僕は最強の魔法使いかって?いえ、実はこれしか出来ないんです!〜無自覚チートの異世界冒険物語〜

アノマロカリス

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第二章 冒険者としての活動

第九話 神獣達が管理する大陸・後編

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 …とある住居の部屋の中では、ワイングラスを左手の人差し指と中指の間に通して、口元に傾けてワインを楽しむ女性が居た。
 その女性とは、冒険者ギルド・フリークス支部の受付嬢の犬人族でジャックラッセル種のテリア嬢だった。

 「あのガキめ、私に散々恥を掻かせやがって…だけど、今度の依頼は…グリーンドラゴンと同じ風に上手くいくとは限らないわよ~~~、あ~~~ワインが美味しいわぁ!」

 テリアはワインを口に含んでから、喉の中で転がした。
 恐らくだが、ホーリーを見事に騙してワルーンアイランドに放り込む事に成功した、勝利の美酒の為に秘蔵のワインを開けたのだろう。
 やはり、前回の依頼書の件で一泡吹かせようとした画策なのだろうが…?
 このテリアは、この話の後半で…地獄を見る事になるだろう。

 ~~~~~本編に戻る~~~~~

 僕は現在、フェンリルに協力を得る事に成功して、その背に乗って移動をしていた。
 空の神獣様と海の神獣様のどちらを先に攻略するかの話をした時に、フェンリルは比較的に温厚な性格の海の神獣様である、ポセイネスから接触しようと考えていた。
 …と言うのも、空の神獣様である龍族は、天龍というフェンリルよりも巨大な姿をしているという話だった。
 巨大化したらタワマンの屋上に頭が届きそうな位の巨体のフェンリルよりも巨大って…?
 確かにフェンリルだけで攻略は難しいという話だった。
 その為に、大陸の中央にある海を目指している訳なのだが…?

 「あの~~~、大陸の中心に海があるんですか?」
 『ホーリーは海と聞いて、地上にある青い海を想像してはおらんか?』
 「はい、そう思っていましたが…違うのですか?」
 『この大陸の中心にある海とは、雲海と言う…空魚が生息する海なのだ。』

 あ…考えてみれば、この大陸って浮遊大陸なんだっけ?
 …となると、当然だけど大陸を覆う青い海とは違うか。
 雲海と言うと、雲の海だよな?
 底の方に潜ると、地上に出たり…と言う話は聞かないな。
 地上には空魚が捕まったと言う話は聞いたことがないし?

 『ん?ホーリーよ…ネレスティスの元に向かう前に、一仕事をやって貰いたいのだが…良いか?』
 「構いませんが、呪いの類の話ですか?」
 『あぁ、目の前に暴走している精霊王達が争っているのでな!』

 フェンリルの目線を追うと、炎を纏った巨人と竜巻を纏った巨人が組み合っていた。
 力比べの様に相撲を取っていたんだけど、周りには大した被害が見られない所を見ると…?
 精霊王達が全て呪いによって暴走していると言うわけではない様だ。
 つまり、炎か風の精霊王のどちらかが、正気を失っていて片方が止めていると言う感じか?

 「どうやら…風の精霊王に首に呪いが張り付いている様ですね?」
 『風か…炎よ、風を正気に戻す為に、そのまま抑えよ!』
 『ははっ!』

 精霊王と神獣様だと、神獣様の方が地位が高いらしい。
 炎の精霊王は、風の精霊王を抑える為に羽交締めをした。
 だが、風の精霊王は凄まじい勢いで振り解こうと暴れ出したのだが、炎の精霊王は脇腹から4本の腕が生えて来て、まるでさば折りをするかの様に抱き込んだ。
 その隙に風の精霊王の後頭部の方にフェンリルが飛び上がった瞬間、セイクリッド・カーズナを放った。
 すると、呪いの黒い塊は消えて行ったのだった。

 「神獣様と違って、精霊王にくっ付いていた呪いは小さくて助かった。」
 『ホーリーよ、見事だった!』

 僕はフェンリルからお礼を貰い、正気になった風の精霊王と炎の精霊王を連れて、海の神獣様の元に再び向かう事になった。
 だけど、その途中にも…今度は土の精霊王と水の精霊王が暴れていた所に遭遇し、炎の精霊王と風の精霊王が対処をしている間、僕はまたカーズナの魔法を施して呪いを払ったのだった。

 「これで…四大元素の精霊王達は開放出来ましたね。」
 『そうだな、残りは光と闇と雷と氷と樹の精霊王…』
 「え?ちょっと待って下さい!精霊王って四大元素だけじゃないんですか?」
 『誰が4体の精霊王だけと言った?』
 『光と雷と樹は呪いの効果を打ち破る力があるので問題は無いかと。』
 『そうですな、闇も…呪いは効いてはおらぬだろうが、問題は氷の精霊王だけだと思うな。』
 
 良かった、まだ他の精霊王を相手にしないといけないなんて事にならなくて…
 セイクリッド・セイントの魔法は、魔力をゴッソリと持って行かれるので、正直言って残りの配分を考えるとキツかった。
 そして氷の精霊王も意外な場所で発見をしたので、四大元素の精霊王達が氷の精霊王を抑えている間に呪いを解除した。
 
 「これで、精霊王達は最後ですね。」
 『あぁ、御苦労だった。後は、精霊王総括のマクスウェル殿のみとなったな!』

 あれ?
 フェンリルが精霊王達を呼ぶ時は、属性の名前を言っているだけだったのに…?
 マクスウェルという精霊…なのかな、殿を付けているんだけど?

 『精霊王総括のマクスウェル殿は、我等神獣に匹敵する力を持つ御仁で…精霊神ルミナス様の右腕とも呼ばれている御仁なのだ!』
 「まさかと思いますけど、その方も呪いの影響を受けている…なんて事はありませんよね?」
 『それは無いと言いたい所だが、我等神獣も同じ様に呪いによって支配されていた訳だしな。可能性は無くもない…』

 マジかぁ~?
 精霊が神獣と同じ力なんて持つんじゃねぇ~よ‼︎
 神獣様達だけなら魔力も問題が無かったが、それに精霊王が加わると魔力配分が…!
 次のマクスウェルという方が終わったら、少し休憩させて貰おうかな?
 …と思っていたんだけど、精霊王総括のマクスウェルは小柄なお爺ちゃんみたいな感じの方で、呪いには蝕まれてはいたけど、規模が小さくて解呪はそれ程面倒ではなかった。
 だけど…?

 「すいませんが、少し休憩を貰っても宜しいですか?」
 『コチラも配慮が足りなかったな!人の身では辛かろう…』
 『次はどの方を?』
 「次は…というか、お前達の存在がなければ、真っ直ぐにネレスティスの元に向かう筈だったのだ。』

 フェンリルは精霊王達にそう話すと、呪いに掛かっていた精霊王達は、悔しそうにこうべを垂れていた。
 ここはフォローを入れておいた方が良いかな?

 「仕方ありませんよ、あの呪いの塊は、大地の神獣様ですら抗えなかったのですから…それに過ぎた過去にいつまでも縛られていても仕方がありません。これから海の神獣様、そして最後に空の神獣様が控えておりますので、御助力をお願い出来ませんか?」
 『むぅ…それを言われると、こちらも立つ瀬がないな…』
 
 僕の意見に精霊王達は賛同をしてくれた。
 そして、最後まで協力を惜しまないと約束までしてくれたのだった。
 休憩後に海の神獣様であるネレスティスの元の赴いたんだけど、流石に大地の神獣様に精霊王総括で神獣様に匹敵する力を持つマクスウェル、マクスウェルが召集した全精霊王の前に、ネレスティスは敵う事もなく、呪いの解呪もスムーズに済んだのだった。
 そして呪いから開放された海の神獣様であるネレスティスは、僕等に協力する事を選んでくれたんだけど、これで優位になったというわけには行かなかった。

 『後は、空の天龍か…』
 『空は私達神獣の中で最強の力を誇りますからね…』
 『何とか…地上に降ろせる事が出来れば良いのじゃが…?』

 神獣様達の力は、1番に空の神獣様、2番に大地の神獣様と精霊王総括のマクスウェル、3番目に海の神獣様という感じになっていた。
 その中でも空の神獣様は別格な力を誇っていて、海と大地の神獣様のみでは空の神獣様には敵わないらしく、マクスウェルと精霊王達の力を合わせても対等になるかどうかという感じだった。

