31 / 36
第二章
第十一話 出会い…(ある者との出会いです。)
しおりを挟む
【ファークラウド大陸】
この大陸は、他の大陸と違って非常に変わった大陸である。
最北端と最南端が陸路で繋がっているが、それ以外は大きな湖によって阻まれているのである。
中間地点のマウロ港とセルヴィナの街の間に定期船が設けられており、物資の運搬や乗客はその船を利用しているという物である。
多少割高なのが玉にキズだが、最北端や最南端から回り込む事に比べれば安く済むのである。
ザッシュ達は、そのマウロ港を目指して馬車を進めていた。
……の筈だったんだけど?
「う~~~ん…足りないなぁ?」
「どうしたんだシオン?」
レグリーが馬車を操作している間、馬車の中ではシオンがテーブルの上に薬品や素材を並べて悩んでいた。
【漆黒の残響】の戦い方は、主にシオンがバフを掛けて戦闘を行うが、その効果も範囲指定があり…それを越えるとバフの効果も無くなるのである。
グレンやミーヤの場合は、その範囲を越えて戦闘を行う場合が多々あり、その為にポーションや強化薬等を作って渡していた。
だが、ここの所…その消費量も割と多くて薬品が足りないのであった。
「ポーションは何とかなるのですが、強化薬を調合する薬草が足りなくてですね…」
「強化薬か…最悪の場合は、店で購入するというのはどうだ?」
「ザッシュさんは、店で購入した強化薬を飲みたいんですか? あんな…常温で3日間放置した腐った水の様な臭いを放つ薬を…」
「うっ……」
この世界の強化薬は、効果はそれ程高くはない。
飲まないよりも飲んだ方が強化は出来るのだが、臭いと味が凄まじく…出来る事なら飲みたくはないが、戦闘に勝利する為には仕方なく服用するという物なのだ。
シオンの場合は、その味や臭いを緩和させて作っている為にその様な事は無いのだが…
「確かにシオンの作った強化薬の味を知ってしまうと、店での強化薬には手を出したくはないな。 だが、この大陸で素材を集める事は出来るのか?」
「目的地とは別方向になりますが…この大陸には研究者や魔法研究者が作った都と称される魔都ウィンデルがありますので、そこでなら調達は可能だと思います。」
シオンは薬品を片付けてから地図を広げた。
そしてザッシュに現在地と目指す場所の説明をした。
「なるほど…確かに、目的地とはそれているな。 だが、迂回して行けば問題はないぞ!」
「いえ、このままマウロ港を目指しましょう。 魔都ウィンデルにはマウロから浮遊魔法で向かいますので…」
「なるほど、一度マウロ港に行けば…シオンなら転移魔法で来れるという訳か!」
「そういう事です。 まぁその間…少しの間だけマウロ港で足止めという形になりますが…」
「そういう事なら仕方がないさ。 マウロ港には温泉施設があるという話だしな、少しの間だけゆっくりとするさ。」
そんな話をしていると、馬車が止まった。
窓からレグリーに確認をした。
「魔物が現れました…が、ウォーリアがあっという間に蹴散らしました。」
「本当に頼もしい位に優秀な馬だな…」
ザッシュもウォーリアの強さは認めていた。
僕とレグリーは馬車から降りて、ウォーリアが仕留めたフォレストリザードを解体してから素材と食材を入手した。
「おい、そいつの討伐証明部位も回収して置いてくれ!」
「え? サンデリアの港街でギルドカード更新の時に討伐クエストを請けたんですか?」
「あぁ、マウロ港を目指す間に出没するという話だったからな…受けて置いたのだが。」
「ですが、大陸のこちら側には冒険者ギルドはサンデリアしかありませんよ? また戻るんですか?」
「マウロ港に冒険者ギルドは無いのか?」
「サンデリア冒険者ギルド支部では、魔都ウィンデルには冒険者ギルドは無く、サンデリアにしかありません。」
