幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達より強いジョブを手に入れて無双する!

アノマロカリス

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第三章

第九話 多次元宇宙(これは予想していなかった!)

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 魔王城を進んで行くと、前方に大きな扉の影が見えた。
 恐らくそこが、魔王サズンデスのいる王の間だろう。
 そう思いながら扉の方に近付いて行くと、扉の前に黒い甲冑を纏った騎士が立っていた。
 この黒衣の騎士こそ、三元将の最後の1匹の幻魔剣士デスブリンガーなのだろう。
 すると黒衣の騎士は、地の底から響く様な声で言葉を発して来た。

 『貴様が英雄ダン・スーガー…いや、洲河 愽と言った方が正解か?』
 「何故…僕の異世界での名前を知っている⁉︎」

 幻魔剣士デスブリンガーの言葉に僕は驚きを隠せなかった。
 そして、幻魔剣士デスブリンガーは言葉を続けて来た。

 『この世界での翔也や華奈はどうしている?1人でいる所を見る限り、共に行動はしていないみたいだが…?』
 「何故、翔也や華奈の事まで⁉︎」
 『俺は全てを知っている…仲間達の事も、そして…お前自身の事もな‼︎』

 僕の名前や翔也や華奈の事まで知っているという事は、恐らくだがハッタリではないのだろう。
 何故……と言いたい所だが、全てを知っていると言う事なら、ちょっとしたカマでも掛けてみるか。

 「全てを知っている…か。」
 『当然だ、お前は故郷では…両親と妹を幼い頃に亡くして、天涯孤独な人生を送っているだろう?』
 「⁉︎」

 黒衣の騎士の言う通り、僕の両親と妹は…僕が10歳の時に交通事故に巻き込まれてこの世を去った。
 この黒衣の騎士は、人の記憶を読む事が出来る能力…?
 だけど、魔王城の中に入っている時は常に魔法障壁を展開している筈なのに、それが破られた形跡も無いし…僕以上の能力の持ち主ならそれも可能なのか?
 いや、そうでは無いのかも知れないな。
 恐らく…?

 『まだあるぞ、貴様は両親と妹が死んで間もない頃に、翔也や華奈を救う為に狼の群れの中に飛び込んで重傷を負った事もな‼︎』
 「その話の詳細は、体験した者達とその親くらいしか知らない筈なのに…」

 当時は、この事は事故として片付けられた。
 何に襲われたという詳細な話は公開されていない筈だ。
 だから、当時の身内でも無い限りは知る訳がない筈だった。

 「お前は僕のストーカーか何かか?」
 『言ったであろう、全てを知っているとな!』

 こいつ…どこまで知っているんだ?
 なら、早速…カマを発動してみるか!

 「まさか…水泳の授業の時に、女子更衣室に乗り込んで…華奈と飛鳥の下着を盗んだ事も知っているのか⁉︎」
 『………は?』
 
 黒衣の騎士は、素っ頓狂な声を上げた。
 勿論だけど、そんな事実は無い。

 「華奈に一服盛って部屋で寝ている所に忍び込んで、服を無理やり脱がしてイタズラしている事も知っているのか…」
 『な、何だと⁉︎』

 これも嘘です。
 僕は華奈の事は好きだけど、そこまで踏み込む様な事は流石にしていない。

 『貴様の世界での………は、そんな事をしているのか⁉︎』
 「僕の世界での…か。」

 なるほど、あまり信じたくはなかったけど…黒衣の騎士がミスをしてくれたお陰で正体が分かりつつあるけど…?
 だけど、本当にそんな世界が存在するのか⁉︎
 いや、目の前に実際に存在している訳だし、まさかそんな事が本当にあり得るとはね。

 「僕もお前の正体に薄っすらと気付いたよ。お前の名前もダン・スーガー…いや、洲河 愽なんだな‼︎」
 『⁉︎』

 この反応を見る限りは、そういう事なんだな。
 まさか、多次元宇宙論って実在していたのか。
 通りで、僕の生い立ちや翔也や華奈の事を知っている訳だ。
 しかし…両親と妹の死や、狼に襲われていた事まで…どの世界の僕も同じ経験を味わっているんだな。
 他の世界を探せば、悲惨な人生を歩んでいない世界もあるのかも知れないな。
 すると黒衣の騎士は、兜を外して顔を見せた。
 その素顔は………僕と瓜二つって当たり前か!

