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第一部

第七話 お約束的な…厄介毎な展開

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 「ゴードンは、もう動く要塞みたいだな?」
 「それはどういう意味だべか?」

 知り合いの鍛治職人の店から出て、冒険者ギルドに向かっている途中…他の冒険者からの視線を浴びていた。
 てっきり、俺が勇者パーティーから追放された事を聞いて、声を掛けるタイミングを伺っているのかと思ったが、視線の先はゴードンに集まっていた。
 それもその筈、ゴードンは身長210cmで筋骨隆々で更には右手にはグレートアックスに左手には全身を覆う様な巨大な大盾を装備し、身体はフルプレートに覆われていて、頭にはグレートヘルムを装備している。
 その容姿は、さながら古の昔話に出てくる巨人族の戦士の様な姿をしていた。
 これなら…ゴードンに視線が向くのも分かる気がする。

 「オラは嬉しいべ!こんなにピカピカの武具を揃えてくれたティクティノスに感謝だ!この代金はいずれ稼いで返すべな。」
 「それはゴードンにプレゼントしたものだ。金を返す必要はない。」
 「だども、それだと申し訳ないべ…」
 「活躍してくれればそれでチャラだ。期待してるぞ、ゴードン!」
 「あぁ、任せるべ!仲間はオラが死んでも守ってみせるだ‼︎」
 「意気込みで言っているのは分かるが、死んでもなんて言うな!ゴードンは大事な仲間で友達なんだからな!」
 「分かっただ、任せるだテクティノス!」
 「それと俺の名前はテクトで、マリアネートの名前はマリーだ。村でも言ったと思うが、俺とマリアネートは村以外では偽名を使うから、悪いがそれに慣れてくれ。」
 「分かっただ、テクト!」

 俺とゴードンは拳を合わせてから笑って見せた。
 すると、マリアネートとシーリアとクライヴも同じ様に俺達の拳に拳を合わせた。
 別にこれが俺達の村での挨拶という訳ではないが、俺とゴードンがやっているのを羨ましく思ったのか加わって来たのだった。
 そして俺達は冒険者ギルドに向かった。
 すると…案の定というべきか、ギルド内の注目はゴードン…ではなく、俺に集まって来た。
 そしてその勇者達の中には、クルーシス達の勇者パーティーもいたのだった。

 「テクト、今フリーだよな?僕達のパーティーに…」
 「お前抜け駆けするなよ!俺達のパーティーに来てくれ!」
 「テクト、君の力が必要だ!是非とも私達のパーティーに来て欲しい!」
 
 また…ゾロゾロとまぁ集まってくるもんだな?
 すると、クルーシスも他の勇者を掻き分けて来たのだった。

 「テクト、済まなかった。お前の事を役立たずと言って追い出してしまって…謝罪をするから戻って来てはくれないか?」
 「はっっっ、バッカじゃねーか!お前等パーティーの奴等は俺を追い出す時やパーティーにいる時になんて言ったか忘れたのか?それで、謝罪するから戻って来てくれだと?あんな暴言吐いておいて、謝罪で済む話じゃねーのくらい分かっているのか?」
 「うっ………お前が居なくなって自分達の実力の無さを思い知った。だから頼む!」
 「クルーシス、お前なら許すか?あれだけの暴言を吐いた人間をだ!」
 「俺なら…許す!」
 「そうか、なら意見の相違だな。悪いが俺は許す気はないから、さっさと失せろ!」
 「何故だ!謝罪ならすると言っただろ!何が不満なんだ⁉︎」
 「はぁ…分からないのか?流石クルーシスだ、ギルド規約を知らないとはな!まぁ、俺を追い出した他の勇者達も規約を知らずに一方的に追い出したから、知っている者が限られるんだろう。」
 「ギルド規約?」
 「パーティーに所属していた者には、仮に戦力外通告をして除名させる場合であっても、それまで参加していた者達には貢献した料金を支払う事を義務とする。これはギルド規約にちゃんと記されている項目だよ、お前はそれを無視して一方的に俺を追い出した。金も支払わずにだ!それで謝罪するから戻って来てくれだと?誠意が見えねぇんだよ!」
 「か…金の問題か?幾ら支払えば良い⁉︎」
 「そうだな除名金と違約金を含めて…白金貨500枚で手を打とう。」
 「白金貨500枚だと⁉︎」
 「俺の働きなら、それくらい貰ってもバチは当たらんよ。」
 「馬鹿な…そんな大金を持っている訳ないだろ‼︎」

 クルーシスに限らず、奴のパーティーメンバーは金遣いが荒かった。
 俺は何度も貯金をする必要はないが、手元には残しておけと何度も注意をしたが、全くといって良いほど聞き入れられず…金が尽きたら次のクエストの報酬で金が入ってくると言って残らない使い方をしていた。
 俺の意見を聞き入れていれば、白金貨500枚くらいならあってもおかしくない筈なのだが?
 まぁ、金が無いのを知っていて吹っかけているのだから支払えるはずも無い。

