事ではない気がする。
 
 「スウォードは、これからどうするんだ?」
 「自分はもう武器が無いので、街の中で雑用でもしながら生活をして行こうかと思っている。テイトにも恩返しをしたいしな。」
 
 性格的には悪い奴ではなさそうだな。
 何より僕と似た境遇だし、放ってはおけない感じする。
 僕はパーティーはもう懲り懲りだと思っていたけど、こんな奴が仲間なら1人旅よりも楽しくなるだろうか?

 「スウォードが良ければ、僕と一緒に旅をしないか?」
 「そういえば、テイトの旅の目的はなんだい?」
 「僕は世界中の未知の料理を楽しむ為に旅をしようと思っているんだ。ある場所では路銀を稼いで、又ある場所ではその場所の郷土料理を楽しむ為の旅をね。」
 「面白い目的だな。その旅に自分を誘ってくれるのか?」
 「あぁ、一緒に世界中の料理を食べ尽くそうじゃないか‼」

 スウォードは考えている感じだった。
 特に当てもなく旅をしてグルメを楽しむ…普通そんな考えを持っている冒険者はいないからだ。
 
 「だが、自分は武器が無いのだが…それでも良いか?」
 「あ、武器なんだけど…確かスウォードは両手剣だったよね?」
 「あぁ、ジョブの特徴で盾が持てなくてな。」
 
 僕は空間魔法からミスリル魔鉱石の両手剣を取り出してからスウォードに渡した。

 「これでよければあるけど、どうする?」
 「これって…何が使われているんだい⁉」
 「ミスリル魔鉱石で鍛え上げられた両手剣だよ。」
 「そ…そんな国宝級の剣なんか貰えないよ!」
 「誰が上げるといった?貸すだけだよ、ただし脱退する時に返して貰うという事で。」
 「だが、自分がこれを持って逃げるとは思わないのかい?」
 「それならそれで、僕の見る目が無かったと思って諦めるさ。」

 するとスウォードは、椅子から立ち上がって地面に跪いて言った。

 「このスウォードは、テイトが必要ないと言われるまで共に戦うと誓う!」
 「スウォードは何か勘違いをしてないか?」
 「勘違いとは⁉」
 「僕が必要なのは、共に旅をしてくれる仲間だ。部下が欲しい訳じゃない!」

 僕は手を差し出すと、スウォードは僕の手を取って立ち上がった。
 
 「それにしても、串焼きを差し出しただけなのに…奇妙な縁だな。」
 「あれのお陰で自分は命拾いをしたからな!」
 「じゃあ、これから頼むよ!」
 「あぁ! このスウォード…いや、これは以前のメンバーに名付けられたあだ名だから捨てるとしよう!」
 「なら、似た様な名前で申し訳ないけど、ブレイドなんてどうだい?」
 「ブレイドか…わかった、これから自分はブレイドと名乗ろう!」

 僕とブレイドは食事を終えると、親方の店に向かってからブレイドの鎧の修理を依頼した。
 漆黒の鎧は、ミスリル魔鉱石を使用された物に生まれ変わっていた。
 ここでもまたブレイドは感激をして泣き叫ぶのだった。

 こうして僕は、真面目で少し暑苦しい仲間を得たのだった。
 境遇が似ているというのもあったけど、ブレイドとの旅ならなんだか楽しそうだしな!
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