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最終章
第四話 帰還(ダンは残ります)
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「ねぇ、慱どうして‼︎慱はどうして一緒に帰らないのよ⁉︎」
遂に…この話が来たか。
先程、翔也に話した内容では…翔也や賢斗や飛鳥は納得してくれていたみたいだったが、どうやら華奈だけは納得をしていなかったみたいだった。
残りたい理由が、あの話だけでは弱過ぎるんだろうな。
なので、僕はある嘘を吐くことにしたのだった。
この話をすれば、華奈も強く帰ろうとは言わないだろう。
ただ、逆に私も残るとか言い出しそうで怖いので、嘘をもう1つ追加しようと考えた。
その…2つの嘘とは?
「この話は誰にも話していないんだけど、実は…魔王サズンデスを倒した際に、僕は雲の上にある神殿らしき場所で、この世界の女神様に会ったんだ。」
この世界の神様は、数名の神様が存在するという。
地球の神様程の数はいないらしいんだけど、それなりの数の神様がいるらしい。
そして、この世界の主神は女神様という話らしいのだ。
ただ、名前までは分からない。
「女神様に?」
「この世界を支配しようとした魔王の討伐を感謝されたのと、そしてもう1つ…僕が帰れない理由が増えた事だった。」
「まさか、魔王以外に悪き存在が居るとか?」
「いや、そうでは無いんだ。実は、僕を庇って交通事故で死んだ両親と瑠香のうち…父さんと母さんは無理だったけど、瑠香だけはこの世界に転移を許されて…この世界にいるという話なんだ。」
「瑠香ちゃんがこの世界に⁉︎」
「あぁ、ただ…あの時の瑠香の年齢は、小学2年生だったから…7歳くらいだ。そんな年齢の女の子が、平和な日本からこの魔物が存在する世界に来たら…」
「瑠香ちゃんは生きているの?」
「生きてはいる…が、どうやら記憶を失っているみたいという話なんだ。まぁ、この世界で辛い目に遭っていたという可能性はあるかもね。」
「なら、慱の目的は…瑠香ちゃんを探すんでしょ?なら、私達も…」
「本来なら協力して欲しい…と、今迄の僕だったらお願いしたかも知れない。だけど、女神様からもう1つ言われた事があるんだ。それは…」
「それは?」
「それは魔王サズンデスを倒した事により、今迄地球での止まっている時間が動き出すという話なんだ。そこで僕に付き合って異世界に留まっていると、地球では大騒ぎに発展する事になる。僕は心配をしてくれる…という言い方はあまり良く無いか。僕は帰っても待っている家族は存在しないから、大した問題は無いんだが…」
「そっか、私達の様に家族がいると、何日も帰らないと騒ぎになるだろうね。」
「なので僕は、仲間達と一緒に瑠香を探そうと思っている。仲間達もそれぞれ目的があるみたいだしね…」
祝勝会の合間、華奈に呼び出される前に…僕は、レイリアとクリアベールとクリスに会って話す事が出来た。
レイリアの目的は、大き過ぎる魔力を抑えるというがあるんだけど、どうやらエルドナート大陸のエルフ達が持つ秘薬というのが、その膨大な魔力を抑えてくれる効果があるという話だった。
クリスは、幼い頃に離れ離れになってしまった同族を探すという目的があるみたいだ。
クリスはサーディリアン聖王国で騎士になる前は、ギルドで依頼をこなしながら…バストゥーグレシア大陸、ファークラウド大陸、そしてこのフレアニール大陸を渡り歩いて来たみたいだった。
だが、どの大陸にも同族の情報は掴めずにいて…サーディリアン聖王国の国王が、ゲルギグス大陸に獣人の集落があるという話をしていて、その大陸なら同族がいるかも知れないという事を聞いたのだった。
だが、遥か北方のゲルギグス大陸には、そう簡単には辿り着かないという話だった。
ゲルギグス大陸周辺の海は、別名…魔海とも呼ばれていて、大型の魔物や魔獣が棲息している為に海路で進むには非常に危険で、なので定期船の類は通っていないという話だった。
クリスはサーディリアン聖王国で騎士をしながら、ゲルギグス大陸に行ける方法を模索していたのだが、そんな時に僕の話を小耳に挟み…更には魔王を倒したという事で、旅に着いて来ることになったのだった。
僕的には、もふもふ耳を持つ猫人族が入ってくれるだけで、テンション爆上がりなんだけどね。
「なら仲間達の事情の改善や瑠香ちゃんを探し出したら、慱は地球に戻って来るんだよね?」
「そりゃあね、待っていてくれる家族は居ないけど、知り合いは居るからね。華奈の両親とか、翔也の両親とかね。」
「なら、私は地球で待っているけど…何年くらい掛かるの?」
「ゲルギグス大陸という場所は、フレアニール大陸がオーストラリア大陸だとすると、ゲルギグス大陸は北極という感じだからね。しかも、地球の進んだ科学力で造られた船とかでは無いから、何日掛かるかも想像は出来ない。」
「なら、戻って来るまでに…10年以上とか掛かるかも知れないの?」
「仲間達の事が無事に解決しても、瑠香が見つからない事にはね…下手すると、10年以上ではきかないかも知れない。」
僕がそう言うと、華奈は悲しそうな顔をして俯いた。
僕はそんな華奈を改めて見る
華奈は、スタイル抜群で容姿端麗、頭脳明晰と欠点らしき欠点は……あったな。
料理が絶望的に不味いという欠点が。
料理の腕さえ除けば、華奈に不服は無いんだけど…?
