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第二章 冒険者としての活動

第五話 自粛させて頂きます。

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 その日、僕はというと…?
 冒険者ギルドで、シャイニング診療所(仮)での治療を自粛する事を告げた。
 いや、自粛という使い方がおかしいかな?
 だけど、このままでは収拾が付かない事態に発展するという気がして、ひとまずシャイニング診療所(仮)を当分の間、休業する事を伝えた。
 勿論の事だけど、当然反発もあったし、理由も尋ねられて来た。
 なので僕は正直に言った。

 「先日の勇者クラウドの事もありますが、他の冒険者の方々の勧誘があまりにも多くて、このままだと診療所での治療に支障が出て来てしまいますので…」

 その話を聞いた、一部の冒険者達は言葉を失った。
 だけど、勧誘をしたくても自重していた者達や、普段から診療所の世話になっていた者達は、診療所を休業するに至った原因の者達を捜し始めた。
 これの所為で暴力事件に発展したとしても、僕には全く非がないわけなので…勝手にやっていてくれという感じだった。
 休業宣言をして、その理由を話せば…当然こうなるのは、至極当然だと思っていたからだ。
 そして僕はドリース商会に戻ってから、診療所のスタッフは長期休暇を与えられたので、まったり過ごそうかと考えていた。

 「だって、シャイニング診療所(仮)は…休業をしていても、普通に尋ねて来たからなぁ?」
 「まぁね、冒険者達の労働は基本…年中無休だからな。」
 「これでゆっくりと出来るんじゃないかな?ホーリー君は、どこかに行きたい場所とかあるの?」

 ギフルテッドの街も、温泉で日頃の疲れを癒やすにはもってこいの場所なんだけど…?
 あの街では、診療所での治療で色々と顔を知られているから、見つかったりすると…この街の診療所と同じ扱いをされる可能性がある。
 それだと、休暇の為に訪れた筈なのに…休暇の意味が無くなるからだ。
 他にも、観光地やリゾート地は存在するらしいのだが、フリークスの街よりも遥か遠い場所なので、長期休暇があるとはいえ…気軽に行ける距離では無かった。

 「行きたい場所ねぇ…?」
 「どこか無いの?」
 「う~ん?」

 海!…と言いたい所だけど、この世界に水着は…あるかどうかは分からないけど、まず、海で泳ぐ習慣は無いだろうな?
 完全に無いとは否定は出来ないけど、魔物がいる海の中にわざわざ入ろうとする者はいないだろう。
 湖とか、川ならいるかも知れないけどね。
 なので、水着の女の子達は…あまりいないだろうなぁ。
 まぁ…海産物目当てで、漁業発展している街に行くのは良いかも知れない。
 フリークスの街がある場所は、内陸だから…海産物系の品はあまり出回って来ない。
 川魚は売られているけどね、たまには海産物が恋しくなる。

 「だけど、刺身とか生食はしていないんだろうなぁ?」
 「刺身ってなぁに?」
 「ん?海の魚を生で食べる…って、無いよね?」
 「森猫族はしないけど、猫人族の種類によっては、中には居るかもね。猫人族達は、焼いた料理が熱くて食べられないから…」

 猫舌で冷めるまでは喰えないことを考えると、生で喰う事もあるのか。
 ただ、身体の作りとかは、一体どうなっているんだろう?
 寄生虫とか…いや、地球の海と同じって事はないかも知れないな。

 「ちなみにだけど、此処から海のある街まで、掛かる日数はどれ位?」
 「馬車で飛ばしても…1ヶ月位は掛かるよ。高速馬車でも、最低2週間は掛かるし…貴族が保有している魔導飛空船とかなら、すぐかも知れないけどね。」
 「魔導飛空船?そんな物があるの⁉︎」
 「以前に魔王を倒した、勇者テンマ=カガヤサワが、この世界で空を移動する手段として、魔導飛空船というのを創り出したの。ただ、物凄い高額で…持っている人は限られるという話だよ。」
 
 あぁ…やっぱり異世界の住人か。
 話を聞く限りだと、特殊な魔石を幾つも使用するという話だから、高価過ぎて復旧は出来なかったんだろうな。
 ドリース商会も王族御用達の大きな商会だけど、魔導飛空船…というのは、保有していないみたいだしね。
 商会なら、魔石とかは手に入り易そうだけど…?

