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第一話 僕の仕事…前編
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艸亥 香の朝は早い。
その時間…午前3時。
それには理由があった。
まずは犬の散歩をしてから、家族全員の朝食作りと弁当作り…ここ迄は普通なのだが?
それ以外に家族を起こすという厄介な仕事が待ち構えている。
学に関しては自発的に起きるので問題は無いのだが…?
姉や妹達は、僕に起こされないと昼迄寝ている。
これが…高校に入ってからのルーティンになっている。
中学までは祖母が家の中の事をやってくれていた。
僕は祖母を手助けする為に手伝っていたのだったが、僕が高校生になる少し前に祖母が身体を悪くして療養の為に伯父の家に移り住んでからは…それらの生活が一変した。
「私がこの家を離れる事は少し心配だけど、皆も良い年齢になって来たし…任せても大丈夫だろうね?」
「おばあちゃん…」
僕は厳しくも大好きな祖母が離れ離れで暮らす事になって悲しく思っていたのだが…?
この時、姉達や妹達はというと?
「私達に任せて!」…と言ってくれていたんだけど、厳しかった祖母が居なくなった途端に一変して、今日に至る。
あの日の姉達や妹達の誓いは何だったんだろうか…?
それ以来、僕の生活は苛烈を極める事になった。
「さて、今日もアマゾネス達を起こさないといけないのか…自分達で自発的に起きようとする事はできないのかねぇ?」
朝食作りと弁当作りは、犬達の散歩が終わってから完成していた。
艸亥家の朝食は御飯で、米は白米では無く玄米を使用していた。
妹達はパンが食べたいと言うのだが、御飯とパンの両方を作るのは面倒なので…食べたければ自発的に起きろと言ったら文句は無くなった。
御飯は白米でも良いのだけれど、玄米の方が栄養もあるし、何より腹持ちが良いという話で昔から玄米を取り入れていた。
あ…犬達は家族より先に与えていますよ。
献立は、鮭の塩焼きに卵焼き、ワカメとナメコの味噌汁と言ったシンプルな物だった。
味噌汁に関してはインスタントにしたいところなんだけど、祖母の時は出汁を取ってから作る物だったので…今では多少面倒さを感じるけど、それで慣れていた。
「さて、そろそろ起こすとしますか!」
初めの頃は、フライパンにお玉で死者の目覚め…とか言ってやっていたのだけれど…?
近所迷惑になるという理由で却下になった。
…とはいえ、艸亥家の敷地は300坪ある上に…あの音が近所迷惑になる物なのかな?
まぁ、かなりうるさい音なのでそういう事にしておこう。
艸亥家の敷地には姉達や妹達の住む母屋があり、その他に蔵と茶室と道場がある。
他にも庭園には池があり、昔は鯉を飼っていたんだけれど…現在では鯉はおらずに、水で育てる蓮根や干瓢を育てている。
茶室は祖母がいる時は、近くの人達の茶道や花道教室になっていたりしていたけど、現在では来客用の客間として使用している為に、あまり使われる事はない。
道場も街にある規模の大きさではないけど、剣道の試合が出来るほどのスペースはあった。
もっとも、祖父が他界してからはあまり使われてはいないが、たまに祖父の教え子達が使わせて欲しいと来る事もある。
少し話が逸れましたね…姉妹達を起こすには順番がある。
長女から順に起こせれば問題は無いのだが、長女の遥と三女の琴、五女の凛は寝起きが悪いので…それ以外を先に起こす事にしていた。
起こすのもそれなりに気を使うので厄介な事である。
最初はこの方法で…とやっていたのだけれど、それが何度も続くと慣れてくる所為か効果が無くなる場合がある。
なので、その度に手法を変える必要があった。
えらく面倒ではあるのだけれど、これがちょっとしたストレスの解消にもなっている。
何故…ストレスの解消になるかって?
それは七女の恋以外は、とても生意気だからであるからだ。
「まずは…静姉さんからだな!」
静姉さんは別に寝起きが悪いという訳では無い。
比較的姉妹達の中では割とおっとりとした感じなので、問題は無い。
だけど、扉の前に下がっているプレートを見ると…?
【朝方まで原稿と格闘中だったから、朝御飯はいりません。】
…そう書かれていた。
静姉さんの場合は、これが初めてでは無いので弁当を学校に行く前にドアの前に置いておくとしよう。
静姉さんは小説家で、主に恋愛小説を書いているんだけど?
官能小説も書いていて、今回はどちらを書く為に苦戦したのかは分からない。
なので僕は光の部屋に行った。
光の部屋に着き、扉を開けると…?
