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最終章

第六話 一方、ダンジョン組は?

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 「おぅ、ギムじゃ! ワシらは今…厄介なゴーレムとの戦闘中じゃ!」

 ギムが案内をしたダンジョンの名前は、【巨岩王のダンジョン】という。
 ダンジョンタイプは遺跡系で、作りはい神殿をモチーフとした内装のダンジョンである。
 制作者は解らないが…ここにはトラップというものは存在しない。
 出て来る魔物は全てゴーレムで、鳥型・人型・魔獣型と形はそれぞれである。
 更にここには自然な虫や動物もいない。
 ゴーレムは動く者を感知して攻撃をするので、例え蠅や蟻が入ろう物なら一瞬で潰されるからである。
 虫も動物も入った瞬間に殺されるなら、態々入ろうとは思わない。
 彼等も馬鹿ではないのだ。

 「俺は剣の方が得意なんだが…」
 「青いのぅ小僧よ…このダンジョンでは剣なんぞ役には立たんぞ! 剣なんて、数回使用すればすぐに折れるからのぅ。」
 「それで、ハンマーなのですね?」

 本来剣を得意とする勇者のエオと騎士のナーニヌ卿は、渡されたハンマーを振り回しながら感触を確かめていた。
 とはいえ…ハンマーで魔物を倒すのは至難である。
 重心である先端が非常に重く作られている為に、バランスが取れない上に命中率が下がるからである。
 なのでギムは、人族のエオとハーフリングのナーニヌ卿には、金棒タイプのハンマーを渡したのであった。
 金棒だと、分類的にはこん棒タイプに近いのだが…この世界ではこん棒の事もハンマーと呼ぶのである。

 「伝説の聖剣とかなら、ゴーレムだって斬り裂ける筈なんだが…」
 「そんな物、そうそうあるか! それに、あの程度の歴史が浅い城にそんな物は無いわい!」

 トランドオーケス城の王女が勇者であるエオに渡した剣は、ミスリル製の剣だった。
 勇者となれば本来手にする剣なら聖剣という感じになるのだが、歴史の浅い国では聖剣の所持はまずありえなかった。
 この世界では、聖剣は神に認められし物というもので…歴史を重ね、世界に貢献された事で神から送られる物である。
 なので、自分勝手に亜人が嫌いだからと亜人を殺戮するような国に聖剣が与えられるという事はまずありえないのである。
 代わりにトランドオーケス城では、財力に物を言わせて兵力だけは他国に引けを取らない大国にまで伸し上がった。
 だが、所詮は金に物を言わせて集めただけあって…騎士や城でのメイド達は、素行や礼儀はあまり良くないのであった。

 「それに、仮に聖剣があった所で今の小僧では使いこなせはしないぞ!」
 「俺はレベル100以上はあるぞ!」
 「レベルの問題ではない! 技量の問題じゃ…それが解らない内は、小僧が聖剣なんぞ持っても、少し斬れるナイフ程度にしかならんわい!」
 「ぐっ…」

 ギムとギルは、ダンジョンの扉に手を掛けて開いた。
 そしてダンジョンに入ると左右に分かれる道になっていた。

 「このダンジョンにはトラップという物は全く無い! 出て来る魔物は全てゴーレムじゃが、正面からではなく上からも襲ってくるので警戒を怠るのではないぞ!」
 「上からもって…」

 このダンジョンは、通路の幅が横に10mで縦に5m近くある。
 ダンジョンの通路の大きさは、大体魔物が通れる高さに作られている為に、出現する魔物の大きさも疎らなのである。
 
