上 下
7 / 13
本編

第五話

しおりを挟む
 私は会った途端に罵詈雑言を言い放って来る王妃陛下に対して頭を下げながら言った。

 「申し訳ありませんでした、厚顔無恥で名高い王妃陛下にこの様な仕打ちをしてしまった事を…」

 「ふん、分かれば良いのです!」

 王妃陛下は勝ち誇った様な顔をして私を蔑んでいた。

 厚顔無恥で名高いという意味を褒められていると思っているのかしら?

 流石、聖女の権威を振り翳して王子妃教育を蹴った人は頭の知能が低いだけのことはありますね。

 「あの、王妃よ…ソフィアは褒めてはおらんぞ。」

 「はぁ?」

 隣にいる国王陛下に厚顔無恥という言葉を説明されて、王妃陛下は物凄く憤った姿を見せた。

 普通…王妃陛下ともあろう方が、その程度の知識を持ち合わせていない方が問題でしょうに…

 「何処までも舐めた態度を取ってくれるわね…小娘の分際で‼︎」

 「その小娘よりも知能が低いのも問題では無いでしょうか? 子を見ればよく分かりますね…まさにこの親にしてこの子ありですね。」

 その言葉の意味は分かっていたみたいで…王妃陛下は私に対して睨みつけて来た。

 「最後のチャンスです! ダレードを元に戻す事に尽力を注ぐならば、私への不敬は許して差し上げますわよ‼︎」

 「本当に何処までも頭の悪い方ですね、あれだけ罵詈雑言を浴びせられてから婚約破棄をして来た自業自得男に対して、情なんてあると本気で思っているんですか?」

 「そうですか…それが答えなら仕方ありませんね。 ならば、ソフィアは覚悟する事ですね‼︎」

 覚悟する…?

 私以外にダレードを元に戻す事は不可能の筈なのに、王妃陛下は何を言っているのでしょうか?

 「ソフィアに頼む以外にも、もう1つの策があることを調べていて分かったのです!」

 「策って…?」

 「貴女は奇跡の聖女の話を聞いた事はありますよね?」

 「数年前に魔界神帝グラシャラボレアスを討伐に貢献したマーテルリア様のことですよね?」

 「そう…マーテルリア様は、ディスガルディア共和国大統領の呪いを解き、不死の呪いすら癒した奇跡の聖女様です。 その方に頼む事ができれば、ダレードの呪いもきっと…」

 私はその話を聞いて頭を押さえながら溜め息を吐いた。

 私だけではなく、国王陛下も同じ様に呆れた顔をしていた。

 「あの…言っておきますが、奇跡の聖女マーテルリア様は現在…ディスガルディア共和国の聖女になられたお方ですよ。 どうやって頼むおつもりですか?」

 「それは、バーミリオン王国の王妃陛下としてディスガルディア共和国に要請するつもりです! それが叶えば…貴女は不要な存在になるのですよ‼︎」

 本気で言っているのかな、この馬鹿女は…?

 バーミリオン王国の様な小国規模の王族が、ディスガルディア共和国の様な超大国に簡単にお目通が可能だと本気で思っているのかしら?

 仮にその願いが叶うとしても…早くても数年以内で、下手すると数十年単位で待たされるでしょうね。

 そんな事も分からない…いえ、この知能の低い王妃陛下には分からないか。

 王妃陛下は私に対して勝ち誇った様な笑みを向けて来た。

 何か秘策でもあるのかしら?

 ディスガルディア共和国とのパイプでもあるとか…?

 「最後のチャンスを不意にしてくれた事を後悔しながら震えて待っていることね! さぁ、この密書をディスガルディア共和国に送りなさい‼︎」

 あ、やっぱり…そんな物はなかったのね。

 私は呆れながら城を後にして公爵家に戻った。

 そして、その密書はというと…?

 いつになったら本人の手に届くのでしょうねぇ?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜

ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。 護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。 がんばれ。 …テンプレ聖女モノです。

逆行令嬢は聖女を辞退します

仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。 死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって? 聖女なんてお断りです!

聖女の代役の私がなぜか追放宣言されました。今まで全部私に仕事を任せていたけど大丈夫なんですか?