「だからか…運搬込みで報酬が割高だったのか…」
まぁ、いざとなったら転移魔法でサンデリアに戻ればいいので問題はないのだが…
それから2週間、魔物を討伐しながら旅は順調に進んで行き…マウロ港に着いたのであった。
【マウロ港】
港と名が付いていはいるが、メインは村である。
観光名所にもなっており、どの宿にも温泉が引いてあり…公衆浴場に関しては混浴になっている場所もある。
部屋の温泉よりも、公衆浴場の方が料金が安く…予算をケチりたい者は公衆浴場をしようするのだが、混浴の為に入る時は自己責任なのである。
それ以外にも、温泉には様々な効能があり…温泉目当てで入りに来る者もいる。
「マウロ港に着いたが…シオンはすぐに出発するのか?」
「そうですね、すぐに立とうと思います!」
「なら、馬車は収納魔法に入れて…ウォーリアに乗って行ったら良いんじゃないか? シオンだけだと攻撃手段ないしな…」
「そうですねぇ…魔都ウィンデルまで何日掛かるか解りませんし、途中の宿代わりに馬車は使えますし、何よりウォーリアが用心棒だと心強いですしね!」
《ウォーリア、頼める?》
《任せろ主よ! 久々に重い馬車から開放されるんだ、風の様に駆け抜けて見せるさ!》
《もし何なら少し休んでから行く? ここには魔物用の温泉もあるけど?》
《必要ない! どうせ、ここに戻って来るんだろう? なら、その時にオンセンとやらに浸かるとするさ!》
「ウォーリアも準備が万端な用なので、今から行ってきます!」
「気を付けろよ!」
僕は馬車を収納魔法に入れてから、ウォーリアの背中に跨ると出発した。
ウォーリアには予め強化魔法を掛けておいた。
それで何が襲ってきても無双出来る程の強化を施してある。
動きは本当に風の様に早かった。
《主よ! 主は軽いな…振り落とされる事がないようにしろよ!》
《大丈夫だよ、馬の扱いに離れているから…と、目の前にオークの群れが…》
ウォーリアはスキルで鉄の様に皮膚が硬くなった。
その状態でオークの群れに突っ込むと、まるで大砲から発射された砲弾の様にオークの群れを吹き飛ばして行った。
《何か言ったか、主よ?》
《いや、改めてウォーリアは凄いね!》
ウォーリアは褒められて嬉しかったのか、出現する魔物を次々と吹っ飛ばして進んで行った。
………とあるチームは?………
俺達のチームは、討伐クエストでブラッディーバルガスというオーガの変異種の調査だった。
だがそいつと偶然に出くわして、俺以外の仲間がそいつにやられてしまった。
まだ息はあるが、危険な状態だ!
そして最悪な事に、仲間を守れるのは今は俺1人だった。
「俺達のチームの冒険もここで終わりか…」
ブラッディーバルガスは腕を振り上げてから、俺目掛けて腕を振り下ろしてきた。
俺は死を覚悟した…その時だった。
山の様にデカい馬がブラッディーバルガスを吹っ飛ばしたのだ。
更にその背に乗っていた者が馬から降りて、俺達の元に駆け寄ってくれた。
「ウォーリア! 倒しちゃって!」
「グワァァァァァァァーーー!!!」
背に乗っていた者が馬に命令すると、馬はブラッディーバルガスと戦い始めた。
「皆さん、大丈夫ですか?」
「俺は平気ですが、仲間が…」
「エリアヒール!」
その者…少年らしき人は、範囲回復魔法を展開した。
すると、仲間達の瀕死だった怪我を完全に回復してくれた。
巨大な馬もブラッディーバルガスを倒していた。
巨大な馬は、回復魔法をしてくれた少年の元に来ると、頭を下げて擦り寄っていた。
少年は巨大な馬の頭を優しく撫でていた。
少年が何者かは解らないが…これだけ大型の魔獣を獣魔にしているから、余程の方なのだろう。
「仲間を助けて貰ってありがとうございます!」
