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第一章
第十四話 グラッド家(シオンの実家では…?)
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「あの出来損ないが英雄だと!?」
グラッド家の当主、カリバリオン・ノート・グラットは読んでいた新聞を床に叩きつけた。
報告に来ていたファリスはその光景を見て、笑みを浮かべていた。
「ファリス…何を笑っている⁉」
「俺が何度もシオンは出来損ないでは無いと進言しているにも拘らず、家を追い出す様な真似をしてしまった父様が哀れに思えてしまって…」
「うちは騎士一家だ! 代々、騎士の家系として国に仕え、戦場を生き抜いてきたのだ。 だから攻撃が出来ない無能を追い出したというのに…」
「では、父様にお聞きしますが…何故、我々は盾を持っているのですか?」
「それは敵から身を守る為に存在しているのだ。」
「ですが、その盾も人が居なければ真の効果は発揮されませんよね?」
「ファリスは何を言いたい?」
カリバリオンは興奮して頭が回っていなかった。
ファリスは溜息を吐いてから、話を続けた。
「確かにシオンには、攻撃手段がありません。 ですが、攻撃が出来ない代わりに盾は使えるのです。 いや、違うな…盾以上の守りの働きが出来るのです。 それは、騎士が生き残る為には必要不可欠な物です。」
「ファリスは、シオンを呼び戻した方が良いと思うか?」
「では、逆にお聞きしますが…英雄となったシオンを見る目の無い親が家から追い出したという話が世間に広まれば、無能は息子では無く、追い出した親だったと伝わるでしょう。 その場合、領民達は領主をどうみるでしょうか?」
カリバリオンは、頭を抱えて考えた。
このままでは、無能はシオンでは無く親だったと言われ続ける事になるからだ。
そうなったら、領民達の信頼は一気に下がるだろう。
ファリスは更に話を続けた。
「シオンを英雄として認めたのは、叔父上のガスター将軍とカルスゲール辺境伯と冒険者ギルドマスターのグラウスト様ですよ? シオンは更には、国王陛下から召喚状すら届いているという話です。」
「国王陛下から…だと? 何て事だ…これでは無能は自分だったと認めるしかないではないか…」
「如何致しますか、父様?」
「シオンは戻って来ると思うか?」
「俺やファラリスが尋ねた時も、シオンは戻りたいとは一言も言っておりませんでした。 もうシオンの中では、この家との縁は無かったものだと思っているでしょうけど、望みは0では無いと思います。」
ファリスには策があるようだった。
だが、それでも…シオンの意思は曲げられるかは五分五分と言った所だろう。
「では、ファリスよ…シオンを連れ戻して来い!」
「では、こちらも…父様はシオンに頭を下げる事を忘れずに。」
「親が子に頭を下げるなど…」
「まだそんな事に拘っているんですか? シオンを連れ戻して父様はどうする気ですか?」
「切ってしまった家族の縁を戻してやろうと…」
「それだとシオンは絶対に戻って来ませんよ。 父様が折れない限りはね…」
「それなら仕方がないだろう。」
「なら、国王陛下にはどう説明するつもりですか? シオンに召喚状がでたという事は、こちらにも届く筈ですよ。 その際にどう言い訳するつもりですか?」
カリバリオンは少し悩んだが、すぐに答えを出した。
「わかった! シオンには頭を下げて謝罪しよう。 なので頼む…シオンを連れ戻してきてくれ!」
「絶対ですね? 約束を違えたら、シオンは2度とこの家には戻ってこないと思って下さい。」
ファリスは部屋を出て行った。
カリバリオンは、ソファーに腰掛けて天井を見上げた。
「シオンが英雄か…」
グラッド家の当主、カリバリオン・ノート・グラットは読んでいた新聞を床に叩きつけた。
報告に来ていたファリスはその光景を見て、笑みを浮かべていた。
「ファリス…何を笑っている⁉」
「俺が何度もシオンは出来損ないでは無いと進言しているにも拘らず、家を追い出す様な真似をしてしまった父様が哀れに思えてしまって…」
「うちは騎士一家だ! 代々、騎士の家系として国に仕え、戦場を生き抜いてきたのだ。 だから攻撃が出来ない無能を追い出したというのに…」
「では、父様にお聞きしますが…何故、我々は盾を持っているのですか?」
「それは敵から身を守る為に存在しているのだ。」
「ですが、その盾も人が居なければ真の効果は発揮されませんよね?」
「ファリスは何を言いたい?」
カリバリオンは興奮して頭が回っていなかった。
ファリスは溜息を吐いてから、話を続けた。
「確かにシオンには、攻撃手段がありません。 ですが、攻撃が出来ない代わりに盾は使えるのです。 いや、違うな…盾以上の守りの働きが出来るのです。 それは、騎士が生き残る為には必要不可欠な物です。」
「ファリスは、シオンを呼び戻した方が良いと思うか?」
「では、逆にお聞きしますが…英雄となったシオンを見る目の無い親が家から追い出したという話が世間に広まれば、無能は息子では無く、追い出した親だったと伝わるでしょう。 その場合、領民達は領主をどうみるでしょうか?」
カリバリオンは、頭を抱えて考えた。
このままでは、無能はシオンでは無く親だったと言われ続ける事になるからだ。
そうなったら、領民達の信頼は一気に下がるだろう。
ファリスは更に話を続けた。
「シオンを英雄として認めたのは、叔父上のガスター将軍とカルスゲール辺境伯と冒険者ギルドマスターのグラウスト様ですよ? シオンは更には、国王陛下から召喚状すら届いているという話です。」
「国王陛下から…だと? 何て事だ…これでは無能は自分だったと認めるしかないではないか…」
「如何致しますか、父様?」
「シオンは戻って来ると思うか?」
「俺やファラリスが尋ねた時も、シオンは戻りたいとは一言も言っておりませんでした。 もうシオンの中では、この家との縁は無かったものだと思っているでしょうけど、望みは0では無いと思います。」
ファリスには策があるようだった。
だが、それでも…シオンの意思は曲げられるかは五分五分と言った所だろう。
「では、ファリスよ…シオンを連れ戻して来い!」
「では、こちらも…父様はシオンに頭を下げる事を忘れずに。」
「親が子に頭を下げるなど…」
「まだそんな事に拘っているんですか? シオンを連れ戻して父様はどうする気ですか?」
「切ってしまった家族の縁を戻してやろうと…」
「それだとシオンは絶対に戻って来ませんよ。 父様が折れない限りはね…」
「それなら仕方がないだろう。」
「なら、国王陛下にはどう説明するつもりですか? シオンに召喚状がでたという事は、こちらにも届く筈ですよ。 その際にどう言い訳するつもりですか?」
カリバリオンは少し悩んだが、すぐに答えを出した。
「わかった! シオンには頭を下げて謝罪しよう。 なので頼む…シオンを連れ戻してきてくれ!」
「絶対ですね? 約束を違えたら、シオンは2度とこの家には戻ってこないと思って下さい。」
ファリスは部屋を出て行った。
カリバリオンは、ソファーに腰掛けて天井を見上げた。
「シオンが英雄か…」
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