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第一部

第八話 お約束的な…実戦

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 軽めのクエストとして選んだが、これは果たして軽めなのだろうか?

 【討伐クエスト・鉱山に出没するゴーレムの討伐】
 
 一般の冒険者で新人の場合は、主なクエストは薬草採取とかなのだが…この辺が同じ新人とはいえ冒険者と勇者の違いである。
 まぁ、勇者の場合…パーティーメンバーは主に冒険者でもランクの高い者達がパーティーに参加している為に、クエストもそれなりに難易度が高い物を回される。

 話は少し変わり…ちょっとした昔話をしたいと思う。 
 これも過去にあった事なのだが…?
 勇者に選ばれた者が幼馴染達と一緒にパーティーを組んでクエストに立ち向かうという話があった。
 ところが勇者に選ばれる基準が未だに良くは分かっていないが、冒険者から勇者に選出されるという事は結構稀で、その殆どが村で農民として生活をしてきた者や一般家庭で普通に育った者達が主だった。
 つまり勇者に選ばれる者達の殆どは、戦いとは無縁な生活を送っていた者達が主だった。
 それでも勇者に選ばれてからは、それなりに戦いの術を学ばされるのだが、実戦経験は乏しいのだった。
 それでこの勇者も元は農民で、パーティーメンバーは全員冒険者になりたての幼馴染で構成されていた。
 全員ほぼ初心者が勇者のクエストをこなせられる訳もなく、初っ端から全滅して…それ以降は勇者になった者達は、その勇者の教訓を生かして知り合いだけのパーティー構成をするのでは無く、冒険者を頼る様になったのだった。
 
 …とはいえ、冒険者の中にも悪どい考えを持つ者達も中にはいる。
 そういった冒険者達は、初めは下手に出て自己アピールをして近付いてくるのだが、ある一定の期間を過ぎると急に豹変して勇者から搾取を始める様になる。
 勇者に選ばれて、尚且つ序列一桁にランクインした者達には、それ相応の地位が与えられる。
 その為に悪どい冒険者達は勇者を上手く誘導して、その地位を悪用してから好き放題し始める様になる。
 こんな悪党はすぐに捕まるのではないか?
 そう思う者もいるかも知れないが、こういった悪党達はちゃんと逃げ道を確保している。
 全ての責任を勇者に押し付けてから、自分達は逃亡して行くのだった。
 まぁ、他の冒険者達からの通報により捕まった者達も中にはいるが、そのリーダーの役割をしていた勇者は責任を取らされる為に勇者の地位を剥奪されて、その罪を償う為に犯罪者となって鉱山送りになった者もいる。
 その為に冒険者ギルドでは新たな規約を設けられる様になった。
 それは、ある一定の冒険者ランクやクエストのクリア数、そして性格などで判断されて勇者パーティーに相応しいかどうかを判断されて、その基準を満たした者のみが勇者パーティーに参加出来る様になるのだった。
 テクトもその条件をクリアして勇者パーティーに参加出来る様になった。
 その当時のテクトの話は…また別の機会に話す事にしよう。

 「鉱山に出没するゴーレムの討伐?」
 「ゴーレムは基本的に人を見たら全てが襲ってくるという訳ではない。まぁ、ダンジョンでガーディアン的な役割で命令されているものなら話は違ってくるが、基本は人を見て襲っては来ない。」
 「でも、商人の馬車が山道でゴーレムに結構襲われるって聞くよ?」
 「ゴーレムが襲ってくる基準は、主に魔石や鉱石を所持している者達を襲うんだよ。奴等の好物は石類でな、石を持っている奴を襲う傾向があるんだ。」
 「今時、魔石を持ち歩かない者なんているのか?武器や防具やアクセサリーにも魔石を使われている物を持っている者は多いぞ?」
 「貧乏でそういった物を身に付けられない者達も中にはいるぞ。そういった者達の前では、ゴーレムは無反応だからな。」
 「なら、鉱山に出没するゴーレムの狙いって…」
 「鉱山から採掘された魔石や鉱石目当てだろう。」
 「そのゴーレム達を討伐すれば良いのよね?」
 「そうなのだが…まずはゴードンの実力が見たいので、戦ってもらえないか?」
 「分かっただ!」

 俺達はクエストの場所の鉱山に着くと、其処には複数のゴーレムが徘徊していたのだった。
 
 「あれは…バーゲストか?」
 「いや、あれもゴーレムだ。」
 「私が言っているのは、奥にいる人型ではなくあの犬型の獣だぞ!」
 「だから、あれもゴーレムなんだよ。ゴーレムって、何も人型をした物ばかりではないぞ。ゴーレムにも獣型や鳥型のゴーレムも存在するからな。」

 これは上位の冒険者とかでないと余り知られていなかった。
 邪教神殿などで見掛けるガーゴイルの様な銅像が起動して襲ってくるのもゴーレムの一種だ。
 この様にゴーレムの形は何も全てが一緒では無いのだ。
 まぁ、世界全てのゴーレムを把握している訳ではないが、海の中にもゴーレムが存在するという話なのだが?
 ゴーレムは基本的に石や岩や鉱石系が多いので、そんな奴等が水に浮くのだろうか?
 