寝ている時に布団を蹴っ飛ばして、あらぬ姿で眠っている光がいた。
しかもパジャマが半脱ぎ状態だった。
「昨日って、そんなに暑かったっけ?」
暑がり屋の光は、冬場でも外出する時以外は厚着をしない。
ただ単に、姉妹達の中では脂肪が付いていてデ…ゴホン、ゲフン。
そんな光には、冷凍庫で凍る寸前にまで冷やしておいた冷水をはだけたパジャマを脱がして首筋に垂らした。
すると光は飛び起きた。
まぁ、まだ夏には少し早い季節だったので…この起こし方は効果的だったのだろう。
機嫌は…悪かったけど、僕は無視して次は愛の部屋に行った。
愛の部屋と恋の部屋は一応分かれてはいるんだけど、ふすま一枚だけなのでイチイチ部屋を出る事が無いので楽だった。
僕はまず最初に恋から起こす事にした。
何故なら恋は、姉妹達の中では唯一…普通に起こして起きるからだった。
「恋、起きろ~~~」
「ん…お兄ちゃんおはよう~。」
「愛の事を任せても良いか?」
「は~い!」
どういう訳か…僕は愛に毛嫌いされている節がある。
その原因を作ったのは…僕の所為なのだけれど。
まぁ、その話はいずれするとして…僕は次に桜華と風華の部屋に向かった。
桜華と風華の部屋は、元は僕の部屋だった。
父さん(総一郎)が二人を引き取るに当たって、父親の剛志さんが男を同じ家の中にいるのは危険という理由で、僕は母屋から追い出されて蔵で生活する羽目になった原因でもある。
ただ単に、この二人が父さんの知り合いの娘…というのなら大した問題は無いのだが、桜華は僕の彼女でもあるので、色々心配になるのだった…らしい。
「桜華…起きろ~!」
「あ、おはよ!」
桜華は割と寝起きは良い方だ。
寝起きが悪い方だったら、恋人らしく起こそうとも思ったのだけれど。
下手な事をすると、妹の風華が勘付いて邪魔して来るのでそんな真似は許されない。
なので桜華は普通に起こすとして、風華には先程光に使っていた冷水を顔に掛けてやる事にした。
僕が風華にこんな事をするには理由がある。
いつも休日デートに誘う桜華との仲を邪魔されるからだった。
風華は顔を抑えながら起き上がると、僕を見付けて睨んで来るが…?
「呼んで起きない方が悪い!」
僕はそう言ってさっさと退散するのだった。
何故僕はさっさと退散するかというと、この家で待ち構えている寝起きの悪い三人が控えているからだった。
僕は最初に、寝起きの悪い三人の一人で比較的に難易度が楽な凛の部屋に行った。
「凛、起きろ~」
…と、一応無駄だと思うが声を掛けてみたが、案の定無駄に終わった。
なので次に、耳の穴に冷水を入れてみたら…これには驚いて飛び起きた。
「起きたら居間に行け…」
凜はムッとした顔で僕を睨むと、声を発する事無く部屋を後にした。
ここ迄だったら、凜までだったらすぐに起きるのだけれど…?
この先に控えている二人は、こんな簡単な方法では起きてはくれない。
僕は憂鬱な気分を出しながら、琴姉さんの部屋に行った。
「琴姉さん、起きろ~!」
…これで起きてくれるなら、大した問題は無いんだけど…?
これで起きる筈が無い上に、仮に目を覚ますと僕の腕を取って布団に引き込んでから…関節技を掛けて来る。
幾ら寝起きが悪いとは言っても、本当は態とやっているのではないかと疑いたくなるのだが…?
これが起こすのが厄介な理由の1つでもある。
「酷い起こし方をすると、倍返しを喰らうからなぁ…」
なので、冷水をぶっ掛けるなんてもっての他だった。
琴姉さんの弱みというか…弱点は一応あるんだけど、これをすると確実に怒る。
過去に一度、この方法を実践して酷い反撃を喰らった事があった。
「だけど、あまり琴姉さんに構っていると遥姉さんを起こす時間が…?」
なので強硬策に出る事にした。
僕は…寝ている琴姉さんの腹に体重をかけてストンピング攻撃をした。
*危険ですので、絶対に真似はしないで下さい。
僕の体重は、下手するとプロレス練習生の琴姉さんよりも軽い。
…が、気持ち良さそうに寝ている人に対してこんな事をすれば、当然だけど怒り出す。
だけど僕は、琴姉さんが完全に目を覚ます前に部屋から出て行った。
「まぁ、後で痛い目に遭わせられるんだろうなぁ…」
まぁ恐らくだけど、部屋から音がしているという事は琴姉さんは起きたと思うので、僕はラスボスである遥姉さんの部屋に行った。
遥姉さんは、極稀に…本当に極稀に起きている時があるのだけれど…?