「いえいえ、同じ冒険者何ですから…困っていたら助けるのは当然です!」
「お礼をしたいのですが…いま持ち合わせが無くて。」
「お礼は別に良いですよ! その代わりと言っては何ですが、道を尋ねたいのですが…」
「道ですか? 俺にわかる範囲でなら…」
「魔都ウィンデルの方角は、この道を真っ直ぐですか?」
「いえ、この森を抜けたら南東の方角です。」
「ありがとうございます!」
そう言って少年は、巨大な馬に跨った。
「お礼の代わりという訳ではありませんが…ブラッディーバルガスを代わりに譲ります!」
「これ、懸賞金魔物ですよね? 別に不要ですよ、お礼なら道案内でチャラです!」
「でしたら、お名前だけでも聞かせて貰えませんか?」
「僕はシオン・ノートって言います。 この大陸に来たばかりの冒険者ですよ。」
そういうと少年が乗った巨大な馬は、走り去って行った。
俺と仲間達は、その背中に深々とお辞儀をした。
「あ、シオン・ノートって…エルドナート大陸の英雄シオン様だ!」
「え、今の御方がか? ツインヘッドドラゴンの討伐や魔王の配下を倒したっていう…」
「さすが英雄ですね…あの巨大な魔獣を獣魔にしているだけはあります。」
俺達は、再び去って行った方角に向かって深々と頭を下げた。
いつかまた出会えたら…今度こそお礼をと。
………シオン視点………
「まさか目的地よりズレた場所を走っていたとは…」
《やはり、森を通らずに先程の道を真っ直ぐの方が正解だったのかもしれぬな!》
「でもそのお陰で人助けも出来たし、良しとしよう!」
《オレも久々に骨のある奴と戦えたしな!》
僕等は森を抜けると、道を修正してから魔都ウィンデルを目指して行った。
そして魔都ウィンデルの影が見える所まで来ると、その日はそこでキャンプをした。
翌日、ウォーリアを送還してから僕は魔都ウィンデルの門を潜った。
【魔都ウィンデル】
街の中心に大きな世界樹があり、それを囲む様に街が出来ている場所。
魔術や魔法の研究機関があり、バストゥーグレシア大陸の魔法学院の卒業生の大半の魔法研究者がこの国にやってくるという。
他にも魔道具や錬金術などの機関もあり、魔導と結びつく物は大体研究されているという。
街の外でも世界樹から溢れるマナのお陰で魔法植物が生えてはいるのだが、同時に魔物もマナの影響を受けて狂暴化しているのもいる。
そう言った輩は、この街の冒険者が討伐したり巡回をしているので被害はあまりないのだが…?
僕は道具屋に入って、薬草を見ていたのだが…?
「た…高い!」
いや、買おうと思えば買えない値段ではないのだが…
その金額があまりにも法外で、金を払ってまで手に入れたいとは思わなかった。
僕は薬草の前で考えていると、店員から声が掛かって来た。
「先程も外から来た冒険者の方が同じ事を言っておりましたので、付近の採取出来る場所を教えました。 良かったらそちらで採取したら如何ですか?」
「その場所は、無料ですか?」
「はい、採取に関しては問題ありません…が、取り過ぎない量でお願いしますね。」
僕は、魔都ウィンデルの周辺の森に来た。
確かにここには様々な薬草や希少種が数多くあった。
僕はそれを採取していると、1つ気付いた事がある。
それは…魔物の姿を全く見ないのだ。
「そういえば、さっき店員さんがこの森に入って行ったと言っていたけど…?」
僕は森を進んで行くと、ある魔道士がたくさんの魔物に囲まれていた。
その魔道士が目の前の敵に対応していて、背後まで対応出来ていなかった。
「危ない! 守護方陣!」
僕は魔道士の背後に背中合わせに立つと声を掛けた。
魔道士の少年をみると、僕と年が近い感じの子だった。
「守りは任せて! 君は攻撃に集中して!」
「誰だか済まないが、敵を倒したらお礼をするよ!」