 「ワシ等は右側から行くので、ハウザーは左からじゃな!」
 「おい…一緒に行かないのか⁉」
 「一緒に行っても構わないが…全ての通路を行かねばならんのだぞ? このダンジョンは下層がないこのフロアのダンジョンだが、広さが桁違いなんじゃ! それに時間を無駄にしている余裕がお主等にあるのかのぅ?」
 「だが、戦力的な事を考えると共に行動した方が…」
 「安心せい! このダンジョンは入り口から左右に分かれてはいるが、最深部では合流する様に作られておる! 奥に行くにつれて強いのが出ては来るが、手前ではそれ程手古摺るゴーレムは出て来んよ。 それにワシ等の調べでは、右側の方が割と強いゴーレムが多いのじゃが…共に行くとお前等が足手まといになる可能性があるしのう。」
 「足手まとい…」
 「不慣れな武器でウロチョロされたらかなわんのでな! 左側の弱い奴等で武器の使い方を学びながら進んで行け!」
 「だけど、ダンジョンは初めてで…色々と不安が…」
 「何じゃ恐いのか? 勇者とか立派な肩書きがあってもまだ小僧じゃな! これならテトを連れてきた方が数百倍マシだったかもしれんのぅ…」
 「やってやるさ! 行くぞ!」

 ギムの煽りで火が付いたエオは、メンバーを連れて左側へと進んで行った。
 ギムは溜息を吐くと、ハウザーにお守を頼むと囁いてから右側に進んで行った。

 ・・・・・・・・・左側に進んだ勇者とその他は・・・・・・・・・

 セソは周囲を確認しながら、ハウザーに質問をした。

 「ハウザー様、ゴーレムに使われている魔石とは…全て一定の大きさなのですか?」
 「小さな物は小さい魔石しか使われてないな。 集落での説明で、テト殿が必要としている魔石の大きさだと…2m越えの中型以上のゴーレムの核がそれに該当するだろう。」
 「中型? では、大型のゴーレムもいるのですか?」
 「遺跡を守る番人のスプリガンと呼ばれる巨人や、ガーディアンとかだと大型のゴーレムになるだろうな。 ゴーレムも様々な形の物がいるが…厄介な物になるとドラゴンタイプのゴーレムもいるからな!」
 「では通路を進んでいる時に中型や大型に出くわすという事は?」
 「無くは無いだろうけど、それらの類は奥にいる場合があるから、手前にはいないよ。 手前にいるゴーレムは大した大きさではない上に、使用されている魔石も小石程度の大きさだろうからな!」
 「なら、躱してやり過ごすという感じですか?」
 「いや、仕留めないといつまでも追って来るぞ! 奴等は動物の様に強者には逆らえない…何ていう感情は持ち合わせていないから、仕留めないといつまでも襲ってくる…と、早速お出ました!」

 前方に狼型のゴーレムが4体出現した。
 動きはそれ程素早い訳ではないが、防御力だけはある。
 まぁ、石だし…
 エオとナーニヌ卿は動きを牽制しながら、セソとハウザーが魔法で仕留めて行った。
 クケコは回復役に徹してもらう為に戦闘には参加しなかった。

 「ハウザー様、これが魔石ですか?」
 「そうだ、倒したゴーレムからは魔石が採れる。 魔石は石とは違い、光を放っているから間違える事は無い。」
 「なら、全て回収していく方向ですか?」
 「そうだ。 魔石をそのまま残しておくと、別なゴーレムが魔石を吸収して、更に強くなるからな。」
 「これは…結構面倒そうだ!」

 セソは文句を言いながら、倒したゴーレムから魔石を拾い集めた。

 「次来るぞ、前方からゴブリンタイプ7体と上からとりタイプが4体!」
 「休む時間なしかよ…行くぞ‼」

 高校生3人とナーニヌ卿とハウザーは、何とか連携を取りながらゴーレム達を撃破して行った。

 ・・・・・・・・・一方、ドワーフ達は?・・・・・・・・・

 「よっと…これで終わりじゃな!」
 「やはり、手前では歯応えは無いのぅ!」

 ドワーフ達は、順調すぎる位に進んでいた。

 「ちょっと待ってくれぇ! 魔石拾いが間に合わん!」
 「仕方ないのぅ、待つとするか。」

 ドワーフ達はこのダンジョンを知り尽くしている。
 最深部の扉の前に到達はしている者の、最深部の敵は倒していないのだ。
 倒してしまえば、このダンジョンは崩壊して無くなるからである。
 ドワーフ達の実力だったら、最深部の敵は倒せるのだが…
 最深部の手前にいる、ミスリルゴーレムやオリハルコンゴーレムなどの素材や魔石が手に入るので、あえて残しているのだ。

 そしてこのダンジョンは、他の冒険者には人気が無い。
 まず、昼夜問わずに襲ってくるゴーレムに苦戦する。
 先に進めば、並みの剣では歯がこぼれる位に固い硬いゴーレムと戦う羽目になる。
 魔石や鉱石は手に入るのに、ドロップアイテムがあまり取れずに、宝箱ですらあまりない。
 これだけ鉱石や魔石が手に入るので、最深部の敵を倒せば高額な魔石が手に入る…と思って挑戦するが、中盤辺りで武器が使い物にならなくなる。
 大して金にならずに、武器の修理費の方が高くつく…
 まぁ、他にも理由があるが…そんな感じで一般冒険者には人気が無いのだ。 

 「序盤辺りは石のゴーレム、中盤に行けば鉄や鋼のゴーレム、その先に行けばミスリルやオリハルコンゴーレムに出くわすからのぅ…」
 「ミスリルやオリハルコン程度ならマシだが、たまにアダマンタイトのゴーレム等が出る時があるしな…あれには参る!」
 「それよりも、あの小僧どもは大丈夫かのぅ?」
 「ワシ等の方は、中型や大型が出る通路で…小僧どもの方は、小さな奴等が数で攻めて来るからな!」
 「まぁ、ハウザー殿もいる事だし、大丈夫じゃろうて!」
 「よし、拾い終わったぞ! 先に進もう!」

 ドワーフ達は、通路の奥を進んで行った。
 状況からすれば…ドワーフ達の方が進んでいるのだった。

 ・・・・・・・・・勇者達のチームは?・・・・・・・・・

 「お…い、今ので…何匹目だ?」
 「100匹までは数えていたけど、それ以上倒しているよね?」
 「トラップは確かにないけど、こうもあらゆる場所から襲ってくると…」

 正面からはゴブリンや狼、上からは蜘蛛や鳥、地面からはタイルと思っていたのが起き上がって襲って来たのだ。
 それも数が桁違いに多く…
 レベル100越えの勇者達だが、今までにここまで連戦になる戦いはして来なかったので、疲労がかなり溜まっているのだった。

 「あのドワーフ達…俺達に辛い方を押し付けたんじゃねぇだろうな?」
 「いや…それは無いだろう。 君達はドワーフという種族を知らなさすぎる。」
 「どういう事ですか、ハウザー様?」
 「ドワーフという種族は、好戦的で何より強者を求める傾向があるし、このダンジョンはドワーフ達は知り尽くしているだろう。 右側は数はそれほど多くは無いだろうが…」
 「ほらな、楽する為に俺らに…」
 「中型や大型が多く出現するのだろう。 下手すると鉱石タイプのゴーレムとかもな。」
 
 セソは倒したゴーレムや周囲を見渡して言った。

 「なら、こちらは向こうに比べたらまだ楽だと?」
 「その証拠に、材質が岩や石のゴーレムしか出ていないだろう? 向こうは鉄や鋼のゴーレムとかを相手にしているだろう。」
 
 それを聞いて、エオは両手で頬を思いっ切り叩いてから言った。

 「セソもクケコも魔石は拾い集めたか?」
 「あぁ、時期に終わる!」
 「終わったら、先に進むぞ‼」

 そうして勇者達は、ゴーレムを倒しながら進んで行った。
 ところが、奥に進むにつれて段々と強さが桁違いになっていたが、チーム一丸となって倒して行ったので苦戦しながらも進んで行った。
 
 そして通路が合流する地点まで来た場所で、ドワーフ達と合流は出来た。
 だが、ドワーフ達はあるゴーレムと戦っている所に出くわしたのだ。
 材質こそオリハルコンなのだが、姿がドラゴンタイプのゴーレムだった。
 しかも…通路の大きさに近い大きさのドラゴンだった。