 「だとすると、海は無理か…」
 「海産物が食べたかったの?アプカルル便とかで、運ばれる事はたまにあるけど…?」
 「何?アプカルルって…?」
 「ネレイド族って言って、知ってる?」
 「ネレイド族?」
 「ん~~~?じゃあ、海のニンフ族は?」
 「そもそも、ニンフ族というのを知らない。」
 「う~~~ん?そうなると、説明が難しいなぁ?」

 アプカルルや海のニンフ族を例えると、地球でいう人魚の様な姿の種族だった。
 非常に友好的な種族だけど、一度怒らせよう物なら…仲間全員で向かってくるという話で、彼等を怒らせると…怒らせた本人を地の果てまでも追い掛けて、必ず始末されるらしい。
 
 「そうなんだ、怖い種族なんだなぁ…?」
 「怒らせなければ、友好的で付き合いやすい種族だよ。私にもアプカルル族の知り合いはいるけど、彼女達が怒った姿を見た事がないし…」
 「報復手段がえげつないから、怒らせようとする者は居なさそうだなぁ?それで、先程話に出ていた…ニンフ族というのは?」
 「あぁ…ニンフ族というのはねぇ?」

 ラミナは、何か難しそうな顔をしていた。
 何か言い難い話でもあるのかな?

 「ニンフ族は、ホーリー君が好きそうな…種族かな?」
 「僕が好きそうな種族?」
 「スタイルやプロポーションが抜群で、おまけに全員が美形で、どんな男性でも受け入れて死ぬ迄尽くす…という種族なんだけど…?」
 「それは…世の中の男だったら、誰だって飛び付く話じゃないか?」
 「…なんだけどねぇ?1つ問題があって…」
 「何、その含みのある言い方…」
 「ニンフ族は、一度交わってしまうと…絶対に別れられないし、浮気すら許さないという種族で…」
 「そんな物、浮気しなければ良いだけの話じゃないか?」
 「ニンフ族と一度交わってしまうよね、モテフェロモンというのを纏ってしまい…ゴブリンやトロールの様にどんなに醜い顔をしていても、モテ出して来るんだけど…」
 「あ、この先の言いたい事が分かった。浮気をしたら、殺しに掛かって来るという…物騒な話になるとか?」
 「その通りです。ニンフ族は、魔族と同等かそれ以上の魔力を保有していてね、物凄い魔法の使い手でもあるから、逃げる事はまず不可能で…逃げ仰せた話は聞いた事がないくらいなの。ある国の国王がニンフ族と交わった話があるんだけど、浮気をしてしまい…ニンフ族が嫉妬で狂い出して、その王国を滅ぼしたという話が…」

 そうか、ニンフ族ねぇ?
 会ってみたい気はするが、そんな怖い種族なら遠慮しておこう。
 女性免疫のない僕だったら、絶対に惚れてしまうだろうからなぁ?

 「結局、どこに行きたいかが決まらないなぁ…」
 「それもそうだんだけど、それよりもホーリー君は、冒険者ギルドの更新日が迫っているだろうから、そっちを先に片付ける無いとだね。」
 「そういえば…そろそろか!面倒だなぁ…」

 そう思って、冒険者ギルドに赴いたんだけど?
 グリーンドラゴン10匹の討伐や、エルダーリッチの討伐により…今回の更新日は見送ってくれるという話なので、更新をする必要は無くなった。
 なので、当分の間は…休暇の過ごし方を考えたい所なんだけど、テリアさんから?

 「休暇の為の観光地を探しているんですか?でしたら、隣の大陸になりますが…ティーンフレット大陸のルワーンアイランドなど如何でしょうか?」
 「いやいや、移動でどれだけ時間が掛かると思っているんだよ?内陸から海に行くまででも、1ヶ月以上掛かると言うのに…」
 「それなら問題ありませんよ、このギルドから転移陣を使用すれば、すぐに到着しますし…」
 「転移陣?そんな便利な物があるんだ!」
 「それに、ティーンフレット大陸は…馬車では行けませんよ。」
 「え?」
 「だって、浮遊大陸ですから…徒歩ではまず辿り着けません。」

 この世界には、浮遊大陸なんていうのもあるのか!
 それは…行ってみたいなぁ。
 僕はすぐに答えを出さずに、診療所の皆にこの事を話した。
 すると、かなり有名な観光地らしくて…行ける者は、限られた者しか行けないという場所だった。
 ラミナもクリスも行く気満々で、すぐに冒険者ギルドに戻って行く事を伝えて、転移陣で送ってくれたのだった。

 この時の僕は、浮かれ過ぎていて忘れていたが…?
 この受付嬢のテリアという女は、タダでこんな上手い話を提供する様な女じゃ無い。
 …そう、この話には、とんでも無い裏があったのだが…?
 その事に気付いた時には、激しく後悔する事になるのだった。
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