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最終章

第一話 魔王サズンデス・前編(遂にラスボス対決?)

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 僕は挨拶がてらに、魔王サズンデスがいる玉座の間に極大豪炎魔法を放ってから扉を閉めた。
 すると、玉座の間から…魔王サズンデスと思われる叫び声が響いて来た。
 魔王サズンデスに関わらず、魔王軍の殆どは戦いの前に何かしらの会話をするのが基本らしい。
 今回の魔王サズンデスも、僕が玉座の間に入ってから会話から始めると思っていたらしい所に、極大豪炎魔法を放たれたので…無防備な状態で油断して、そんな物をまともに喰らったら…?
 僕は扉を開けて中を確認した。
 すると、魔王サズンデスらしき者は…部屋中に極大豪炎魔法で発生した煙に咳き込んでいた。

 「流石は魔王というところか、この程度の魔法では大した効果が得られなかったみたいだな?」

 まぁ…魔王がこの程度でくたばるとは到底思ってはいない。
 ただ、思っていた以上に咳き込んでいる音が苦しい感じなのは気のせいだろうか?
 
 『貴様…何という魔法を放ってくれたんだ‼︎』
 「何という…というか、ただの極大豪炎魔法なのだが?」
 『この威力で、ただの極大豪炎魔法ではないであろう!貴様はふざけているのか⁉︎』

 そう言われても、僕が放ったのは本当にただの極大豪炎魔法だ。
 極大獄炎魔法とかならいざ知らず、豪炎魔法はそれほどの威力ではない……って、あ!

 「すまん、覚醒を解除していなかった。」
 『その光り輝く姿は覚醒というのか?その力…我を凌駕する力を感じるぞ‼︎』

 そりゃあ、覚醒を使っていた訳だから極大豪炎魔法の威力が高くなるわな。
 覚醒使用時の初級魔法のファイアボールが上級並みに威力が跳ね上がるのだから。
 それにしても…魔王の力を凌駕する程の事は流石にないだろう?

 『まぁ、良い…少し遅れたが、よくぞ我が前に姿を現したな勇者よ‼︎』
 「いや、僕は勇者ではないぞ?」
 『何を言っておるか!貴様の腰に二本の聖剣を所持しているではないか‼︎』
 「あ…いや、これは…」

 この世界の勇者は、聖剣を所持していることが前提なのか?
 一般人が聖剣を持っているという事は無いのかな?

 「右の腰にある剣は、名前の無い無人島で手に入れた…元は魔剣で、元は聖剣という話だったので時間を巻き戻して聖剣本来の力を復活させたエグゼンリオンで、左の腰にある剣は…聖竜国グランディオの台座に刺さっていた剣をパク………拝借して来た聖剣シャンゼリオンだ。」
 『貴様…今パクったと言おうとしなかったか?』

 話を大分割愛してしまったが、正直に言えば聖剣シャンゼリオンはパクって逃亡したと言っても間違いでは無いだろう。
 それが先の魔王軍侵攻の際に映像で聖竜国グランディオの連中に見つかってしまったお陰で、現在は返却を要求されている訳なのだが…?

 『貴様が勇者では無いだと?見え透いた嘘を吐くのでは無いわ‼︎』
 「いや、僕は本当に勇者では無いんだって!」
 『勇者にしか所持を許させない聖剣を装備しているでは無いか‼︎』
 
 勇者にしか所持を許させない…?
 僕は勇者では無いが、聖剣は普通に使えるんだが。
 そう言えば、オールラウンダーって何のジョブに該当するんだろうか?
 魔王軍侵攻時の四天王のリーダーには、ハッタリで勇者を超えた存在とか話していたが…?

 『まぁ、良い…我と雌雄を結しようでは無いか‼︎』
 「まぁ、そうなるよな…相手は曲がりなりにも魔王なんだし。」
 『だが、今のままでは我には不利を生じる事になる。そういう訳で…貴様には我の最終形態をお見せするとしよう。』
 「いや、別にそのままでも良いのだが…って、聞いちゃいねぇな!ゲームでも魔王は進化したり変身したりするけど、この魔王もやはりそのタイプなのか…」

 魔王サズンデスは、両手を広げて力み出していた。
 身体中からは巨大な魔力が噴き出していて、明らかに先程までとは異質な力を感じていた。
 …んだけど、あまりにも無防備な姿だったので、僕はロックバレットを魔王サズンデスの股間に目掛けて冗談半分で放ってみた。
 そして、魔王サズンデスの股間に岩の塊が命中すると…魔王サズンデスは悶絶した表情を浮かべ、大量の汗が噴き出しながらそのまま前のめりに地面に倒れたのだった。

 「やっぱり…魔王でもアソコは痛いのか。」
 『貴様……セオリーでは、最終形態になる姿を黙って見守るというのが鉄則だろうが‼︎』
 「お前のセオリーなんて知るか!最終形態の姿がどの程度の物かは知らないけど、楽に倒せるのならその姿のままで良い。」
 『くっ……オールマジックバリア‼︎』

 魔王サズンデスは、全方向に対して魔法無効化の障壁を展開した。
 その障壁の所為で、どの方向からでも魔法を阻害するのが目的らしい。
 そんなに最終形態とやらになりたいのだろうか?
 ただ、この障壁なんだけど…確かに前後左右と頭上からの攻撃は無効化出来るだろうが、足元を見ると障壁が展開されていなかった。
 まさか、地面からの攻撃がないと思っているのかねぇ?
 この世界の魔法には、下からの攻撃が恐らくないのだろうが…?

