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第一部

第二十五話 お約束的な決戦!前編

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 「久しぶりだな、テクト!」
 「ギザリス…それと、クルーシスか。俺を呼び出すのは良いとして、この人数は何だ?」
 「お前が強いのは知っている、だからオレ達は助っ人を頼んだんだよ。」
 「それはただ単に、お前等が弱いからだろ?幾ら弱いからと言って、さすがにこの人数は多すぎはしないか?たった一人の人間を殺るだけで…」
 
 俺は素早く左右を見た。
 闇ギルドって一体何人いるんだ⁉
 少なく見積もっても、三百人位はこの場にいるぞ?
 
 「さすがのお前もこの人数では歯が立つまい!」
 「お前幾ら何でも…いや、馬鹿に何を言っても無駄か。それで?」
 「お前の正体は分かっているぞ!まさかアンデットだったとはな‼」
 
 うわー…本当にあの話を信じたのか?
 なら、それに乗っかるとしよう。

 「この間逃した奴等から聞いたのか、だがどうする?闇に関する者達が俺に対しての攻撃方法はあるまい?言っておくが、俺は火は超越しているぞ!」
 「火だけが武器じゃねぇ!こういう攻撃方法もあるんだよ、やれ‼」

 するとギザリスの背後から蓋の開いた瓶が飛んできた。
 その中身は聖水の様なのだが?
 俺は態と聖水を浴びると、片膝を地面に突いて苦しむ…フリをした。
 すると、クルーシスの所のプリーストのファラとギザリスの所の治癒術士が俺にターンアンデットを唱えた。
 俺はアンデットではないので全く効きはしないが、一応奴等の信じている設定の為に効いたフリを続けた。

 「まさか…闇に属する者が聖属性魔法だと⁉」
 「お前の弱点は知り尽くしているんだ!本来の倒し方とは違うが、この方法でお前を苦しめてやるぞ‼」

 俺はいつまでこの茶番に付き合えば良いんだ?
 来るならさっさとして欲しいんだがな?
 するとギザリスが命令して、闇ギルドの者達が聖水を持ってこちらに向かって来た。
 俺は決戦前日に作りだした創造魔法を展開した。

 「ヘル・ダイアリア‼」
 
 俺は周囲に黒煙を発すると、その黒煙を浴びた者達は腹を押さえてしゃがみだした。
 創造魔法で作りだすモノは、強力な魔法程発動は難しい。
 本来なら喰らったら死ぬ即死魔法も作りだそうとしたが、上手くは行かなかった。
 なので弱体魔法に近い魔法を作りだしたら成功したのだった。
 ちなみに即死魔法に近い魔法も一般冒険者には効果があるが、耐性がある様な者には効果が薄い。
 そしてダイアリアという魔法は、強烈な下痢を起こす魔法である為に…?

 「「ぐあぁぁぁぁぁ!」」
 「「「ぐぉぉぉぉ…」」」
 「どうしたお前等⁉」
 
 …という様な悲鳴を上げる者達が多かった。
 闇ギルドの連中は、毒に対する抵抗力には絶対の自信がある為に、毒魔法を使用しても効果は薄い。
 ならば体に直接効果がある下痢を起こす魔法ならどうだろうかと創造してみたら、意外に効果があった。
 喰らった者達の中には、屁をこいた奴が数人いてその場から離脱して行った。
 とはいえ、たった数人程度なので数が減った訳ではないが、先程の様に向かって来る者は無くなって警戒をしている様だった。
 なら、この位置なら他の魔法も試してみるか!
 俺は奴等の上空に魔法陣を展開すると、ヘル・ダイアリアとパワーアジテーションの魔法を放った。
 ちなみにパワーアジテーションとは興奮するという魔法なのだが、戦闘力が増すという訳ではなく…強い欲情を湧き上げさせる魔法なのだ。
 つまりどういう魔法かというと…?
 男がこの魔法に掛かると勃起する。
 それもギンギンになる位に…流石にこんな魔法に抵抗出来る方法はなく、闇ギルドの者達の数人の動きを止める事が出来た。
 
