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最終章

第十話 決戦前日の…

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 魔王との決戦を明日に控えた今日は、全てを解放して休む事にした。
 今日だけは…本当に今日だけは誰にも邪魔をして欲しく…
 そう思っていた矢先に、扉のノック音が聞こえてきた。

 「キッド、出る?」
 「誰が来たかによるな…ギルマスやライラなら通そう。 後、グランベリオン公爵一家なら出ないのは失礼だろうし…」
 「それ以外なら追い返すね。」

 そして来たのは…?

 「キッドに来客よ。」
 「誰?」
 「記者さん…」
 「はぁ…」

 俺は扉を開けると、そこには大勢の記者が待ち構えていた。

 「英雄テッドと勇者の加護を得た3人の妹についてお話を!」
 「あのさぁ…魔王との決戦は明日なんだぞ!」
 「それは知っていますが…その意気込みについても!」
 「今はここ最近何かと忙しかったから、英気を養う為と明日の決戦の為に集中したいって分からないか?」
 「あ…それは…」
 「取材なら魔王討伐後にしてやるよ…ただし! 俺は誰も死なないし死なせない戦いをするつもりだ。」
 「それは…立派な心掛けですね!」
 「もしも犠牲者が出た場合、決戦前に空気も読まずに図々しく取材に来た阿呆共の所為で集中力を乱されて…と他の記者に話すが、良いか?」
 「う………」
 
 俺は記者達を見渡してから溜息を吐いた。

 「これを聞いても何故まだいるんだ? 魔王敗北は前日に来た記者たちの所為と言われたいのか?」

 それを聞いて記者達は急いでその場を去っていった。
 全く…何を考えているんだ、アイツらは…?
 俺は扉を閉めると、すぐにノックの音が聞こえた。
 俺はうんざりした顔で扉を開けた。
 すると其処には、グランベリオン公爵…ではなく、俺やテッドに挑んで来た侯爵のガキと親がいた。
 公爵ではなく、侯爵だったか…まさかコイツも息子の報復で来た訳じゃねぇよな?
 俺は魔剣シーズニングを抜いて、テクニカルセイバーを起動した。

 「ま…待ってくれ! 争いに来たのではない‼︎」
 「じゃあ、何しに来た?」
 「息子が迷惑を掛けた詫びと謝罪を…」
 「そんなもん、魔王討伐後にしてくれ! こっちは明日の魔王との決戦で精神を落ち着けたいんだよ‼︎」
 「あ…そうだったな。 済まない…」

 侯爵は部下の騎士と息子を連れて帰って行った。
 そして俺は、扉の外を見渡してから誰もいない事を確認すると、扉を閉めた。
 
 「はぁ…気が休まらねぇ。」
 「誰だったの?」
 「実力の違いも分からないで喧嘩を売ってきた侯爵家の馬鹿息子の親。」
 「あぁ、私を賞品にしたあの男か…他に誰か来る可能性はある?」
 「ギルマスとライラは来る可能性はあるだろう。 なんだかんだ言って、親友の子供という事で面倒を見てくれているからな。 流石に無下には出来ないだろうし、グランベリオン公爵も来る可能性はあるだろう。 家の改装でお世話になっていたし、無下な対応は失礼だしな!」
 
 グランベリオン公爵は、魔王との決戦の準備期間に顔を出してくれた。
 依頼品の調達の協力と差し入れをしてくれたのだ。
 その他にも俺の調味料を活用してくれたりした料理を提供してくれたり、俺の調味料の販売ルートも確保してくれた。
 これによって冒険に出なくても収入が入るので、願ってもない。
 なので、グランベリオン公爵には頭が上がらないのだ。

 「後は…魔王を倒してレベルを100に…ん?」

 俺はここ最近見れなかったギルドカードを確認すると、レベルが102まで上がっていた。
 
 「なんでレベルが100越えているんだ?」
 「それ…多分勇者の加護の影響みたい。 勇者とそのパーティーメンバーには、経験値取得倍増みたいな加護があるって…私達もレベルは90近いよ!」
 「そんな加護があって、魔の勇者と知の勇者は何故全滅したんだ?」
 「多分…レベルはいつでも上げられると思って、戦闘をあまりしてこなかったんじゃないかな? 口ばっかで意識高い系の2人だったし。」
 「そういえばヴェルガンの腕を切った時も抵抗無かったな…あれだけの装備をしている割には、なんか脆かった気がする。」

 魔剣シーズニングの切れ味が幾ら高くても、普通なら弾かれたりする物だが…?
 魔剣シーズニングの切れ味が鋭いのか、ヴェルガンの防御力が低過ぎたのか…今となっては確認のしようがないけどな。

 「これで魔王を倒せば、テッドと俺は別々に体になるな。 俺…夢だったんだよな、弟が出来るのが…」
 「そういえば、前世でも妹しか居ないって…」
 「男は俺と父親だけだったから、家の中でも肩身が狭くてな…弟がいればと何度思ったか!」
 「今でもそう思っていたりするの?」
 「リット達は素直で良い子だからそんな事は思わないな。 前世の俺の妹達は生意気で性格が悪かったから…」
 
 今の年齢の時は、結構衝突していたな。
 皆20歳を越えたあたりから普通に会話が出来るようになったか。
 
 「魔王との戦い…勝てると思う?」
 「勝てるではなく、勝つんだよ! それに、魔王を疲弊させる手を使うから勝率はかなり上がるしな!」
 「そういえば、詳しい内容を聞かなかったけど…何をするの、あの大量の火薬と魔石?」
 「下から浮かんでいる魔王城を魔法と火薬と魔石で撃ち落としてから、そんな攻撃を予想をしていなくて面を喰らった魔王を兄妹達でボコる!」
 「そんな卑怯な方法を良く思いつくね。」
 「良いかリット! どんな方法であれ、勝ちゃ良いんだよ、勝ちゃ! まぁ、それにあの魔王の強大な力を目の当たりにすれば、正面から挑んで勝てる確率は低いだろうからな!」
 「確かにね…公爵家の騎士団が雷魔法で一瞬で消滅したしね。 それを考えると…」

 まぁ、何処まで通用するかはやってみないと始まらん。
 前世の俺も体格には恵まれなかったので、割と姑息な手で勝利をしていたからな。
 後で親父にバレて説教されたが…

 その後、ギルマスにライラ、グランベリオン公爵夫妻と子供達が家を訪ねて来た。
 なんだかんだで気を遣いながら接していた為に、気が休まる事はなかったが…緊張は無くなっていた。
 まぁ、何事もいつも通りが性に合っているみたいだ。
 
 そして翌日…
 多くの冒険者と共に魔王城が見える草原に来てから、作戦を実行する訳だが…?
 案の定、魔王が激怒した。
 さて、その方法とは?
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