そして、守りを気にせずに魔道士の少年は…片っ端から無属性魔法を撃ち込んで行き、全ての魔物を倒す事が出来たのだった。
「ありがとう助かったよ! 実はさ、この森の魔力草は魔力回復ポーションを作るのに最適だと聞かされたんだけど、まさかここまで多くの敵に囲まれるとは思わなくてさ。」
「僕もここの魔力草で魔力回復薬を作りたくて採取をしに来たんだけど…」
それから小1時間ほど、僕と少年は近くの魔力草を採取した。
そしてまた合流してから2人で魔法薬について話し合った。
「店先で売っているポーションの類は、不味いからねぇ…僕はトミンの葉で飲みやすさをアレンジしたんだよ。」
「トミンの葉か…僕はモレンの実を使っていた。 魔力草は、物によるけど果実を混ぜると威力が落ちる事もあるからね。」
「そうなんだよね…僕も色々な果実で試してみたんだけど、トミンの葉以外に思い付かなかったけど、まさかモレンの実でも分解されないとは思わなかった。」
僕達は薬品のレシピノートを見せ合いながら熱心に話し合った。
「この知識や博学さからすると、君もサポーターなのかい?」
「ということは、君もか…」
「良いチームに入れると優遇されるんだけど、冒険者になりたてで最初に入ったチームが悲惨でさぁ、サポーターの出来損ないとか役立たずとか散々言われた挙句、新しいメンバーが加入するからチームから出て行けって言われたり、少ない報酬でやりくりしているのに退職金は払ってくれないし、散々だったよ。」
「うわ、それはつらいねぇ…僕の場合は、ダンジョンで足の腱を斬られてモンパレの囮に置いてかれたよ。 まぁ、その後に魔法が使える事が出来て対処をして何とか助かったんだけどね。」
「うわ、マジか⁉ それにしてもさぁ…」
「僕も思っていたんだけど…」
「「君の眼も髪も黒いよね?」」
僕等の声はハモった。
それから2人で笑い出した。
「この世界で黒髪に黒眼って僕だけだと思っていたよ。」
「僕も同じ様な色の人に会うのは初めてだよ。」
「ということはさ、君も何か呪いの類があるでしょ?」
「それが解るという事は、君もあるんだね…」
「僕のは魔法を使い過ぎると呪いで死ぬという効果がある。 最近では上手く発散出来るようになったから死ぬ事は無くなったが…」
「あ、僕のはね…って御免! そろそろチームメンバーの元に戻らないと!」
「そうだね、長居してしまった!」
僕と魔道士の少年は握手をして自己紹介をした。
「僕の名前は、リュカ・ハーサフェイだ。」
「僕の名前は、シオン・ノートだよ。」
「「じゃあ、またどこかで会おう!」」
僕はシオンにお別れの挨拶をすると、シオンは手を振ってくれた。
「転移魔法・カナイ村!」
「転移魔法・マウロ港!」
僕等は同時に転移した。
マウロ港に着くと、ザッシュ達に合流してから温泉にのんびり浸かった。
そして名物の食事をしてからベッドに横になると、今日出逢ったリュカという人物の事を思い出した。
「彼が四の魔王を倒したという英雄か…ザッシュさんは気に入らないという話だったけど、僕は非常に好感が持てたな。 また会いたいね!」
こうして僕は、久々に馬車以外のベッドで眠りに就いた。
そしてシオンは、近々…再び出会う事になるのだった。
この大陸は、他の大陸と違って非常に変わった大陸である。
最北端と最南端が陸路で繋がっているが、それ以外は大きな湖によって阻まれているのである。
中間地点のマウロ港とセルヴィナの街の間に定期船が設けられており、物資の運搬や乗客はその船を利用しているという物である。
多少割高なのが玉にキズだが、最北端や最南端から回り込む事に比べれば安く済むのである。
ザッシュ達は、そのマウロ港を目指して馬車を進めていた。
……の筈だったんだけど?
