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第二章

第八話 ダレオリア港(買い物と面倒事)

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 僕達はダレオリア港に着いた。
 すると、チームメンバーは…馬車から一斉に飛び出して酒場に向かって行った。
 まぁ、ベイルードの街ではゆっくり出来なかったし、グラットの街でも緊張は解けない状況だし、旅の間中は禁酒生活だったから酒が飲みたかったのだろう。
 僕はお酒は飲めるけど、美味しさが解らない。
 料理に使う事はあっても、飲む事はしないし楽しみが解らないからだ。
 僕は馬車の…ウォーリアを撫でながら今後をどうするか、クルシェスラーファに相談した。

 《馬車は収納魔法に収まるとは思うけど、ウォーリアはどうしたら良いだろう?》
 《獣魔契約をしているのなら、獣魔送還で収納出来て…獣魔召喚で呼び出せるわよ!》
 《獣魔送還している場合は、ウォーリアはどうしているの?》
 《一説では送還された獣魔は、召喚主の体内に収納されて眠りに就いているという話だけど…私の時代には無かったから詳細は良く解らないの。》
 
 なるほど…そうすればウォーリアとここで別れる事は無くなるな。
 最悪はここで放して…とも考えていたけど、これでまだまだ一緒に冒険が出来る!

 《ウォーリア、これから船旅になるんだけど…船にウォーリアを乗せるスペースが無いから送還して僕の体内で眠る事になるんだけど良いかな?》
 《問題はない! 全ては主人の命令なら、オレは喜んで従うぞ! ただし海を渡ったらすぐに呼び出してくれよ、ずっと眠っているのは性に合わないからな!》
 《安心して! 大陸を渡ったら、まずは大暴れしよう!》
 《では、またな! 主人よ!》

 僕はウォーリアに送還した。
 すると、体内に入り込んだウォーリアを感じた。
 そして馬車を収納魔法に入れてから、僕はダレオリア港の店で買い物をする為に歩き回った。

 【ダレオリア港】
 この大陸の唯一の港である。
 この大陸は、岩礁や暗礁が数多くあり…この場所にしか港が作れなかったので、この港を拠点に様々な貿易が行われている。
 港といっても、見た感じは大きな街という感じなので、交易によって様々な珍しい物が置いてあるのである。

 僕は最初に本屋に寄った。
 地図を購入しようと思ったからだった。
 地図は場所によっては、冒険者ギルドでも無償で配られてはいるんだけど、大陸全土では無く地域の一部しかないので大陸全土の地図の方が重宝する。
 僕は地図を探して本棚を見ると…様々な本が置いてあった。
 【グルメハンターの食べ歩き手記】【魚料理の定番】【貴族令息を愛でてみたい・新刊】【受けと責めの葛藤】【伯爵令息カインと侯爵令嬢マリアの前世からの恋物語】
 
 「いろんな本があるな…この裸同士の男が抱き合う雑誌は、マーファが持っていたな。 それと…ん?」

 僕は本を手に取ると、こんなタイトルだった。

 【特集! 英雄シオンと英雄リュカ ~二人の英雄~】

 「もう…僕の事が出回っているのか? まぁ、この大陸だけの話だろうし、他の大陸に行けば…ね。ところで…英雄リュカって誰だろう?」

 僕は本を置くと、地図の場所を見付けて購入しようとした…が、金貨2枚とかなりの金額だった。
 それもそのはず…かなりの大きさの紙は値段が高い上に精巧な地図の作り、大量印刷が出来ないのでほぼ手書きによるもの…そんな地図が安い訳がない!
 まぁ、買えない訳ではないけど…買っておくか。
 僕は地図を購入してから店を出た。
 
 「レグリーさんが船の手配をしてくれるという話だし、食事に関しては船で出るという話だから、当面は平気だけど…ストックはしておきたいしね。」

 僕は店を覗きながら野菜や肉を購入して行った。
 そして酒蔵を見付けたので、酒も買おうと思って銘柄を見ていた。

 【銘酒・ドワーフ殺し!】【竜の盃】【東方の誘惑】【甘いカクテル】【銘酒・英雄の愛した酒】
 
 「何ともまぁ…色々あるんだな。」
 
 僕は酒場に良く置いてあるという葡萄酒を箱買いしてから収納魔法に収納した。
 これで一通りの買い物が終わった事になるので、僕は皆のいる酒場に行った。
 すると、皆は既に出来上がっていた。

 「久々とはいえ…気が緩み過ぎでは?」

 僕は酒場の主人に会計を済ませてから、皆を連れて宿屋に行こうとした。
 すると、酒場を出る時に僕達の事を見ていた数人が後ろをつけている感じだったので、僕は急いで皆を連れて宿屋に入った。
 部屋に入ると、索敵魔法を展開した。
 すると、宿屋は複数に人間に囲まれている感じだった。

