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第六話 希望は絶望に…

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 つい先程迄…ダナステルと元仲間達は希望に満ちた顔で勝利を確信していた笑みを浮かべていた。
 だが、ダナステルは顔を真っ青にして地面に手を付いて嘆いていた。
 さて、何故その様な事になっているのか…?
 話は少し前に遡る。

 ~~~~~女神側と魔王側の決戦開始~~~~~

 ダナステルと元仲間達は勝利を確信した笑みを浮かべていた。
 現に魔将達は連係の取れたバルキリー翻弄されていた。
 そして四天王達も同様に上位天使に苦戦を強いられていた。
 四天王と魔将達は俺の方を向いて頷くと、俺も頷き返した。
 すると、四天王達と魔将達は…互いの弱点を補う様に連係を取り始めた。
 この姿を見たダナステルと元仲間達は、急に焦りだした表情をした。

 「いつまでも奴等が自分達の弱点をそのままにしておくと思うか?」

 四天王達や魔将達が連係を取れるようになったのは、俺の忠告のお陰だった。
 奴等を生き返らせた時に、奴等は何故死んだのかを全く理解が出来ていなかった。

 「簡単な事だ、貴様等は単体では強いのは確かだが…その強さに自惚れて周りを頼ろうとはしないからな。」
 「魔界では己の強さのみで生き残らなければならん!」
 「そんな事を言っているようだから、俺に負けたんだよ。もしも貴様等が互いを理解して連係を取って来たのなら…俺は敗北をしていたかもしれないな。」

 俺は勇者を放棄した事を四天王や魔将達に話した。
 そして次代の勇者が現れた時に、同じ失敗で敗北をしない様に俺は奴等に連係の仕方とその戦い方を伝授した。
 初めは全く上手く行かなかったが、俺との戦いを経験していく内に互いの事が分かりだして上手く立ち回れる様になった。
 だが、魔族としても特性は変わってはおらず…途中何度か脱線しそうになった。
 その度に俺に敗北を味わされて、その部分が強制されて行ったのだった。
 なので魔将達は、バルキリー達との戦いがスムーズに行えるようになり…バルキリー達を徐々に追い詰めて行った。
 そして四天王達も、上位天使の連係と同等の連係を駆使して追い詰めて行ける様になっていた。
 まぁ、俺から言わせればまだまだ及第点という所だろうが、ダナステルや元仲間達同様にバルキリー達も魔族は協調性が無い事を知っていたので、急に連係を取って動きが良くなっている事に混乱して追い詰められて行った。
 
 「馬鹿な!何故我等が魔族如きに…⁉」
 「フン、天使共もこの程度か…」
 「我等とて死ぬ前といつまでも同じだと思われては困るな。我等も学習はするんだよ!」

 四天王と魔将達は、上位天使とバルキリー達を葬ったのだった。
 完全勝利…と呼べなかった。
 何故なら四天王や魔将達も葬るまでにかなりのダメージを負ったからだ。
 そして魔王ヴォルガゼノンも左腕と片角を切り落とされながらも女神に勝利を果たした。

 「何故私が魔王如きに…」
 『貴様も部下と同じ事しか言わんな!我等も敗北を味わった際に、己の弱点を知ったのだ。』
 「魔王…甘く見ていたわ‼」
 『貴様も誇るが良い、我の腕や角を切り落とした事をな!』
 「私が倒れても…他の神々達が黙ってはいませんよ!」
 『なら、人間界を支配し終われば次は天界に攻め込むとしよう。貴様の様な強さを持つ者が他にもいるのなら、さぞかし天界も退屈をしない場所だろうからな‼』

 魔王は女神の心の蔵を貫くと、女神はその場で倒れてから光の粒になって消えて行った。
 上位天使やバルキリーを従える神だという事は、戦の女神ヴィナーティスだろう。
 あの戦いを見る限り、俺が再び魔王に挑んだら果たして勝てるのだろうか?
 それ程までに壮絶な戦いを展開していたのだった。
 そして…冒頭に戻る。
 
 「さてと、お前達同様に…この映像を観ていた国民達もさぞかし絶望感に浸っただろうな。」
 「馬鹿な、女神や天使が敗北するなんて…」
 「どうするお前達?次の策があるのならさっさと出してみろ!」
 「・・・・・・・・」

 絶望のあまり黙ったか…。
 女神とのやり取りも映像に流れていた訳だし、予定とは少し違うが更なる絶望を国民達に告げるとするか!

 「この映像を観ているライゼル王国の者達よ、俺の名は魔王軍統括指令のガイアグリーヴァだ。だが俺にはもう1つの名がある…勇者時代に俺は仮面の勇者ガイアとも名乗っていた。そこにいるライゼル王国の第一王子のダナステルは俺の手柄を横取りしただけでなく、自らが勇者だと名乗って発表をした。そして俺の元仲間達も俺を裏切り王国側に付いた。」

 俺は絶望感で立ち上がれないダナステルと元仲間達を映した。
 そして俺は更に続けた。

 「俺は別に勇者としての手柄を奪われた事に関しては別に何とも思ってはいないが…だが、王国は俺を始末しようとしただけではなく、国王の命令により俺の故郷のベスタ村をも滅ぼした。そこには両親や妹に愛する恋人をもだ!これが無ければ魔王が復活したら戦いに赴いても良いと思っていたが、さすがにここまでの仕打ちをされて俺が勇者に戻るという事は無い!俺は魔王側に付き、これからは勇者ガイアではなく、魔軍司令ガイアグリーヴァとして魔王ヴォルガゼノンと共に世界を滅ぼしてやる。」

 この映像を観た国民達は、パニックを起こし始めた。
 勇者だと思っていたダナステルは、手柄を横取りし勇者を騙った偽者だった。
 そして勇者パーティーの仲間達も、魔王を討伐した勇者を亡き者にしようとした者達だった。
 そんな事を仕出かした者に、再び魔王をどうこうする気はないのは分かり切っている。
 国民達は恐らくはそう思っているだろう。
 国民達がどうなろうと知った事がないが、一応情けは掛けてやるか。

 「もしも俺の望みを叶えてくれるのなら、貴様達は魔王の支配から開放をしてやっても良い。俺が先程話した内容は覚えているな?俺がこうなった元凶を街の大広場に3日後に生かした状態で連れて来い!ただし見当違いな奴を連れて来た場合は…言わなくても解るよな?」

 俺はダナステルと元仲間達を王宮に転移させた。
 どうせ3日後にまた会う事になるのだから、今帰しても問題はない。
 さて、国民達はどう行動を起こすだろうか?
 さすがにただ傍観している奴はいないだろう。
 
 そして…この国での俺の復讐は終わりに近付いていたのだった。
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