「やはり寝ているか!」
遥姉さんの場合は、身体を揺さぶりながら声を掛けて起こそうとすると、8割か9割の確率で平手か裏拳が飛んで来る。
なので、遥姉さんを起こす時は憂鬱になって来る。
そして毎朝の事ながら…遥姉さんを起こすのは苦労を強いられる。
「遥姉さんは、また勉強しながら寝落ちしたのか…」
その証拠に、遥姉さんの周りには参考書や専門書が散らばっていた。
以前にそれらの書物で叩いて起こした事があったが、起きた瞬間に起こられた事があった。
今回もその方法を使って起こしたい所だけど、琴姉さんと同じ方法を使って起こすか!
…とは言っても、遥姉さんの身体は琴姉さんみたいに強靭ではない。
様々な格闘技を祖父から教わっていたらしいので、問題は無いとは思うんだけど…?
なので僕は凶器を使ってみる事にした。
都合が良い事に、遥姉さんの近くには分厚い辞書の六法全書がある。
それを2m位の高さから遥姉さんの顔を目掛けて落した。
*本当に危険なので辞めて下さい。それと、法曹関連の皆様も不快に感じたらごめんなさい!
僕は遥姉さんが起きる前に、ダッシュで部屋から出て行った。
六法全書が姉さんの顔に当たった時に、「うがっ!」という声を聞いたけど。
それからしばらくして…「か~お~る~~~!!!」という怒鳴り声が家全体に響いた。
それから朝食が始まり、皆はそれぞれ済ませると…弁当を持って家から出て行った。
遥姉さんと琴姉さんからは、「家に帰ったら覚えてろよ…」と凄まれた。
僕は…「起こして素直に起きない姉さん達が悪い!」…と、聞こえない様に小さな声で言った。
それから僕も静姉さんのお弁当とみそ汁の入ったスープボトルを部屋の前に置いてから、桜華と光と共に登校した。
こんな広い家で防犯面が心配だって?
大丈夫、我が家には頼りになる番犬が守ってくれているのだから。
その話は後編でお話しします。
中編に続く…
その時間…午前3時。
それには理由があった。
まずは犬の散歩をしてから、家族全員の朝食作りと弁当作り…ここ迄は普通なのだが?
それ以外に家族を起こすという厄介な仕事が待ち構えている。
学に関しては自発的に起きるので問題は無いのだが…?
姉や妹達は、僕に起こされないと昼迄寝ている。
これが…高校に入ってからのルーティンになっている。
中学までは祖母が家の中の事をやってくれていた。
僕は祖母を手助けする為に手伝っていたのだったが、僕が高校生になる少し前に祖母が身体を悪くして療養の為に伯父の家に移り住んでからは…それらの生活が一変した。
「私がこの家を離れる事は少し心配だけど、皆も良い年齢になって来たし…任せても大丈夫だろうね?」
「おばあちゃん…」
僕は厳しくも大好きな祖母が離れ離れで暮らす事になって悲しく思っていたのだが…?
この時、姉達や妹達はというと?
「私達に任せて!」…と言ってくれていたんだけど、厳しかった祖母が居なくなった途端に一変して、今日に至る。
あの日の姉達や妹達の誓いは何だったんだろうか…?
それ以来、僕の生活は苛烈を極める事になった。
「さて、今日もアマゾネス達を起こさないといけないのか…自分達で自発的に起きようとする事はできないのかねぇ?」
朝食作りと弁当作りは、犬達の散歩が終わってから完成していた。
艸亥家の朝食は御飯で、米は白米では無く玄米を使用していた。
妹達はパンが食べたいと言うのだが、御飯とパンの両方を作るのは面倒なので…食べたければ自発的に起きろと言ったら文句は無くなった。
御飯は白米でも良いのだけれど、玄米の方が栄養もあるし、何より腹持ちが良いという話で昔から玄米を取り入れていた。
あ…犬達は家族より先に与えていますよ。
献立は、鮭の塩焼きに卵焼き、ワカメとナメコの味噌汁と言ったシンプルな物だった。
味噌汁に関してはインスタントにしたいところなんだけど、祖母の時は出汁を取ってから作る物だったので…今では多少面倒さを感じるけど、それで慣れていた。
「さて、そろそろ起こすとしますか!」
初めの頃は、フライパンにお玉で死者の目覚め…とか言ってやっていたのだけれど…?
