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第二章

第十三話 遂に出遭ってしまった最悪な2人…(序章と内容が少し異なります。)

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 「あれは…リュカさん⁉」

 シオンはそう言うと、ザッシュはリュカの元に近付いて言った
 
 「久しぶりだな、えぇ…リュカよ‼」
 「ザッシュ…またお前か⁉」
 「ザッシュさんだろ…リュカ‼」
 「はいはい、何ですか? ザッシュちゃん。」
 「あぁ⁉︎」
 
 ザッシュさんはリュカさんの挑発めいた言葉で明らかに怒りを表している様だった。
 ザッシュさんは事前にリュカさんに話しかける前に手を挙げると…グレンさんは体格の良い格闘士の前に、ミーヤさんは聖女候補の前に、アントワネットさんとレグリーさんは、2人の貴族令嬢の前に散開させていたのだった。
 打ち合わせ通りにリュカさんを逃さない為だった。

 「僕の相手は2人か…」

 リュカさんがそうつぶやく声を聞いた。
 すると、リュカさんは急に黙りだした。 
 そしてリュカさんから何かしらの魔力反応を感じて、ザッシュさんに放っている感じだった。
 僕は警戒の為にザッシュさんの後方で構えていた。
 すると…?

 「シオン、お前は他の者達のサポートに回れ!」
 「ですが、リュカ…さんは魔法を使えて手強いかと。」
 「魔法を使わせなければ良いんだろ? なら簡単だ!」

 ザッシュさんは魔剣ブラッドイーターを鞘から抜くと、リュカさんに向かって斬り掛かって来た。
 リュカさんも剣を抜いてザッシュさんの剣を受け止めたのだった。
 そして何度か打ち合っていると、リュカさんの体に変化が出始めて劣勢になっていた。
 
 「これなら、僕がここを離れても大丈夫だね? 僕は皆のサポートに回るとしよう!」 

 僕はそう言うと、その場を離れて他の人達の応援に行ったのだった。
 僕はグレンさんの元に来た。
 グレンさんと格闘士の人が激しく拳で殴り合っていた。

 「獣人とやるのは初めてだが、中々やるな!」
 「きさんじゃも、げきてるとわごうらぐんがなか!」
 「な…何を言っているんだ? 言葉が全く理解出来ない所を見ると、お前…ゲルギグス大陸の…北方の出身か?」
 「!?」
 
 格闘士の男は服を脱ぎだして上半身裸になった。
 そして気合と共に筋肉を奮わせてグレンさんに見せ付ける様に胸をビクビクと動かしていた。
 それを見たグレンさんも、上半身裸になってポーズを取ると…格闘士の人と同じ様に筋肉を奮わせたのだった。
 …5分くらいに渡って互いに筋肉を奮わせ続けていると、2人は近付いてから固い握手を交わしてから再び距離を取った。
 2人の顔には歓喜に似た笑みを浮かべていた…のだけど?

 「何だったんだろう、今の時間は?」

 言葉が通じなくても筋肉同士なら言葉の壁は無い!
 パワフル系の筋肉言語で2人は会話していたのだが、シオンには理解が出来なかった。
 とりあえず、グレンさんは大丈夫だと思って他の場所に行く事にした。

 次に僕は、ミーヤさんの元に行った。
 ミーヤさんは聖女候補に手数で押していたが、魔法の攻撃に苦戦をしていた。
 そしてミーヤさんは聖女候補の魔法攻撃を受けると距離を取ったが、聖女候補が攻寄って来たので僕は守護結界を張ってからミーヤさんの治療をしたのだった。

 「シオン…邪魔するにゃ!」
 「そうよ! 邪魔しないでよ‼」

 2人の女性の剣幕に少し押されそうになったが、僕はとりあえずミーヤさんの治療を続けた。
 すると聖女候補も自分の体を治療し始めた。

 「ミーヤさん、僕も支援しますよ!」
 「シオン、ここは私一人で十分にゃ!」
 「ですが…」
 《あの聖女候補の子の魔法は解らないけど、あの子の持つ剣に攻撃魔法の手段は殆ど無いから…》
 《やっぱり…クルシェスラーファだったのね?》
 《久しぶりね、姉さん。》