 「確信があって言っては見たが…まさか本当にそんな事があり得るんだな!」
 「そう…俺はこの世界ではない、別の世界から召喚された愽だ。だが、俺は華奈に対して…そんな変態じみた事を行った事はないぞ‼︎」
 「いや、僕も無いよ。確証が出るまでに色々カマを咬ましていただけだ。」
 「そうか…俺と同じ人生を送って来た以外に、別世界の俺は変態かと思ったぞ。」

 同じ人生…って、翔也や華奈の名前を聞く限りでは、友人関係には変化がないんだろうけど?
 じゃあ、何でコイツは闇堕ちなんかしているんだ?
 どういう経緯で魔王サズンデスなんかに仕えているんだろう?

 「お前が別世界の僕という事はわかった…が、何をどうしたら魔王側に付いたんだ?」
 「貴様は…幼馴染達との関係は良好か?」
 「こっちに召喚されてからは翔也達とは会ってはいないが…関係は良好というか普通だな。」
 「そうか、それは羨ましい限りだな…」

 コイツと僕の歩んで来た人生はほぼ一緒だろう。
 両親や妹の事故死や狼に襲われたという話をしてくるくらいだから、同じ人生と言えるだろう。
 違うとすれば…幼馴染達との事だろうが?

 「俺の世界ではな、異世界召喚した時に俺のジョブは何も表示されず、無能と扱われた挙句国王から処刑される所を華奈と賢斗救われたのだが、それに対して面白くないと感じた翔也と飛鳥に嵌められて、魔獣の森に怪我を負わされて置き去りにされた所を魔王サズンデスに救われたんだ。」
 「なるほど、だからか!僕に翔也達の関係が良好かと聞いて来たのは。お前には悪いが、僕のジョブは勇者や賢者よりも上位の存在で…完璧に近い力を秘めている物だった。」
 「なるほど、世界が違えばそういう事もあるのか…羨ましい限りだな!」

 確かに…そんな事が起きれば、魔王側に付くのは仕方が無いかもしれないな。
 だとすると…?

 「んで、僕の性格上だと…?」
 「あぁ、当然復讐を果たす為に翔也と飛鳥は始末した。エセ勇者の翔也だったが、意外にも力を手に入れていて結構厄介な存在になっていたが、華奈を盾にしたら翔也は何も出来なくてな…そのまま始末した。飛鳥も同じ方法で賢斗を盾にしたら何も出来なくてな、俺は何でこんな奴らに手をこまねいていたのか…」
 「華奈や賢斗の性格だったら、翔也と飛鳥を始末した時に詰め寄られなかったのか?」
 「あぁ、鬱陶しいから賢斗を始末した後に、華奈もその場で始末した。幼馴染のよしみで仲間になるのなら生かしてやろうと思っていたんだが、それを拒否されたんでな!」

 やっぱり…そういう結末を辿る事になるとはね。
 コイツの考えまではわからないけど、華奈には特別な想いがあったとは思ったが…?
 それをあっさり言っている様だと、華奈の事はそれ程の思い入れはなかったのか。

 「魔王サズンデス様には感謝しているよ、俺をこの世界に召喚してくれただけではなく、再び翔也達を始末するチャンスをくれるのだからな!」
 「こっちの翔也達は、僕に対して何かをした訳では無い。それでもお前は翔也達を狙うのか?」
 「向こうの世界ではあっさり殺してしまってな、苦しむ姿を見れなかったので…絶望と嘆きをじっくりと聞きながら殺すという…いや、いっその事…目の前で華奈を犯してやろうか!そうすれば、彼奴の嘆きもより一層…うっ⁉︎」

 別世界の僕は口を閉ざした。
 向こうの世界の僕の事は、あんな事があったのである意味同情は出来るが…この世界の幼馴染達は向こうの世界の翔也達とは全く性格が違う。
 更に、華奈を犯すだと?
 そんな事を…僕が許すと思っているのか?