現在の僕の仲間達である3人は、レイリアは華奈以上の美少女でスタイルは割と良い。
まだ12歳の身体という事で、今後に期待。
クリアベールは、華奈以上のメロン……いや、もはや西瓜というレベルだろう。
顔も割と整っているし、問題は無い。
クリスは、猫耳っ子の女の子。
スタイルは、下手すれば…他の2人よりも良いかも知れない。
猫人族なので、ちょっと猫背なのが…。
そんな3人の女の子と地球を天秤に掛けたら、どうやってもこの世界が余裕で勝つ。
「だから華奈、僕の事は待たなくても良い。華奈は華奈で、自分の眼鏡に合う人を見付けて幸せになってくれ。」
「慱、どうしてそんなことを言うの‼︎」
「この世界に来る少し前の放課後に僕に告白をしてくれたね、その時は迷ってすぐに返事は出来なかった。でも、今ならその返事が出来る…そう思って、今のが僕の返事だ。」
「そ、そんな…」
華奈は、崩れる様に地面に座り込んで、両手で顔を覆った。
幼い頃から常に一緒に居て、華奈からしてみたら…僕に断れるなんて微塵も思わなかったのだろう。
僕はそんな華奈に手を差し伸べる事が出来なかった。
だって、華奈の告白を断った理由が…あまりにも不純な動機だからだ。
「華奈、明日に転移魔法で皆をテレシア王国に送るよ。そして送還の儀で、地球に帰るんだ。」
「慱はやっぱり?」
「あぁ、僕は戻らない。今も何処かで辛い思いをしているかも知れない…瑠香を探し出すまではね。そして、仮に瑠香が見つかったとしても…瑠香がこの世界に残りたいと願うなら、僕は地球への帰還を諦めて、この世界に残るかもしれない。」
「そんなぁ~」
「だから華奈、僕の事は待たなくても良い。君は君の幸せを探してくれ…」
華奈は大声で泣き出した。
このバルコニーにも数人は居るのだが、人目を憚らずに大声で泣きじゃくっていた。
その鳴き声を聞いて、会場の中にいた人達がこちらに向かって来るのが見えた。
なので、僕は華奈に対する罪悪感からか…転移魔法でその場を後にした。
~~~~~翌日~~~~~
僕は玉座の間に出向くと、そこには昨日に泣いて目を腫らした華奈と、それに付き添う飛鳥、翔也と賢斗が居た。
僕は国王夫妻に挨拶をし、レイリア達に用事を済ませる為にテレシア王国に行くので、冒険者ギルドで落ち合う事を約束をしてから、テレシア王国の裏門に転移魔法で移動した。
久々に見るテレシア王国は、良い思い出はあまり無いので、懐かしいと感じるよりも憎らしいという気持ちしか湧かなかった。
「此処は…何処だ?」
「テレシア王国の裏門だよ。あ、皆はこの王国から旅立つ時は、正門からか…」
「あぁ、だから裏門は来た事がなかった。」
「僕は城から追い出される時に、この門から出されたからな。テレシア王国のイメージが此処しか浮かばなかったんだ。」
僕達がそんな話をしていると、上の中庭に居る騎士が僕達を見付けて降りて来た。
「皆様、お帰りなさい!…そして英雄ダン様、魔王討伐おめでとうございます。」
「有り難う…で、早速で悪いんだけど、アルカディア王女を呼んで来てくれるか?」
「アルカディア王女様でしたら、召喚陣で準備をされております。」
そう言って騎士は走って行くと、僕達は城の地下にある召喚陣のある場所に向かっていた。
すると、途中に何人かの白いローブを来たドルイド達が、慌ただしく階段を駆け上がったり、駆け降りたりしている所に出くわした。
魔王を倒せば、次にする事と言えば…僕達が帰還する事と思っての準備だろう。
ただ、その準備は召喚もそうだったが、かなりの時間を要するという話らしい。
なので、ここ数日はこんな感じで慌ただしい日々を送っているのだろう。
「かなり慌ただしいな…」
「そりゃあ、僕達を元の世界に戻す為にはそれなりに準備が必要だからだろう。この世界に来た時の王女の言葉は覚えているか?」
「そう言えば、城のドルイド以外に国民の協力を得て、俺達を呼び出したと言っていたな。」
「だから帰りも、それなりに準備が必要なんだろう。慌ただしいのはそういう理由だ。」
僕達は召喚陣のある地下に辿り着くと、アルカディア王女が召喚陣の中心で祈りを捧げていた。
そして僕達に気付くと、アルカディア王女はまず御礼を述べて来た。
「この度は、世界の危機を救って下さり…誠に有り難う御座います。」
「世界の危機と言ってもなぁ…?魔王サズンデスはそれなりに強かったけど、僕1人だけで…5人も必要なかったね。」
「本当に…ダン様だけで倒されたのですね。」
サーディリアン聖王国の国王は、魔王サズンデスが倒されたという話を通信設備で全世界に配信した。
その時に、たった1人の勇者でも無い異世界人が魔王を倒したという事を話したらしいのだが…?