 「どうだ、動き難いだろう?」
 「貴様、先程からなんだその魔法は⁉」
 「どういう効果なのか聞いてみるがいい。」
 「お前達、何が起きたというんだ⁉」

 生理現象は、恥ずかしくて他の者に話せる内容ではない。
 喰らった者達は、頑なに口を閉ざしていた。

 「ファラ、ネイレラ、コイツ等に治癒魔法をしてやれ!」
 「「はい!」」

 そして欲情している状態の者達に、不用意に女が近付くと…

 「「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 …という感じに襲われるのだ。
 闇ギルドの中にも数人女性がいるみたいで、男は女を襲いだした。
 この魔法は人間に使うのは初めてだが、実験で捕えたアルミラージやウェアラットで効果は実証済みだった。
 さらに女を巡る為に他の男達に対しても牙を剥く為、同士討ちを起こさせるという効果もあった。
 アルミラージもウェアラットも、メスを手に入れる為に殺し合っていたからな。
 ある意味…恐ろしい効果のある魔法だった。
 だが、魔法に掛かってない者達は…興奮に掛かっている者達をその場で斬り捨てた。
 対処に慣れているのか、仲間であっても容赦がない…それが闇ギルドだった。

 「さすがにこんな子供騙しの魔法は効かないか。」
 「貴様、色々小細工をしやがって…」
 
 さて、次はハッタリが効くかどうか…名乗ってみるか。
 闇ギルドの連中は、闇に生きる者達だが…コイツ等とは敵対はしたくは無いだろう。
 勇者や冒険者ならともなく、闇ギルドは別に正義の為とかいう理由を掲げている訳では無いからな。

 『小細工をするのはこれ位にしよう。我はアンデットマスターリッチ…そして魔王軍不死軍団統括のテクトだ‼』
 「な…魔王だと⁉」
 「馬鹿な!」

 さて、ここで何人が騙されてくれるだろうか?
 ギザリスやクルーシスのパーティーもそうだが、闇ギルドも魔王軍には目を付けられたくはない筈。
 俺の狙いとしては、闇ギルドの連中が魔王軍とは事を構えたくないと契約破棄を言い出して、その場を去る…事を祈りたいのだが?
 武器を構えている辺りは、さすがに騙されてはくれないか。
 軍団と名乗ったとはいえ、こちらには配下が誰もいないからだ。
 軍団統括で一人は流石に怪しまれて、それがハッタリだとバレている様だった。

 「小細工はこれで終わりだな、後は最初に計画した通り…やるか!」

 俺はありったけの強化魔法を掛けてから、収納魔法から剣を取り出して二刀流で奴等の陣営に向かって行った。
 そしてギザリスとクルーシスの仲間達は闇ギルドの連中に奥へと追いやられると、闇ギルドの連中は俺の方に向かって来た。
 俺は片っ端から闇ギルドの連中を斬りまくったのだが、一向に数が減った感じがしなかった。
 まさか、増援でもいるのか?
 俺はグラビティやライフスティールの魔法を駆使して倒して行ったが、まだ数が減っている気がしなかった。
 それで百以上を斬り殺した筈だが、奥の方を見るとまだまだ数がいた。
 俺は少し距離を取ってから、フレイムウォールを展開して息を整えようとした…がそうはさせてはくれなかった。
 奴等は隙が無い上に、炎の壁を無視して突っ込んで来るのだった。
 まるで指揮官に忠実な兵士の様に…。

 「まさか、今迄のは下っ端じゃないだろうな?」

 闇ギルドの内情は良くは知らんが、幹部クラスはSクラス冒険者と同等で、その配下はAランク冒険者と同等だという話だった。
 さすがの俺もAランク冒険者相手だと苦戦はするが、今迄これといって苦戦をしている感じが無かった。
 …という事は、今迄は配下の奴等ではなく、兵隊アリみたいな下っ端だったのか?
 やばいな、配下の奴等が出てきたら厄介だな。
 そう思っていたら、明らかに強い奴等が三人向かって来たのだった。

 「良い趣味しているな、初めっから強い奴等が来いよ!」
 「弱い者を差し向けて疲弊した所でトドメを刺す…それが戦いで最も有効な戦法だろ?」
 「違いないが、これだけの人数でせこくは無いか?」
 「我らは騎士では無いからな、正々堂々という言葉は存在しないんだよ!」
 「お前等の性格は俺は好きだぜ!この戦いが終わったらお近付になりたい物だ…」
 「お前が生きていたら考えておいてやるよ!」

