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第一部

第十六話 お約束的な…復讐計画(これもお笑い要素が…)

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 俺はマイラル村から転移魔法で冒険者ギルドに移動してから受付のカウンターに行くと、早速ギルドマスターの部屋に通された。
 前回の事を訂正しておくが…俺は確かに透視魔法を使用したが、ギルマスの下までは見ていない。
 なのでただの当てずっぽうだったのだが、まさか当たっているとは思わなかった。
 なので、まずはそこから言い訳をしなければならないかと思っていたのだが?

 「その必要はありません、今回は別件でお呼びしました。」
 「…という事は、前回の事は怒ってないんですね?」
 「少しは怒っていますが、今回はそれどころでは無い内容ですので、先にそちらを話します。」

 なんだろう、俺何かしたっけ?
 昔はヤンチャしていたけど、ここ最近は大人しくしているからやましい事はないはずだが?

 「今回お呼びしたのは、元勇者達の話です。」
 「俺が呼ばれるという事は、俺を追放して来た元勇者達の…っていう事ですよね?」
 「そうです。」

 まぁ、理由はなんとなく分かる。
 俺を追放してから物事が上手くいかなくなって逆恨みをしているという所だろう。
 問題はどの勇者が逆恨みをしているという事だが?

 「クルーシスとその仲間達と…」
 「また心を読んだのですか?」
 「話をスムーズにする為です。」
 「本当に何でも伝わってしまうんですね。」

 目の前に居る幼女は、見た目は幼女だが数世紀を生きる妖魔で彼女には誰も逆らう事が出来ない魔王みたいな存在だ。
 今まで何人の人間を理不尽な理由で葬ってきたんだろう?
 …というか、栗鼠族ってみんな長命な種族なのか?

 「長命なのは私だけです。…というか、誰が妖魔で魔王ですか‼︎」
 
 目の前のロリババァ…

 「貴方は本当に良い度胸していますね!」
 「すいません、口の悪さは師匠の所為で…」
 「貴方がローゼッティーの最後の弟子なのは知っていますから、あの子の性格なら弟子が歪んでしまうのもわかりますが…」
 「ギルマスは師匠とも知り合いだったんですか?」
 「貴方をローゼッティーに紹介したのは私ですよ。」
 「なにぃ⁉︎」

 よりにもよって、あのクソババァを紹介したのは目の前に居るロリババァだったのか。
 どっちもロクでもないババァだな!

 「貴方という子は…本当に喧嘩を売っているのですか?」
 「すいません、もう逆らうような発言はしません!」
 「こう見えても私は年上なのですから、年長者を敬って欲しいですね。」

 …とは言っても見た目が幼女だからなぁ…?
 幼児体型で下の毛も生え揃ってないガキを敬えと言われても…?
 そう思った瞬間に、ギルマスが重力魔法のグラビティを放って…俺は床に押し潰されそうになった。

 「ギルマス…その魔法は反則です!」
 「貴方という子には、一度本気でお仕置きした方がいいと思いましてね。」
 「それに…グラビティは赤魔道士の弱体魔法ですよ!ギルマスは赤魔道士なんですか?」
 「私は元は赤魔道士ですが、現在は賢者というジョブです!」
 「だから攻撃魔法と回復魔法と弱体魔法が使えるのか!」

 賢者は赤魔道士を極めると賢者にクラスチェンジできるという話を聞いた事があったが、本当の話だったのか⁉︎
 てっきり与太話だとばかり思っていたが…あ、目の前に居るのは数百年生きる妖魔だから可能なのか!

 「貴方はまだ懲りていないみたいですね!」
 「御免なさい!御免なさい!御免なさい‼︎」

 元は赤魔道士で、現在は賢者のジョブを持っている相手に逆立ちしても勝てる訳がない‼︎
 俺の魔法の手の内は全て分かっているだろうし、賢者は黒魔道士と白魔道士の魔法が全て使用できる上に、賢者特有の魔法も使用出来るというジョブだ。
 数百年生きていて魔力保有量も桁違いだろうし…魔王にソロで挑む様なものだ‼︎

 「貴方はまた私を魔王と…」
 「いえ、今のは褒め言葉です!」
 「魔王と呼ばれて、褒められた気がしません!」
 「それよりもグラビティ解除して!朝に食べた…うっ、中身が出そう。」

 俺がそういうと、グラビティが解除された。
 解除して欲しくて言った発言だが、実際にはそんな事はない。
 そんな事で解除するなんて、年齢を喰っているだけでギルマスも意外にチョロいな。
 あ…心が読めるんだった!
 ギルマスを見ると、呆れた表情で溜息を吐いていた。
 