「う~~~ん…足りないなぁ?」
「どうしたんだシオン?」
レグリーが馬車を操作している間、馬車の中ではシオンがテーブルの上に薬品や素材を並べて悩んでいた。
【漆黒の残響】の戦い方は、主にシオンがバフを掛けて戦闘を行うが、その効果も範囲指定があり…それを越えるとバフの効果も無くなるのである。
グレンやミーヤの場合は、その範囲を越えて戦闘を行う場合が多々あり、その為にポーションや強化薬等を作って渡していた。
だが、ここの所…その消費量も割と多くて薬品が足りないのであった。
「ポーションは何とかなるのですが、強化薬を調合する薬草が足りなくてですね…」
「強化薬か…最悪の場合は、店で購入するというのはどうだ?」
「ザッシュさんは、店で購入した強化薬を飲みたいんですか? あんな…常温で3日間放置した腐った水の様な臭いを放つ薬を…」
「うっ……」
この世界の強化薬は、効果はそれ程高くはない。
飲まないよりも飲んだ方が強化は出来るのだが、臭いと味が凄まじく…出来る事なら飲みたくはないが、戦闘に勝利する為には仕方なく服用するという物なのだ。
シオンの場合は、その味や臭いを緩和させて作っている為にその様な事は無いのだが…
「確かにシオンの作った強化薬の味を知ってしまうと、店での強化薬には手を出したくはないな。 だが、この大陸で素材を集める事は出来るのか?」
「目的地とは別方向になりますが…この大陸には研究者や魔法研究者が作った都と称される魔都ウィンデルがありますので、そこでなら調達は可能だと思います。」
シオンは薬品を片付けてから地図を広げた。
そしてザッシュに現在地と目指す場所の説明をした。
「なるほど…確かに、目的地とはそれているな。 だが、迂回して行けば問題はないぞ!」
「いえ、このままマウロ港を目指しましょう。 魔都ウィンデルにはマウロから浮遊魔法で向かいますので…」
「なるほど、一度マウロ港に行けば…シオンなら転移魔法で来れるという訳か!」
「そういう事です。 まぁその間…少しの間だけマウロ港で足止めという形になりますが…」
「そういう事なら仕方がないさ。 マウロ港には温泉施設があるという話だしな、少しの間だけゆっくりとするさ。」
そんな話をしていると、馬車が止まった。
窓からレグリーに確認をした。
「魔物が現れました…が、ウォーリアがあっという間に蹴散らしました。」
「本当に頼もしい位に優秀な馬だな…」
ザッシュもウォーリアの強さは認めていた。
僕とレグリーは馬車から降りて、ウォーリアが仕留めたフォレストリザードを解体してから素材と食材を入手した。
「おい、そいつの討伐証明部位も回収して置いてくれ!」
「え? サンデリアの港街でギルドカード更新の時に討伐クエストを請けたんですか?」
「あぁ、マウロ港を目指す間に出没するという話だったからな…受けて置いたのだが。」
「ですが、大陸のこちら側には冒険者ギルドはサンデリアしかありませんよ? また戻るんですか?」
「マウロ港に冒険者ギルドは無いのか?」
「サンデリア冒険者ギルド支部では、魔都ウィンデルには冒険者ギルドは無く、サンデリアにしかありません。」
「だからか…運搬込みで報酬が割高だったのか…」
まぁ、いざとなったら転移魔法でサンデリアに戻ればいいので問題はないのだが…
それから2週間、魔物を討伐しながら旅は順調に進んで行き…マウロ港に着いたのであった。
【マウロ港】
港と名が付いていはいるが、メインは村である。
観光名所にもなっており、どの宿にも温泉が引いてあり…公衆浴場に関しては混浴になっている場所もある。
部屋の温泉よりも、公衆浴場の方が料金が安く…予算をケチりたい者は公衆浴場をしようするのだが、混浴の為に入る時は自己責任なのである。
それ以外にも、温泉には様々な効能があり…温泉目当てで入りに来る者もいる。
「マウロ港に着いたが…シオンはすぐに出発するのか?」
「そうですね、すぐに立とうと思います!」
「なら、馬車は収納魔法に入れて…ウォーリアに乗って行ったら良いんじゃないか? シオンだけだと攻撃手段ないしな…」
「そうですねぇ…魔都ウィンデルまで何日掛かるか解りませんし、途中の宿代わりに馬車は使えますし、何よりウォーリアが用心棒だと心強いですしね!」
《ウォーリア、頼める?》
《任せろ主よ! 久々に重い馬車から開放されるんだ、風の様に駆け抜けて見せるさ!》
《もし何なら少し休んでから行く? ここには魔物用の温泉もあるけど?》
《必要ない! どうせ、ここに戻って来るんだろう? なら、その時にオンセンとやらに浸かるとするさ!》
「ウォーリアも準備が万端な用なので、今から行ってきます!」
「気を付けろよ!」
僕は馬車を収納魔法に入れてから、ウォーリアの背中に跨ると出発した。
ウォーリアには予め強化魔法を掛けておいた。
それで何が襲ってきても無双出来る程の強化を施してある。
動きは本当に風の様に早かった。
《主よ! 主は軽いな…振り落とされる事がないようにしろよ!》
《大丈夫だよ、馬の扱いに離れているから…と、目の前にオークの群れが…》
ウォーリアはスキルで鉄の様に皮膚が硬くなった。
その状態でオークの群れに突っ込むと、まるで大砲から発射された砲弾の様にオークの群れを吹き飛ばして行った。
《何か言ったか、主よ?》
《いや、改めてウォーリアは凄いね!》
ウォーリアは褒められて嬉しかったのか、出現する魔物を次々と吹っ飛ばして進んで行った。
………とあるチームは?………
俺達のチームは、討伐クエストでブラッディーバルガスというオーガの変異種の調査だった。
だがそいつと偶然に出くわして、俺以外の仲間がそいつにやられてしまった。
まだ息はあるが、危険な状態だ!
そして最悪な事に、仲間を守れるのは今は俺1人だった。
「俺達のチームの冒険もここで終わりか…」
ブラッディーバルガスは腕を振り上げてから、俺目掛けて腕を振り下ろしてきた。
俺は死を覚悟した…その時だった。
山の様にデカい馬がブラッディーバルガスを吹っ飛ばしたのだ。
更にその背に乗っていた者が馬から降りて、俺達の元に駆け寄ってくれた。
「ウォーリア! 倒しちゃって!」
「グワァァァァァァァーーー!!!」
背に乗っていた者が馬に命令すると、馬はブラッディーバルガスと戦い始めた。
「皆さん、大丈夫ですか?」
「俺は平気ですが、仲間が…」
「エリアヒール!」
その者…少年らしき人は、範囲回復魔法を展開した。
すると、仲間達の瀕死だった怪我を完全に回復してくれた。
巨大な馬もブラッディーバルガスを倒していた。
巨大な馬は、回復魔法をしてくれた少年の元に来ると、頭を下げて擦り寄っていた。
少年は巨大な馬の頭を優しく撫でていた。
少年が何者かは解らないが…これだけ大型の魔獣を獣魔にしているから、余程の方なのだろう。
「仲間を助けて貰ってありがとうございます!」
「いえいえ、同じ冒険者何ですから…困っていたら助けるのは当然です!」
「お礼をしたいのですが…いま持ち合わせが無くて。」
「お礼は別に良いですよ! その代わりと言っては何ですが、道を尋ねたいのですが…」
「道ですか? 俺にわかる範囲でなら…」
「魔都ウィンデルの方角は、この道を真っ直ぐですか?」
「いえ、この森を抜けたら南東の方角です。」
「ありがとうございます!」
そう言って少年は、巨大な馬に跨った。
「お礼の代わりという訳ではありませんが…ブラッディーバルガスを代わりに譲ります!」
「これ、懸賞金魔物ですよね? 別に不要ですよ、お礼なら道案内でチャラです!」
「でしたら、お名前だけでも聞かせて貰えませんか?」
「僕はシオン・ノートって言います。 この大陸に来たばかりの冒険者ですよ。」
そういうと少年が乗った巨大な馬は、走り去って行った。
俺と仲間達は、その背中に深々とお辞儀をした。
「あ、シオン・ノートって…エルドナート大陸の英雄シオン様だ!」
「え、今の御方がか? ツインヘッドドラゴンの討伐や魔王の配下を倒したっていう…」
「さすが英雄ですね…あの巨大な魔獣を獣魔にしているだけはあります。」
俺達は、再び去って行った方角に向かって深々と頭を下げた。
いつかまた出会えたら…今度こそお礼をと。
………シオン視点………
「まさか目的地よりズレた場所を走っていたとは…」
《やはり、森を通らずに先程の道を真っ直ぐの方が正解だったのかもしれぬな!》
「でもそのお陰で人助けも出来たし、良しとしよう!」
《オレも久々に骨のある奴と戦えたしな!》
僕等は森を抜けると、道を修正してから魔都ウィンデルを目指して行った。
そして魔都ウィンデルの影が見える所まで来ると、その日はそこでキャンプをした。
翌日、ウォーリアを送還してから僕は魔都ウィンデルの門を潜った。
【魔都ウィンデル】
街の中心に大きな世界樹があり、それを囲む様に街が出来ている場所。
魔術や魔法の研究機関があり、バストゥーグレシア大陸の魔法学院の卒業生の大半の魔法研究者がこの国にやってくるという。
他にも魔道具や錬金術などの機関もあり、魔導と結びつく物は大体研究されているという。
街の外でも世界樹から溢れるマナのお陰で魔法植物が生えてはいるのだが、同時に魔物もマナの影響を受けて狂暴化しているのもいる。
そう言った輩は、この街の冒険者が討伐したり巡回をしているので被害はあまりないのだが…?
