器用貧乏な赤魔道士は、パーティーでの役割を果たしてないと言って追い出されるが…彼の真価を見誤ったメンバーは後にお約束の展開を迎える事になる。

第一部

第十九話 お約束的な…尾行？

　店を出てから冒険者ギルドの近くにある宿屋に帰る時に尾行されていた。
　気配の消し方や、人混みに紛れるやり方は恐らく相当な手練れだろう。
　闇ギルドでも下っぱでは無いな…これが出来る奴だと、相当な手練れだろう。
　ギザリスはどうやって彼等と手を組めたんだ？

　「今襲ってこないところを見ると…さしずめ様子見というところか？」

　闇ギルドは、金次第では何でもやる。
　暗殺や人攫いなどは勿論、金額次第では貴族の家にだって平気で襲撃する。
　下っ端なら大した事はないが、幹部になると少し面倒臭い。
　幹部クラスは、冒険者のランクでいうとA～Sランク位の実力がある。
　魔物は力を振り翳して馬鹿みたいに突っ込んでくるが、人間の場合はそうはいかない。
　多彩な武器や魔法で仕掛けて来る為に、最もやり難いのである。

　「闇ギルドの奴らと戦ったのは初めてでは無いからな…」

　幹部の一人とやり合ったことがあった。
　あの時は…クエストで貴族令嬢の護衛だったか？
　まだ冒険者時代に戦った事がある。
　護衛の騎士と共に移動して、山賊の襲撃に見せながら闇ギルドが絡んでいたのだった。
　護衛の騎士も二人以外は全員殺され、山賊側は全て始末した。
　師匠との修業が無かったら、俺も巻き込まれて死んでいただろう。
　だが、闇ギルドはあの時にもう一人いたが…攻撃は仕掛けて来なかった。
　俺の顔も見られていた筈だったが、その後も襲って来る気配は無かった。
　その辺は情報屋に聞いたのだが、闇ギルドのメンバーは金に汚く金で動く組織だった。
　その為にメンバーが殺されても、敵を討つ為に襲って来るという様な私怨では来ないという話だった。
　殺されたのはその者が弱いから…それが闇ギルドの掟らしい。

　「ん？帰って行ったか…」

　宿屋に着くと、俺を監視していた者は姿を消して行った。
　恐らくこれが決戦の日まで続くんだろうな？
　明日から少し仕掛けてみるか！
　その日は、一応結界を張ってから寝た。
　…が、翌朝に確認をしたが襲撃をされた形跡は無かった。
　余裕があるのか、律儀なのか…？
　俺は宿から出て暫く歩いていると、明らかに怪しいカップルが跡を付けて来た。
　何故怪しいか？
　繁華街から離れた場所にも着いて来たからだった。
　俺はアクセラレーションを掛けてから素早く移動した。
　だが、カップルは追って来る気配は無かった。

　「なるほど、あれは囮か。」

　建物の上を移動している影が見えた。
　しかも一定の距離を保って追って来る。
　誘導…されているという訳では無いか。
　だが、索敵魔法では俺の道の先で大勢の数がいる。
　ただの通行人なら良いが、大人数が止まっているのが気になった。

　「まさか、襲撃の日が今日じゃ無いだろうな？」

　もしも今日だった場合は、情報屋に支払った金が無駄になる。
　そんな事を考えていると、距離を保って走る影が多くなっていた。
　俺は立ち止まってから光魔法のフラッシュを周囲に放った。
　この光を見た者は眩しくて目が眩んでいる隙に、俺は浮遊魔法で空高く一瞬で浮かび上がってから鳥に擬態した。
　すると、建物の上にいる者達は一斉に周囲を見渡していた。
　この擬態魔法は、長時間変身は不可能だった。
　俺は鳥の姿のままで素早く移動した。
　そして街の外に行くと、大木に枝に止まると擬態魔法が解けた。

　「さて、アイツらはどうなったかな？」

　止まっていた大人数が急に動き出していた。
　やはり俺を待ち伏せしていた者達なのか？
　昼日中に闇ギルドの連中が襲って来るのか？
　アイツらは街の中以外では昼間でも襲って来るが、街の中では基本は夜にしか襲っては来ない。
　だとすると、ギザリスやクルーシス以外にも俺に用事がある奴が居るのか？

　「敵はアイツらだけじゃ無いのか？」

　ところが、俺の事を襲おうとしたのは…意外な奴等だった。
　さて、その者達とは一体⁉︎