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第三話 どうも、テトです!

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 「どうも、テトです! 僕はあの高さから落とされても生きています‼︎」

 まだ両親が家にいる頃に見たアニメで、マンションの屋上位に高い崖から落ちて無傷という主人公がいました。
 普通ではありえない…それがアニメだと思っていたのですが、僕も生きていました。
 運良く大きい枝に引っ掛かって勢いを殺す事が出来ました。
 ですが、無傷という訳ではありませんでした。
 体の至る所に打撲と切り傷をしましたが、生きているだけ儲け物です!
 そして僕はいまどうしているかというと…?

 「丸太に両手足を縛られて運ばれております!」

 体は僕より少し小柄で、肌は緑色…顔はブサイクというか醜く、服は腰布のみで言葉が一切通じませんでした。
 ただ、この運ばれ方には少し違和感がありましたが、担架を知らない物だと思ったので仕方がないでしょう。
 そしてこの方達の村に着くと、僕は油臭い鍋の前に無造作に放り投げられました。
 更に丸太から手足の拘束を解かれました。

 「騎士に突き落とされて何日経ったのかな? そろそろお腹が減っているんだけど…」

 緑色の人が棒で鍋をかき混ぜていました。
 匂いは酷いですが、食べられない事は無いと思います。
 以前テレビで見た原住民が客人に料理を振舞うというのをやっていて、それを食べれば仲間として認めてくれる…僕はそう思っていて、器に料理が装われるのを待ちました。
 で・す・が…そんな事はいくら待っても来なくて、そしてなぜか僕は服を脱がされて全裸にされました。
 
 「なるほど! 彼らと同じ腰布を与えられるんだな? これで仲間に…」

 そう思っていたのですが、2人の緑色の人に手を引かれて僕は鍋の前に来ました。
 ここまで来れば僕でも解ります。
 つまり…僕を食べようという事だ!
 僕は周囲を見渡すと、緑色の人達は叫び声を上げながら「クゥ! クゥ!」と叫んでいます。
 そして鍋の横の白い山になっている物をみると、それは動物や人の骨が積まれていました。
 僕は腕を引かれるのを必死に抵抗して言いました。

 「さぁ! 助けに来るなら今ですよ‼」

 僕の声は、緑色の人達の雄叫びにより、虚しくかき消されました。
 そして僕は何度も叫びました。

 「さぁ! 早く助けに来て下さい! ほら、今すぐに‼」

 ですが、いくら待っても誰も来てはくれませんでした。
 この場を走って逃げようとしても、緑色の人達は30人位います。
 とてもじゃないけど逃げられません。
 そして僕がもたついていると…別な緑色の人が、丸太に括り付けられていた猪?の子供を持ってきました。
 緑色の人は猪の子供の拘束を解くと、そのまま鍋に放り込みました。
 猪の子供は「プギープギー」と叫び声を上げています。
 緑色の人2人は、鍋から猪の子供が飛び出ない様に棒で押さえ付けていました。

 「これが終わったら…次こそ僕の番か。」

 僕は覚悟を決めました。
 ところが…僕の背後の方から大きな地鳴りのような音が聞こえてくると、体長3m位ありそうな巨大な猪が2匹飛び込んできました。
 そして1匹が鍋をひっくり返すと、猪の子供が投げ出されて…鍋の中身をモロに緑色の人が被り、熱さでのた打ち回っていました。
 そして緑色の人達は、それぞれ武器を持って巨大な猪に立ち向かおうとしていました…が、2匹の巨大な猪が暴れまわると、僕より小柄な緑色の人達は成す術がなく、逃げ惑うばかりでした。
 僕はこの隙に服を持って緑色の人達の村を飛び出しました。
 体のあっちこっちが痛いですが、そんな事を言っている場合ではありません。
 捕まったら…今度こそ絶対に喰われます!
 僕は無我夢中で逃げました。

 「ここまで来れば…」

 僕は服を着て、緑色の人達の村とは逆方向に歩いていると…植物のツルの様な物が足に絡んできて引き摺られました。

 「今度は何⁉」

 ツルのゴールが見えると、そこには巨大なウツボカズラが僕を食べようと口元が閉じたり開いていたりしました。
 緑色の人達の次は、植物に喰われそうになるとは…僕は手を広げて喰われるのを阻止していました。
 ですがヌメヌメとした液体で滑って、僕はウツボカズラに喰われました。
 上を見上げると口が閉じています。
 そして足元から別な液体が湧き出て来ると、僕の靴やズボンの裾を溶かし始めました。

 「理科の授業で、食虫植物は獲物を捕らえて溶かして養分を得るって…」

 僕の靴を完全に溶かすと、足に液が付着しました。
 するとその液は、なんだか肌がピリピリとしました。
 僕は今度こそ死を覚悟しました。
 そして走馬灯も見えてきました。

 「思えば…両親が家から居なくなって親戚に預けられて、毎日虐められて耐えていたら、今度は見知らぬ世界に来させられて、そこで不要だと言われて崖から突き落とされて…緑色の人達に喰われそうになるわ、植物に飲み込まれるわで僕の人生って一体⁉」

 生まれ変わってもし人間になれたら、こんな人生とは無縁な良い人生を送りたいな…
 そんな事を思っていたら、僕の顔のすぐ横に矢が突き出てきました。
 僕は耳を澄ますと、誰かは解らないけど数人の人の声がしていました。
 僕はありったけの声で叫ぶと、植物の皮が裂かれて落ちる様に脱出が出来ました。

 「やった! 助かった‼」

 僕は顔を上げると、其処には金髪で耳の尖った人の姿がありました。
 その人たちは僕を救い出した様に他のウツボカズラを切り裂くと、中から耳の尖った人より小さな子達を救い出しました。
 何はともあれ…助けて貰ったからにはお礼を言わないといけません。
 僕は耳の尖った人達にお礼を言いました。

 「ありがとうございます! おかげで助かりました!」
 「人間の子供か? なぜこのような場所に…」

 良かった!
 緑色の人達と違って言葉が通じる!
 僕は耳の尖った人達に近寄ろうとすると、持っていた槍を突き付けられました。

 「ハウザー! この人間の子供はどうする?」
 
 耳の尖った人は背後にいる人に声を掛けました。
 するとその人からの返答は…

 「人間の子供か? 拘束して連行しろ‼」

 僕は丸太にこそ縛られませんでしたが、両手を縛られて囚人の様な格好になって連れて行かれました。
 そしてしばらく歩くと、耳の尖った人達の拠点に着き…僕は牢屋に放り込まれました。
 
 「まぁ、喰われるよりはまだ良いか…彼らからしてみたら僕は怪しいと思われても仕方が無いんだし、少しずつ会話をして誤解を解いていこう。」

 僕はそう考えていましたが、その考えは覆されました。

 「ハウザー、捕まえた人間の子供はどうする?」
 「人間は誰であろうとも処刑だ! 明朝に処刑を行う‼」

 この世界に慈悲は無いのかもしれない…
 僕は何とか牢屋から出る方法を模索したのだった。
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