 『ハァァァァァァァァァァァ………』
 「グレイブ!」
 『ハァァァァァァァァァァァ………ウグゥ⁉︎』

 魔王サズンデスは、足元から突き出た岩の攻撃に対して油断をしていて…またも股間を打ち抜かれた。
 僕の放ったグレイブという魔法は、地面から岩が突き出る魔法だ。
 これは…この世界には恐らく無い、元いた世界の知識で生み出された魔法なので、魔王サズンデスにはまさかの攻撃で油断をしているみたいだった。
 魔王サズンデスはまたも、地面に膝から崩れる様に倒れ…蹲りながら股間を押さえていた。

 『貴様………何故、何度も我の邪魔をする‼︎』
 「いや、あまりにも無防備だったから、注意喚起を促す為の行動だったんだが…」
 『それなら、普通に声をかければ良いでは無いか‼︎』
 「あ…それもそっか!…と、1つ聞いておきたいんだが、最終形態とやらは現在よりどれ位に強くなる物なんだ?」
 『貴様は、魔族の変身の意味を知らん様だな?良かろう…我等の中には、強大な力を押し留める為に敢えて弱い姿になって体内に封印するという事をする者がいる。変身をする事により…我等は本来の力を開放する事が出来るのだ‼︎』
 「…という事は、現在よりは多少マシになるという事か?」
 『多少マシになるだと?それは一般の魔族の話であって、我は今よりも数十倍の力が開放されるのだ‼︎』
 「なんだ、今よりも数十倍程度か…数百倍になるんだったら、必死になって止めようと思っていたが…」

 魔王サズンデスの話が本当だとすると…?
 現在に僕との状態では、覚醒を使わない状態で互角。
 今は覚醒を使っているので、魔王サズンデスよりも力が上なのだが…今よりも数十倍となると、流石に分が悪く…なるかな?
 僕は笑みを浮かべながら、魔王サズンデスに進言した。

 「分かった…そんなに言うのなら、その最終形態とやらになってみろ!」
 『貴様が邪魔をしなければ、とっくに最終形態になっていたというのに‼︎』
 「それは悪かったよ、今度は一切の邪魔をしないから…」

 その言葉を聞いて、魔王サズンデスは再び叫び声を上げながら構えた。
 相変わらずというか…本当に隙だらけの格好をしているな。
 だけど、今回の僕はそれを傍観………する訳がない!
 魔王サズンデスの話が本当だったら、最終形態になった途端に立場が逆転…はないと思うが、する可能性もなくは無いからだ。
 さてと、今回も無防備な股間を狙い………ん?

 「流石に何度も騙されてはくれないか。」

 魔王サズンデスは、股間にプロテクションの魔法でガッチリと結界を張っていた。
 そうなると、ロックバレットやグレイブは効果が無いのだが…?
 ただ、魔法や魔力の高さに胡座を掻いている者には、他にもどうやっても抗えない弱点が存在する。
 それは…?

 「ロックバレット!」
 『ふっ………』
 
 僕が再びロックバレットで股間を狙おうとしていると思って、魔王サズンデスは対策を取っていることを鼻に掛けて笑っていた。
 …そう、ロックバレットは真っ直ぐ股間に目掛けて飛んで行っている…が、突如軌道を変えて…ロックバレットは股間から下の方向に飛んで行き、脛を強打したのだった。

 『グワァァァァァァァァァ⁉︎』
 「良し、成功!」

 もう少しで最終形態になり掛けていた魔王サズンデスは、脛の痛みで解除されて…脛を押さえながら地面をのたうち回っていた。
 二本足の特性上…身体の重心を支えているあの場所の攻撃は、トロールやオーガでも悲鳴を上げた事がある。
 ましてや魔王サズンデスは魔法の能力や魔力の高さに秀でた奴だから、強靭な身体とは程遠いと思って絶対に効果があると踏んでいたが、まさか本当にここまで効果があるとは思わなかった。

 『貴様!本当にいい加減にしろ‼︎』
 「いやいや…何で僕がお前の土俵が有利な状態で戦わないといけないんだよ?」
 『貴様は先程、一切邪魔をしないと言っていたでは無いか‼︎』
 「そんな物、お前を油断させる為の嘘に決まっているじゃ無いか!僕は今迄の人生で苦労の毎日の連続だったから、楽に方がつくのならその方法を取りたかっただけだ!」
 『な、何だと⁉︎』

 本当は最終形態に入る時の無防備な状態で一気にトドメを刺しても良いとは思っていたんだけど?
 今迄に散々…この世界の住人達を苦しめて来た者をあっさりと始末するには?
 なので、その苦しみの一端をぶつけて来たけど、そろそろ終わりにしても良いだろう。

 さて、どうやって始末してやろうかな?
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