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最終章

第十二話 律儀な魔王ヴァルサリンガ

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 『貴様…何のつもりだ?』

 魔王城の中から、怒りに満ちた魔王の声が響いて来た。
 元々、魔王を燻り出すために仕掛けた調味料爆弾なのに、未だに出て来ないのが不思議でならなかった。

 「おい魔王! 何で出て来ないんだよ?…って聞こえないか。」
 『聞こえておるわ! 貴様達は何故、玉座の間に姿を現さなかった!?』
 
 この様子からすると…?
 魔王ヴァルサリンガは玉座の間で待っていたのか…俺達が現れるのを。
 俺達には、魔王を倒せるのであれば場所はどこでも良いのだが…魔王にとっては玉座の間での戦いを望んでいるようだった。
 魔王のこだわりでもあるのだろうか?
 魔王城の玉座の間で、勇者達と魔王は熾烈な戦いを演じて…どちらかが勝利をするのを。
 まぁ、物語やラノベでは大半は魔王が討ち取られて勇者側が勝利するのだが…
 それを演出したかったのだろうか?
 そう考えると…非常に面倒くさい。

 「仕方ないな、本来なら地上で決着を付けたかったが…魔王の意を汲んでやるか。」

 俺はルットに頼んで、兄妹4人を魔王城の内部に運んで貰うように指示をして、ルットが魔法で魔王城の底から侵入した。
 魔王城の中はというと…?
 あっちこっちから香辛料…スパイスの香りが漂っていた。
 中には失神しているスライムやドラゴンパピーの姿も何匹か見かけた。
 そして移動する際に警戒をしていた罠だったが…?
 スイッチやレバーの前に魔物が横たわっているところを見ると、罠は自動ではなくて手動だったようだ。
 なので、罠に1つも掛かる事なく玉座の扉の前に辿り着いたのだった。
 そして扉を少し開けて中を確認すると…?
 魔王ヴァルサリンガが怒りに満ちた表情で玉座に座っていたのだった。

 「キッド、突入する?」
 「まだだ! 今の状態では魔王が有利だ。」

 そう言ってから、俺はカイエンペッパーと火薬を混ぜた爆弾10個の導火線に一斉に火を付けてから、扉を少し開けて中に放り込んだ。
 すると中では、爆弾が一斉に破裂して…魔王は呻き声と咳き込んでいる声が聞こえて来た。

 「これで突入?」
 「この状態だと、俺達も香辛料の被害に遭う。」

 俺は扉の隙間から中の上の方を確認すると、小窓がある事を確認した。

 「よし! 窓があるな…」

 俺は扉の隙間から右手を中に突っ込むと、調味料大暴走・小麦粉で玉座の間を満たした。
 あいにく、魔王はカイエンペッパーによるダメージで視界を塞がれている為に、把握が出来ていない。
 俺はルットにファイアボールを玉座の間の中に放って貰ってから、扉を閉めた。
 すると小麦粉に引火して粉塵爆発を起こした。

 『ゴウアァアァァァァァァ!!!』

 魔王城全体に振動が伝わる程の大爆発が起こった。
 だが、城の作りで玉座の間は…宝物庫を抜かせば、次に強固な作りになっている場所だ。
 なのでそんな扉も強固な作りになっている為に、爆風や熱が一切通さなかった。

 「良し! リット、合図をしたら中に飛び込むぞ! リットは魔王の右のツノを切り落とせ! 俺は左のツノを切り落とす!」

 リットは聖剣を抜き、俺は魔剣シーズニングでテクニカルセイバーを発動した。
 そしてルットとロットが扉を開けると、俺とリットは玉座の間に飛び込んで行き…倒れて地面に伏している魔王ヴァルサリンガのツノを切り落とした。
 リットはそのまま玉座の間を退室すると、俺は濃度上昇のサドンデスソースを魔王ヴァルサリンガに大量にぶっ掛けてから、調味料大暴走・濃度上昇の油を玉座の間に撒き散らしてから扉の方に後退して、調味料大暴走・小麦粉を玉座の間に満たす様に撒き散らすと、扉の取っ手を掴んだ。
 反対側の取っ手はリットが掴んでいて、ロットが俺達に守護結界を張った。

 「ルット、最大火力の魔法をぶっ放せ!」
 「古より来たれり紅蓮の業火よ…エンシャントフレア‼︎」

 エクスプロージョンとは比にならない最大火力の巨大な炎が玉座の間の中に入って行くと、俺とリットは急いで扉を閉めた。
 そして先程の振動とは桁違いの爆発が巻き起こり…中の魔王の叫び声すら聞こえない程だった。

 「この威力は平気か? 流石に城が持たないのではないだろうか?」

 ところが、大爆発は玉座の間だけにとどまった。
 強固な作りが裏目に出たな。
 ある程度時間が経ってから、扉の取っ手に手を掛けると…あまりの熱さで触れなかった。
 なので剣を使って扉を開くと其処には…黒く焦げた魔王が倒れていた。
 リットが剣を構えて慎重に進もうとしていたのを止めてから、俺は純粋に濃度の高いアルコールを魔王ヴァルサリンガにぶっ掛けた。
 火傷を負った体に濃度の高いアルコールは、塩水とは比べ物にならないくらいにえげつない痛みが襲って来る。
 魔王ヴァルサリンガは、体を押さえながら飛び起きたのだった。

 「ちっ…まだ生きていたのか!」
 『貴様、先程から卑怯な手ばかり…まともに戦おうとは思わないのか⁉︎』
 「まともに戦って、俺たちに勝ち目があるわけないだろ!」

 まいったなぁ…?
 生きているとは思っていたが、瀕死の状態…には少し遠いな。

 「追撃する?」
 「いや、下手に飛び込むな! 手負いの獣程、慎重にならないとな…」

 これ程までの火力攻撃で命を落としていなかった。
 そして瀕死では無い…となると、策としてはあとは正面からでしか無い。
 恐らくだが…卑怯な手はもう通じないだろう?
 俺は妹達の顔を見て頷くと、武器を構えて向かって行ったのだった。

 そしてこれが、魔王ヴァルサリンガとの最後の戦いとなる訳なのだが…?
 魔王ヴァルサリンガは、隠し球を持っていてそれを発動したのだった。
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