僕は道具屋に入って、薬草を見ていたのだが…?
「た…高い!」
いや、買おうと思えば買えない値段ではないのだが…
その金額があまりにも法外で、金を払ってまで手に入れたいとは思わなかった。
僕は薬草の前で考えていると、店員から声が掛かって来た。
「先程も外から来た冒険者の方が同じ事を言っておりましたので、付近の採取出来る場所を教えました。 良かったらそちらで採取したら如何ですか?」
「その場所は、無料ですか?」
「はい、採取に関しては問題ありません…が、取り過ぎない量でお願いしますね。」
僕は、魔都ウィンデルの周辺の森に来た。
確かにここには様々な薬草や希少種が数多くあった。
僕はそれを採取していると、1つ気付いた事がある。
それは…魔物の姿を全く見ないのだ。
「そういえば、さっき店員さんがこの森に入って行ったと言っていたけど…?」
僕は森を進んで行くと、ある魔道士がたくさんの魔物に囲まれていた。
その魔道士が目の前の敵に対応していて、背後まで対応出来ていなかった。
「危ない! 守護方陣!」
僕は魔道士の背後に背中合わせに立つと声を掛けた。
魔道士の少年をみると、僕と年が近い感じの子だった。
「守りは任せて! 君は攻撃に集中して!」
「誰だか済まないが、敵を倒したらお礼をするよ!」
そして、守りを気にせずに魔道士の少年は…片っ端から無属性魔法を撃ち込んで行き、全ての魔物を倒す事が出来たのだった。
「ありがとう助かったよ! 実はさ、この森の魔力草は魔力回復ポーションを作るのに最適だと聞かされたんだけど、まさかここまで多くの敵に囲まれるとは思わなくてさ。」
「僕もここの魔力草で魔力回復薬を作りたくて採取をしに来たんだけど…」
それから小1時間ほど、僕と少年は近くの魔力草を採取した。
そしてまた合流してから2人で魔法薬について話し合った。
「店先で売っているポーションの類は、不味いからねぇ…僕はトミンの葉で飲みやすさをアレンジしたんだよ。」
「トミンの葉か…僕はモレンの実を使っていた。 魔力草は、物によるけど果実を混ぜると威力が落ちる事もあるからね。」
「そうなんだよね…僕も色々な果実で試してみたんだけど、トミンの葉以外に思い付かなかったけど、まさかモレンの実でも分解されないとは思わなかった。」
僕達は薬品のレシピノートを見せ合いながら熱心に話し合った。
「この知識や博学さからすると、君もサポーターなのかい?」
「ということは、君もか…」
「良いチームに入れると優遇されるんだけど、冒険者になりたてで最初に入ったチームが悲惨でさぁ、サポーターの出来損ないとか役立たずとか散々言われた挙句、新しいメンバーが加入するからチームから出て行けって言われたり、少ない報酬でやりくりしているのに退職金は払ってくれないし、散々だったよ。」
「うわ、それはつらいねぇ…僕の場合は、ダンジョンで足の腱を斬られてモンパレの囮に置いてかれたよ。 まぁ、その後に魔法が使える事が出来て対処をして何とか助かったんだけどね。」
「うわ、マジか⁉ それにしてもさぁ…」
「僕も思っていたんだけど…」
「「君の眼も髪も黒いよね?」」
僕等の声はハモった。
それから2人で笑い出した。
「この世界で黒髪に黒眼って僕だけだと思っていたよ。」
「僕も同じ様な色の人に会うのは初めてだよ。」
「ということはさ、君も何か呪いの類があるでしょ?」
「それが解るという事は、君もあるんだね…」
「僕のは魔法を使い過ぎると呪いで死ぬという効果がある。 最近では上手く発散出来るようになったから死ぬ事は無くなったが…」
「あ、僕のはね…って御免! そろそろチームメンバーの元に戻らないと!」
「そうだね、長居してしまった!」
