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最終章

第三話 不貞腐れた父親達…

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 「どうも、テトです! 僕は現在…父さん達の機嫌を直す為に奮闘をしております!」

 遡る事、2時間前…
 僕とメーモは部屋に入った後に、とある仕掛けをしてから裏口から部屋を出た。
 壁の隙間は事前に調べて全て埋めておいたので見える事は無いが、屋根近くの隙間から中の様子が伺えるという感じなのだが…梯子でも持って来ない限り中を覗く事は出来ずに聞き耳を立てるしかない。
 そして、すぐにバレない様にした仕掛けとは?
 3枚の板を3方向から交差させて組ませてから、中心に重りを置くという仕組みで…木の軋み具合がベッドに重さが掛かった時と同じ音がするので足止めを出来る物だと踏んでいた。
 
 「何だけどねぇ…1時間半も持たなくて、木の板が折れちゃったんだよね。」

 板が折れた音の後に鉄球が落ちたので、その衝撃音で何かあったのではないかとドワーフ達が驚いて扉を壊して中に入った結果…そこで騙された事を知った。
 さらに…僕の作った裏口の存在も知り、娯楽の楽しみを壊されたと感じたドワーフ達は何が何でも僕達を見付けようと集落中を探し回って見付からなくて、更にはシルビアのいる集落まで足を延ばしたが見付からず…
 元の集落に帰ると同時に僕達と鉢合わせしてから…理由を話した途端に機嫌が悪くなったのだった。
 さらには、入り口の階段を外したというのも機嫌の悪い原因の1つとなったらしい。

 「だから、ごめんって! 機嫌を直してよ、父さん達…」
 「家の階段を外すなんて…痛かったんだぞ!」
 「よく言うよ、木の中間地点から落ちてもピンピンしているじゃん!」
 
 ドワーフ達の作る酒は、主に果実から作られる。
 その果実を獲る為には、木にタックルを喰らわせてから獲る方法と、細い木の場合は木に登って獲る方法の2種類なのだが…梯子を下りるのが面倒で、木の上からダイブをして降りる。
 体が頑丈さが取り柄のドワーフしか出来ない事なのだが、そんな物を見ている為に階段を外すという悪戯では別に大した事が無いと思っていたのだ。

 「家の中で木が軋む位に激しい事をしていると思ったら、木組みの中心に重石を乗っけたという仕掛けだったし…」
 「僕が子作りでもしていると思ったの? 成人じゃないんだから、そこまでする訳ないでしょ!」
 「なにおぅ? ワシが10代の頃は、シルビアとは激しかったぞ! その後にシルビアの親父殿に殺されそうになったが…」
 「そんな話を子供の前でするな~~~!!!」
 
 なんつー話を子供の前でするんだ、この親父は…
 メーモとメーミちゃんが顔を真っ赤にしているじゃないか!
 
 「それで結局、お前達は何処に行っていたんだ?」
 「父さん達が作った温泉で4人で入っていた。」
 「やましい事は無かったのか?」
 「あると思う? メーモと2人だけならともかく、メーミちゃんとルーレさんも居たんだぞ!」
 「あの湯の泉は仕切りの板が無いから、4人で入るという事は全員裸だった筈…それでも何も無かったのか?」
 「なにもな…」

 すると、ナーニヌ卿が剣を抜いて僕に斬り掛かって来たので、僕は手甲で剣を受け止めた。

 「貴様は…メーモ様以外にメーミ様やルーレの裸を見たのか⁉ 見たのか⁉」
 「見たよ? それが?」
 「貴様…きっさま~~~~~~!!!」
 
 僕は白刃取りの状態で続けた。

 「メーモ以外の2人の裸も見させてもらいました。 メーミちゃんのお尻に可愛い尻尾も…いでぇ!」

 僕はそう言うと、メーモとメーミはメイスとモーニングスターで僕の頭を殴った。
 大したダメージではないが、殴られれば痛い…

 「貴様…なんて羨ましい事を‼」
 「本音が漏れてるぞ、護衛騎士。」
 
 別に裸を見ただけじゃん!
 手を出した訳じゃないんだから、そんなに目くじら立てなくても…
 
 「そしてテトがワシ等にした事がどうしても許せないんじゃ‼」
 「階段を隠した事と、部屋を偽装したこと以外に?」
 「そうじゃ‼」

 僕は腕を組んで考えた。
 他に何かしたっけ?
 
 「僕はこの2つ以外の事はしてないよ?」
 「嘘を付け‼ ワシ等が飲んでいるジョッキの中身を捨てて、レモンの絞り汁が入っていたぞ‼ ワシ等は柑橘系が苦手なのを知っているだろ‼」
 「ごめんなさい、それは私です。」
 「なんじゃ、メーミ嬢ちゃんだったのか!」
 「国王である父様が、二日酔いにはレモン汁を飲むと治ると言っていたので…」
 「あーあ、こんな小さな子を泣かした…」
 「本当にごめんなさい、おじ様達…柑橘系が苦手だって知らなくて。」
 
 メーミちゃんは涙を浮かべて俯いていると、5人のドワーフ達はメーミを囲んで何とか慰めようと慌てていた。
 
 「苦手というだけで、喰えない訳じゃないんじゃ!」
 「そうそう、頭がスッキリして良かったぞ!」
 
 あの怒鳴り声の後にフォローしても…ねぇ?
 するとガルダが思い出した様に言った。

 「ワシ等が寝ている時に毛布なんぞ掛けおって…暑くて寝られなかったぞ!」
 「ごめんなさい、親切心からした事が逆に怒らせてしまったなんて…」

 ルーレは申し訳なさそうに頭を下げると、ガルダは慌てながらルーレに弁解をしていた。
 これは面白い展開になって来たな!
 多分だけど、次の文句も墓穴を掘る事になるだろう。
 グレッドが次に何かを言おうとしたので、僕はとりあえず言っておいた。

 「グレッド父さんが何を言おうとしているのかは分からないけど、僕は本当に2つ以外の事はしてないよ。 それを踏まえて発言してね。」
 「むぅ…クレの実を口に入れたのは?」
 「私です…グレッド父様。 お酒で割れ酔いした時に効くと聞いて…」
 「クレの実って何?」
 「これよ。」

 メーモは小さな壺から実を出して僕にくれた。
 僕は口に入れると、凄まじい酸味が口の中を…って、これ梅干しだ!

 「これ…こっちの世界にもあったのか!」
 「テト君は食べた事あるの?」
 「僕の世界にもあったよ。 御飯の御供としては最高なんだ! ただ…僕の世界のは赤い実だったので紫ではなかったけどね。」
 
 僕はそう言いながらグレッドを見ると、グレッドは手を合わせて礼をしていた。
 危うく…メーモまで泣かせる所だったからね。
 さて…なんとか有耶無耶に出来たかな?
 とはいえ…?
 この状態がいつまでも続く訳ではない。
 人間、腹が減れば怒りっぽくなる。
 ましてやドワーフなら尚更だ!
 僕は外に出てドワンゴの厨房に行ってから食事を作って振る舞った。
 そしてお腹が満たされると一転して機嫌が良くなった。

 「ふぅ…疲れた。 これで父さん達の機嫌も………ってあれ? 何か忘れてないかな? なんだっけ?」

 この時の僕は、エルフの集落に行く予定を完全に忘れていたのだった。
 そして翌日に思い出したのだった。
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