 「ギム、大丈夫か⁉」
 「ハウザーか! 見て解るだろう?」
 「クケコはドワーフ達に癒しを、セソはドワーフ達に補助魔法を!」
 「「はい!」」

 こうして皆は協力した結果、オリハルコンドラゴンゴーレムを倒す事が出来たのだった。

 「やはり、魔法は便利じゃのう!」
 「ワシ等は魔法は使えない事は無いが、MPが低いからのぅ…」
 「あそこに扉が見えますが、あれが最深部の扉ですか?」
 「そうじゃが、ここで引き返すぞ!」
 「何故だ⁉ あそこの敵を倒せれば、もっと大きい魔石が…」
 「気持ちは分かるが、引き返すには理由が2つある。」

 ギムに変わり、ハウザーが答えた。

 「2つの理由…まず、今のに手古摺っていると、最深部の敵はまず倒せない。 そしてもう1つは、最深部の敵を倒すとこのダンジョンは崩壊して2度と入れなくなるんだ。」
 「確かにダンジョンのボスがダンジョン内の魔物より弱い事は無いですね。 それは解りましたが、最深部の敵を狩りに倒した場合、ダンジョンが崩壊したら問題があるんですか?」
 「では聞くが、もしも今迄入手した分の魔石では足りなくて、また集めないと行けなくなったとする…そうしたら、どこで魔石を入手する?」
 「鉱山の下層で手に入るんですよね? 確か魔鉱石と言いましたか?」
 「確かに手に入るが、必ず手に入る訳ではない。 1か月間掘り続けて、1個か2個くらいしか手に入らないんじゃ! まとまった数が必要になると、それこそ1年がかりになるが…お主等はそこまで待てるのか?」

 ギムの話でセソ達は沈黙した。
 確かに魔石がまた必要になるという話だと、ここのダンジョンを崩壊するのは避けた方が良いだろう。

 「それにな…来た道を戻ろうとすると、また数匹のゴーレムが復活していて倒して行かないと出られないんじゃ!」
 「ダンジョンのボスを倒した場合は?」
 「この建物が崩壊して、生き埋めになる…ワシ等は平気じゃが、お主等は平気かのぅ?」
 
 セソ達は天井を見た。
 そしてうんうんと考えていると、素直に帰る方を選んだのだ。
 
 「また二手に分かれるんですか?」
 「いや、今度は一緒で良いだろう。 時間を短縮する為に急いで出るぞ!」
 「だけど、逃げると追って来るのでは?」
 「ダンジョンからでれば、奴等は追って来んよ。」

 ハウザーは移動魔法、クケコは防御魔法、セソは補助魔法を掛けながら皆はギムの先導の元に走り抜けていった。
 何度か中型に出くわしたが、皆で協力すると時間を短縮して討伐が出来たのだった。
 そしてダンジョンから出た皆は、エルフの集落に向けて歩いていた。
 するとハウザーが森を見ながら呟いた。

 「何だか…森が喜んでいるようだ!」
 「確かに…森が澄んでいますね。」
 「ワシ等にはちとわからんが、確かに何か輝いているな?」

 ハウザー達が集落の門に辿り着いて、門を開けると…中央から光が広がって行った。
 ハウザー達は直に光を見ていたので眩しくて目が眩んでいた。

 「父さん達、おかえり! 3つの複合統一の光が完成したよ!」
 「今のはその光か?」
 「テト君は凄いな! 後は闇だけか?」
 「闇も出来ない事は無いんだけど、ヘーホ様に夜にやった方が良いって…」

 とりあえず、テトの複合統一はもう少しで完成。
 魔石も必要量は集まっていた。
 あとは、高校生達を送り返すだけ…なんだけど、クケコは何か思い詰めた表情をしていたが、周りに気にする者はいなかった。

 次回…高校生達が帰れる?
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