 「お前…余り調子に乗るなよ!お前の世界の幼馴染達と僕の世界の幼馴染達は違うんだ。僕がお前の行為を許すと思っているのか‼︎」
 「貴様が如何言おうが…俺は俺にやりたい様にするだけだ!自分を殺すのは初めてだが…貴様を始末した後は、幼馴染達を見つけ出して…」
 「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ‼︎」

 僕の身体から強大な魔力が吹き荒れると、身体中に白い光を纏いながら髪が銀髪に変化した。
 コイツの幼馴染達を始末するという言葉に対して、激しい怒りによる変身…覚醒を発動していた。

 「何だ、その姿は…」
 「お前の言葉により、激しい怒りで発動した力…覚醒だ!」
 「覚醒だと⁉︎そんな力は俺には…」

 僕は聖剣エグゼンリオンと聖剣シャンゼリオンを抜き放ってから、別世界の僕に斬りかかった。
 当然、別世界の僕は所持していると思われる魔剣で受ける気だろうが、僕はその魔剣を聖剣シャンゼリオンで破壊してから、聖剣エグゼンリオンで身体を貫いた。

 「馬鹿な!魔剣ネクロイシスが………一体何なんだ、その力は⁉︎」
 「お前は僕を怒らせた…その報いを受けているだけだ!」

 別世界の僕は聖剣エグゼンリオンを身体から引き抜くと、そのまま前のめりで倒れて行った。
 
 「これでお前は終わりだ!」
 「や、辞めろ!俺はまだ死にたくは無い‼︎」
 「それがお前が幼馴染達にやった事なんだよ、自分がその目に遭って…初めて分かったんじゃ無いのか?」
 「貴様も俺だろ、助けてくれないか…‼︎」
 「お前の世界の翔也と飛鳥がやった事は確かに同情はするが…残念だが、僕はお前じゃ無い!関係無い華奈や賢斗を殺すのは違うんじゃ無いのか?」
 「あの状況を知らないからそんな事が言えるんだ!」
 「…だとしても………いや、如何でも良いか。」
 
 別世界の僕は、死にたく無いが為にギャーギャーと命乞いをしていた。
 相手を殺すという行為は、いずれ自分にもそういう時がやって来る。
 別世界の僕は、こういう覚悟をして来なかったのか?
 それを知らないという事は、別世界の僕は如何に楽な戦いをして来たんだと分かる。
 
 「残念だが、僕とお前は違う。あの世で華奈と賢斗に詫びを入れて来い‼︎」
 「や、辞め…」

 僕は聖剣エグゼンリオンで倒れている別世界の僕の心臓に突き立てた。
 別世界の僕は…最期まで無駄に足掻こうと叫んでいたが、その内に発する声が弱くなって行き…血を吐いて動かなくなった。
 そして、別世界の僕から大量の経験値が流れ込んで来た。
 その経験値の記憶を辿ると、幼馴染達の悲痛な叫び声や嘆きの表情に加え、別世界の僕が今迄にどんな事を行なって来たのかがフィードバックした。

 「僕も…一歩間違えていたら、別世界の僕と同じ事をしていたかも知れなかったんだな。」

 まぁ、あくまでも…別世界の翔也と飛鳥、国王が別世界の僕に同じ事をして来た場合によるが。
 それを考えると、国王はともかく…幼馴染達には恵まれていたのかもしれないので、そういう事は起きなかった。

 「それにしても、かなりの経験値が入ったなぁ?もう…何を相手にしても負ける気がしない。」

 僕は魔王サズンデスがいる扉を開く…と同時に極大豪炎魔法を放り込んだ。
 仮にも魔王を名乗る相手とソロで戦う訳なのだから、少しくらい弱体化出来れば良いと思っていた。
 なんだけど…?
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