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第二部

第一話 少し…ゆっくりさせてもらおう。

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 俺はマイネア村に戻って今後の打ち合わせを仲間達とする事にした。
 …というのは建前で、のんびりしようと思っていた矢先に王国に呼び出されたので、結局休暇らしい物はなかった。
 現在港では序列一位~四位迄の勇者パーティーが他大陸に渡る為に、準備をしている筈だ。
 ちなみにマリアネートが振り分けられた大陸は、王都から一番遠いゾルディック大陸である。
 他の勇者達もそれぞれの大陸に派遣されることになっている為に、今は港が非常に混み合っている筈なので、少し時間を置いてから出発しようと考えていた。

 「それで…だらけているんだね、お兄ちゃん?」
 「ここの所…何かと忙しかったからね。」
 「右に同じく…」

 俺とマリアネートとミュンは、村の近くにある湖に来ていた。
 そこで木を編んで作ったチェアーに横になって日向ぼっこをミュンと楽しんでいた。

 「あぁ~~~細胞が生き返る~!」
 「お兄ちゃん、何か年寄りみたい。」
 「年寄りはこっち~、俺はまだ若~い!」

 俺はミュンの方を指差して言った。
 すると当然、ミュンは怒り出した。

 「スモールストーン!」
 「あいたぁ!」

 俺はミュンから小石が降る魔法を頭に喰らった。
 ミュンは相変わらず、年より扱いをされるのが嫌だったみたいだった。

 「テクト君、殴るよ!」
 「すでに殴られた様な物なんだが…?」
 「確かに私の方がかなり年が上なのは認めるけど、年寄り扱いされるのは…」
 「その水着の所為だよ。半袖で膝まである短パンって…いつの時代の水着だよ?」
 「私達の頃はこれが普通だったのよ。」
 「マリアネートを見てみろよ、今の時代はビキニが当たり前だぞ!」

 ミュンの水着はなんというか、時代を感じる水着だった。
 どちらかというと、海女が着る様な水着に近かった。
 そういえば、女戦士が着ているビキニアーマーもここ数十年で発売されたくらいか。
 なら…仕方ないのかなぁ?
 俺はミュンの水着に手を触れた。

 「エクストラスキル・アイテム創造!」
 「え?ちょ…ちょっと!」

 俺は闇ギルドとの戦いの後に新たに手に入れたテクニカルスキルのアイテム創造を使って、ミュンの時代を感じる水着をマリアネートの来ているビキニに変化させた。
 アイテム創造というスキルは、材料が揃っていればその材料で出来るアイテムを作りだす事が出来る以外に、現存する材料でも別な物に変化させる事が出来るという物だった。
 なので、変化させたのだが…ミュンはかなり恥ずかしそうにしていた。
 それもその筈、ビキニは下着と大して変わらない面積だったからだ。

 「お姉ちゃん、似合うよ!」
 「そ…そう?おかしくないかな?」
 「そんな事無いよ、すっごく可愛い!」

 ミュンは照れてみせた。
 俺も目を開けてみるが、中々似合っている感じだった。
 だが、この世界の水着は紐で結ぶタイプなので、ちゃんと結んでないと解ける場合がある。
 ミュンが水に入った時に、事故に見せ掛けて紐を解いてやろうかなぁ…とか考えていると、ミュンに睨まれた。
 そうだった…ミュンのテクニカルスキルは【サトリ】という相手の考えている事が分かるスキルだった。
 なので、迂闊に考えると心が読まれるという厄介な物だったので、やましい気持ちは考えないようにしないと行けなかった。

 「どうしたのお姉ちゃん、顔が怖いよ?」
 「今テクト君が、私が水に入った時に紐を解くって考えていたから…」
 「お兄ちゃん…幾ら私達しかいないからって。」
 
 マリアネートはミュンを連れて水に入ろうとしていた。
 俺も二人の元に行こうとしたら、見えない壁で阻止された。
 ミュンが結界を張ったみたいで通る事が出来なかった。
 まぁ、紐を解くのも楽しみの一つだが…俺には透視魔法がある。
 それで見れば、水着なんか無いに等しい…のだが、ついでに妹の裸まで見てしまう事になる。
 まぁ、風呂に入る際に水が勿体ないという事で少し前までは一緒に入っていたので見た所で何も思わないが、あれから数年が経過しているので久々に見てみよう…と思っていたが、見る事が出来なかった。
 どうやらこの結界には、透視を遮断する術式が組み込まれているらしい。
 
