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第一章
第十五話・最終回 どうせなら、派手にやる事にしました。(第二章へ続きます。)
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今日が城から追い出される日の玉座の間に僕はいた。
玉座には、不敵な笑みを浮かべた国王陛下が居る。
更に周りには、アルカディア王女やトム爺さん、騎士隊長を始めとした騎士団に、兵士長と兵士達、司書にメイド全員と研究者達…僕が関わった人達の全てだった。
『分かっておると思うが、今日が約束の期日だ! 慱殿…分かっておるな?』
随分と偉そうにしているから、少しからかってみよう!
「はい、存じております国王陛下…たまに遊びに来ますので、宜しくお願いします。」
『ならん! 慱殿が再びここに戻って来れるのは、勇者達が魔王を討伐してから元の世界に戻る時まで、テルシア王国内には入ってはならぬ‼』
「あれ? おかしいですね…? 僕は城から追い出されるだけで、国から追い出されるという話ではなかったと思いますが?」
『国から出て行って貰うという話に決まっておるだろう‼』
「それ…いつ決まったんですか?」
『お主が1週間の期日を設けた時に…だ!』
「ですから、その時は城から追い出されるというだけで、国から追い出されるという話ではなかったと思いましたけど?」
『くどい‼ そう決まったのだ! それに…慱殿が度々この国に尋ねて来られたら、勇者達の気が緩みかねないではないか⁉』
「別に緩んでも良いのではないですか? 友達が会いに来る訳ですから…」
『正直に言おう…一国の国王に無礼な物言いを許せるほど、この世界は甘くないのだ!』
無礼な物言い…って、何かしたっけ?
僕は首を傾げながら考えた。
「無礼な物言い…ですか? 僕は国王陛下に無礼な事を言いましたっけ?」
『忘れておるのか⁉ 召喚初日に高圧的な態度をして、余に土下座を要求したであろう‼』
「あ~~~あれかぁ…でも、それを言うなら、そちら側にだって非があるじゃないですか?」
『我らに何の非があるというのだ?』
「僕達は元いた世界で無理矢理に魔法陣でこちらの世界に誘拐されて、帰れないと脅迫し、この世界に拉致したのですよ! 少しくらい物言いが強い位で無礼扱いされる筋合いはないですよ!」
『それでも、国のトップにあの発言は、普通は許されない物なのだ‼』
「ほほぅ…つまり、国王という立場では、誘拐は成立するのですか…なんて酷い国だ! いや、なんて酷い国王か。」
『そういう物言いが無礼だと言っておるのだ‼ あまり調子に乗るなよ…若造が⁉』
よし、掛かった!
いやいや、中々に冷静だが…こういう話を持ってくれば、乗ると思っていたからな。
さて、仕掛けるとしましょうか…?
「調子に乗るな…ですか…? ならどうします? 僕を捕らえて処刑にでもしますか?」
『その様な事はしたりはしない…国外追放だけで、そこまでの重い罪は求めはしない!』
「あれ? そうでしたっけ? 僕を翔也達に外で会わせない為に、闇ギルドに頼んで暗殺するんでしたっけ? あれ、貴族に王の勅命と称して暗殺者を差し向けるんでしたっけ?」
『んなっ⁉』
僕の会話を聞いて、玉座の間がざわついた。
国王陛下も何故その話を知っているのかと、困惑した表情を浮かべた。
『な…何を馬鹿な事を言っておるのだ? お主がこの国から出て行くだけで、余はそれで問題ないのだ。 暗殺…一体何話だ?』
「おやおや、すっ呆けるおつもりですか…自分で言ったんじゃないですか、僕の態度が気に入らないからと、城から出て行った後に、あの若造は消すか…って?」
玉座の間は更にざわつき始めた。
勇者ではないが、救世主様として呼び出した者を身勝手な理由で暗殺を企む国王に対して、玉座の間にいた人々は批難の目を向けて来た。
「お父様! 今の慱様の話は本当の事ですか⁉」