 「テクト、オラはどれに攻撃をすれば良いだべか?」
 「まず最初に、マリーとシーリアとクライヴが手前の犬型のゴーレムを始末するので、その後にゴードンは奥の人形ゴーレムを相手してくれ!」
 「了解したど!」
 「じゃあ、私達はアイツ等を倒してくるね。」
 「その前に少し待て。」
 
 俺の強化魔法や弱体魔法は、無詠唱で放てる為に黒魔道士や白魔道士が魔法を放つ際のエフェクトは無い…と思われているが、別にそういう訳では無い。
 基本的に赤魔道士の強化魔法は、一つの魔法に対して一人しか掛けれることが出来ないのだが、魔法陣を展開する事によって、パーティー全員に同じ効果を与えられる範囲魔法的な効果を与える事が出来る。

 「高速移動魔法アクセラレーション、軽量化魔法フライトレーション、命中率増加魔法スナイパーアイ、武器強固魔法ウェポンガード、防具強固魔法アーマーガード。とりあえず、筋力系以外の魔法を付与したのでこれで向かってくれ。」
 「村の自警団にも魔法を使える者がいるが、多重強化魔法を使える人間なんてそういないぞ!」
 「まぁ、これが赤魔道士というジョブの特性だからな!さっさと倒してこい!」

 マリー達は犬型のゴーレムに攻撃を仕掛けた。
 マリーの剣がゴーレムの首を刎ねて、シーリアの槍が頭部を貫き、クライヴのダガーが頭部と胸に突き刺した。

 「お見事!…と言いたいところだが、普通の犬ならそれで倒せるだろうが、ゴーレムは首を刎ねたくらいでは死なんぞ。」
 「なら、どうすれば倒せるんだ?」
 「どうやって倒せるのかは、自分で考えろ。奴等は生物では無いし、首や胸を貫いた位では死にはしない。」
 
 三人はヨロヨロと起き上がったゴーレムに攻撃を加えて行った。
 あらゆる箇所を切り裂いて行くと、赤い魔石の様な物が体内から地面に落ちた。
 クライヴはその宝石をダガーで突き刺すと、クライヴが相手をしていたゴーレムは音を立てて崩れたのだった。

 「マリー、姉ちゃん、コイツらの弱点は赤い魔石だ!」
 
 クライヴの声でマリーとシーリアは、石像を削りながら攻撃をして…魔石を見つけると破壊して行った。
 すると、二人の相手をしていたゴーレムも音を立てて崩れて行った。

 「お見事!ゴーレムには必ずコアの魔石がある。それを破壊すればゴーレムは動きを止めて崩れ去る。今回の事でゴーレムに対する戦い方は分かったな?」
 「よく分かった…」
 「クライヴが答えを教えてくれたお陰でね。」
 「今後とも仲間と連携して協力し合って行こう。次にゴードン、奴等を倒せ!」
 「分かっただ!」

 ゴードンは大盾を構えてから、自分と同じくらいの大きさのゴーレムに突進して行った。

 『ウオォォォォォォォォォォォ!!!』

 ゴードンは雄叫びを上げながら最初に向かって来たゴーレムを大盾で払って粉砕してから、グレートアックスで他の二体のゴーレムを滅多切りにして、地面に転がった魔石を踏み砕いた。

 「つ………強えぇぇぇ…って、あれ?俺はゴードンに強化魔法掛けたっけ?」
 「ううん、お兄ちゃんはゴードンさんには何もしてなかったよ。」
 「強化魔法掛けてない状態であの強さかよ!…強化魔法を掛けたら、アイツはどれだけ強くなるんだ?」
 
 ゴードンは畑を耕す以外に、森での狩りをして経験を積んでいるので戦い方を把握しているとは思っていたが、これ程までの強さの奴だとは思わなかった。
 子供の頃に虐められたのを根に持っていたとして、会いに行った際に喧嘩になっていたらまず勝てなかったな。
 良かった…ゴードンが優しい性格の持ち主で。
 あ、そういえば会いに行ったあの時に…俺はゴードンに殴ってくれと言ったが、仮に殴られていたら重傷だけでは済まなかっただろうな。
 本当に………心優しい奴で良かった。
 
 「ゴードンはあんなに強かったのか‼︎」
 「お兄ちゃんとゴードンさんが戦ったらどっちが強い?」
 「あの強さを見て、俺はゴードンに勝てる気がしない。」
 「冒険者ギルドで四人相手に立ち回れた兄ちゃんでもか?」
 「あぁ、ゴードンの強さは桁が違い過ぎる。」

 まぁ、これで鉱山に出没したゴーレムの討伐クエストはクリアした。
 俺達は翌日も仲間達と上手く立ち回って次々とクエストをクリアして行った。
 そして難易度の高いクエストを始めたのだが、思った以上に苦戦を強いられたのだった。

 そのクエストとは、これもお約束的な物なのかなぁ?
 














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