 「アントワネットさんはフードを外していないし、ミーヤさんは露出をした服装でもないし…では、奴等の目的は?」

 僕は宿屋の窓から下を窺うと、どうやら人相が悪い…という感じではないけど、何か異質な感じがした。
 僕は念の為に守護結界を展開した。
 そして相手の出方を待っているが…部屋まで押し入ろうとする者はいなかった。
 その日は、皆が使い物にならないので早めに寝る事にした。
 翌日…索敵魔法を使うと、宿屋の前にいた人達はいなかった。
 結局、何が目的なのかが解らないが…こういう場所の場合は、大体は決まって女目当ての輩が多いのだった。
 僕は皆が起きた後に、昨日の事情を話した。

 「なるほど…そんな事があったのか。 おい、レグリー…船の出航時間はあとどれ位だ?」
 「チケットによると、あと2時間位だそうです。」
 「2時間か…街中で乱闘は避けたいが、向こうから手を出さない限りはこちらから極力手を出すなよ!」
 「なら、先に宿を引き払ってから船着き場に向かうのはどうでしょうか?」
 「それが良いかもな…船着き場なら騎士や兵士もいるだろう。」

 僕等は宿を引き払って、船着き場に移動した。
 すると、急に人が集まってくる気配がした。

 「索敵魔法で調べてみると、昨日の奴等が集まってきているみたいです。 ただ…この時間から狙われるとすると…ミーヤさんやアネットさんが狙いではなさそうですね?」
 「確かに見た目だけは良いミーヤや性格は悪いが見た目だけはマシなアントワネットなら、少しは気を引く材料になるかもしれんが…」
 「リーダー…」
 「ザッシュさん、酷過ぎませんか?」
 「ん? なんだ? 俺は本当の事しか言ってないぞ!」

 ザッシュさんが正直なのは分かるけど…言い方っていう物があるでしょう。
 それにしても相手側は連携が取れ過ぎている…関所では僕は後から来ると言ってあるから、騎士の類ではないだろう。
 アントワネットもフードを被っていて外していないからバレる筈はない…と思う。
 道を進んで行くと…船着き場が見えたので入り口に向かおうとすると、そこには大勢の人が待ち構えていた。
 そして先頭に立っている凛々しい感じの女性が僕達に話し掛けて来た。

 「貴方達のチームがマリーゴールド領で魔王の配下を倒した方々ですよね?」
 
 ミーヤさんやアントワネットさんを狙っているガラの悪い者達では無かったが、服装からしてもしかして?

 「私共は、王都新聞社の者です! 取材をさせてはくれませんか?」
 「新聞社? 冒険者ギルドで新聞を発行している…アレ?」
 「そうです! マリーゴールド領で魔王の配下を倒したチームの英雄シオン! 狼獣人グレン! 猫人族のミーヤ、ドワーフのレグリー、聖女候補の謎の女性! そしてリーダーのザッシュ!」
 「良く調べ上げているな…俺達の事。」
 「まぁ、冒険者ギルドには登録されていますからね…そこから名前が割れたのでしょう。」
  
 僕等は呆れながら遠ざけようとした。
 それでもしつこく女性記者は尋ねて来た。

 「リーダーのザッシュさんにお聞きします! チームの中に英雄シオンがいますが…チームのリーダとしては複雑な気分ではないですか?」
 「シオンは英雄になった後に俺達のチームに参加したから、別に複雑な事は無い…これで良いか?」
 「いえ、他にも質問をしたいのですが…」
 「これから船に乗るから、あと1つだけ質問を許す!」
 「あと1つかぁ…では、あと1つだけ。 以前ザッシュさんが別な大陸で【烈火の羽ばたき】というチームのリーダーをやっていた時にサポーターの少年リュカの関係についてお聞かせください!」
 「あ? リュカだと⁉ 何故、リュカの話をしなければならないんだ⁉」
 
 女性記者は鞄の中から新聞を出して広げて見せた。
 ザッシュがその新聞をみると、書いている記事を良く見る為に女性記者から奪い取った。

 「リュカが魔王を倒して英雄だと⁉ クソが‼」

 ザッシュは新聞を丸めて床に叩き付けた。
 シオンは新聞を拾い上げてから、ザッシュに尋ねた。

 「リュカって誰ですか?」
 「俺の以前いた時のチームのサポーターだ。 あんな役立たずが英雄だと⁉」
 「僕と同じサポーターで英雄かぁ…ザッシュさんは不機嫌そうにしているけど、僕は会ってみたいな。」

 ザッシュは物凄く怒っている感じだった。
 だが、女性記者も引き下がる事はせずに尋ねて来た。
 するとザッシュは剣を抜いて威嚇した。

 「俺の前でアイツの話なんかするんじゃねぇ‼」
 「でも…最後の1つを答えてくれるって…」
 「お前…俺の言った事を聞いていなかったのか?」
 
 グレンと僕はザッシュを宥めて、レグリーとミーヤとアントワネットは記者達を追い払った。
 そして記者達が居なくなって道が開けて、船着き場にチケットを渡して僕等は船に乗る事が出来た。
 しばらくすると船は出発し、僕等はエルドナート大陸を後にした。

 目指すは、ファークラウド大陸…
 そして僕は、リュカという人物と2度出逢う事になる。
 1度目は顔を知らない状態での出会いと2度目は…

 次の大陸で序章の続きが語られる事になるのだが…それはもう少し先の話である。
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