『いや、アルカディアよ…慱殿が何か訳の解らない事を言い出したにすぎぬ! 皆も静まるのだ‼』
玉座の間での騒めきは、国王が止めても静まる気配が無かった。
国王陛下は焦りだし、何度も汗を拭う仕草を見せた。
『えぇい! 慱殿よ、何の証拠があってその様な事を申したのだ‼』
「証拠があるから言ったに決まっているじゃないですか? つい昨日、自分が話していた事を忘れたのですか?」
玉座の間の騒ぎが一段と激しくなっていった。
国王陛下は何度も静まる様に大声を出すが、城の者達は黙る気配が無かった。
僕はその様子を澄ました顔で聞いていた。
国王陛下は、アルカディア王女やトム爺さん、メイド長や騎士隊長から散々詰め寄られていた。
どんなに言い訳をしても収まる事は無く、ただただ時間だけが過ぎて行った。
僕は収まるまでの間、収納魔法で出したフカフカのソファーに深々と腰掛けながら足を組んで、ジュースを飲んでいた。
そして、腕を頭の後ろに組みながら大きなあくびをしている時に、国王陛下と目が合って叫んできた。
『貴様! 何だその態度は⁉』
「ふぁあ? あぁ、終わりました~? それはそれは、お疲れちーす!」
『余が言ったという証拠があるのか? あるのなら出して見せろ‼』
「えぇ⁉ 証拠を出しても良いのですか~? 証拠を出したら、国王陛下の罪が明らかになり、白日の元に晒されますが…本当に良いのですか?」
国王陛下は、自信満々で言い放った。
あの時に口走った時には、誰も居ないと思っていたからだ。
ところが残念、僕が居たんですよね。
「解りました。 ですが、証拠の前に報告があります。 実は僕のスキルで、動物に変身出来るスキルと言うのがありまして…それで聞いていたのですよ、国王陛下の会話をね…」
もちろん、動物に変身出来るスキルなんて物はない!
フェイクは動物以外にも変身出来るが動物だけではない。
『動物に変身出来るスキル? 証拠もそうだが、ハッタリなら今すぐやめるのだな。 さすれば、戯言は反故にしてやろう…』
「別にハッタリではないですよ…国王陛下が僕を消すという話をしていた時に、動物に変身して玉座の後ろの窓枠にとまっていたのは事実ですから…」
『そこまで言うのなら、動物とやらに変身してみろ!』
「わかりました、【フェイク・ハト】!」
僕はハトに変身して、玉座の間を飛び回った。
そして、玉座の後ろの窓の縁にとまってみせた。
そこから飛び立つと、元の場所に戻ってフェイクを解いた。
「これでハッタリではないという事が証明されましたね? どう致しますか、国王陛下?」
『ハトになって聞いていた…だが、それだけで証拠とは言えんだろう! 余が言っていたという証言が無ければな‼』
国王陛下は勝ち誇った様な顔で僕を見た。
僕は逆に笑い返すと、国王陛下は焦りだしていた。
「国王陛下が言っていた証拠ですか…ありますよ~本当に良いんですね?」
『う…うむ、そ…そんな物が本当に存在するのであればな…』
確かにハトに変身している時に、録音なんて真似は出来なかった。
だが、フェイクというスキルは、一度会った人物の姿になれるという物で…姿だけではなく声まで同じになる…つまり?
「わかりました、ではお聞かせ致しましょう‼」
僕はスマホを取り出して、最大音量で国王陛下の声を流した。
{勇者達が城から旅立った際に、あの若造と外で接触したらまずいな…}
「国王陛下の声じゃ…」
{消すか…あの若造!}
「お父様…」
{闇ギルドに暗殺を…いや、この国ではまずいな…何も闇ギルドに頼まずとも、貴族共に金を握らせれば良いだけの話だ!}
「先生に対して何という事を…」
{余に土下座を要求などしたあの若造が悪いのだ…奴の死を持って報いを受けさせてやる…クックック…ハーッハッハッハッハッハ!!!}
『な…何じゃこれは⁉ こんなのは嘘だ! 余はこんな事は言ってはおらん!!!』
僕は昨日寝る前に部屋で、フェイク・国王陛下で変身した姿で玉座の間での会話をスマホに録音したのだ。
真実も言ってはいるけど、半分は僕のアドリブだった。
さて、国王陛下はというと…?
『貴様! 声を変えるスキルを使用して、余を貶めようとしたのだな⁉』
「声を変えるスキルなんていう物があるのですか? 残念ながら、僕のスキルにそんなスキルはありませんが…」
これは残念だが、本当にない。
焦って正常な判断が出来なくなった国王陛下は、必死に濡れ衣だと騒ぎまくっている。
玉座の間の皆が沈黙しながら、軽蔑の眼差しで国王陛下を見ていた。
国王陛下は頭を抱えて、必死に拒否をしているが…さて、どうする?
『ええい‼ 余の声を捏造して陥いれ様としたあ奴を捕らえよ‼ 騎士達よ何をしておる⁉』
騎士達は、玉座の間から出て行った。
『なら兵士達よ、あの者を捕らえよ‼』
兵士達も命令を聞かずに玉座の間から出て行った。
『他の者でも良い! あの者を牢へ…』
全ての者達が玉座の間から立ち去って行き、残されたのは僕と国王陛下のみだった。
「あらら…こういう結末になってしまいましたか…これに懲りて、人の悪口は言わない方が良いですよ~それと、国王陛下の言う通りに、僕はこの国から出て行きますので御安心を…このまま国に留まったら、いつ国王陛下に殺されるか堪った物ではありませんからね。」
『貴様…覚えておれよ…絶対にこの屈辱を晴らしてやるからな‼』
「はいはい、いつでもどうぞ~。 では、国王…いや、この国から出て行くからもう良いか…バイバイ、おうちゃま~げんきでね~w」
膝を付いて僕を睨みつけている国王陛下にヒラヒラと手を振って玉座の間を出た。
そして、街とは別の城門を目指して廊下を歩いていると、料理長と料理人が声を掛けてくれた。
「先生! 先生から戴いた教えは生涯大事に致します!」
「別に今生の別れじゃないんだから、また会えるよ。 その時まで料理の腕を上げておいてね!」
僕は手を挙げて挨拶をすると、料理人達は帽子を取ってお辞儀をしていた。
少し歩くと、研究者達がソロバンを持って立っていた。
「慱殿! 貴方がこの国に居たら…もっと研究が発展するかもしれなかったのに…」
「努力と向上心があれば、研究は発展しますよ、頑張って下さいね!」
僕は歩き出すと、研究者達はソロバンをシャカシャカと鳴らして手を振っていた。
しばらく歩いていると、メイド達と司書さん達が寄って来た。
「慱様から戴いた、様々な物…大事に致しますわ!」
「メイド長とメイドの皆さん、司書さんもお元気で!」
僕は手を挙げて挨拶すると、メイド達と司書さん達は頭を下げて挨拶をしていた。
階段を下りて、廊下を歩いていると…トム爺さんとアルカディア王女様がいた。
「慱殿には、幾ら礼を言っても足りない位の生き甲斐を貰ったのじゃ! 寂しくなるが達者でな!」
「慱様が国に対して様々な貢献を…手放すのは非常に遺憾です。 旅する上でささやかな物ですが、こちらをお持ちください!」
アルカディア王女様からずっしりとした袋と手紙を受け取った。
僕は頭を下げてお礼を言って、更に…?
「翔也達の事をお願いします。」
「畏まりました。」
僕は手を振って別れの挨拶をすると、城門に向かって歩いた。
城門には、騎士達と兵士達が花道を作ってくれていた。
僕はその間を歩こうとすると、騎士達と兵士達は叫んだ。
「慱殿に、捧げよー剣!」
騎士達と兵士達は、剣のトンネルを作ってくれた。
その間を進んでいくと、騎士隊長と兵士長が「良き旅を!」とまじないを掛けてくれた。
そして城門を出ると、門は閉まった。
たった1週間程だったが、良い思い出が出来た。
次に戻って来る時は、元の世界に帰る時なのだが…
あの国王が素直に入れてくれるだろうか…?
まぁ、その時はその時だ!
僕は、目の前に広がる世界を見て言った。
「これから僕の…ダン・スーガーの大冒険の始まりだーーー!!!」
僕は元気よく一歩を踏み出した。
これから慱の…いや、ダン・スーガーの冒険が始まる!
この先に待ち受けるダンの試練はどの様な物なのか…?
だが、ダンなら大丈夫だろう。
第一章・最終回
………第二章へ続く………
玉座には、不敵な笑みを浮かべた国王陛下が居る。
更に周りには、アルカディア王女やトム爺さん、騎士隊長を始めとした騎士団に、兵士長と兵士達、司書にメイド全員と研究者達…僕が関わった人達の全てだった。
『分かっておると思うが、今日が約束の期日だ! 慱殿…分かっておるな?』
随分と偉そうにしているから、少しからかってみよう!
「はい、存じております国王陛下…たまに遊びに来ますので、宜しくお願いします。」
『ならん! 慱殿が再びここに戻って来れるのは、勇者達が魔王を討伐してから元の世界に戻る時まで、テルシア王国内には入ってはならぬ‼』
「あれ? おかしいですね…? 僕は城から追い出されるだけで、国から追い出されるという話ではなかったと思いますが?」
『国から出て行って貰うという話に決まっておるだろう‼』
「それ…いつ決まったんですか?」
『お主が1週間の期日を設けた時に…だ!』
「ですから、その時は城から追い出されるというだけで、国から追い出されるという話ではなかったと思いましたけど?」
『くどい‼ そう決まったのだ! それに…慱殿が度々この国に尋ねて来られたら、勇者達の気が緩みかねないではないか⁉』
「別に緩んでも良いのではないですか? 友達が会いに来る訳ですから…」
『正直に言おう…一国の国王に無礼な物言いを許せるほど、この世界は甘くないのだ!』
無礼な物言い…って、何かしたっけ?
僕は首を傾げながら考えた。
「無礼な物言い…ですか? 僕は国王陛下に無礼な事を言いましたっけ?」
『忘れておるのか⁉ 召喚初日に高圧的な態度をして、余に土下座を要求したであろう‼』
「あ~~~あれかぁ…でも、それを言うなら、そちら側にだって非があるじゃないですか?」
『我らに何の非があるというのだ?』
「僕達は元いた世界で無理矢理に魔法陣でこちらの世界に誘拐されて、帰れないと脅迫し、この世界に拉致したのですよ! 少しくらい物言いが強い位で無礼扱いされる筋合いはないですよ!」
『それでも、国のトップにあの発言は、普通は許されない物なのだ‼』
「ほほぅ…つまり、国王という立場では、誘拐は成立するのですか…なんて酷い国だ! いや、なんて酷い国王か。」
『そういう物言いが無礼だと言っておるのだ‼ あまり調子に乗るなよ…若造が⁉』
よし、掛かった!
いやいや、中々に冷静だが…こういう話を持ってくれば、乗ると思っていたからな。
さて、仕掛けるとしましょうか…?
「調子に乗るな…ですか…? ならどうします? 僕を捕らえて処刑にでもしますか?」
『その様な事はしたりはしない…国外追放だけで、そこまでの重い罪は求めはしない!』
「あれ? そうでしたっけ? 僕を翔也達に外で会わせない為に、闇ギルドに頼んで暗殺するんでしたっけ? あれ、貴族に王の勅命と称して暗殺者を差し向けるんでしたっけ?」
『んなっ⁉』
僕の会話を聞いて、玉座の間がざわついた。
国王陛下も何故その話を知っているのかと、困惑した表情を浮かべた。
『な…何を馬鹿な事を言っておるのだ? お主がこの国から出て行くだけで、余はそれで問題ないのだ。 暗殺…一体何話だ?』
「おやおや、すっ呆けるおつもりですか…自分で言ったんじゃないですか、僕の態度が気に入らないからと、城から出て行った後に、あの若造は消すか…って?」
玉座の間は更にざわつき始めた。
勇者ではないが、救世主様として呼び出した者を身勝手な理由で暗殺を企む国王に対して、玉座の間にいた人々は批難の目を向けて来た。
「お父様! 今の慱様の話は本当の事ですか⁉」
『いや、アルカディアよ…慱殿が何か訳の解らない事を言い出したにすぎぬ! 皆も静まるのだ‼』
玉座の間での騒めきは、国王が止めても静まる気配が無かった。
国王陛下は焦りだし、何度も汗を拭う仕草を見せた。
『えぇい! 慱殿よ、何の証拠があってその様な事を申したのだ‼』
「証拠があるから言ったに決まっているじゃないですか? つい昨日、自分が話していた事を忘れたのですか?」
玉座の間の騒ぎが一段と激しくなっていった。
国王陛下は何度も静まる様に大声を出すが、城の者達は黙る気配が無かった。
僕はその様子を澄ました顔で聞いていた。
国王陛下は、アルカディア王女やトム爺さん、メイド長や騎士隊長から散々詰め寄られていた。
どんなに言い訳をしても収まる事は無く、ただただ時間だけが過ぎて行った。
僕は収まるまでの間、収納魔法で出したフカフカのソファーに深々と腰掛けながら足を組んで、ジュースを飲んでいた。
そして、腕を頭の後ろに組みながら大きなあくびをしている時に、国王陛下と目が合って叫んできた。
『貴様! 何だその態度は⁉』
「ふぁあ? あぁ、終わりました~? それはそれは、お疲れちーす!」
『余が言ったという証拠があるのか? あるのなら出して見せろ‼』
「えぇ⁉ 証拠を出しても良いのですか~? 証拠を出したら、国王陛下の罪が明らかになり、白日の元に晒されますが…本当に良いのですか?」
国王陛下は、自信満々で言い放った。
あの時に口走った時には、誰も居ないと思っていたからだ。
ところが残念、僕が居たんですよね。
「解りました。 ですが、証拠の前に報告があります。 実は僕のスキルで、動物に変身出来るスキルと言うのがありまして…それで聞いていたのですよ、国王陛下の会話をね…」
もちろん、動物に変身出来るスキルなんて物はない!
フェイクは動物以外にも変身出来るが動物だけではない。
『動物に変身出来るスキル? 証拠もそうだが、ハッタリなら今すぐやめるのだな。 さすれば、戯言は反故にしてやろう…』
「別にハッタリではないですよ…国王陛下が僕を消すという話をしていた時に、動物に変身して玉座の後ろの窓枠にとまっていたのは事実ですから…」
『そこまで言うのなら、動物とやらに変身してみろ!』
「わかりました、【フェイク・ハト】!」
僕はハトに変身して、玉座の間を飛び回った。
そして、玉座の後ろの窓の縁にとまってみせた。
そこから飛び立つと、元の場所に戻ってフェイクを解いた。
「これでハッタリではないという事が証明されましたね? どう致しますか、国王陛下?」
『ハトになって聞いていた…だが、それだけで証拠とは言えんだろう! 余が言っていたという証言が無ければな‼』
国王陛下は勝ち誇った様な顔で僕を見た。
僕は逆に笑い返すと、国王陛下は焦りだしていた。
「国王陛下が言っていた証拠ですか…ありますよ~本当に良いんですね?」
『う…うむ、そ…そんな物が本当に存在するのであればな…』
確かにハトに変身している時に、録音なんて真似は出来なかった。
だが、フェイクというスキルは、一度会った人物の姿になれるという物で…姿だけではなく声まで同じになる…つまり?
「わかりました、ではお聞かせ致しましょう‼」
僕はスマホを取り出して、最大音量で国王陛下の声を流した。
{勇者達が城から旅立った際に、あの若造と外で接触したらまずいな…}
「国王陛下の声じゃ…」
{消すか…あの若造!}
「お父様…」
{闇ギルドに暗殺を…いや、この国ではまずいな…何も闇ギルドに頼まずとも、貴族共に金を握らせれば良いだけの話だ!}
「先生に対して何という事を…」
{余に土下座を要求などしたあの若造が悪いのだ…奴の死を持って報いを受けさせてやる…クックック…ハーッハッハッハッハッハ!!!}
『な…何じゃこれは⁉ こんなのは嘘だ! 余はこんな事は言ってはおらん!!!』
僕は昨日寝る前に部屋で、フェイク・国王陛下で変身した姿で玉座の間での会話をスマホに録音したのだ。
真実も言ってはいるけど、半分は僕のアドリブだった。
さて、国王陛下はというと…?
『貴様! 声を変えるスキルを使用して、余を貶めようとしたのだな⁉』
「声を変えるスキルなんていう物があるのですか? 残念ながら、僕のスキルにそんなスキルはありませんが…」
これは残念だが、本当にない。
焦って正常な判断が出来なくなった国王陛下は、必死に濡れ衣だと騒ぎまくっている。
玉座の間の皆が沈黙しながら、軽蔑の眼差しで国王陛下を見ていた。
国王陛下は頭を抱えて、必死に拒否をしているが…さて、どうする?
『ええい‼ 余の声を捏造して陥いれ様としたあ奴を捕らえよ‼ 騎士達よ何をしておる⁉』
騎士達は、玉座の間から出て行った。
『なら兵士達よ、あの者を捕らえよ‼』
兵士達も命令を聞かずに玉座の間から出て行った。
『他の者でも良い! あの者を牢へ…』
全ての者達が玉座の間から立ち去って行き、残されたのは僕と国王陛下のみだった。
「あらら…こういう結末になってしまいましたか…これに懲りて、人の悪口は言わない方が良いですよ~それと、国王陛下の言う通りに、僕はこの国から出て行きますので御安心を…このまま国に留まったら、いつ国王陛下に殺されるか堪った物ではありませんからね。」
『貴様…覚えておれよ…絶対にこの屈辱を晴らしてやるからな‼』
「はいはい、いつでもどうぞ~。 では、国王…いや、この国から出て行くからもう良いか…バイバイ、おうちゃま~げんきでね~w」
膝を付いて僕を睨みつけている国王陛下にヒラヒラと手を振って玉座の間を出た。
そして、街とは別の城門を目指して廊下を歩いていると、料理長と料理人が声を掛けてくれた。
「先生! 先生から戴いた教えは生涯大事に致します!」
「別に今生の別れじゃないんだから、また会えるよ。 その時まで料理の腕を上げておいてね!」
僕は手を挙げて挨拶をすると、料理人達は帽子を取ってお辞儀をしていた。
少し歩くと、研究者達がソロバンを持って立っていた。
「慱殿! 貴方がこの国に居たら…もっと研究が発展するかもしれなかったのに…」
「努力と向上心があれば、研究は発展しますよ、頑張って下さいね!」
僕は歩き出すと、研究者達はソロバンをシャカシャカと鳴らして手を振っていた。
しばらく歩いていると、メイド達と司書さん達が寄って来た。
「慱様から戴いた、様々な物…大事に致しますわ!」
「メイド長とメイドの皆さん、司書さんもお元気で!」
僕は手を挙げて挨拶すると、メイド達と司書さん達は頭を下げて挨拶をしていた。
階段を下りて、廊下を歩いていると…トム爺さんとアルカディア王女様がいた。
「慱殿には、幾ら礼を言っても足りない位の生き甲斐を貰ったのじゃ! 寂しくなるが達者でな!」
「慱様が国に対して様々な貢献を…手放すのは非常に遺憾です。 旅する上でささやかな物ですが、こちらをお持ちください!」
アルカディア王女様からずっしりとした袋と手紙を受け取った。
僕は頭を下げてお礼を言って、更に…?
「翔也達の事をお願いします。」
「畏まりました。」
僕は手を振って別れの挨拶をすると、城門に向かって歩いた。
城門には、騎士達と兵士達が花道を作ってくれていた。
僕はその間を歩こうとすると、騎士達と兵士達は叫んだ。
「慱殿に、捧げよー剣!」
騎士達と兵士達は、剣のトンネルを作ってくれた。
その間を進んでいくと、騎士隊長と兵士長が「良き旅を!」とまじないを掛けてくれた。
そして城門を出ると、門は閉まった。
たった1週間程だったが、良い思い出が出来た。
次に戻って来る時は、元の世界に帰る時なのだが…
あの国王が素直に入れてくれるだろうか…?
まぁ、その時はその時だ!
僕は、目の前に広がる世界を見て言った。
「これから僕の…ダン・スーガーの大冒険の始まりだーーー!!!」
僕は元気よく一歩を踏み出した。
これから慱の…いや、ダン・スーガーの冒険が始まる!
この先に待ち受けるダンの試練はどの様な物なのか…?
だが、ダンなら大丈夫だろう。
第一章・最終回
………第二章へ続く………
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