 僕と聖女候補は驚いたのだった。

 《クルシェスラーファって…グランマが使った杖だよね? どうしてあの子が…》
 《クルシェスラーファ、姉さんって? それに何であの剣の特性を知っているの?》
 《姉さんの剣の名前は、聖剣シャンゼリオン…シオンも名前くらいは聞いた事があるでしょ?》
 《聖剣シャンゼリオンって、勇者翔也が魔王サズンデスを倒す時に使っていた剣だよね? という事は、あの聖女候補は勇者なの⁉》
 
 僕は鑑定魔法を使って聖女候補を見た。
 だが、鑑定魔法が上手く働かずに聖女候補には効果が無かった。

 「人のステータスを勝手に見ようとするんじゃないわよ、エッチ…!」
 「エッチって…僕はそんなつもりは全く。」

 そういえば鑑定魔法って、相手のジョブやレベル以外に身長や体重、スリーサイズなども表示される。
 それを勝手に…しかも女性に使おうとしたらそんな反応をされる筈だよね?

 「安心して下さい、そんな気は全くありません! ミーヤさんの様に見事なプロポーションならともかく、それに劣る貴女の体には何の興味もありません‼」
 《はぁ…》
 《ラーファ、彼にもう少し女性に対しての言い方を教えた方が良いわよ。》

 クルシェスラーファとシャンゼリオンは呆れた声を出しながら、シオンを指摘した。
 そして…その言葉に対して怒った聖女候補は、僕に対してホーリーランスを放って来た。
 僕の守護結界は、ホーリーランス位の攻撃ではビクともしないと思っていたが、聖女候補の放ったホーリーランスは僕の守護結界の障壁を破壊した後に地面に突き刺さった。
 そして聖女候補を見ると…明らかに怒りと殺意を僕に向けて言った。

 「殺す…絶対に殺す‼」
 「聖女候補の人が口にしては駄目な気がしますが…?」

 聖女候補は武器を構えて僕に斬り掛かって来た…が、ミーヤがその攻撃を防いで僕に言った。

 「私は大丈夫にゃ! 私よりもアンティとレグリーの元に向かうにゃ! それと…シオンが私に対してそういう目で見ていた事については、この戦いが終わったらじっくりと聞かせて貰うにゃよ!」
 
 僕は焦りながらミーヤさんにその場を任せて、アントワネットさんとレグリーさんの元に向かったのだった。
 アントワネットさんとレグリーさんの元に辿り着くと、2人はかなり劣勢だった。
 レグリーさんが大きな盾で2人の貴族令嬢たちの攻撃を防いでいると、アントワネットさんが魔法で攻撃をする…という攻撃をしていたが、アントワネットさんは攻撃魔法が…というよりも魔法自体があまり得意ではない。
 僕はアントワネットさんとレグリーさんの前に立つと、守護結界とマジックシールドを張ってから2人の貴族令嬢に拘束の魔法を使用して動きを封じた。
 その隙に僕はレグリーさんの回復に当たるのだった。

 「あの2人…結構やりますね。 髪の長い子の方は剣での攻撃、髪の短い子の方は魔法で援護…攻撃手段のあまりない私達にはかなり不利です。」
 「それに私には攻撃手段があまり無いからね。 ただ…」
 「ただ?」
 「あの2人…何処かで見た記憶があるんだけど?」
 「アントワネットさんもですか? 実は僕も何処かで見た記憶が…?」

 2人の服装や雰囲気からして、貴族令嬢には違いない筈…だけど、どこで見たのかが気にはなっていた。
 見た事あるとすれば貴族名鑑だとは思うけど…僕やアントワネットさんの記憶にあるという事は、かなり上位の貴族令嬢なのだろう。
 
 「僕も攻撃手段はありませんが、2人に加勢致します!」
 「気持ちはありがたいのですが、シオンさんが加わっても戦況はあまり変わらないと思います。」
 「貴方はザッシュの元に向かって、ここは私達で何とか喰い止めて見せるから!」
 「なら、支援魔法だけでも掛けておきます。 これなら先程よりは軽減出来ると思いますので…」

 僕は2人に支援魔法を掛けると、その場を離脱してザッシュさんの元に向かったのだった。
 すると、ザッシュさんはリュカさんからの攻撃でかなり苦戦をしいられていたのだった。
 僕はザッシュさんに支援魔法を放った。

