21 / 36
第二章
第一話 ベイルードの街からの脱出(ベイルードの街で一騒動ありました。)
しおりを挟む
ガーヴァ渓谷での浄化作業は終わった。
アントワネットには聖属性の力が弱く、浄化能力が然程弱すぎたので…僕が背中に触れて魔力を流す事により浄化能力が向上して浄化に成功したのだ。
「さてと、ここでのやる事はほぼ終わったので街に行こうと思う。 シオンにも報酬を支払わないといけないしな…」
「その事なんですが、ベイルードの街に戻る必要がありますか?」
「シオンと出会う前に、討伐の依頼を受けたのでな。 その報酬を受け取りに行きたいのと、馬車の手配もしないといけないしな…」
冒険者ギルドの討伐依頼は、その街で受けた依頼の場合は定額で支払われるが、他の街の冒険者ギルド報告すると金額を減らされるのである。
それにこの大陸から他の大陸に移るには、北方の港のダレオリア港に行かなければならないのだが…ベイルードは遥か南方にある為に馬車なしでは無理なのである。
徒歩でも行けない事は無いけど、下手すると数か月は掛かる。
その間に町や村はあるにはあるのだが…?
「仕方がありませんね…とりあえずベイルードに行きましょう! 本当はあまり近付き無かったのですが…」
「何かあるのか?」
「行けば解りますよ…」
別に話しても良いのだけど、ザッシュなら僕が英雄と呼ばれていても色眼鏡で見る様な真似はしないと思っているので別に構わないのだが…
僕が気乗りしない態度にザッシュは不思議そうな顔をしていた。
「では、皆さん…僕に触れて下さいね。 帰還魔法・ベイルード!」
僕等は帰還魔法でベイルードの街の入り口に移動した。
その時にふと思った。
クルシェルラーファのお陰で転移魔法を使える事を思い出したのだ。
だけど、転移魔法はどうやら一度行った場所にしか行けない魔法らしい…
僕は他の大陸には行った事は無いし、グラットの街とベイルードの街を抜かすと…アントワネットの故郷くらいしか行った事が無かった。
アントワネットの故郷まで行ければ、ダレオリア港の距離も近くはなるのだけど…アントワネットが見付かった場合の事を考えると地道に馬車で行くしかなかった。
「騎士は…いなくなっているね? 後は僕だとバレない様に…あ、移動手続き許可書が必要だったんだ…」
グラットの街の冒険者ギルドからこの街の冒険者ギルドに移動する時も手続き許可書が必要で、その為にはギルドカードが必要になるのだった。
なので、変装しても意味が無いのである。
「冒険者ギルドか…気乗りしないんだよねぇ。」
「さっきから一体どうしたんだ? 何かあるのか?」
「ザッシュさん、冒険者ギルドで僕の事を何て呼ばれようと気にしないで戴けますか?」
「俺は別にお前が犯罪者だって気にしないさ!」
僕はその言葉を聞いて、ザッシュさんに対する株が上昇して行った。
この人なら僕がどんな扱いされていても気にしないでくれると思ったのだ。
僕達は冒険者ギルドの中に入った。
すると案の定、中にいる冒険者達の視線が一斉に僕に向いたのだ。
「おぉ…英雄シオンだ!」
「この街の救世主、英雄シオン‼」
「やっぱり…こうなったか。」
「おい、シオン…英雄って?」
「リーダー、壁の新聞を見て下さい!」
ザッシュ達のチームは、揃って壁の新聞の記事に目を通した。
そこに書かれている記事を見終わってから、チームの皆は僕を見た。
「シオン…お前はこの街では英雄だったのか⁉」
「はい…望んでそうなった訳ではないのですが…」
僕はカウンターに行って許可書の申請をした。
するとミザリアが声を掛けて来た。
「シオン君、この街を離れるのですか?」
「はい、この街は居心地が悪いですし、何より僕は彼らのチームのサポートをしたいと思って着いて行きたいので…」
「なら、このお金は今後の旅に必要となるでしょう。 受け取りなさい。」
僕はツインヘッドドラゴンの討伐報酬を受け取った。
金貨で980枚あった。
それともう1つの許可書を貰うと僕はザッシュと交代して、ザッシュはカウンターで手続きをした後に僕に合流した。
僕等は冒険者ギルドを出ようとすると、シーリスに呼び止められた。
ザッシュ達は、僕に気を利かせて外で待っていると言って出て行った。
「シオン…君は何処か他所に行ってしまうのか?」
「はい、彼らに着いて行って別大陸に旅立とうと思います。」
「何故だ⁉ この街にいれば英雄として…」
「僕は英雄なんて望んでない! 僕を僕として見てくれないこの街からはさっさと離れたいんですよ!」
「だって、君はこの街の英雄なんだから…」
「僕を英雄とよぶなぁぁぁぁぁ!!!」
僕の体から強大な魔力が噴き出して、冒険者ギルドの中の冒険者達を一瞬にして黙らせた。
僕の魔力に当てられて、ガタガタと震えている者や口をパクパクとしている者もいる。
「失礼しました。 つい怒りに任せて魔力を暴発させてしまいました。 では、僕はこれで…」
シーリスは怯えながら僕を見てコクコクと頷くと、僕は冒険者ギルドを出た。
僕はザッシュと合流する前にふと思った。
クルシェルラーファを手に入れてからか…魔力が爆発的に上昇しているのを感じたのだ。
クルシェルラーファは、必要以外の事は話し掛けても応答をしない。
念話が使える様になれば、どんな会話でも応答してくれるという事らしい。
そうじゃないと、独り言を喋っている変な奴に思われるからだ。
僕はザッシュと合流をした。
そして今日は宿に泊まろうと歩いていると、後方から気配を感じていた。
「つけられているな…シオンに用か?」
「この気配の感じからして、僕ではないでしょう。 恐らくは…」
僕は、アントワネットを見た。
アントワネットは久々の街でフードを外して歩いていたのだ。
チーム全員もアントワネットに視線が行った。
するとザッシュは溜息交じりにアントワネットに尋ねた。
「おいおい聖女様よぉ…フードを何故被ってない?」
「街の中では安全かと思って…」
アントワネットの発言に、僕とザッシュは呆れていた。
ザッシュもこんな性格だが、幼少の頃から貴族の勉学はしている。
なので、ザッシュも最低限の事は理解しているのだ。
「あのなぁ、聖女様よぉ…いや、この場合はお嬢様の方が良いか。 領主が領民に重税を課した場合、どうなるか…このお嬢様には解らんか…」
「街で朽ち果てる…ですか?」
「ならお前は、魔物が迫ってきても逃げ出さずに殺されるのか?」
「魔物が迫ってきたら、さすがに逃げます!」
「この問いも難しいか…これを領主の重税が魔物として、領民はどう行動をする?」
「逃げ出しますね、それも遠くに…」
「はぁ…これでも解ってないか…本当に頭の中が花畑じゃないのか?」
「遠くに逃げてから、ほとぼりが冷めてから戻るではないのですか?」
僕とザッシュは、アントワネットの発言に唖然とした。
ザッシュの説明は理に適っているし、上手く説明出来ている筈なのに肝心のアントワネットは理解出来てないみたいだった。
「アントワネットさん…本当に貴族だったんですか? いや、恐らく勉強の類を一切して来なかったんでしょうねぇ…」
「俺でもさすがにここまで言われたら普通に解るぞ! 本当にどうしようもねぇな…コイツ。」
「私を馬鹿にしているという事は解りますけど、それが一体何だというのですか?」
「長年住んでいた土地が穢れや呪いによって作物が育たない地になってしまいました。 さて、そこに住む住人はこの後どうするでしょうか?」
「その土地を捨てて移り住む…でしょう? それ位の事は私にも解ります。」
「いや、解ってないな…」
「えぇ、解ってないですね…」
僕とザッシュは、アントワネットの能天気さに頭を悩ませた。
ここまで馬鹿だとは思わなかったからだ。
アントワネットはムッとした表情を浮かべていた。
「グレン、ミーヤ…警戒を怠るな! 街の中では極力こちらから手は出すなよ。」
「アントワネットさん、領地の重税が穢れとして…領民は何処に行くと思いますか?」
「他の地に…いえ、他の街に移り住む…あ!」
ここまで言えば、さすがに馬鹿でも気が付いた。
この街にもマリーゴールドの領地から重税に逃げて移り住んだ者達がいるのだ。
その者達がアントワネットをみたらどうなるか位、普通は想像出来るだろう。
「奴等は襲ってくると思うか?…って聞くまでもないか。」
「憎むべき領主の娘で、捕らえれば金貨5枚が目の前に歩いていれば…来ない方がおかしいでしょう。」
「お願いします! 私を助けて下さい‼」
「本当にアントワネットさん、聖女候補に良く選ばれましたね? 普通なら誤解を解く為に住民と話し合います!…といって前に出る物でしょう?」
「俺はコイツには何も期待していない。 こういう奴だったと諦めているからな…」
「そうですか…では、話はこの辺にして…ザッシュさんはどうみますか?」
「さすがに街中で襲ってくるという事は人の目が合ってやらないだろう…と思いたいが、金貨5枚の為なら問答無用で来そうな気がするな。 もしくは、コイツを差し出せば…と抜かす奴もいるだろう。」
「その根拠は?」
「英雄シオンがいるからな、下手に手を出せば懸賞金どころの騒ぎではなくなるからな。」
「英雄ねぇ…まぁ、そうなるでしょうね。」
さて、どうするかな?
グラットの街に移動するという手も無くは無いんだけど、またアントワネット絡みで騒がれるのもね…
グラットの街は、元父がマリーゴールドの領民を多く受け入れているから…ここより厳しくなるかもしれないしね。
僕は索敵魔法を展開した。
僕等を…というか、アントワネットを狙っている者達の反応はかなり多い。
穏便に済ませるには、アントワネットを差し出せば済むだけの話なのだが…それにしても、ここまで恨まれるって、一体何をしたんだろ?
僕は重税の話以外はあまり知らない。
まぁ、今考えても仕方がないのだが…
「アントワネットさん、フードを被っておいてくださいね。 それとザッシュさん…解っているとは思いますが、この街での宿は諦めて下さい。」
「言われずとも無理なのは解っているが…どうするんだ?」
「転移魔法でグラットの街…僕の故郷に移動します。 そこでなら宿は取れるでしょうけど、それにはアントワネットさんを隠蔽しないといけませんからね。 僕の故郷では、マリーゴールドの領民を多く受け入れているので…」
「大丈夫か? 下手するとここより囲まれはしないか?」
「さすがにアントワネットさんもフードを外す真似はしないでしょう…ですよね?」
「はい、この大陸から出るまでは、絶対に脱ぎません!」
「では、転移・グラットの街!」
僕達はベイルードの街から忽然と姿が消えて移動した。
僕達を囲んでいた者達は何が起きたのかが理解出来なかった。
そしてグラットの街に移動した僕等は、とりあえず宿を取り安堵の息を吐いた。
これで当面は大丈夫かと思ったのだが、この街でも別な騒動が待っていた。
アントワネットには聖属性の力が弱く、浄化能力が然程弱すぎたので…僕が背中に触れて魔力を流す事により浄化能力が向上して浄化に成功したのだ。
「さてと、ここでのやる事はほぼ終わったので街に行こうと思う。 シオンにも報酬を支払わないといけないしな…」
「その事なんですが、ベイルードの街に戻る必要がありますか?」
「シオンと出会う前に、討伐の依頼を受けたのでな。 その報酬を受け取りに行きたいのと、馬車の手配もしないといけないしな…」
冒険者ギルドの討伐依頼は、その街で受けた依頼の場合は定額で支払われるが、他の街の冒険者ギルド報告すると金額を減らされるのである。
それにこの大陸から他の大陸に移るには、北方の港のダレオリア港に行かなければならないのだが…ベイルードは遥か南方にある為に馬車なしでは無理なのである。
徒歩でも行けない事は無いけど、下手すると数か月は掛かる。
その間に町や村はあるにはあるのだが…?
「仕方がありませんね…とりあえずベイルードに行きましょう! 本当はあまり近付き無かったのですが…」
「何かあるのか?」
「行けば解りますよ…」
別に話しても良いのだけど、ザッシュなら僕が英雄と呼ばれていても色眼鏡で見る様な真似はしないと思っているので別に構わないのだが…
僕が気乗りしない態度にザッシュは不思議そうな顔をしていた。
「では、皆さん…僕に触れて下さいね。 帰還魔法・ベイルード!」
僕等は帰還魔法でベイルードの街の入り口に移動した。
その時にふと思った。
クルシェルラーファのお陰で転移魔法を使える事を思い出したのだ。
だけど、転移魔法はどうやら一度行った場所にしか行けない魔法らしい…
僕は他の大陸には行った事は無いし、グラットの街とベイルードの街を抜かすと…アントワネットの故郷くらいしか行った事が無かった。
アントワネットの故郷まで行ければ、ダレオリア港の距離も近くはなるのだけど…アントワネットが見付かった場合の事を考えると地道に馬車で行くしかなかった。
「騎士は…いなくなっているね? 後は僕だとバレない様に…あ、移動手続き許可書が必要だったんだ…」
グラットの街の冒険者ギルドからこの街の冒険者ギルドに移動する時も手続き許可書が必要で、その為にはギルドカードが必要になるのだった。
なので、変装しても意味が無いのである。
「冒険者ギルドか…気乗りしないんだよねぇ。」
「さっきから一体どうしたんだ? 何かあるのか?」
「ザッシュさん、冒険者ギルドで僕の事を何て呼ばれようと気にしないで戴けますか?」
「俺は別にお前が犯罪者だって気にしないさ!」
僕はその言葉を聞いて、ザッシュさんに対する株が上昇して行った。
この人なら僕がどんな扱いされていても気にしないでくれると思ったのだ。
僕達は冒険者ギルドの中に入った。
すると案の定、中にいる冒険者達の視線が一斉に僕に向いたのだ。
「おぉ…英雄シオンだ!」
「この街の救世主、英雄シオン‼」
「やっぱり…こうなったか。」
「おい、シオン…英雄って?」
「リーダー、壁の新聞を見て下さい!」
ザッシュ達のチームは、揃って壁の新聞の記事に目を通した。
そこに書かれている記事を見終わってから、チームの皆は僕を見た。
「シオン…お前はこの街では英雄だったのか⁉」
「はい…望んでそうなった訳ではないのですが…」
僕はカウンターに行って許可書の申請をした。
するとミザリアが声を掛けて来た。
「シオン君、この街を離れるのですか?」
「はい、この街は居心地が悪いですし、何より僕は彼らのチームのサポートをしたいと思って着いて行きたいので…」
「なら、このお金は今後の旅に必要となるでしょう。 受け取りなさい。」
僕はツインヘッドドラゴンの討伐報酬を受け取った。
金貨で980枚あった。
それともう1つの許可書を貰うと僕はザッシュと交代して、ザッシュはカウンターで手続きをした後に僕に合流した。
僕等は冒険者ギルドを出ようとすると、シーリスに呼び止められた。
ザッシュ達は、僕に気を利かせて外で待っていると言って出て行った。
「シオン…君は何処か他所に行ってしまうのか?」
「はい、彼らに着いて行って別大陸に旅立とうと思います。」
「何故だ⁉ この街にいれば英雄として…」
「僕は英雄なんて望んでない! 僕を僕として見てくれないこの街からはさっさと離れたいんですよ!」
「だって、君はこの街の英雄なんだから…」
「僕を英雄とよぶなぁぁぁぁぁ!!!」
僕の体から強大な魔力が噴き出して、冒険者ギルドの中の冒険者達を一瞬にして黙らせた。
僕の魔力に当てられて、ガタガタと震えている者や口をパクパクとしている者もいる。
「失礼しました。 つい怒りに任せて魔力を暴発させてしまいました。 では、僕はこれで…」
シーリスは怯えながら僕を見てコクコクと頷くと、僕は冒険者ギルドを出た。
僕はザッシュと合流する前にふと思った。
クルシェルラーファを手に入れてからか…魔力が爆発的に上昇しているのを感じたのだ。
クルシェルラーファは、必要以外の事は話し掛けても応答をしない。
念話が使える様になれば、どんな会話でも応答してくれるという事らしい。
そうじゃないと、独り言を喋っている変な奴に思われるからだ。
僕はザッシュと合流をした。
そして今日は宿に泊まろうと歩いていると、後方から気配を感じていた。
「つけられているな…シオンに用か?」
「この気配の感じからして、僕ではないでしょう。 恐らくは…」
僕は、アントワネットを見た。
アントワネットは久々の街でフードを外して歩いていたのだ。
チーム全員もアントワネットに視線が行った。
するとザッシュは溜息交じりにアントワネットに尋ねた。
「おいおい聖女様よぉ…フードを何故被ってない?」
「街の中では安全かと思って…」
アントワネットの発言に、僕とザッシュは呆れていた。
ザッシュもこんな性格だが、幼少の頃から貴族の勉学はしている。
なので、ザッシュも最低限の事は理解しているのだ。
「あのなぁ、聖女様よぉ…いや、この場合はお嬢様の方が良いか。 領主が領民に重税を課した場合、どうなるか…このお嬢様には解らんか…」
「街で朽ち果てる…ですか?」
「ならお前は、魔物が迫ってきても逃げ出さずに殺されるのか?」
「魔物が迫ってきたら、さすがに逃げます!」
「この問いも難しいか…これを領主の重税が魔物として、領民はどう行動をする?」
「逃げ出しますね、それも遠くに…」
「はぁ…これでも解ってないか…本当に頭の中が花畑じゃないのか?」
「遠くに逃げてから、ほとぼりが冷めてから戻るではないのですか?」
僕とザッシュは、アントワネットの発言に唖然とした。
ザッシュの説明は理に適っているし、上手く説明出来ている筈なのに肝心のアントワネットは理解出来てないみたいだった。
「アントワネットさん…本当に貴族だったんですか? いや、恐らく勉強の類を一切して来なかったんでしょうねぇ…」
「俺でもさすがにここまで言われたら普通に解るぞ! 本当にどうしようもねぇな…コイツ。」
「私を馬鹿にしているという事は解りますけど、それが一体何だというのですか?」
「長年住んでいた土地が穢れや呪いによって作物が育たない地になってしまいました。 さて、そこに住む住人はこの後どうするでしょうか?」
「その土地を捨てて移り住む…でしょう? それ位の事は私にも解ります。」
「いや、解ってないな…」
「えぇ、解ってないですね…」
僕とザッシュは、アントワネットの能天気さに頭を悩ませた。
ここまで馬鹿だとは思わなかったからだ。
アントワネットはムッとした表情を浮かべていた。
「グレン、ミーヤ…警戒を怠るな! 街の中では極力こちらから手は出すなよ。」
「アントワネットさん、領地の重税が穢れとして…領民は何処に行くと思いますか?」
「他の地に…いえ、他の街に移り住む…あ!」
ここまで言えば、さすがに馬鹿でも気が付いた。
この街にもマリーゴールドの領地から重税に逃げて移り住んだ者達がいるのだ。
その者達がアントワネットをみたらどうなるか位、普通は想像出来るだろう。
「奴等は襲ってくると思うか?…って聞くまでもないか。」
「憎むべき領主の娘で、捕らえれば金貨5枚が目の前に歩いていれば…来ない方がおかしいでしょう。」
「お願いします! 私を助けて下さい‼」
「本当にアントワネットさん、聖女候補に良く選ばれましたね? 普通なら誤解を解く為に住民と話し合います!…といって前に出る物でしょう?」
「俺はコイツには何も期待していない。 こういう奴だったと諦めているからな…」
「そうですか…では、話はこの辺にして…ザッシュさんはどうみますか?」
「さすがに街中で襲ってくるという事は人の目が合ってやらないだろう…と思いたいが、金貨5枚の為なら問答無用で来そうな気がするな。 もしくは、コイツを差し出せば…と抜かす奴もいるだろう。」
「その根拠は?」
「英雄シオンがいるからな、下手に手を出せば懸賞金どころの騒ぎではなくなるからな。」
「英雄ねぇ…まぁ、そうなるでしょうね。」
さて、どうするかな?
グラットの街に移動するという手も無くは無いんだけど、またアントワネット絡みで騒がれるのもね…
グラットの街は、元父がマリーゴールドの領民を多く受け入れているから…ここより厳しくなるかもしれないしね。
僕は索敵魔法を展開した。
僕等を…というか、アントワネットを狙っている者達の反応はかなり多い。
穏便に済ませるには、アントワネットを差し出せば済むだけの話なのだが…それにしても、ここまで恨まれるって、一体何をしたんだろ?
僕は重税の話以外はあまり知らない。
まぁ、今考えても仕方がないのだが…
「アントワネットさん、フードを被っておいてくださいね。 それとザッシュさん…解っているとは思いますが、この街での宿は諦めて下さい。」
「言われずとも無理なのは解っているが…どうするんだ?」
「転移魔法でグラットの街…僕の故郷に移動します。 そこでなら宿は取れるでしょうけど、それにはアントワネットさんを隠蔽しないといけませんからね。 僕の故郷では、マリーゴールドの領民を多く受け入れているので…」
「大丈夫か? 下手するとここより囲まれはしないか?」
「さすがにアントワネットさんもフードを外す真似はしないでしょう…ですよね?」
「はい、この大陸から出るまでは、絶対に脱ぎません!」
「では、転移・グラットの街!」
僕達はベイルードの街から忽然と姿が消えて移動した。
僕達を囲んでいた者達は何が起きたのかが理解出来なかった。
そしてグラットの街に移動した僕等は、とりあえず宿を取り安堵の息を吐いた。
これで当面は大丈夫かと思ったのだが、この街でも別な騒動が待っていた。
10
お気に入りに追加
1,280
あなたにおすすめの小説
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
回復力が低いからと追放された回復術師、規格外の回復能力を持っていた。
名無し
ファンタジー
回復術師ピッケルは、20歳の誕生日、パーティーリーダーの部屋に呼び出されると追放を言い渡された。みぐるみを剥がされ、泣く泣く部屋をあとにするピッケル。しかし、この時点では仲間はもちろん本人さえも知らなかった。ピッケルの回復術師としての能力は、想像を遥かに超えるものだと。
婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした
アルト
ファンタジー
今から七年前。
婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。
そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。
そして現在。
『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。
彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。
「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~
平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。
三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。
そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。
アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。
襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。
果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる