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聖女マーファと少年ガルタの章

第二話 ガルタのパーティーだけはお断り!

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 私が王都にいるという話をしたのは…恐らく両親ね。
 本当にあの両親は、余計な事をしてくれるわ!
 私はパーティー募集の紙を見るが…ガルタはしつこく声を掛けてくる。

 「いつまでもそんな無駄な事をしていないで、俺のパーティーに入れよ!」
 「だから…お断りだって言っているでしょ!」
 「何でだよ? 俺のパーティーは良いぜ! だってギールグ村のメンバーだけで構成されているからな!」
 「なら何故…男の人がいないの?」
 「男ならいるじゃん! この俺が!」
 「はぁ…だってそのパーティーは、剣士のガルタと魔術師のテルン、治癒術師のリタに斥候のレシアだけでしょ?」
 「それが何が不満なんだよ?」
 「タンクは誰がやるの?」
 「そんなもん、必要無い! 守りに入ろうとするから怪我をするんだ! 先に倒せれば問題は無い!」
 
 あ…ガルタは根本的に間違ってるわ!
 低レベルの雑魚を相手にするのならそれでも良いでしょうけど、強い敵に当たったらすぐに全滅よ。
 その辺の事が…解っていないでしょうね。

 「私の今のランクはCランクよ。 ガルタはランクが幾つなの?」
 「俺はまだFランクだが…すぐに追いついてみせるぜ!」
 「すぐに追いつける訳ないでしょ! それに今のパーティーに私が参加したら、倒した経験値を全て持って行くわよ。 ガルタ達は私が加入している限り、経験値が全く入らないでレベルも上がらなくなるけど平気なの?」
 「問題は無い! お前が入っていてさえ居れば、細かい事は気にしない。」
 「その辺は気にした方がいいわよ。 だって、リーダーがいつまでもレベルが低いままだったら…パーティーのランクは上がらないし、私も途中で見切りを付けるわよ。」
 「何でだよ⁉︎」
 「はぁ…レベルがいつまでも低く、ランクも上がらないなら…私がいる意味がないからよ。 高ランクのクエストが受けられないし、いつまで経っても私の聖女のランクが上がらないからね。 私はパーティーのリーダーから勇者を任命して魔王を倒す為の役目を全うしなければならないの。」
 「そんな事か! 勇者なら俺がなってやるよ‼︎」

 ダメだわ…ガルタは勇者の意味を勘違いしている。
 今のガルタが勇者になるのを待っていたら…10年過ぎても不可能でしょうね。

 「ガルタは、勇者の最低基準は知ってる?」
 「最低基準?」
 「やっぱり知らなかったか…聖女がいればその内に勇者に選ばれるとでも思っていたのね?」
 「違うのか?」
 「勇者の最低基準は、レベルが50以上で自信の冒険者ランクがBランク、パーティーでのランクがBランクで初めて任命されるのよ。 レベルもランクも上がらないなら、貴方が勇者に選ばれるとしたら…最低でも10年は必要でしょうね?」
 「な…あ、そうだ! 俺達がレベルやランクを上がるまで待つというのはどうだ?」
 「私が待つの? なんで?」
 「俺がマーファの勇者に選ばれる為にだ!」
 「それって…何十年待てば良いの?」
 「何十年って…へ?」
 
 ランクのシステムやレベルのシステムを知らないから簡単に言うのね。
 まぁ、勇者の最低基準も知らない人が知っている訳はないか。

 「かの大英雄で剣聖のアーガスタ様は、FランクからEランクまで上げるのが1年近く、EランクからDランクまで上げるのに2年半、DランクからCランクまで上げるのに5年を費やしたというわ。 ガルタはそれよりも早くにランクを上げられる自信はあるの?」
 「それは自身のランクの事か?」
 「いいえ…パーティーでのランクの事よ。 しかも…剣士、重戦士、魔術師、斥候、聖女のパーティーでそれだけ掛かっているの。」
 「そんなに掛かるのか?」
 「だから言ったでしょ、私は何十年待てば良いのって? それにガルタのパーティーにタンクがいないのでは、アーガスタ様の最短よりも2倍か3倍の時間が掛かるよ。 私はそれを待っているほど気が長くないわ!」
 
 流石にここまで言われたら、ガルタも真剣に考え始めたみたい。
 まぁ、どちらにしてもガルタのパーティーに入る事は無いけどね。

 「やはり此処では…私のランクに合うパーティーは居ないみたいね。 辺境か他の街に行くしか無いわね。」
 「俺は…マーファが心配なんだ! だから俺のパーティーに誘おうと…」
 「貴方のパーティーだって安全じゃ無いよ? だってタンクが居ないんだもん。」
 「それは攻撃を受ける前に先に倒せばと…」

 私はクエストボードからFランクのクエスト用紙を剥がしてガルタに渡した。
 それには…ゴブリン討伐のクエストが書かれてあり、ノルマはパーティーで1人10匹という内容だった。

 「ガルタには荷が重いと思うけど、とりあえずこれをパーティーで受けて達成して来て。」
 「ゴブリンか…これなら楽勝だ!」

 ガルタは意気揚々と仲間を連れてギルドを出て行った。
 村に現れるゴブリンとは違い、王都の近くのゴブリンは…冒険者を相手にしている為に結構知恵が高い。
 体格も村とは違って少し体格が良いという話だ。
 これで…タンクの需要生が分かるでしょう。

 私は王都を出て、辺境の街に移動する為に…乗合馬車に乗った。
 ガルタ…頼むから、もう追いかけて来ないでね。
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