 「それにしても、ミュンと何処かに行こうとすると必ずマリアネートが付いて来るな。まだお兄ちゃんから離れるのは寂しいのかな?」

 俺はそう思っていたが、そうではなかった。
 ミュンが俺と二人っきりになると危ないと感じて、マリアネートに同行を求めているという事だった。
 いやいや、別に夫婦だから良くね?
 …と思っていたが、考えてみるとミュンもまだ初めてらしいので恐怖感があるのだろう。

 「あ、転移魔法で抜け出せば良いんだ!」

 …と思って転移魔法を使ったが弾かれた。
 ディスペルも効果が無かった。
 鑑定魔法も弾かれた。
 この結界って、一体どういう物なのだろうか?
 
 「あ、そういえば師匠が言っていたな。仲間にはパーフェクトバリアという結界を張れる者が居て、如何なる魔法も効果を成さないって…まさか師匠の言っていたパーフェクトバリアってこれか⁉」

 師匠が自信を持って言ったのなら、多分俺程度の魔法ではこの結界を破る事は出来ない。
 魔力制御を高めてから魔力をぶつける…というのも無駄だろうな。
 魔力量に関しても、俺よりミュンの方が遥かに高い筈だし。
 そもそも、ミュンのレベルって幾つなんだろうか?
 まぁ普通に考えて…三百年生きる妖魔だと俺よりは遥かに高いか!
 そう思った瞬間に身構えたが、頭からは何も落ちて来なかった。

 「あれ…この結界は心の声も通さないのか?」

 なら…このロリババァ!
 幼児体系の童顔!
 三百年生きる妖魔!
 えーっと、他には?
 そう思った瞬間に、グラビティで俺は地面に押し潰されそうになった。
 心の声を通さない壁では無かったのか?
 首をミュンの方向に向けると、ミュンの目が赤く光って明らかに激怒していた。
 
 「テクト君に言っておくけど、この結界は君の魔法を無効化するけど、心の声はバッチリ聞こえているんだよ。」
 「まさか、遮断されていて聞こえているとは思わなかった。」
 「そういえば、以前にミュンがグラビティを放った時も、悪口のどれかに反応して魔法を放ったんだっけか?何の悪口が一番怒る切っ掛けになったんだろうか?」
 「どれも私にとっては怒る言葉です‼︎」

 だって…目の前には、奥さんであり、彼女である女性が水着を着て居るんだよ。
 旦那だったら一緒に居てもいいだろうし、こんな所に押し込められて居るのは悲しいよ。

 「テクト君はさっき、私の水着の紐を解くって言ってたじゃない!」
 「それは思っていただけで、実際に実行するとは…」
 「もしも私と二人っきりだった場合はどうしたのよ?」
 「そんな事決まっているだろ!○○○○ピーーーから、○○○○○○ピーーーーー艶っぽくなったら、○○○○○○ピーーーーーから最後に○○○○○ピーーーーする迄だ!」
 「そんな文字に書けない様な言葉を連発しないでよ!」
 「仕方ないだろ!こうでも訳さないとこの物語が消えるかもしれないんだから!」
 【はい、過激な文章は作品として削除される可能性がありますので…作者談】

 あまりにも過激な言葉を連発した所為か、マリアネートには理解が出来ない言葉みたいだった。
 だが、マリアネートが真っ赤になっているミュンを見てなんと無くだが察したという感じだった。
 すると、ミュンはマリアネートの手を取ってその場から立ち去って行った。
 俺は相変わらず結界から出られずに放置されていた。

 「ミュン、俺はここから出られないのだが?」
 「一晩反省していなさい!」

 そう言われて、マリアネートとミュンは村に帰って行った。
 俺はというと、結局その日は外に出る事ができずに…翌朝になって、結界が解けて家に帰る事が出来た。
 もう少し自重しないと行けないな…と思った。
 結局貴重な休みはこうして潰れたのだった。

 さて、次回からは本編がスタートしますのでお楽しみに!
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