 「話は以上だ!金が支払えないのなら消えろ!」
 「下手に出ていれば調子に乗りやがって!おい!」

 頭に血が昇るとすぐに解りやすい行動に出るのがクルーシスで、そのパーティーメンバーも同類だった。
 クルーシスは剣を抜いて向かって来た。
 そしてその仲間達も武器を構えて向かって来た。
 俺は剣を抜いてから、クルーシスの剣をウェポンブレイクで破壊すると…騎士ガイネスは盾を構えて向かって来た。
 俺は盾を構えてガイネスの盾にシールドバッシュを喰らわせて弾き飛ばすと、ファラとミーリアにサイレントの静寂魔法を放ってから、クリスタルチェーンバインドという拘束魔法で拘束した。

 「お前達に一つ言っておくが…俺は強化と弱体魔法だけが取り柄だと思って掛かって来たみたいだが、俺はお前等よりも遥かに強い。それすらも見極めることが出来無いから、お前達にはさっさと消えろと言ったのだがなぁ。まぁ、これからは勇者では無く冒険者として稼いでいけ。」
 「何を言っている!俺は序列上位から落とされたが勇者だぞ‼︎」
 「もう違う!お前はこれから勇者の地位を剥奪されるんだよ。ギルド規約…冒険者ギルド内で武器を抜いて他の者に危害を加えようとした者には、ランク剥奪かもしくは、ランク降格が言い渡される。」
 「だが、ランクが降格されるだけで…」
 「いま話したのは冒険者の場合だ!だが、勇者の場合はまた別で…勇者が規約を破って行為に及んだ場合は、勇者の地位を剥奪し、そのパーティーメンバーも重い罪を背負う事とする。ギルド規約に書いてあるし、勇者になった時に聞いただろう?」
 
 まぁ恐らく…この馬鹿は覚えてないのだろうな。
 勇者の場合は、勇者になった時に重い責任が課せられる。
 それは軽んじても良い訳ではないし、蔑ろにするなんてもっての外だった。
 クルーシスとその仲間達は、ギルド職員に捕まって連行されて行った。
 これから奴等が待っているのは、長い懲罰だろう。
 冒険者になって…と言ってはみたが、冒険者として活動出来るかどうかは当分先になるだろうし、もう会う事もないだろう。

 「クルーシスの奴は…ギルド規約を知らなかったのか?」
 「だが、これで奴との方は付いたのだろう?なら改めて、俺達のパーティーに…」
 「いや、私達のパーティーに!」
 「僕達のパーティーに来て下さい!」

 俺はマリアネートの方を見ると、手続きが終わって手を振っていた。
 どうやらパーティー登録が完了したみたいだった。
 俺は両手を叩いて誘って来た者達を黙らせた。

 「悪いが…俺は新しい勇者のパーティーメンバーとして登録された。ここから先はギルド規約に違反する事になるが…皆は分かっているよな?」
 「新しい勇者ってあの子か?テクトはあの子のパーティーに誘われたのか?」
 「だが、彼女達も序列を上げればクルーシスや以前の勇者達の様に、同じ目に遭わされる可能性があるかもしれないぞ‼︎」
 「悪いがそれは無い!」
 「どうしてそう言い切れる⁉︎」
 「新人勇者マリーは俺の妹だ。そしてパーティーメンバーは、俺の幼馴染達だからだ。知り合いでも無い奴らだったらその可能性もあるかもしれないが、流石に肉親や幼馴染が俺を裏切る様な真似はしないさ。」

 俺を勧誘しようとしていた者達は、マリアネートとその仲間達を見た。
 すると、ガックリと肩を落として散って行った。

 「これで当分は静かになるだろう。」
 「テクティ…いや、テクトお疲れ様。」
 「兄ちゃん…四人相手にたった一人で歯向かえるなんて、兄ちゃんは強いんだな!」
 「俺が強いんじゃ無い、奴らが弱かっただけだ。それよりも…だ!」

 マリアネート…マリーが勇者になったので、これから鬼の様に面倒なクエストが待っている。
 俺達は冒険者ギルドを出てから、知り合いの食堂に行ってクエスト内容を確認する事にした。
 だが、以前の二人の勇者が請けたクエストとは違い、難易度が高いクエストが混じっていた。
 少なくとも新人パーティーがこなせられる内容の物ではないのだが…?
 
 とりあえずは、戦いにも慣れてもらう為に簡単なものから始める事にした。
 そして…難易度が高いクエストを始めた時には、かなり苦戦する内容のクエストだった。
 そのクエスト内容とは、またお約束な…
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