 「う~~~ん………?」
 『どうした、ホーリーよ?』
 「僕…帰っても良いですか?」
 『な、何を⁉︎』
 「いや、全員で向かって行っても勝てないのであれば、僕の様な者が居ても…大した戦力にはなりませんよ?」
 『直で戦えと言ったらそうなるだろうが、呪いの解呪はホーリーにしか出来ないのでな…』

 僕は改めて、呪いについて考えてみた。
 どの呪いも、神獣様達や精霊王達に取り憑いては居たが、肝心の呪いを撒き散らした当人はその場には居なかった。
 可能性があるとすれば、最強の空の神獣様の元にいる…と普通は考えるだろうけど、最強の力を持つ空の神獣様相手に、呪いが効かない場合は返り討ちに合うだろう。
 そんなリスクを冒してまで、果たして一緒にいるだろうか?
 だって、呪いは全ての精霊王達にも撒き散らしてはいるけど、実際に効果が無い精霊王もいた位だし。

 『リー、ーリー、おい、ホーリー‼︎』
 「は、はい?」
 『先程から呼んでいるのに返事がなくてな、何を考えていた?』
 「あ、いえですね…呪いを撒き散らしているのは、魔王の配下ですよね?」
 『あぁ、そうだな!』
 「それで、呪いによっては効かない精霊王も居たではないですか、大地の神獣様ですら身体の自由は奪われていても、意識までは支配されていなかったですし…」
 『まぁ、そうだな。』
 「それを踏まえて考えてみると、魔王の幹部ってどこに居るのかな…と思いまして。」
 『『『むっ?』』』
 「いやぁ、どの神獣様達の近くに魔王の配下が居たわけではないですし、ましてや空の神獣様は他の神獣様に比べて最強の力を持っていると考えると、仮に呪いの力が効果がなければ…真っ先に自分がやられると思うんですよ。」
 『なるほどな、だとすると…空の近くに居る可能性は低いという事か!』
 「ですです。なので、最強の力を持つ空の神獣様相手に真っ向で挑まなくても、魔王の配下を先に倒して仕舞えば…空の神獣様と戦う必要は無くなるのではないかと?」

 確かに、この方法なら…最強の龍族邪相手にする必要は無くなる筈?
 ただし…魔王の配下を倒しても、関係無しに呪いが残るというのなら、また別の話になるが…?
 ただ、問題は何処にいるか…いや、そもそもどんな姿をしているのか?
 
 「この中で、魔王の幹部の姿を見た方はいらっしゃいますか?強い呪いを施す訳ですから、かなり接近していたとは思うんですが…?」
 『悪いが、我は見てはいないな!』
 『私も見てはいないですね。』
 『ワシも…それらしき者は見てはおらんな。御主達はどうじゃ?』

 マクスウェルは精霊王達に尋ねたが、誰も首を縦に振る者はいなかった。
 だとすると、気配を気取られずに近付いて呪いを掛けた…という事になるが、そんな事が可能なんだろうか?
 あ、もしかして…?

 「では、質問を変えます!最近、普段は滅多に会う事がない身近な存在が接触して来ませんでしたか?」
 『どういう事だ?』
 「姿を偽って接触をして来て、その間に呪いを放ったんだと思います。身近な存在を疑うとは、普通は思いませんからね…」
 『そこまで用意周到に動くものかねぇ?』
 「神獣様ともなれば、他の大陸に住む者達に取っては、ある意味脅威でしょうからね。魔王軍側とて神獣様達と事は構えたくは無いでしょうし、前もって神獣様達の情報を手に入れていてもおかしくは無いかと?まぁ、僕はこの浮遊大陸の存在すら知りませんでしたが…」

 他の皆様方には、僕の最後の言葉は届いてない感じだった。
 各々は最近接触をして来たという、身近な存在の事を考えていたんだけど…?
 皆は思い出したかの様に、互いの顔を見合わせた。
 そして、その存在について正体が明らかになったんだけど…?
 それは皆が思っても見なかった、あの存在だったのだった。

 読者の皆様は、誰の事か気付きましたか?

 次回・完結編をお楽しみに!
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