近所迷惑になるという理由で却下になった。
…とはいえ、艸亥家の敷地は300坪ある上に…あの音が近所迷惑になる物なのかな?
まぁ、かなりうるさい音なのでそういう事にしておこう。
艸亥家の敷地には姉達や妹達の住む母屋があり、その他に蔵と茶室と道場がある。
他にも庭園には池があり、昔は鯉を飼っていたんだけれど…現在では鯉はおらずに、水で育てる蓮根や干瓢を育てている。
茶室は祖母がいる時は、近くの人達の茶道や花道教室になっていたりしていたけど、現在では来客用の客間として使用している為に、あまり使われる事はない。
道場も街にある規模の大きさではないけど、剣道の試合が出来るほどのスペースはあった。
もっとも、祖父が他界してからはあまり使われてはいないが、たまに祖父の教え子達が使わせて欲しいと来る事もある。
少し話が逸れましたね…姉妹達を起こすには順番がある。
長女から順に起こせれば問題は無いのだが、長女の遥と三女の琴、五女の凛は寝起きが悪いので…それ以外を先に起こす事にしていた。
起こすのもそれなりに気を使うので厄介な事である。
最初はこの方法で…とやっていたのだけれど、それが何度も続くと慣れてくる所為か効果が無くなる場合がある。
なので、その度に手法を変える必要があった。
えらく面倒ではあるのだけれど、これがちょっとしたストレスの解消にもなっている。
何故…ストレスの解消になるかって?
それは七女の恋以外は、とても生意気だからであるからだ。
「まずは…静姉さんからだな!」
静姉さんは別に寝起きが悪いという訳では無い。
比較的姉妹達の中では割とおっとりとした感じなので、問題は無い。
だけど、扉の前に下がっているプレートを見ると…?
【朝方まで原稿と格闘中だったから、朝御飯はいりません。】
…そう書かれていた。
静姉さんの場合は、これが初めてでは無いので弁当を学校に行く前にドアの前に置いておくとしよう。
静姉さんは小説家で、主に恋愛小説を書いているんだけど?
官能小説も書いていて、今回はどちらを書く為に苦戦したのかは分からない。
なので僕は光の部屋に行った。
光の部屋に着き、扉を開けると…?
寝ている時に布団を蹴っ飛ばして、あらぬ姿で眠っている光がいた。
しかもパジャマが半脱ぎ状態だった。
「昨日って、そんなに暑かったっけ?」
暑がり屋の光は、冬場でも外出する時以外は厚着をしない。
ただ単に、姉妹達の中では脂肪が付いていてデ…ゴホン、ゲフン。
そんな光には、冷凍庫で凍る寸前にまで冷やしておいた冷水をはだけたパジャマを脱がして首筋に垂らした。
すると光は飛び起きた。
まぁ、まだ夏には少し早い季節だったので…この起こし方は効果的だったのだろう。
機嫌は…悪かったけど、僕は無視して次は愛の部屋に行った。
愛の部屋と恋の部屋は一応分かれてはいるんだけど、ふすま一枚だけなのでイチイチ部屋を出る事が無いので楽だった。
僕はまず最初に恋から起こす事にした。
何故なら恋は、姉妹達の中では唯一…普通に起こして起きるからだった。
「恋、起きろ~~~」
「ん…お兄ちゃんおはよう~。」
「愛の事を任せても良いか?」
「は~い!」
どういう訳か…僕は愛に毛嫌いされている節がある。
その原因を作ったのは…僕の所為なのだけれど。
まぁ、その話はいずれするとして…僕は次に桜華と風華の部屋に向かった。
桜華と風華の部屋は、元は僕の部屋だった。
父さん(総一郎)が二人を引き取るに当たって、父親の剛志さんが男を同じ家の中にいるのは危険という理由で、僕は母屋から追い出されて蔵で生活する羽目になった原因でもある。
ただ単に、この二人が父さんの知り合いの娘…というのなら大した問題は無いのだが、桜華は僕の彼女でもあるので、色々心配になるのだった…らしい。
「桜華…起きろ~!」
「あ、おはよ!」
桜華は割と寝起きは良い方だ。
寝起きが悪い方だったら、恋人らしく起こそうとも思ったのだけれど。
下手な事をすると、妹の風華が勘付いて邪魔して来るのでそんな真似は許されない。
なので桜華は普通に起こすとして、風華には先程光に使っていた冷水を顔に掛けてやる事にした。
僕が風華にこんな事をするには理由がある。
いつも休日デートに誘う桜華との仲を邪魔されるからだった。
風華は顔を抑えながら起き上がると、僕を見付けて睨んで来るが…?
