器用貧乏な赤魔道士は、パーティーでの役割を果たしてないと言って追い出されるが…彼の真価を見誤ったメンバーは後にお約束の展開を迎える事になる。

アノマロカリス

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第一部

第四話 お約束的な…休暇

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 テクトが現在何処にいるのかというと…故郷のマイネア村に戻っているのだった。
 
 ここでテクトついての情報を提示しよう。
 テクト・バーグライド…と名乗ってはいるが、それはテクトが勝手に名乗っている偽名である。
 テクトの本名は、テクティノス・アーヴェンヴァルガーという。
 年齢は19歳で、テクトは12歳の頃から冒険者での生活をしている。
 その理由は、両親が魔物の襲撃で命を落とし、少し歳の離れた妹と二人で暮らしているからだった。
 まぁ、現在は出稼ぎの為に家を開けて入るが…パーティーが休みの期間は家に戻って来て妹と暮らしていた。
 テクトが活動している場所は、隣国の王都である。
 マイネア村からは、馬でどんなに急いでも二週間は掛かるのだが…なぜこんなに早く着いたのかというと、それはテクトが生まれ持っているスキルが影響しているからだった。

 この世界の人間には、固定スキルがある。
 勇者に関して言うと、固定スキル以外に勇者特有のブレイブスキルという物が存在するが、テクトは勇者ではない為にこのスキルは無い。
 テクトの固定スキルは、魔法による詠唱破棄なのだが…?
 それ以外にも、レアスキルのオールステータスアップ。
 ユニークスキルのオートリジェネートとオートリフレート。
 エクストラスキルの魔法創造という物がある。
 テクトは王都から遠く離れた故郷の村までは、このエクストラスキルの魔法創造で作りだした転移魔法で王都から故郷の村まで一瞬で戻れるのだった。
 だが、テクトはこの情報…魔法創造は誰にも秘匿にしている為に、例え妹であっても知らないのだった。

 「お兄ちゃん、今度はいつまで家に居られるの?」
 「当分は予定はないかな。」
 「…という事はまた追い出されたの?」
 「あぁ、俺の能力を自分の力と勘違いした奴等にな…」

 この話は妹には話してある。
 パーティーに参加している間は、休暇で戻れても2.3日で王都に帰るが、追い出された時は長く故郷に滞在しているので、当分予定がないと解ると妹もその辺は察する事が出来る様になっていた。

 「本当に勇者の人達は、碌な人達がいないね。」
 「あぁ、俺の魔法は詠唱が不要だからな。だから何もしていないと感じただけではなく、スムーズに戦闘が行えるのは自分達の実力だと勘違いをするのだろう。」
 「お兄ちゃんも苦労しているのね。」
 「まぁ、さすがに四回目だからな…いい加減なれたよ。」

 俺はこの日の夜に、久々に妹の手料理を食べながら話をした。
 そして自分の家で久々にゆっくり眠ると、翌日は昼近くまで寝ていたのだった。

 「マリアネート、おはよう。」
 「もうお昼だよ、お兄ちゃん!」
 「そうだったのか…久々に自分のベッドでゆっくり眠っていたからな。それで、マリアネートは何をしているんだ?」
 「家事を終わらせてから昼食の準備だよ。」
 「なら、食事が終わったら街に買い物にでも行くか?」
 「え、良いの?」
 「そろそろだろ、お前の十五歳の誕生日は?」
 「覚えていてくれたんだ?」
 「去年と一昨年は、誕生日の日に祝えなくて後回しにしたからな。今年こそは誕生日に祝ってやれるさ。」
 「街は何処に?王都?」
 「今は王都はやめておこう。俺が以前の勇者パーティーから追放されているのが知れ渡っているだろうから、勧誘する奴等が後を絶たないからな!そうだな、水の都のオフィーリアにでも行くか。」
 「なら、シーリアさんとクライヴも誘いたいんだけど良いかな?」

 シーリアは俺と同じ年の幼馴染で、クライヴはシーリアの弟でマリアネートと同じ年の少年だ。
 俺がこの村にいない時は、マリアネートはシーリアの家で厄介になっているのでお礼を兼ねて連れて行くとするか。
 ちなみにシーリアの両親も俺達の両親と同じく魔物の襲撃で命を落としているので、向こうも姉弟二人暮らしだった。

 「普段のマリアネートのお礼を兼ねて連れて行ってやるさ。それに、さすがにオフィーリアなら知り合いに会う事も無いだろうしな。」
 「なら昼食が終わったら、二人に声を掛けて来るね!」
 
 シーリア姉弟は、あの親の事故以降…槍術士のジョブを取得してマイネア村の自警団に所属している。
 男顔負けの槍捌きと腕っぷしの強さで、重宝されているという話だが…その性格からか、彼女にしたいとか結婚相手には向かないという事で、未だに独身を貫いている。
 弟のクライヴも斥候士のジョブがあり、索敵能力に優れたり、罠の設置をしたりして獲物を捕らえる技術があるのだった。
 そしてマリアネートは…未だにジョブが発動していない状態だった。
 この世界では成人(16歳)前にジョブが発動する事は稀であり、現在の年齢でジョブが判明しなくても特に問題は無いのだが?
 マリアネートはその事を気にしている節が見受けられた。
 俺とシーリアとクライヴは成人前にジョブが判明したので、自分だけ判明しない事に不安を感じているのだった。
 俺とマリアネートは昼食を終えると、シーリス姉弟の家に行った。

 「よぉ、シーリスとクライヴ!」
 「ティクティノス!」
 「兄ちゃん!」
 「またも追放されて戻って参りました!」
 「またか…」
 「またかよ兄ちゃん。」

 この姉弟二人も俺の事情は知っている。
 姉弟は溜息を吐きながら迎え入れてくれた。

 「この世界の勇者共は、本当に碌な奴等がいないな!」
 「そう言ってやるな、少なくとも序列一位と二位の勇者は割とまともだからな。三位以下の奴等は碌なのがいないのは確かだが…」
 「だが、そんな勇者の誰かがいずれは魔王を討伐して、真の勇者になるのだろう?」
 「今の勇者達には、魔王と渡り合うのは難しいだろうな。魔王云々よりも順位争いの方が重要みたいだからな。」
 「そんなので大丈夫なのか?」

 魔王軍の侵攻も無くはないが、勇者が大勢待ち構えている王都に攻め込もうとする奴等はあまりいない。
 力を蓄えているのか、まだ準備が終わってないのかは知る由もないが…。

 「それよりもお前等、マリアネートから話があったと思うが…これからオフィーリアに向かうから準備をしろ。メインはマリアネートの誕生日プレゼントだが、お前達にもマリアネートが世話になっているお礼で驕ってやるからな。」
 「私は槍が欲しいのだが、良いか?」
 「僕は新しいダガーが欲しいんだけど?」
 「それ位なら構わないが…色気のない姉弟だな!普通なら服とかアクセサリーとかだろ?」
 「私が服やアクセサリーを身に付けても、見せる相手はティクティノス位だからな。」
 「僕にはアクセサリーは不要だよ。付加効果のあるアクセサリーなら欲しいかもしれないけど…」
 
 姉弟そろって金の掛からない願いだな。
 まぁ、この村で生活する上では、服やアクセサリーは邪魔になるし使い道は無いだろう。
 俺はマリアネートとシーリアとクライヴに触れると、転移魔法で水の都オフィーリアに向かうのだった。
 
 そしてオフィーリアの神殿で、新たな生まれた勇者に出会う事になる。
 その勇者とは…皆さんのご想像通りの展開になるだろう。
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