 「なんだ? 急にザッシュの攻撃が重くなった…まさか魔剣と同調し始めたとか?」
 「どうしたリュカ! 先程までの勢いがなくなってきているぞ‼」

 リュカさんは僕の方を見て目が合った。
 そして杖をザッシュさんに向けている所を見て察したみたいだった。

 「厄介な魔法だな…そういえば、ザッシュだけじゃなかったんだっけ? ディスペル‼」
 
 リュカさんはザッシュさんに魔法解除の魔法を放った。
 するとザッシュさんの攻撃に勢いが衰え始めた。
 
 「僕の魔法が解除されるなんて…」
 「やっぱり、厄介なのはザッシュよりシオンの方か!」
 「何だと⁉ 俺がシオンより劣るとでも言いたいのか⁉」

 ザッシュさんの頭に血が上っているみたいで、攻撃にキレが無くなっていた。
 するとリュカさんが、ザッシュさんに対してさらに怒らせる様な発言をしたのだった。

 「ザッシュなんてシオンに支援魔法を掛けて貰ったり、魔剣さえなければただの雑魚にしか過ぎないよ。 まさか、ザッシュが僕より実力があるとか、強いと本気で思っていたのか?」
 「何だとリュカの癖に! シオン、俺は良いから他の者達のサポートに迎え!」
 
 チームのリーダーの命令は絶対だ!
 僕はザッシュさんの言葉通りに、もう1度…他の仲間達の様子を見に行ったのだった。
 だが、一通り仲間達の状況を見たが…手助けは必要なさそうに見えた。
 僕はザッシュさんの元に戻ると、ザッシュさんはリュカさんの攻撃に対して劣勢している感じだった。

 リュカさんは更なる速度の剣戟を喰らわせていくと、ザッシュさんは魔剣で攻撃を防いでいたが捌ききれなくなって魔剣を手放したのだった。
 そしてザッシュさんを纏っていた赤黒い鎧は解除されて、ザッシュさんは再び魔剣を拾おうとすると、リュカさんはそれを阻止する為にザッシュにソニックブームを喰らわせて魔剣から距離を離させた。
 そしてザッシュさんにトドメを刺そうと近付こうとすると、僕はリュカさんに魔法で拘束したのだった。

 「シオン…戻って来たのか! それに、これは闇魔法の闇鎖⁉」
 「嫌な予感がして戻って来たんだ。 ザッシュさん、今のうちに剣を!」
 「させるか!」

 リュカさんは闇鎖を解除した。
 すると僕は、闇鎖を解かれた事に驚きを隠せなかった。

 「何故? 僕の闇魔法を…」
 「シオン、君も闇魔法が使えたんだね?」
 「僕も…って事は、リュカさんも闇魔法を⁉」
 
 その一瞬を付いて、リュカさんはザッシュさんににソニックブームを喰らわせた。
 するとザッシュさんは吹っ飛ばされてから、吹っ飛ばされた時に地面に頭を強打して気絶したようだった。

 「ザッシュさん⁉」
 「これでザッシュは当分動けないな! これでシオンに集中出来る。」

 リュカさんはそう言って、僕に剣を向けて向かって来ていた。
 僕はリュカさんに拘束魔法や弱体魔法を放って行くが、リュカさんはそれらを悉く破壊して僕に近付いてきたのだった。
 そして…僕に攻撃が届く範囲まで近付くと、僕は覚悟を決めて剣が振り下ろされると思ったその時だった⁉

 《兄さん、やめて‼》
 《お前…クルシェスラーファか⁉》

 リュカさんはクルシェスラーファの声を聞いて、僕に振り下ろそうとした剣を止めた。
 
 《アトランティカ…クルシェスラーファって、まさか⁉》
 《あぁ、妹であり…お前の村のグランマと呼ばれるクリアベールが使っていた杖だ!》
 《クルシェスラーファ、どういう事? 兄さんって…⁉》
 
 僕とリュカさんは攻撃をやめた。
 そして2つの武器の話に耳を傾けた。

 《兄さん…魔剣アトランティカよ!》
 《さっきは別な場所で聖剣シャンゼリオンがいたり…どうなっているんだ⁉》
 《なるほど、シオンも念話が使えたのか! そしてグランマの杖が何故ここに⁉》
 《クルシェスラーファ、何故お前がこやつと契約をしている⁉》