水垣するめ
恋愛
伯爵家のオリヴィア・エバンスは『聖女』の代理をしてきた。 理由は本物の聖女であるセレナ・デブリーズ公爵令嬢が聖女の仕事を面倒臭がったためだ。 本物と言っても、家の権力をたてにして無理やり押し通した聖女だが。 無理やりセレナが押し込まれる前は、本来ならオリヴィアが聖女に選ばれるはずだった。 そういうこともあって、オリヴィアが聖女の代理として選ばれた。 セレナは最初は公務などにはきちんと出ていたが、次第に私に全て任せるようになった。 幸い、オリヴィアとセレナはそこそこ似ていたので、聖女のベールを被ってしまえば顔はあまり確認できず、バレる心配は無かった。 こうしてセレナは名誉と富だけを取り、オリヴィアには働かさせて自分は毎晩パーティーへ出席していた。 そして、ある日突然セレナからこう言われた。 「あー、あんた、もうクビにするから」 「え?」 「それと教会から追放するわ。理由はもう分かってるでしょ?」 「いえ、全くわかりませんけど……」 「私に成り代わって聖女になろうとしたでしょ?」 「いえ、してないんですけど……」 「馬鹿ねぇ。理由なんてどうでもいいのよ。私がそういう気分だからそうするのよ。私の偽物で伯爵家のあんたは大人しく聞いとけばいいの」 「……わかりました」 オリヴィアは一礼して部屋を出ようとする。 その時後ろから馬鹿にしたような笑い声が聞こえた。 「あはは! 本当に無様ね! ここまで頑張って成果も何もかも奪われるなんて! けど伯爵家のあんたは何の仕返しも出来ないのよ!」 セレナがオリヴィアを馬鹿にしている。 しかしオリヴィアは特に気にすることなく部屋出た。 (馬鹿ね、今まで聖女の仕事をしていたのは私なのよ? 後悔するのはどちらなんでしょうね?)

「お前の代わりはいくらでもいる」と聖女を剥奪され家を追放されたので、絶対に家に戻らないでおこうと思います。〜今さら戻れと言ってももう遅い〜

水垣するめ
恋愛
主人公、メアリー・フォールズ男爵令嬢だった。 メアリーは十歳のころに教皇から聖女に選ばれ、それから五年間聖女として暮らしてきた。 最初は両親は聖女という名誉ある役職についたことに喜んでくれたが、すぐに聖女の報酬のお金が莫大であることに目の色を変えた。 それから両親は「家のために使う」という口実を使い、聖女の報酬を盛大なパーティーや宝石のために使い始める。 しかしある日、それに苦言を呈していたところ、メアリーが高熱を出している間に聖女をやめさせられ、家も追放されてしまう。 そして平民の子供を養子として迎え入れ、「こいつを次の聖女に仕立て上げ、報酬の金を盛大に使う」と言い始めた。 メアリーは勝手に聖女をやめさせられたことに激怒するが、問答無用で家を追放される。 そうして両親は全てことが上手く行った、と笑ったが違った。 次の聖女に誰がなるか権力争いが起こる。 男爵家ごときにそんな権力争いを勝ち残ることができるはずもなく、平民の子供を聖女に仕立て上げることに失敗した。 そして金が欲しい両親はメアリーへ「戻ってきてほしい」と懇願するが、メアリーは全く取り合わず……。 「お前の代わりはいる」って追放したのはあなた達ですよね?

追放された令嬢は英雄となって帰還する

影茸
恋愛
代々聖女を輩出して来た家系、リースブルク家。 だがその1人娘であるラストは聖女と認められるだけの才能が無く、彼女は冤罪を被せられ、婚約者である王子にも婚約破棄されて国を追放されることになる。 ーーー そしてその時彼女はその国で唯一自分を助けようとしてくれた青年に恋をした。 そしてそれから数年後、最強と呼ばれる魔女に弟子入りして英雄と呼ばれるようになったラストは、恋心を胸に国へと帰還する…… ※この作品は最初のプロローグだけを現段階だけで短編として投稿する予定です!

その聖女、娼婦につき ~何もかもが遅すぎた~

ノ木瀬 優
恋愛
 卒業パーティーにて、ライル王太子は、レイチェルに婚約破棄を突き付ける。それを受けたレイチェルは……。 「――あー、はい。もう、そういうのいいです。もうどうしようもないので」  あっけらかんとそう言い放った。実は、この国の聖女システムには、ある秘密が隠されていたのだ。  思い付きで書いてみました。全2話、本日中に完結予定です。  設定ガバガバなところもありますが、気楽に楽しんで頂けたら幸いです。    R15は保険ですので、安心してお楽しみ下さい。

虐げられた第一王女は隣国王室の至宝となる

珊瑚
恋愛
王族女性に聖なる力を持って産まれる者がいるイングステン王国。『聖女』と呼ばれるその王族女性は、『神獣』を操る事が出来るという。生まれた時から可愛がられる双子の妹とは違い、忌み嫌われてきた王女・セレナが追放された先は隣国・アバーヴェルド帝国。そこで彼女は才能を開花させ、大切に庇護される。一方、セレナを追放した後のイングステン王国では国土が荒れ始めて…… ゆっくり更新になるかと思います。 ですが、最後までプロットを完成させておりますので意地でも完結させますのでそこについては御安心下さいm(_ _)m

聖人の番である聖女はすでに壊れている~姉を破壊した妹を同じように破壊する~

サイコちゃん
恋愛
聖人ヴィンスの運命の番である聖女ウルティアは発見した時すでに壊れていた。発狂へ導いた犯人は彼女の妹システィアである。天才宮廷魔術師クレイグの手を借り、ヴィンスは復讐を誓う。姉ウルティアが奪われた全てを奪い返し、与えられた苦痛全てを返してやるのだ――

処理中です...