その話に信じていない者や疑う者も居たらしい。
「それで、アルカディア王女様…送還の準備は終わりましたか?」
「準備自体は終わってはいるのですが、送還させる為の魔力が足りなくて…」
「あ、その点なら御心配無く…僕はこの世界に残りますし、4人の送還には僕の魔力もお貸し出来ますので…」
「ダン様は、帰られないのですか?」
「僕には、まだやらなければならない事が有りますので…」
僕は昨日、華奈に言った事を皆に話した。
僕は帰らない宣言で動揺した華奈には、瑠香の話を疑わなかった。
翔也はアホなので、美少女の仲間達と離れるのが辛いという話だけなら信じなかっただろうが、瑠香の話をすると同情するような素振りを見せた。
飛鳥もあまり頭が良く無い為に、僕の話を信じていたみたいだったんだが…?
賢斗だけは、僕の話を真っ向から疑ってみせた。
…そう、瑠香の話の1番の困難な障害は…天才の賢斗だった。
「おい、慱…それは変じゃ無いか?僕達は皆…慱の両親と瑠香ちゃんの葬儀に参加して居たんだぞ。その時に、それぞれの棺にお別れの花を送っているし…」
…そう、賢斗の記憶力だけは侮れない物があった。
その所為で、3人は信じ掛けて居た瑠香の話を疑う様になったのだった。
本当に、賢斗は面倒臭い。
翔也のアホみたいに、コロッと騙されて居てくれたら…スムーズに帰還させられたのに。
…だとすると、賢斗対策用に用意した嘘を吐いてみるか。
「実は、あの葬儀の後に大変な事件があったんだ。」
「なんだ、その事件というのは?」
「僕の両親と瑠香の遺体を葬儀場に運ぼうとした時に、瑠香の棺だけがやたらと軽かったんだ。最初はてっきり、ルカの年齢だったら棺は軽くてもおかしくは無いと思って居たんだけど、それにしては軽すぎると思って葬儀屋の職員が瑠香の棺の蓋を開けた所…瑠香の遺体が無かったんだ。」
「そんな事…あったか?」
「この話を知っているのは、喬介兄ちゃんと翔也のおじさん、華奈のお父さんと賢斗のお父さんと僕だけなんだ。最初は僕が疑われたよ、哀しみのあまり…瑠香の遺体を隠したんじゃ無いかってね。だけど、その疑いはすぐに晴れたけど…」
「それで、結局見つかったのか?」
「いいや…僕以外となると、瑠香は商店街の中では結構可愛がられて居たからね。商店街の住人で、瑠香を溺愛して居た数名が疑われもしたんだけど、どれも皆アリバイがあってハズレだった。」
「なら、遺体は何処に…?」
これで、瑠香がこの世界に異世界転移したという話に繋げる事が出来る。
あとは…賢斗、頼むから余計な事を話すなよ。
「だから、瑠香はこの世界に異世界転移をしたという話に信憑性が出るだろ?瑠香は僕以上に、特殊な力が生まれながらにして備わって居たみたいなんだ。」
「そんな話は聞いた事がなかったけど?」
やはり賢斗が突っ込んで来たな。
僕は溜め息を吐いて、話を続けた。
「そりゃあ、賢斗は知らないさ。瑠香の特殊な力は、家族以外には教えて居なかったし。」
「そう…なのか?」
賢斗は腕を組んで、必死に考え込んでいた。
僕もこの辺の記憶は曖昧なのだが、確か…火葬後の骨上げの時は、近親者が僕だけだったので…皆の両親に手伝って貰ったけど、皆は参加はして居なかったと思う。
子供は、知り合いの骨になった姿を見せるには、ショックが大きいとかで…?
なので、賢斗が瑠香の遺体が無いという話を疑う根拠は無い。
その話を確かめるには、元の世界…地球に戻って親に聞くしか無いからだった。
「そんなに瑠香の話を確かめたいんだったら、地球に戻ってから親にでも聞け。それと…」
確か、賢斗は…初日以降は、4人でダンジョンに放り込まれて居て…資料室とか入って居ないよな?
今から確認する時間もないだろうし、この嘘は通用するかな?