 …とはいえ、さすがにこのレベルは手に余る。
 リジェネートで深手ではない限りはその場で回復はするが、コイツ等は深手を負わせて来る。
 さすがに深手を負わされると簡単には治りはしないし、回復魔法を使って治す暇はない。
 ヤバいな…体力が満タンの状態なら苦戦はしなかったが、さすがに疲弊した状態ではこちらが不利になっている。

 「ここで一つ提案なのだが、奴等を見限って俺に付かないか?」
 「俺らも金に汚いとか良く言われるが、依頼主は裏切られないでな!」
 「あんな奴等と手を組んでもロクな事が無いぞ!」
 「話は終わりだ、死ね‼」

 俺はアクセラレーションで素早く距離を取ったが、相手も同じ魔法で追って来た。
 まさか、相手側にも赤魔道士がいるのか?
 三人の動きが先程とは格段に速くなっていた。
 俺は創造魔法で作った強化魔法を発動した。

 「神速・神威!」

 アクセラレーションの三倍の速さの動きが出来る魔法を使い、二人を始末して最後の一人にトドメを刺そうとすると、相手から信じられない言葉を聞いた。

 「神速・神威‼」
 「何だと⁉」

 神速・神威は俺の創造魔法でしか作り出す事が出来ない。
 それが相手にも使えるという事は、相手と同じ魔法をコピー出来るスキルなのか、もしくは創造魔法を相手も使えるという事になる。
 優勢だと思っていたが、一気に劣勢になっていた。

 「お前は赤魔道士なのか?」
 「俺は忍者だ!」

 忍者と言えば、上級ジョブで素早さに特化した物理攻撃最強の攻撃力を持つ。
 魔道士の俺では、この戦況を覆す事は不可能だ。
 そして俺は徐々に追い詰められていき…状況は絶望的な状態へとなったのだった。
 俺は闇ギルドの下っ端に拘束されると、ギザリスとクルーシスがニヤけ面で現れた。

 「良いザマだなテクト!」
 「てっきり俺は、闇ギルドの者達に始末されると思っていたが?」
 「奴等にはテクトを瀕死の重傷を負わせるまでに痛めつけろと命令しておいた。」
 「そして最後のトドメはお前が刺すというわけか。」
 「あぁ、最終的にはな…だがそれまでは、今迄の恨みを晴らす為にいたぶり尽くすがな!」
 「さすがクズ勇者だけあって良い趣味しているな!」
 
 そして俺は、ギザリスとクルーシスから容赦ない殴る蹴るの暴行を受けた。
 一応強化魔法で保護してはいるが、二人もそれが分かっているのか…段々とエスカレートしていき、最後にはメイスや剣の峰で殴り始めていた。
 そして永遠とも思われる時間を殴られていると、二人は疲れて別な奴に変わった。
 それはクルーシスの時の騎士ガイネスと魔道士のミーリアだった。
 ギザリスやクルーシスに比べれば、ガイネスの力は遥かに強い。
 そしてミーリアも火魔法を顔に近付けて皮膚を焦がされた。
 俺は少しだけ悲鳴を上げると、ミーリアは嘲笑いながら威力を少しずつ上げて行った。

 「本当に良い趣味しているな!何故一思いにやらない?」
 「それじゃあ、つまらないからよ!」
 「お前の所為で俺達はあの後どんな目に遭ったのかを、お前で晴らすのさ。」
 
 そしてまた暴行が始まった。
 流石に強化魔法以上の攻撃を喰らえば、俺にだってダメージが蓄積していく。
 そして二人が疲れ始めると、またギザリスとクルーシスの攻撃が始まった。
 流石にこれ以上は、俺も耐えられるか分からない。
 死を………覚悟したその時だった。
 背後から俺を呼ぶ声がしたのは‼︎

 「テクト、遅くなった!」
 「旦那、準備に手間取っちまった!」

 俺は巻き込まない様にしていたのに…知り合いが駆け付けてくれたのだった。
 ここから俺と………仲間達の反撃が始まるのだった。
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