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第一章

第十三話 チームに溶け込むには?(シオンは腹を決めたみたいです。)

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 ………夕方………

 僕とドワーフのレグリーと話をしていると、ザッシュ達は狩りから帰って来た。
 僕は皆に駆け寄ってから、回復魔法を展開した。
 すると、グレンやミーヤの怪我が治って行った。
 グレンのガントレットとミーヤの武器の爪が破損している事に気が付いた。

 「また壊したのか…はぁ。」
 「この程度なら直りますけど…その前に、グレンさんの手とミーヤさんの手を見せて貰っても良いですか?」

 僕は2人の手を見た。
 そして武器を確認すると、明らかに武器の性能不足に感じた。

 「この武器は2人には合っていませんね…」
 「馬鹿な! それは2つともミスリル製だぞ!」
 「ミスリルですか、確かに良い金属なのですが…パワータイプの人にはミスリルは不向きなんですよ。 1ランク下のメタルの方が良いかもしれませんね?」
 「メタルって重い金属だよな? そんなので大丈夫なのか?」
 「ザッシュさんは、獣人という種族を人間と同じだと思っていませんか? 獣人の場合は、種族にもよりますが…軽量の武器より、重量の武器の方が強さが上がる場合があるんですよ。」
 「そうだったのか…俺は何も知らないままでコイツ等に合わない物を渡していたのか…」
 
 ザッシュは仲間思いの良いリーダーだと思った。
 そんなザッシュの為に報いたいと思って僕は提言した。

 「ならば、新たな武器を作りますか? 材料はあるので、当面の間ここを拠点とするなら、鍛冶部屋も作ろうかと思いますが…」
 「そんな事も可能なのか? レグリー材料はあるか?」
 「ミスリルは幾つかありますが、メタルはありません。」
 「あ、メタルなら作れますので…少し待っていて下さいね。 もう1部屋作りますので…」

 僕は地面に手を当ててから、複合統一魔法でもう1部屋作った。
 その部屋に行ってから、鍛冶に適した道具を揃えた。
 
 「これは…揃い過ぎています。 街の中の鍛冶工房と同等かそれ以上の設備です!」
 「これなら僕もレグリーさんも腕を振るえますね。」
 「こんな物を瞬時に作りだせるとは…シオン、お前は優秀なのだな!」
 「そんな事は無いですよ。 では、皆さんは風呂に入っていて下さい。 洗濯は僕がやりますので、脱いだ服はカゴに入れて置いて下さい。」
 
 僕は人数分のバスタオルとバスローブを用意した。
 まず最初にレグリーとミーヤとアントワネットが入って行った。
 その間、僕は料理の準備をした。
 その様子をザッシュは見て言った。

 「随分手際が良いんだな? 貴族の割には…」
 「僕は神託の儀で攻撃が出来ない無能と言われていましたからね。 それから成人になるまでに、様々な技能を必死に覚えたんですよ。」
 「成人までか? 何故だ?」
 「騎士一家の家では、攻撃が出来ない無能は目障りと感じたのでしょう。 ですが、すぐには追い出さずに成人までの猶予を与えて貰ったので…です。」
 「俺も貴族だったから気持ちはわかる。 俺も家では爪弾きにされていたからな…」
 「何だか似ていますね、僕とザッシュさんは…」
 「あぁ、そうだな!」

 そんな話をしている間、僕は料理の下拵えを済ませた。
 すると、女性達が風呂から出たので、代わりにザッシュとグレンが入って行った。
 食事は一緒にする訳では無いみたいだったので、先に女性達に料理を出した。
 その間、皆の洗濯物を洗濯してから1つに纏めて置いた。
 僕はドワーフの食欲を甘く見ていた。
 男性達の食事まで食べきってしまっていたので、料理を追加している頃に男性達が風呂から上がったので料理を出した。
 食事後…僕とレグリーは鍛冶部屋に行って作業を開始した。
 
 「では、僕はグレンさんの武器を…レグリーさんはミーヤさんの武器をで良いですね?」
 「えぇ、大丈夫です。」
 
 僕は鉄を錬金術でメタルに錬成した。
 それを炉に入れてから熱して叩いて伸ばして行った。
 ひと段落を終えたレグリーが僕の作業を見て言った。

 「グレンさんの武器はガントレットでは無いんですね?」
 「グレンさんのパワーを上手く伝えるには、ガントレットよりカイザーナックルの方が適していると思うんです。 あとは何度か使用してもらって、その都度調整して行けば…グレンさん用の最高の武器が完成するでしょう。」
 「なるほど、勉強になります! それにしても、シオンさんの鍛冶技術は素晴らしいですね…ドワーフの技術にも引けを取りません。」
 「ドワーフ族の方に褒めて戴けるなんて光栄ですよ。 僕のはあくまで本で読んで独学で覚えた物なので、本職の人に褒められると嬉しいです。」

 そんな話をしていると、ザッシュが鍛冶部屋に顔を見せに来た。
 レグリーがザッシュに僕の事を褒めていた。

 「レグリーが人を褒めるとは…シオンは優秀なのだな!」
 「僕もドワーフの方に褒めて貰って嬉しいですよ!」

 僕は完成したカイザーナックルをグレンに渡した。
 すると、グレンはカイザーナックルの感触を確かめていた。
 
 「こぎゃんどがすぐわろうが! だげ…ささどあぐがあが!」
 「左側に違和感ですか…? 少し調節しますので渡して下さい。」

 僕はカイザーナックルを調節していると、ザッシュから声が掛かった。

 「グレンの言葉が解るのか?」
 「僕の魔法には言語魔法もありますので、会話は可能ですが…」
 「俺は何を話しているのかほとんど解らん。」
 「確かに普通に聞いていたら僕にもわかりません。」

 僕は調整したカイザーナックルを渡すと、グレンは満足した様な顔を頭を下げて来た。
 
 「さて、この後は寝床の準備をしてから、今日狩って来た魔物を捌きますか!」

 皆が眠りにつくと、僕は魔物を片っ端から解体して行った。
 そして料理を準備してから眠りについた。

 「僕はこのチームでやっていきたいなぁ…ザッシュさんに正式加入出来ないか聞いてみようかな?」

 シオンは心の底からそう思っていた。
 だが、それが間違いだと気付く事になるには、かなり先になるのであった。
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