「僕達の前の救世主召喚で、その時の賢者様の手記を読んだんだけど…賢斗は読んだか?」
「何それ…そんなのがあったのか?」
「その賢者様の話によると、この世界に来るには2種類の方法があるという話だ。1つは王国からの救世主召喚で呼び出される場合と、もう1つは…地球での天災クラスの災害に見舞われた時に、瑠香の様な力を持った者が異世界に渡って来るというパターンがな。」
「そんな事があったのか?」
「前回の賢者様は、サーディリアン聖王国でアメリカ人と会ったと書かれていた。移動方法は、天災クラスのハリケーンに巻き込まれたんだが、気付いたら見慣れない景色の場所に居たと。」
「地球では、神隠しにあったという感じか?」
「そういう事だろうな。何て名前の村だったかは忘れたけど、石碑に日本語で書かれた文字を発見したと、前回の賢者様は手記に残していた。」
「…という事は、他にもいたんだね。」
「そうなって来ると、瑠香がこの世界に居るという話も…」
「なるほど、そういう理由があるなら…慱は残りたいだろうね。」
「瑠香は事故で死んだ時に年齢は6歳、現在は僕より2歳下だから…14歳か。」
「なんか、探すあてはあるのか?」
「瑠香が髪を染めたりしていなかったら、黒髪で黒眼の14歳の女の子を探していると…冒険者ギルドで依頼をしてみるよ。」
「そういう理由なら、僕達も残りたい気もするが…」
「今帰らないと、地球での刻が動き出してしまうからね。戻った時に、親からめったくそ怒られるぞ。」
「だな、慱…済まん。」
「別に良いさ…」
良し、これで…もう賢斗は疑う事はないだろう。
ふっ………賢斗と僕とでは、頭の中の出来が根本的に違うのさ。
僕がいなければ、学校一の天才くぅ~んw
僕は賢斗を心の中で、嘲笑っていた。
「何か…今、スッゴくムカついたんだけど?」
「異世界に来て、食生活が乱れている所為でカルシウムが不足しているんだよ。早く帰って乳製品を爆食しろ。」
僕はそう言って、皆を召喚陣の中心に行かせた。
そして皆にそれぞれ別れを告げてから、最後に翔也と言葉を交わした。
「僕はいつ戻れるかは分からない。高校卒業になっても戻らないその時は………華奈の事を宜しくな!」
翔也は、未だ悲しんでいる華奈を横目に見てから、僕に向き直って頷いてみせた。
華奈にはとても悪い事をしてしまったな。
僕がエルフ似の美少女と、スタイルが…(特に胸元が)爆なデミと、猫耳っ子と別れたくないが為に華奈を振ってしまった事に…。
でもまぁ、翔也は良い奴だから安心して良いぞ。
ちょっと…いや、かなりアホだけど…根は良い奴だから。
それに飛鳥、想いはちゃんと本人に伝わる様に伝えないとな。
そこの僕に劣る天才君は、周りくどい事にはかなり鈍臭い奴だから。
飛鳥も…見た目は女子だけど、女子力が壊滅的に皆無だからな。
料理の腕だけなら、華奈と良い勝負になるんじゃないか?
「じゃあな、皆!また…な………」
「「「「ちょっと待て、慱…今お前は悪口を考え……………」」」」
幼馴染達は、最後には勘が冴えていたみたいだった。
あのまま話を聞いていると、召喚陣から飛び出して殴られると思って、急いで送還を急がせた。
「皆様は言ってしまわれましたね。」
「この召喚陣が光っている間は、まだ戻っている途中ですか?」
「はい、光が消えたら…向こうに帰還しているはずです。」
召喚陣を眺めていると、2分後には召喚陣の光が消えて行った。
なので僕は、召喚陣の上に結界を張り…僕以外では解除出来ない様に施したのだった。
「ダン様、何故に結界を張られたのですか?」
「念の為ですよ、アイツらがこちらに来る方法を見つけても来られない様にね。」
「そんな方法があるのですか?」
「万が一…という可能性もあるかも知れないからね。」
全くこの世界に来た事がない者ならば、何も心配する事はないのだが…?
4人はこの世界に来ている上に、勇者や聖女や賢者…というメジャーなジョブを入手している。
更に言えば、異世界召喚では魔王を倒した異世界人には、何らかのギフトを授けられるという話らしいが…?
魔王サズンデスとの戦いでいなかったアイツらに、ギフトなんて与えられるとは思えない…が、仮に与えられていたりした場合、他の3人はともかく…賢斗だけは戻って来る可能性があるかも知れない。
なのでの…召喚陣の結界という訳だ。
僕は召喚陣から離れて、階段を上がろうとすると…アルカディア王女から話し掛けられた。
「これからダン様は如何なされるのです…あ、妹様を探す旅でしたか!」
「でも、その前に…サーディリアン聖王国にいる仲間達と合流しないといけないので、そちらに向かいます。」
「そうでしたか、それと妹様の件ですが…こちらでも手配致しますね。」
「え?」
あれは…全くの嘘っぱちだったんだけどなぁ。
僕も、妹が本当にこの世界に居るのなら…会ってみたいけどね。
でも流石に…それだけは絶対に無いな。
ところが魔王サズンデスを倒した感謝として、下界の話を聞いていた神々達から、僕に対して恩恵を与えてくれたのだった。
その恩恵とは、まさかの…?
遂に…この話が来たか。
先程、翔也に話した内容では…翔也や賢斗や飛鳥は納得してくれていたみたいだったが、どうやら華奈だけは納得をしていなかったみたいだった。
残りたい理由が、あの話だけでは弱過ぎるんだろうな。
なので、僕はある嘘を吐くことにしたのだった。
この話をすれば、華奈も強く帰ろうとは言わないだろう。
ただ、逆に私も残るとか言い出しそうで怖いので、嘘をもう1つ追加しようと考えた。
その…2つの嘘とは?
「この話は誰にも話していないんだけど、実は…魔王サズンデスを倒した際に、僕は雲の上にある神殿らしき場所で、この世界の女神様に会ったんだ。」
この世界の神様は、数名の神様が存在するという。
地球の神様程の数はいないらしいんだけど、それなりの数の神様がいるらしい。
そして、この世界の主神は女神様という話らしいのだ。
ただ、名前までは分からない。
「女神様に?」
「この世界を支配しようとした魔王の討伐を感謝されたのと、そしてもう1つ…僕が帰れない理由が増えた事だった。」
「まさか、魔王以外に悪き存在が居るとか?」
「いや、そうでは無いんだ。実は、僕を庇って交通事故で死んだ両親と瑠香のうち…父さんと母さんは無理だったけど、瑠香だけはこの世界に転移を許されて…この世界にいるという話なんだ。」
「瑠香ちゃんがこの世界に⁉︎」
「あぁ、ただ…あの時の瑠香の年齢は、小学2年生だったから…7歳くらいだ。そんな年齢の女の子が、平和な日本からこの魔物が存在する世界に来たら…」
「瑠香ちゃんは生きているの?」
「生きてはいる…が、どうやら記憶を失っているみたいという話なんだ。まぁ、この世界で辛い目に遭っていたという可能性はあるかもね。」
「なら、慱の目的は…瑠香ちゃんを探すんでしょ?なら、私達も…」
「本来なら協力して欲しい…と、今迄の僕だったらお願いしたかも知れない。だけど、女神様からもう1つ言われた事があるんだ。それは…」
「それは?」
「それは魔王サズンデスを倒した事により、今迄地球での止まっている時間が動き出すという話なんだ。そこで僕に付き合って異世界に留まっていると、地球では大騒ぎに発展する事になる。僕は心配をしてくれる…という言い方はあまり良く無いか。僕は帰っても待っている家族は存在しないから、大した問題は無いんだが…」
「そっか、私達の様に家族がいると、何日も帰らないと騒ぎになるだろうね。」
「なので僕は、仲間達と一緒に瑠香を探そうと思っている。仲間達もそれぞれ目的があるみたいだしね…」
祝勝会の合間、華奈に呼び出される前に…僕は、レイリアとクリアベールとクリスに会って話す事が出来た。
レイリアの目的は、大き過ぎる魔力を抑えるというがあるんだけど、どうやらエルドナート大陸のエルフ達が持つ秘薬というのが、その膨大な魔力を抑えてくれる効果があるという話だった。
クリスは、幼い頃に離れ離れになってしまった同族を探すという目的があるみたいだ。
クリスはサーディリアン聖王国で騎士になる前は、ギルドで依頼をこなしながら…バストゥーグレシア大陸、ファークラウド大陸、そしてこのフレアニール大陸を渡り歩いて来たみたいだった。
だが、どの大陸にも同族の情報は掴めずにいて…サーディリアン聖王国の国王が、ゲルギグス大陸に獣人の集落があるという話をしていて、その大陸なら同族がいるかも知れないという事を聞いたのだった。
だが、遥か北方のゲルギグス大陸には、そう簡単には辿り着かないという話だった。
ゲルギグス大陸周辺の海は、別名…魔海とも呼ばれていて、大型の魔物や魔獣が棲息している為に海路で進むには非常に危険で、なので定期船の類は通っていないという話だった。
クリスはサーディリアン聖王国で騎士をしながら、ゲルギグス大陸に行ける方法を模索していたのだが、そんな時に僕の話を小耳に挟み…更には魔王を倒したという事で、旅に着いて来ることになったのだった。
僕的には、もふもふ耳を持つ猫人族が入ってくれるだけで、テンション爆上がりなんだけどね。
「なら仲間達の事情の改善や瑠香ちゃんを探し出したら、慱は地球に戻って来るんだよね?」
「そりゃあね、待っていてくれる家族は居ないけど、知り合いは居るからね。華奈の両親とか、翔也の両親とかね。」
「なら、私は地球で待っているけど…何年くらい掛かるの?」
「ゲルギグス大陸という場所は、フレアニール大陸がオーストラリア大陸だとすると、ゲルギグス大陸は北極という感じだからね。しかも、地球の進んだ科学力で造られた船とかでは無いから、何日掛かるかも想像は出来ない。」
「なら、戻って来るまでに…10年以上とか掛かるかも知れないの?」
「仲間達の事が無事に解決しても、瑠香が見つからない事にはね…下手すると、10年以上ではきかないかも知れない。」
僕がそう言うと、華奈は悲しそうな顔をして俯いた。
僕はそんな華奈を改めて見る
華奈は、スタイル抜群で容姿端麗、頭脳明晰と欠点らしき欠点は……あったな。
料理が絶望的に不味いという欠点が。
料理の腕さえ除けば、華奈に不服は無いんだけど…?