僕と魔道士の少年は握手をして自己紹介をした。
「僕の名前は、リュカ・ハーサフェイだ。」
「僕の名前は、シオン・ノートだよ。」
「「じゃあ、またどこかで会おう!」」
僕はシオンにお別れの挨拶をすると、シオンは手を振ってくれた。
「転移魔法・カナイ村!」
「転移魔法・マウロ港!」
僕等は同時に転移した。
マウロ港に着くと、ザッシュ達に合流してから温泉にのんびり浸かった。
そして名物の食事をしてからベッドに横になると、今日出逢ったリュカという人物の事を思い出した。
「彼が四の魔王を倒したという英雄か…ザッシュさんは気に入らないという話だったけど、僕は非常に好感が持てたな。 また会いたいね!」
こうして僕は、久々に馬車以外のベッドで眠りに就いた。
そしてシオンは、近々…再び出会う事になるのだった。
0
お気に入りに追加
1,281
あなたにおすすめの小説
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
追放シーフの成り上がり
白銀六花
ファンタジー
王都のギルドでSS級まで上り詰めた冒険者パーティー【オリオン】の一員として日々活躍するディーノ。
前衛のシーフとしてモンスターを翻弄し、回避しながらダメージを蓄積させていき、最後はパーティー全員でトドメを刺す。
これがディーノの所属するオリオンの戦い方だ。
ところが、SS級モンスター相手に命がけで戦うディーノに対し、ほぼ無傷で戦闘を終えるパーティーメンバー。
ディーノのスキル【ギフト】によってパーティーメンバーのステータスを上昇させ、パーティー内でも誰よりも戦闘に貢献していたはずなのに……
「お前、俺達の実力についてこれなくなってるんじゃねぇの?」とパーティーを追放される。
ディーノを追放し、新たな仲間とパーティーを再結成した元仲間達。
新生パーティー【ブレイブ】でクエストに出るも、以前とは違い命がけの戦闘を繰り広げ、クエストには失敗を繰り返す。
理由もわからず怒りに震え、新入りを役立たずと怒鳴りちらす元仲間達。
そしてソロの冒険者として活動し始めるとディーノは、自分のスキルを見直す事となり、S級冒険者として活躍していく事となる。
ディーノもまさか、パーティーに所属していた事で弱くなっていたなどと気付く事もなかったのだ。
それと同じく、自分がパーティーに所属していた事で仲間を弱いままにしてしまった事にも気付いてしまう。
自由気ままなソロ冒険者生活を楽しむディーノ。
そこに元仲間が会いに来て「戻って来い」?
戻る気などさらさら無いディーノはあっさりと断り、一人自由な生活を……と、思えば何故かブレイブの新人が頼って来た。
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
Sランク冒険者の受付嬢
おすし
ファンタジー
王都の中心街にある冒険者ギルド《ラウト・ハーヴ》は、王国最大のギルドで登録冒険者数も依頼数もNo.1と実績のあるギルドだ。
だがそんなギルドには1つの噂があった。それは、『あのギルドにはとてつもなく強い受付嬢』がいる、と。
そんな噂を耳にしてギルドに行けば、受付には1人の綺麗な銀髪をもつ受付嬢がいてー。
「こんにちは、ご用件は何でしょうか?」
その受付嬢は、今日もギルドで静かに仕事をこなしているようです。
これは、最強冒険者でもあるギルドの受付嬢の物語。
※ほのぼので、日常:バトル=2:1くらいにするつもりです。
※前のやつの改訂版です
※一章あたり約10話です。文字数は1話につき1500〜2500くらい。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる