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第一章

第六話 味方を増やします!4(騎士達が欲しがっている物は、意外な物でした。)

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 騎士や兵士を味方に付ける。
 より強い武器や防具を渡す…で、なびく物だろうか?
 城や街を守るのが騎士や兵士の役目だから、武器や防具が強いに越した事は無いだろう。
 物質変換で鉄をそれ以上の鉱物に変化させられる事は可能で、創造作製で武具を作りだせはする。
 とりあえず、騎士や兵士の欲しい物を聞くとしよう!
 僕は、兵士長のサマディと騎士長のグランツに欲しい物を尋ねてみた。

 「我々の欲しい物ですか?」
 「やはり、武器とか防具になるのですか?」
 「確かに、強い武器や防具があれば守護や警備に役に立てるかもしれませんが…?」
 「…が?」
 「我々騎士や兵士は、入隊時に鋼の剣を支給されます。 兵士はその剣を扱えるようになる事を目指し、騎士は与えられた剣を使いこなす事が目標なのです。 より強力な武器は、自分に甘えを出してしまい…鍛錬を疎かにしてしまう可能性がある為に、怠惰が生まれる可能性があるので必要はありません!」
 
 見事な騎士道精神だと思った。
 僕は、彼らを味方に付けようと、意志を尊重せずに…より強力な物で釣ろうとする浅ましい考えを恥じた。 
 まいったな…?
 これは簡単にはいかないな。
 武器が駄目なら…食事?
 いや、彼らは食事に関しては食堂の物で充分だと言われたので、それも断られた。
 僕は訓練所を見渡した。
 施設をリニューアルして、豪華な物に…という考えも、強力な武器と同じ道を辿りそうなので却下だし、戦闘用の木人を強力な硬さに…というのも同じ道を辿りそうだな…?
 僕は兵士の訓練を見て、ヒントが得られないかを模索した。

 「だいぶ腕を上げたな! だが、お前の弱点は相変わらず甘いな!」
 「意識してさらけ無いようにしているのですが、どうしても集中が出来ずに…」

 他の騎士達の訓練を見ると…?
 
 「お前は自分に自信がある所為か、守りが疎かになる時があるな…」
 「自分の動きを自分で見れれば、弱点も知る事が出来るのですが…」
 
 自分の動きを自分で見れれば…ねぇ?
 自分の姿を映す巨大な鏡でも置く…というのはあまり意味ないか…?
 僕はギルドカードのスキル欄を確認した。
 訓練や鍛錬に役立つ、修業が出来る様な物を作りだせるスキル…何て物は、さすがにない…あ、あった!
 【魔鏡転写】というスキルがあった。
 
 【魔鏡転写】
 この鏡に映った自分を世界に出現させて、自らを高めさせる事が出来る修業のスキル。
 このスキルは、自分が映せるほどの大きさの鏡に【魔鏡転写】を行うと、半永久的に何度も使用できる事が可能。
 ただし、準備が出来ていようが出来ていまいが、出現した瞬間に襲ってくる。
 勝利条件は、倒せば消えるが…敗北すると、トドメを刺してくるので仲間がいる時にしか使うのはお勧めしない。

 「これ、相当危ない魔法じゃないか? まぁ、修業にはなるだろうけど…命懸けになるな…」

 訓練所の木人の隣に、巨大な鏡を【創造作製】で作りだしてから、【魔鏡転写】を使用した。
 これで、自分の姿が映った自分自身との戦いが出来る様になる…
 僕は、兵士長のサマディを呼んだ。

 「慱殿、何か御用でしょ…なんですか? この巨大な鏡は…?」
 「実はこの鏡に自分の姿を映すと、自分自身と戦う事が出来るという修業に使える物なのですが…」
 「何か他にあるのですか?」
 「自分自身と戦って相手を破壊すれば勝利なのですが、敗北をすると…トドメを刺して来るらしいので、必ず1人で使う事はしない様に仲間がいる時に使用して下さい。」
 「面白い物を作りましたね…自分自身との戦いですか?」
 「先程、兵士や騎士の訓練を見ていて、自分の弱点を知るのに自分自身と戦えたら…なんていう話が聞こえたので作ってみたのですが…」
 「これに自分の姿を映せばいいのですか?」
 「あ、準備は大丈夫ですよね? 映ってから出現した途端に襲ってきますから…」

 遅かった。
 サマディの姿を映した鏡は、もう1人のサマディが出現してサマディに襲い掛かったのだ!
 サマディは剣を抜いて応戦した。
 激しい打ち合いをしながら、魔鏡のサマディは多彩な攻撃を仕掛けてサマディを追い込んでいった。

 「つ…強い! 自分自身がこんなに強いなんて⁉」
 「えっと…この鏡の情報を捕捉しますと、強さは自分自身とほぼ同じだそうです。」
 「じゃあ、強いと思うのは錯覚なのですか?」
 「そうなりますねぇ…相手は自分が出来ない攻撃はして来ないそうです。」
 「自分、五段突きなんて出来ませんよ?」
 「相手が使えるという事は、自分も出来るという事です。」

 サマディは、魔鏡のサマディに追い詰められて行き…武器を手放してしまい敗北をした。
 だが、魔鏡サマディは、サマディにトドメを刺そうと向かっている。
 さすがにまずいと感じた僕は、魔鏡のサマディを止めようと飛び出そうとした瞬間に、騎士長のグランツが魔境サマディを葬った。
 魔鏡サマディは、消滅していった。

 「おい、サマディ…お前もう少しで殺される所だったぞ!」
 「グランツ殿、助かりました…はぁ…」
 「しかし、これは良い訓練に使えそうだな? 慱殿、これを戴けるのですか?」
 「はい、その為に作りました。 今後の役に立てて下されば…」
 「感謝します! これで、訓練がより一層…気を引き締める事が出来ます!」
 「あ、ならですね…翔也や飛鳥にもこれを使わせて下さい。 時期的には、この城から旅立つ前の条件として…」
 「勇者様と剣聖様ですか? 構いませんが、何かあるのですか?」
 「自分自身に勝てない者が、魔王を倒すなんて夢のまた夢でしょうからね。 この城から旅立つ条件は、自分自身に勝ててから…なんて決定事項をさせないと、魔王討伐の旅で痛い目の遭う筈ですから。」
 「なるほど、それは良い考えです!」

 僕は紙に魔鏡の必要事項を記入して、グランツに渡した。
 グランツは紙を見てから不敵に笑い、部下に魔鏡を使わせた。
 だが、どの部下も初見で勝てた者はいなくて、皆敗北して自分自身にトドメを刺されそうになる所をグランツが倒していった。
 この魔鏡での訓練は、兵士や騎士をやる気にさせて行った。

 「僕の場合はどうなるんだろう?」

 僕は試しに使ってみようと、自分の姿を鏡に映した。
 すると、自分自身が出現して…剣を召喚して襲って来た。
 僕も剣を召喚して反撃すると、魔鏡の僕は距離を取ってから魔法を放って来た。
 
 「え? この魔鏡って魔法も使えるの⁉」
 
 魔境の僕が大火炎魔法を放つと、僕も同じ魔法を放って応戦した。
 それから様々な属性の魔法合戦で、大地は揺れ、あちらこちらに被害が出た。
 僕は再び剣を取ってから、魔法は抜きでこちらでケリをつけようと魔境の僕に言うと、魔境の僕は頷いた。
 激しい撃ち合いに様々な技のやり取り…最初は歓声を上げて応援していた兵士や騎士も、いつの間にか声なんか出せる状況では無くて沈黙していた。
 僕は自分の性格なら何とか理解している。
 試しに虚を付いた攻撃を仕掛けると、魔境の僕はその手に引っ掛かり…その隙に倒すことが出来たのだが?
 戦闘終了後は、えらく疲弊していた。
 一部始終を見ていた兵士や騎士からは歓声が沸き、初見で倒せた僕に対して拍手をしてくれた。
 
 「グランツ様、追加で華奈と賢斗にも使わせて下さい。 魔法が使えるのなら、勇者パーティ全員にやらせた方が良いですから…」
 「了解しました! それにしても、先程は少しヒヤヒヤしました。 あの慱殿の強さを考えると、敗北した場合に自分らで止めれたかどうか…?」
 「買い被り過ぎですよ、僕はそこまで強くはありませんので…」
 
 僕は笑ったけど、騎士や兵士は笑っていなかった。
 魔境をプレゼントして、騎士や兵士は喜んでくれたのであろうか?
 もしかすると、騎士や兵士を味方に付けるという作戦は失敗したのかもしれない。
 僕は訓練所を後にした。
 今回は成功したのか失敗したのか解らないけど、次の司書や研究者を味方にする計画は成功させるぞ!
 
 慱は騎士や兵士を味方に付けるという作戦は失敗したと思っているようだが、実は食堂の改善や魔鏡の修業法を大変感謝されていたのを慱は知らなかった。
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