 「あーもう!くだらない事をしていて話していた内容を忘れてしまったわ!」
 「それは加齢から来るものでは無いのかな?」
 「なんか言った?」

 そう言ってギルマスが握っていた拳に、雷光が光り輝いていた。
 あれを喰らったら…間違いなくヤバい。
 余計な事を考えずに無心に…。

 「すいません、一昨日に久々に師匠の夢を見たもので…師匠とのやり取りの時は敬語を一切使わなかったから。」
 「そうみたいですね、生意気だけどやる気がある子だと言っていましたから…」
 
 妹を養うという目的が無ければ、とっくに逃げ出していたよ。
 まぁ、あの地獄の様な修行のお陰でその後の冒険者人生がイージーモードになっていたから楽だったが。
 いい加減に話が進まない…あ、俺の所為か!

 「それで、どこまで話しましたっけ?」
 「クルーシスのパーティーが復讐を計画している…でしたっけ?」
 「少し違いますが、まぁそんな所です。」
 「…と言いますが、今更あいつらが来たところで大した問題では無いと思うのですが?」
 「ギザリスが背後にいるらしい…と聞いてもですか?」

 ギザリスか…居たなぁ、そんな奴。
 俺を最初に追い出した勇者で、クルーシスに輪を掛けた性格の持ち主だったからなぁ。
 俺を追い出した癖に、価値が分かると謝罪もせずに戻って来いと言った奴だった。
 結局、ギルド内で暴れたお陰で早々にランク外に落とされたんだよなぁ?
 確かクルーシスと同じで貴族出身だったと思っていたが?

 「そうです。ギザリスは伯爵令息で、クルーシスは子爵令息です。どちらも家督を継げないので勇者の道を選んだみたいですが…」
 「なるほど、だからあんなに気位が高い奴だったのか!まぁ、空回りしていたが…」
 「ギザリスが勇者で無くなった為に伯爵家から絶縁されたそうです。」
 「それは、自業自得では?」
 「彼は今まで思い通りにならなかった事が無くて、テクト君を追放した後に何もかもが上手くいかなくなってその原因がテクト君だと思い始めたみたいなのです。」
 「迷惑な話だ!」
 「それでギザリスはクルーシスを味方に付けてから、闇ギルドと手を組んだらしいです。」
 「そんな事をやっている暇があるなら、冒険者家業をして金でも稼いでいろよ。」

 それにしても…家を追い出されて金の無い奴が、闇ギルドみたいな金にうるさい奴らと良く手が組めたな?
 何かあるのか?

 「私達の調査でも、ギザリスと闇ギルドの接点は見つかりませんでした。」
 「ギルドマスター直属の暗部ですら、探れない情報ですか?」
 「何故暗部だと?」
 「だって、この部屋にいるじゃ無いですか…前回は五人で今回は三人ほど。」
 「気付いていたの⁉︎」
 「そうじゃ無ければ、幾らギルマスが強いと言っても…招き入れた者に襲われるのを対処出来る者くらい配置していてもおかしく無いですからね。」
 「本当に貴方は、別な意味でも規格外ですね。」
 「師匠に魔境の森に放り込まれたので、あそこでは些細な気配に気付かないと死にますからね。」

 ギルドマスターがこの話をしたという事は、ギルド側からでは動けないという事だろう。
 そうなると、仲間達をこの場に呼ぶのは事が終わってからじゃないと呼ぶ事は出来ないな。
 あいつらは、魔物との戦闘は慣れているが対人戦はやった事がないだろうし。

 「御理解が早くて助かるわ。」
 「なら、ギルマスの権限で一つだけお願いしたい事があります。」
 「聞きましょう。」
 「素早く済ませるつもりですが、仮に時間が掛かってしまった場合…マリーがクエストの更新日の期限が来たとしても、伸ばして欲しいのですが?」
 「そうですね、あの子達が来てしまったら…貴方も動き難くなるでしょうし、分かりました!」
 「感謝致します。」

 俺はそう言ってギルマスの部屋から出た。
 全く…あの馬鹿どもは誰に喧嘩を売ったのかを思い知らさないとな。
 さてと、闇ギルドとなるとちと面倒だが…アイツに相談を持ち掛けてみるとするか!
 俺もこの街で知り合いは少ない訳ではない。
 情報屋が居るので掛け合ってみようと思う。

 さて、またお約束的な面倒毎を片付けるとするか!
 それにしても、本当に勇者は碌な奴が居ないな。






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