現在の僕の仲間達である3人は、レイリアは華奈以上の美少女でスタイルは割と良い。
まだ12歳の身体という事で、今後に期待。
クリアベールは、華奈以上のメロン……いや、もはや西瓜というレベルだろう。
顔も割と整っているし、問題は無い。
クリスは、猫耳っ子の女の子。
スタイルは、下手すれば…他の2人よりも良いかも知れない。
猫人族なので、ちょっと猫背なのが…。
そんな3人の女の子と地球を天秤に掛けたら、どうやってもこの世界が余裕で勝つ。
「だから華奈、僕の事は待たなくても良い。華奈は華奈で、自分の眼鏡に合う人を見付けて幸せになってくれ。」
「慱、どうしてそんなことを言うの‼︎」
「この世界に来る少し前の放課後に僕に告白をしてくれたね、その時は迷ってすぐに返事は出来なかった。でも、今ならその返事が出来る…そう思って、今のが僕の返事だ。」
「そ、そんな…」
華奈は、崩れる様に地面に座り込んで、両手で顔を覆った。
幼い頃から常に一緒に居て、華奈からしてみたら…僕に断れるなんて微塵も思わなかったのだろう。
僕はそんな華奈に手を差し伸べる事が出来なかった。
だって、華奈の告白を断った理由が…あまりにも不純な動機だからだ。
「華奈、明日に転移魔法で皆をテレシア王国に送るよ。そして送還の儀で、地球に帰るんだ。」
「慱はやっぱり?」
「あぁ、僕は戻らない。今も何処かで辛い思いをしているかも知れない…瑠香を探し出すまではね。そして、仮に瑠香が見つかったとしても…瑠香がこの世界に残りたいと願うなら、僕は地球への帰還を諦めて、この世界に残るかもしれない。」
「そんなぁ~」
「だから華奈、僕の事は待たなくても良い。君は君の幸せを探してくれ…」
華奈は大声で泣き出した。
このバルコニーにも数人は居るのだが、人目を憚らずに大声で泣きじゃくっていた。
その鳴き声を聞いて、会場の中にいた人達がこちらに向かって来るのが見えた。
なので、僕は華奈に対する罪悪感からか…転移魔法でその場を後にした。
~~~~~翌日~~~~~
僕は玉座の間に出向くと、そこには昨日に泣いて目を腫らした華奈と、それに付き添う飛鳥、翔也と賢斗が居た。
僕は国王夫妻に挨拶をし、レイリア達に用事を済ませる為にテレシア王国に行くので、冒険者ギルドで落ち合う事を約束をしてから、テレシア王国の裏門に転移魔法で移動した。
久々に見るテレシア王国は、良い思い出はあまり無いので、懐かしいと感じるよりも憎らしいという気持ちしか湧かなかった。
「此処は…何処だ?」
「テレシア王国の裏門だよ。あ、皆はこの王国から旅立つ時は、正門からか…」
「あぁ、だから裏門は来た事がなかった。」
「僕は城から追い出される時に、この門から出されたからな。テレシア王国のイメージが此処しか浮かばなかったんだ。」
僕達がそんな話をしていると、上の中庭に居る騎士が僕達を見付けて降りて来た。
「皆様、お帰りなさい!…そして英雄ダン様、魔王討伐おめでとうございます。」
「有り難う…で、早速で悪いんだけど、アルカディア王女を呼んで来てくれるか?」
「アルカディア王女様でしたら、召喚陣で準備をされております。」
そう言って騎士は走って行くと、僕達は城の地下にある召喚陣のある場所に向かっていた。
すると、途中に何人かの白いローブを来たドルイド達が、慌ただしく階段を駆け上がったり、駆け降りたりしている所に出くわした。
魔王を倒せば、次にする事と言えば…僕達が帰還する事と思っての準備だろう。
ただ、その準備は召喚もそうだったが、かなりの時間を要するという話らしい。
なので、ここ数日はこんな感じで慌ただしい日々を送っているのだろう。
「かなり慌ただしいな…」
「そりゃあ、僕達を元の世界に戻す為にはそれなりに準備が必要だからだろう。この世界に来た時の王女の言葉は覚えているか?」
「そう言えば、城のドルイド以外に国民の協力を得て、俺達を呼び出したと言っていたな。」
「だから帰りも、それなりに準備が必要なんだろう。慌ただしいのはそういう理由だ。」
僕達は召喚陣のある地下に辿り着くと、アルカディア王女が召喚陣の中心で祈りを捧げていた。
そして僕達に気付くと、アルカディア王女はまず御礼を述べて来た。
「この度は、世界の危機を救って下さり…誠に有り難う御座います。」
「世界の危機と言ってもなぁ…?魔王サズンデスはそれなりに強かったけど、僕1人だけで…5人も必要なかったね。」
「本当に…ダン様だけで倒されたのですね。」
サーディリアン聖王国の国王は、魔王サズンデスが倒されたという話を通信設備で全世界に配信した。
その時に、たった1人の勇者でも無い異世界人が魔王を倒したという事を話したらしいのだが…?
