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最終章

第三話 決戦!・後編

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 幻龍バハムートと暗黒龍グレイザラウンドは、幼い頃から顔馴染みの幼馴染だった。
 …とは言っても、決して仲が良かった訳では無い。
 お互いに同じ龍種には違いが無いのだが、家系による勢力が違っていたのだった。
 バハムートは調和勢で、グレイザラウンドは混沌勢。
 まぁ、子供の頃から親に言い聞かされて育って来た為に、とても仲が悪かった。

 『幼少の頃は貴様の悪戯の所為で、我はとても身を縮む思いを味わされたからな!』
 『学舎のロッカーの中に蛇を入れたのを…未だに覚えているとはな。』
 ※龍種は種族にもよるが、蛇が苦手な種も居るという話です。

 『貴様こそ、我の想い人であった…ティアマトちゃんのラブレターに細工を施してくれたよなぁ?』
 『あれは蛇の悪戯のだった仕返しをした迄だ!グレイザラウンド…貴様が傍観勢のティアマトの事を好いているのを知っていたからな。だから、上手く行かぬ様に…貴様が放課後に机の中に入れた手紙に卑猥な誹謗中傷を書き込んでから、見事にフラれたのは愉快だったな!』
 『バハムート…貴様の所為で、我はクラスの女子達に卒業するまで無視をされたのだぞ‼︎』
 「何か…小学生の悪戯みたいな事をしていたんだな?…というか、学舎とかロッカーとか…まるで人間みたいな生活環境だな。」
 『それはそうだ。我とグレイザラウンドは、有象無象のトカゲもどきとは違い…生まれた時は人種に近い姿をして生まれて来るからな。幼少の頃は、人種の様な学舎である一定を過ごすのでな。』
 
 そういえば、神獣達も人の姿をしていた時があったが…?
 ワルーンアイランドの人の姿になれる者達は、幼少の頃は…人間と同じ様な生活を送っていたのだろうか?
 
 「それにしても、龍族との凄まじい戦いを観れると思っていたのに、やっている事といえば…騙し合いの様なセコい戦いだったなぁ?」

 姑息な戦い方というのは、こんな感じだった。
 暗黒龍グレイザラウンドはバハムートに対して…サシで勝負する事も出来ないのか!…と挑発をして背後を指差してからバハムートを振り向かせた瞬間に、タックルをして突き飛ばすという事をしていた。
 それに対して怒ったバハムートはというと、魔法で空から巨大な隕石を投下してから…暗黒龍グレイザラウンドの後頭部に見事に喰らわせて、嘲笑っていたのだった。
 これがドラゴン同士との戦い方なのかと、少し残念に思っていたのだった。

 「あのさぁ、バハムート…このくだらない戦いを続けるのなら、サクッと終わらせても良いかな?」
 『『くだらない…だと⁉︎』』
 「この後に魔王との戦いも控えているんだし、勇者達と合流する為に遊んでいる暇がないんだよね。」

 僕は溜め息混じりにそういうと、暗黒龍グレイザラウンドは憤慨した声を上げていた。

 『矮小なる人種如きが…龍種に対して、そんな大口を叩くとは思わなかったぞ‼︎』
 「だって、側から見ていたら遊んでいる様にしか見えないからなぁ?」
 『矮小なる人種如きが、我をどうにか出来ると思うのなら…』
 「あっそう、じゃあ手早く済ませるからね。セイクリッド・ギガンティスチェーン。」

 雲の隙間から暗黒龍グレイザラウンドに光が降り注ぐと、そこから龍と同じサイズの鎖が暗黒龍グレイザラウンドに巻き付いた。
 この魔法は、アレクサンダーとの契約で手に入れた物で…
 本来、精霊の魔法は、精霊を召喚していないと発動出来ないものなのだが…?
 そこは精霊とは違う召喚獣で、更にその召喚獣は天龍の直属の眷属である為に、精霊とは違い…契約をしたらその召喚獣の取得魔法も使用する事が出来ていた。
 …なら、何故今までに使用しなかったのかというと?
 見た目が派手で巨大すぎる為に、魔力量がえげつなく消費するので、使う事を躊躇っていたんだけど、後がつかえるこの状態で素早く事を納めたかった僕は、魔力量を消費する事を無視して使用したのだった。
 
 『な、なんなんだ⁉︎全く動けんぞ‼︎』
 「巨獣キングベヒモスですら拘束出来る鎖だからね。だから、龍如きではこの拘束に抗う事はできないんだよ。あの時にこの能力が欲しかった…」
 『くっ…!貴様は一体…我に何をする気だ⁉︎』
 「何って…あんたも魔王の幹部の1人なんだろ?ならば、やる事は決まっているじゃないか!天の聖光‼︎」

 天の聖光は、これもアレクサンダーの固有魔法の1つである。
 聖なる光の属性魔法で、闇属性を持つ者に絶大なる効果をもたらす魔法だった。
 まぁ、グレイザラウンドは暗黒龍と呼ばれる位だし、見た目も漆黒の龍なので…他の属性という事は無いだろう。
 なので、天の聖光の光をモロに浴びた暗黒龍グレイザラウンドは、雄叫びと共に骨まで塵に化して行ったのだった。

 『見事だ‼︎』
 「いや、これ以上…くだらない事に時間を費やすのは無駄だと思ったからね。」
 『奴は我が葬ろうと思っていたのだが…』
 「なら、代わりに残りの魔王軍の軍勢を始末してくれる?僕と勇者達はその隙に、魔王城に突入するから。」
 『分かった。』

 僕は地上を見ると、勇者組が最後の四天王を倒している所を見た。
 そして勇者組は、魔王城に向かって進もうとしていたが…?
 魔王城の前には、魔王軍の軍勢が道を塞いでいたのだった。

 「皆、そのまま進め‼︎バハムート、メガフレア‼︎」
 
 バハムートは大きく息を吸い込むと、灼熱のブレスを吐いて…軍勢を塵に変えていった。
 そして魔王城の迄の道が確保されると、勇者組は走り出して、僕もバハムートから飛び降りた。

 「輝、暗黒龍は…って、聞くまでも無いよな?」
 「あぁ、ちゃんと始末したよ。だから…残りは魔王だけだ。行くよ、皆‼︎」
 「「「「「「おう!」」」」」」

 僕達は気合いを入れ直してから、魔王城内に突入したのだった。
 前回とは明らかにレベルが違うと思われていたのだったが、その辺はさすが魔王と言うべきか…?
 思った以上に苦戦を強いられる事になるのだった。
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