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第一章

第三話 アルセルトの街

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 王都の街から旅立ってから、二週間後にアルセルトの街に着いた。
 道中は何度か魔物に襲われたが、それらは護衛の冒険者で対処が出来ていた。
 
 「さてさてさーてと、ついにやって来た他の街…僕の事を知らない街というのは新鮮で良いな!」

 以前の王都の街だと、密かに勇者パーティーのお荷物とか、寄生虫とか陰口を叩かれていたりしたが。
 この街では、そう言った目で見られる事はないだろう。
 まぁ、王都の街からこの街に来た者が僕を知っていれば、勇者パーティーから追い出されたとか言われるのだろうが、そうそうそんな奴には会う事はないか!
 
 「さてと、軍資金はたっぷりあるし、買い物でもしようかな?」

 アルセルトの街は、鉱山の街である。
 鉄鉱石などが豊富に採れる街で、中にはミスリルなどの取れる鉱山がある。
 それ以外にも、この街の鍛冶職人は主にドワーフで他の街よりも性能の良い武器や防具が売られている。
 僕の剣は、村を出る時に両親から貰った鉄の剣で、手入れを欠かした事が無いが…そろそろ寿命に近かった。
 ミスリルの剣でも買えれば良いなぁ、と思ったりもする。
 ミスリルの剣は、冒険者にとっては憧れの武器だからだ!
 ただ、AランクやSランクの人の武器が主にミスリルなので、軍資金はたっぷりあると言っても買えるかどうかは別の話だが…?

 「この店が良いかな?店の造りはボロい感じだけど、こういう感じの方が意外に質の良い物が置いてあったりするもんだ!」

 僕は扉を開けてから中に入ろうとすると、強いアルコールの匂いが店の中に充満していた。
 店の中は薄暗く、品物はあるけど数が少なかった。

 「すいませ…」
 「おい、ポトフ!酒が切れたから早く買って来い‼」
 「親方、もう金なんか無いですよ!」
 「金が無ければ、店の商品を何処かに売って作って来い‼」
 「質の悪い鉄鉱石で作った武器何か売れませんよ。」

 う………僕の見立ては間違っていた様だ。
 この店には碌な品物が無い。
 僕は店から出ようとすると、ドワーフの少年が声を掛けて来た。

 「お客様ですか?いらっしゃいませ。」
 「うん、武器が欲しかったんだけど、先程の会話だと無さそうだよね?」
 「親方は腕は良い鍛冶職人なのですが、性格がちょっとアレで…以前は鍛冶ギルドから質の良い鉱石を融通されていたのですが、半年前に鍛冶ギルドのお偉いさんと衝突してから質の悪い鉱石しか回って来なくて。」
 「それで酒浸りになったのか。腕の良いってどの位?」
 「親方の腕は、この街の3人の鍛冶師に選ばれるくらいの腕だったんです。」
 「おいポトフ!何をくっちゃべっているんだ!早く酒を買って来い‼」
 「…という感じで、現在ではあの通りになっています。質の良い鉱石が手に入れば、親方もやる気を出してくれると思うのですが…?」

 なるほど、質の良い鉱石があれば武器を作ってくれるのか!
 ただなぁ…酒に入り浸っていて、裸で寝ているあんなに人そんなに有能な鍛冶職人なんだろうか?
 いやいや、人は見た目では測れないだろうし…。

 「仮に、質の良い鉱石を持って来たとして、必要な物はそれだけ?」
 「他にも魔物の素材などがあると、防具も作れたりします。 他にも魔物の骨で剣の補強部分を作ったりもしますから。」

 僕は空間魔法からワイバーンを1頭取り出して店に置いた。
 本当は旅先中で振舞おうと持っていた物だったが、ワイバーンの革は鉄のナイフでも傷が付かないので、捌くのは無理だと持って諦めていた物だった。

 「これは…ワイバーンですか⁉」
 「これで、防具や補強の代わりになるかい?」
 「十分過ぎます!このワイバーンは貴方が倒したのですか?」
 「うん。 あ、僕の名前はテイトだよ。」
 「ボクの名前はポトフと言います。ちょっと親方に聞いてみますね!」

 ポトフは親方に声を掛けると、親方はポトフとワイバーンを見て目を丸くしていた。
 
 「お…おい、坊主!これをお前さんが仕留めたのか⁉」
 「はい。ですが、武器がもう寿命で…それで新しい剣が欲しくて立ち寄ったのですが。」
 
 僕は鉄の剣を親方に渡して見せた。
 親方は僕の鉄の剣を鞘から抜いて調べていた…が、少しよろけたりしていて大丈夫なのかと思った。

 「この剣の性能でワイバーンは普通は倒せないんだがな!」
 「なのでもっとしっかりした剣が欲しいのです。 これからの先の旅に必要なので…」
 「材料があればそれなりの物を作ってやれるが…俺からの依頼を請けるか?」
 「鉱石を持って来いという話ですか? 鉱山に入る事は出来ますけど、僕は鉱石の良し悪しは解りませんよ?」
 「ならポトフを連れて行くと良い!それと、お前の剣を整備もしてやろう…が1日くれ!」
 「わかりました。」
 「あと、このワイバーンは貰っても良いのか?」
 「防具を作ってくれるという条件ならお譲りします。」
 「防具もそうだが…コイツの肉は上手いので食材も貰うが?」
 「なら食べさせてください。それで手を打ちましょう!」

 親方は刀身が光る短剣を取り出して、ポトフに渡した。

 「ポトフ、捌け!そして今日はワイバーン料理だ!」
 「はい…テイトさん、いただきますね!」

 ポトフは皮を丁寧に剥がしながら捌いて行った。
 刀身が光るナイフは、滑らせる様にワイバーンを捌いていた。
 業物のナイフなんだろうか?
 その後、夕食を御馳走になった。
 初めて食べるワイバーンの肉は、初めて食べる食感と肉汁の溢れた最高のモノだった。
 僕は換気をされているとはいえ、少し酒臭い店に泊めさせて貰った。

 翌日、目を覚ますと…
 ポトフが旅に出る準備をしていた。
 僕も起きてから用意すると、親方からある物を採って来いと言われた。
 その物とは?
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