その話に信じていない者や疑う者も居たらしい。
「それで、アルカディア王女様…送還の準備は終わりましたか?」
「準備自体は終わってはいるのですが、送還させる為の魔力が足りなくて…」
「あ、その点なら御心配無く…僕はこの世界に残りますし、4人の送還には僕の魔力もお貸し出来ますので…」
「ダン様は、帰られないのですか?」
「僕には、まだやらなければならない事が有りますので…」
僕は昨日、華奈に言った事を皆に話した。
僕は帰らない宣言で動揺した華奈には、瑠香の話を疑わなかった。
翔也はアホなので、美少女の仲間達と離れるのが辛いという話だけなら信じなかっただろうが、瑠香の話をすると同情するような素振りを見せた。
飛鳥もあまり頭が良く無い為に、僕の話を信じていたみたいだったんだが…?
賢斗だけは、僕の話を真っ向から疑ってみせた。
…そう、瑠香の話の1番の困難な障害は…天才の賢斗だった。
「おい、慱…それは変じゃ無いか?僕達は皆…慱の両親と瑠香ちゃんの葬儀に参加して居たんだぞ。その時に、それぞれの棺にお別れの花を送っているし…」
…そう、賢斗の記憶力だけは侮れない物があった。
その所為で、3人は信じ掛けて居た瑠香の話を疑う様になったのだった。
本当に、賢斗は面倒臭い。
翔也のアホみたいに、コロッと騙されて居てくれたら…スムーズに帰還させられたのに。
…だとすると、賢斗対策用に用意した嘘を吐いてみるか。
「実は、あの葬儀の後に大変な事件があったんだ。」
「なんだ、その事件というのは?」
「僕の両親と瑠香の遺体を葬儀場に運ぼうとした時に、瑠香の棺だけがやたらと軽かったんだ。最初はてっきり、ルカの年齢だったら棺は軽くてもおかしくは無いと思って居たんだけど、それにしては軽すぎると思って葬儀屋の職員が瑠香の棺の蓋を開けた所…瑠香の遺体が無かったんだ。」
「そんな事…あったか?」
「この話を知っているのは、喬介兄ちゃんと翔也のおじさん、華奈のお父さんと賢斗のお父さんと僕だけなんだ。最初は僕が疑われたよ、哀しみのあまり…瑠香の遺体を隠したんじゃ無いかってね。だけど、その疑いはすぐに晴れたけど…」
「それで、結局見つかったのか?」
「いいや…僕以外となると、瑠香は商店街の中では結構可愛がられて居たからね。商店街の住人で、瑠香を溺愛して居た数名が疑われもしたんだけど、どれも皆アリバイがあってハズレだった。」
「なら、遺体は何処に…?」
これで、瑠香がこの世界に異世界転移したという話に繋げる事が出来る。
あとは…賢斗、頼むから余計な事を話すなよ。
「だから、瑠香はこの世界に異世界転移をしたという話に信憑性が出るだろ?瑠香は僕以上に、特殊な力が生まれながらにして備わって居たみたいなんだ。」
「そんな話は聞いた事がなかったけど?」
やはり賢斗が突っ込んで来たな。
僕は溜め息を吐いて、話を続けた。
「そりゃあ、賢斗は知らないさ。瑠香の特殊な力は、家族以外には教えて居なかったし。」
「そう…なのか?」
賢斗は腕を組んで、必死に考え込んでいた。
僕もこの辺の記憶は曖昧なのだが、確か…火葬後の骨上げの時は、近親者が僕だけだったので…皆の両親に手伝って貰ったけど、皆は参加はして居なかったと思う。
子供は、知り合いの骨になった姿を見せるには、ショックが大きいとかで…?
なので、賢斗が瑠香の遺体が無いという話を疑う根拠は無い。
その話を確かめるには、元の世界…地球に戻って親に聞くしか無いからだった。
「そんなに瑠香の話を確かめたいんだったら、地球に戻ってから親にでも聞け。それと…」
確か、賢斗は…初日以降は、4人でダンジョンに放り込まれて居て…資料室とか入って居ないよな?
今から確認する時間もないだろうし、この嘘は通用するかな?
「僕達の前の救世主召喚で、その時の賢者様の手記を読んだんだけど…賢斗は読んだか?」
「何それ…そんなのがあったのか?」
「その賢者様の話によると、この世界に来るには2種類の方法があるという話だ。1つは王国からの救世主召喚で呼び出される場合と、もう1つは…地球での天災クラスの災害に見舞われた時に、瑠香の様な力を持った者が異世界に渡って来るというパターンがな。」
「そんな事があったのか?」
「前回の賢者様は、サーディリアン聖王国でアメリカ人と会ったと書かれていた。移動方法は、天災クラスのハリケーンに巻き込まれたんだが、気付いたら見慣れない景色の場所に居たと。」
「地球では、神隠しにあったという感じか?」
「そういう事だろうな。何て名前の村だったかは忘れたけど、石碑に日本語で書かれた文字を発見したと、前回の賢者様は手記に残していた。」
「…という事は、他にもいたんだね。」
「そうなって来ると、瑠香がこの世界に居るという話も…」
「なるほど、そういう理由があるなら…慱は残りたいだろうね。」
「瑠香は事故で死んだ時に年齢は6歳、現在は僕より2歳下だから…14歳か。」
「なんか、探すあてはあるのか?」
「瑠香が髪を染めたりしていなかったら、黒髪で黒眼の14歳の女の子を探していると…冒険者ギルドで依頼をしてみるよ。」
「そういう理由なら、僕達も残りたい気もするが…」
「今帰らないと、地球での刻が動き出してしまうからね。戻った時に、親からめったくそ怒られるぞ。」
「だな、慱…済まん。」
「別に良いさ…」
良し、これで…もう賢斗は疑う事はないだろう。
ふっ………賢斗と僕とでは、頭の中の出来が根本的に違うのさ。
僕がいなければ、学校一の天才くぅ~んw
僕は賢斗を心の中で、嘲笑っていた。
「何か…今、スッゴくムカついたんだけど?」
「異世界に来て、食生活が乱れている所為でカルシウムが不足しているんだよ。早く帰って乳製品を爆食しろ。」
僕はそう言って、皆を召喚陣の中心に行かせた。
そして皆にそれぞれ別れを告げてから、最後に翔也と言葉を交わした。
「僕はいつ戻れるかは分からない。高校卒業になっても戻らないその時は………華奈の事を宜しくな!」
翔也は、未だ悲しんでいる華奈を横目に見てから、僕に向き直って頷いてみせた。
華奈にはとても悪い事をしてしまったな。
僕がエルフ似の美少女と、スタイルが…(特に胸元が)爆なデミと、猫耳っ子と別れたくないが為に華奈を振ってしまった事に…。
でもまぁ、翔也は良い奴だから安心して良いぞ。
ちょっと…いや、かなりアホだけど…根は良い奴だから。
それに飛鳥、想いはちゃんと本人に伝わる様に伝えないとな。
そこの僕に劣る天才君は、周りくどい事にはかなり鈍臭い奴だから。
飛鳥も…見た目は女子だけど、女子力が壊滅的に皆無だからな。
料理の腕だけなら、華奈と良い勝負になるんじゃないか?
「じゃあな、皆!また…な………」
「「「「ちょっと待て、慱…今お前は悪口を考え……………」」」」
幼馴染達は、最後には勘が冴えていたみたいだった。
あのまま話を聞いていると、召喚陣から飛び出して殴られると思って、急いで送還を急がせた。
「皆様は言ってしまわれましたね。」
「この召喚陣が光っている間は、まだ戻っている途中ですか?」
「はい、光が消えたら…向こうに帰還しているはずです。」
召喚陣を眺めていると、2分後には召喚陣の光が消えて行った。
なので僕は、召喚陣の上に結界を張り…僕以外では解除出来ない様に施したのだった。
「ダン様、何故に結界を張られたのですか?」
「念の為ですよ、アイツらがこちらに来る方法を見つけても来られない様にね。」
「そんな方法があるのですか?」
「万が一…という可能性もあるかも知れないからね。」
全くこの世界に来た事がない者ならば、何も心配する事はないのだが…?
4人はこの世界に来ている上に、勇者や聖女や賢者…というメジャーなジョブを入手している。
更に言えば、異世界召喚では魔王を倒した異世界人には、何らかのギフトを授けられるという話らしいが…?
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なのでの…召喚陣の結界という訳だ。
僕は召喚陣から離れて、階段を上がろうとすると…アルカディア王女から話し掛けられた。
「これからダン様は如何なされるのです…あ、妹様を探す旅でしたか!」
「でも、その前に…サーディリアン聖王国にいる仲間達と合流しないといけないので、そちらに向かいます。」
「そうでしたか、それと妹様の件ですが…こちらでも手配致しますね。」
「え?」
あれは…全くの嘘っぱちだったんだけどなぁ。
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でも流石に…それだけは絶対に無いな。
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