「呼んで起きない方が悪い!」
僕はそう言ってさっさと退散するのだった。
何故僕はさっさと退散するかというと、この家で待ち構えている寝起きの悪い三人が控えているからだった。
僕は最初に、寝起きの悪い三人の一人で比較的に難易度が楽な凛の部屋に行った。
「凛、起きろ~」
…と、一応無駄だと思うが声を掛けてみたが、案の定無駄に終わった。
なので次に、耳の穴に冷水を入れてみたら…これには驚いて飛び起きた。
「起きたら居間に行け…」
凜はムッとした顔で僕を睨むと、声を発する事無く部屋を後にした。
ここ迄だったら、凜までだったらすぐに起きるのだけれど…?
この先に控えている二人は、こんな簡単な方法では起きてはくれない。
僕は憂鬱な気分を出しながら、琴姉さんの部屋に行った。
「琴姉さん、起きろ~!」
…これで起きてくれるなら、大した問題は無いんだけど…?
これで起きる筈が無い上に、仮に目を覚ますと僕の腕を取って布団に引き込んでから…関節技を掛けて来る。
幾ら寝起きが悪いとは言っても、本当は態とやっているのではないかと疑いたくなるのだが…?
これが起こすのが厄介な理由の1つでもある。
「酷い起こし方をすると、倍返しを喰らうからなぁ…」
なので、冷水をぶっ掛けるなんてもっての他だった。
琴姉さんの弱みというか…弱点は一応あるんだけど、これをすると確実に怒る。
過去に一度、この方法を実践して酷い反撃を喰らった事があった。
「だけど、あまり琴姉さんに構っていると遥姉さんを起こす時間が…?」
なので強硬策に出る事にした。
僕は…寝ている琴姉さんの腹に体重をかけてストンピング攻撃をした。
*危険ですので、絶対に真似はしないで下さい。
僕の体重は、下手するとプロレス練習生の琴姉さんよりも軽い。
…が、気持ち良さそうに寝ている人に対してこんな事をすれば、当然だけど怒り出す。
だけど僕は、琴姉さんが完全に目を覚ます前に部屋から出て行った。
「まぁ、後で痛い目に遭わせられるんだろうなぁ…」
まぁ恐らくだけど、部屋から音がしているという事は琴姉さんは起きたと思うので、僕はラスボスである遥姉さんの部屋に行った。
遥姉さんは、極稀に…本当に極稀に起きている時があるのだけれど…?
「やはり寝ているか!」
遥姉さんの場合は、身体を揺さぶりながら声を掛けて起こそうとすると、8割か9割の確率で平手か裏拳が飛んで来る。
なので、遥姉さんを起こす時は憂鬱になって来る。
そして毎朝の事ながら…遥姉さんを起こすのは苦労を強いられる。
「遥姉さんは、また勉強しながら寝落ちしたのか…」
その証拠に、遥姉さんの周りには参考書や専門書が散らばっていた。
以前にそれらの書物で叩いて起こした事があったが、起きた瞬間に起こられた事があった。
今回もその方法を使って起こしたい所だけど、琴姉さんと同じ方法を使って起こすか!
…とは言っても、遥姉さんの身体は琴姉さんみたいに強靭ではない。
様々な格闘技を祖父から教わっていたらしいので、問題は無いとは思うんだけど…?
なので僕は凶器を使ってみる事にした。
都合が良い事に、遥姉さんの近くには分厚い辞書の六法全書がある。
それを2m位の高さから遥姉さんの顔を目掛けて落した。
*本当に危険なので辞めて下さい。それと、法曹関連の皆様も不快に感じたらごめんなさい!
僕は遥姉さんが起きる前に、ダッシュで部屋から出て行った。
六法全書が姉さんの顔に当たった時に、「うがっ!」という声を聞いたけど。
それからしばらくして…「か~お~る~~~!!!」という怒鳴り声が家全体に響いた。
それから朝食が始まり、皆はそれぞれ済ませると…弁当を持って家から出て行った。
遥姉さんと琴姉さんからは、「家に帰ったら覚えてろよ…」と凄まれた。
僕は…「起こして素直に起きない姉さん達が悪い!」…と、聞こえない様に小さな声で言った。
それから僕も静姉さんのお弁当とみそ汁の入ったスープボトルを部屋の前に置いてから、桜華と光と共に登校した。
こんな広い家で防犯面が心配だって?
大丈夫、我が家には頼りになる番犬が守ってくれているのだから。
その話は後編でお話しします。
中編に続く…
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