 クルシェスラーファは、僕との出会いの話をし始めた。
 リュカさんも興味があったみたいで聞いてはいたが、武装を解除していた訳では無かった。

 《なるほど、事情は分かった! なら、何故ブラドノーヴァの気配があるのに奴を放っておいた⁉》
 《仕方ないでしょ! 兄さんや姉さんじゃあるまいし、私に奴を破壊出来るような力は無いわよ‼》
 《それに…魔剣を破壊されたら困るよ。 ザッシュさんの武器が無くなってしまうしね。》
 《シオン、以前に話したよな? 僕をサポータとしてチームに貢献したのに、ザッシュは必要ないと言って追い出した事を…》
 《リュカさんの事は気の毒だと思うけど、僕には初めて信頼をしてくれる人なんだよ、ザッシュさんは!》
 《ザッシュはいつかシオンを見限る時が来るかもしれないんだよ!》
 《でも今は頼られている。 そんなザッシュさんを裏切る様な事は出来ない‼》
 《だがな…ザッシュという奴が使用している剣が普通の魔剣ならオレも文句は言わん! ブラドノーヴァは本当に危険で厄介な奴なんだ‼》
 《それでもザッシュさんを困らせる様な事をするなら、僕は…》

 僕とリュカさんの意見は対立した。
 リュカさんはアトランティカの峰で僕を攻撃して行動不能にしてからクルシェスラーファを手放させると、ザッシュさんの元に縮地を使って移動してからザッシュさんの喉元に剣を当てた。
 
 「ザッシュには悪いが、お前が僕に剣を向けた…その責任を取らさせて載らう!」
 「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 リュカさんがザッシュさんにトドメを刺そうとして剣を振り下ろそうとした。
 僕はクルシェスラーファを引き寄せてから、リュカさんを魔力を放出してザッシュさんから遠ざけた。

 「リュカさん…僕は貴方とは仲良く出来ると思っていた。 だけど、ザッシュさんを手に掛けると言うなら、僕は貴方を敵とみなして攻撃をする‼」
 「それは良いけど、君には攻撃手段がないじゃないか? それで僕をどうやって止めるんだ?」
 
 すると僕は激しい怒りが支配して、体中から魔力が吹き荒れた。
 そしてツインヘッドドラゴンの時と同様に、僕は覚醒状態になっていた。
 僕はリュカさんにシャイニングランスを放つと、リュカさんの体の数か所を光の槍で貫いた。

 《まさか…シオンは覚醒を使えるのか⁉》
 《シオンが覚醒を使用した事により、クルシェスラーファの能力も開放されたみたいだな? これでザッシュが目を醒ましてブラドノーヴァを手にすると更に厄介な事になるぞ‼》
 
 リュカさんは光の槍を抜いて回復魔法を掛けていた。
 僕は回復魔法に意識を向けているリュカさんの隙をついて素早く移動した。

 「リュカさん…これで形勢は逆転しました。 僕は貴方の命を奪いたくはありませんので、降参をして戴けませんか?」
 「なら、さっさとトドメを刺したらどうなんだ?」
 「トドメを刺す事だったらいつでも出来ますよ。 今の僕はリュカさんより強いですから…」
 「覚醒の状態になって強気に出てきたね。」
 「えぇ…これでリュカさんには勝ち目がありませんので、降参をしてくれるとありがたいのですが…」
 「はぁ…闇魔法の時もそうだったけど、まさか覚醒が使えるのが自分だけだと思ってないかな?」
 「ま…まさか⁉ リュカさんも覚醒を⁉」
 「見せてあげるよ…僕の覚醒をね‼」

 リュカさんから強大な魔力が吹き荒れて行った。
 そして体中が光に包まれると、僕と同じ状態の覚醒の状態になった。

 「ま…まさか、そんな事って…⁉」
 「今迄、優位に立っていた筈が覆されるという気分はどうだい?」
 
 リュカさんとの差が縮んだと思っていたのに、これでまた差が開いてしまったかもしれなかった。
 だけど僕にはクルシェスラーファがある。
 そして覚醒状態になれば、クルシェスラーファの固有魔法が使える様になる!
 僕とリュカさんは宙に浮かぶと構えた。

 そして僕とリュカさんの…覚醒同士の戦いが始まろうとしてたのだった。
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