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第二章 冒険者としての活動

第三話 もう…辞めようかなぁ?

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 「診療所…もう辞めようかなぁ?」

 僕は椅子に寄りかかりながら、ボソッと呟いた。
 別に、閑古鳥が鳴いているとか、患者が来なくなったと言うわけではない。
 毎日の様に、1日に100人近くの患者が訪れて来る。
 それだけなら良いのだけれど、それ以外にも…パーティーの勧誘をする者も同じ位に多かった。
 毎日毎日…パーティーの勧誘が来ても、丁重にお断りを入れている。
 最近では…?

 「僕の現在のレベルは68です。それ以下のレベルの人の誘いは受け付けません!」

 …そう言って断ると、勧誘をしに来る者達は、諦めてすごすごと帰って行った。
 しかし、そう断っても…諦めない者も居るのが現状だった。
 それで、何で診療所を辞めるとかと言う話になったかと言うと?
 僕の居場所は、診療所を訪ねて来れば絶対に会える。
 なので、診療所を辞めて…冒険者の生活に身を置けば、居場所を特定されないので、その選択を取ろうとしたのだった。

 「まぁ、稼げるだけ稼いだし、マルザリィさんは残念がるだろうけど、許してくれるかな?」
 「今のシャイニング診療所は、ドリース商会の6割の売り上げに貢献しているからね。」
 「商会の売り上げを超える事になるなんてね、先月のマルザリィさんが目を丸くしていたね。」
 「まぁ、売り上げが商会の収入を越えたらねぇ…」

 ただ、シャイニング診療所(仮)を辞めるに当たって、不安な事がある。
 病院と冒険者の回復術師は、お客が帰って来ると喜ぶだろうが?
 冒険者ギルド内では、不満が爆発するだろう。
 更には、その原因を作ったのが冒険者だったりすると、その者達が迫害を受けるかも知れない。

 「でもさぁ、ホーリー君…女神トゥエルティス様の光を集めるのは、どうするのか?」
 「それなんだよなぁ?旅でもしながら…集めて行くしか無いかなぁ?」
 「なら、その旅に私も同行を…」
 「ダメだ、危険過ぎるからね。ラミナは、僕がたまに帰って来るまでは商会でお留守番してて。」
 「え~~~」

 今迄は、すぐそばにラミナが一緒にいて来れた。
 でもそれは、旅の同行だけなら然程問題はないのだが…?
 冒険者の依頼となると、また話が違って来る。
 実際に、グリーンドラゴンの件では、大した問題に発生する事にはならなかったが…?
 墓場のアンデット大量出現の時は、やばかった場面があった。
 ターンアンデットがあるから余裕余裕と思っていたんだけど、あまりの数の多さに最初は対処が出来ていたけど、いつの間にか背後に回り込まれていた時があって、焦った場面があった。
 もしも、その場で後ろにラミナが一緒に居たと思うと…どうなっていたかは分からない。
 ラミナと一緒にいるのは、正直言って嬉しいし、居て当たり前の存在になっている。
 初めはクリスに様に胸の大きく、ケモミミっ子が好きだったのだが…?
 最近では、ラミナの胸の膨らみも若干だけど出ては来たけど、まだまだクリスには敵わない。
 最初に出会った頃は、あんなに真っ平で板の表面の様だったのに…
 成長をしているんだなぁ~と、毎日の様に観察していて…って、言っておくが…僕は無理矢理とかしてないぞ!
 ラミナが一緒に隣で寝ている時に、気付かれないように…服の上から軽く触ったり、裾を捲って見ているだけだ‼︎
 だから、成長を見届けて来たと言っても過言じゃ無い!
 そんなラミナを手放すとか…絶対にありえない事だ‼︎
 それに…冒険者の中にも、猫人族がいるけど、その猫人族も…かなりの良いスタイルだった。
 ラミナが成長すれば、きっとあんなスタイルに良いボインボインに……って、こんな事がバレたら、流石に怒るだろうなぁ?
 
 「だって、ラミナは非戦闘タイプじゃないか。旅について来ても、魔物によっては庇えない時もあるからさぁ…」
 「でも、旅をする上では、私の鑑定魔法は役に立つと思うよ。街中での値段の偽装とか、複製品を見破ったり…ってね!」

 やっぱり、そこを引き合いに出して来るか!
 なら、鑑定魔法については、正直に言った方が良いかなぁ?

 「あ~~~ラミナには言っていなかったけど、僕にも鑑定魔法のギフトはあるんだよ。ラミナはBランクの鑑定魔法だけど、僕のはSランクの鑑定魔法がね。」
 「そんな………って、ん⁉︎」

 流石に、これは…秘密にしておいた方が良かったかな?
 ラミナが眼鏡を掛けて、僕を鑑定し始めている。
 まぁ、ラミナのランクの鑑定魔法程度では、僕の情報の多くは見れないとは思うけどね?
 ラミナは首を振ってから、地面に目を落とした。

 「聞きたいんだけど、ホーリー君は幾つのギフトを持っているの⁉︎」
 「やっぱり来たか!この質問……」

 ラミナも僕のギフトの多さには、気付かないフリをしていたみたいだけど…?
 やっぱり、分かっちゃう物だよな~。
 でも、ラミナの前では…極力はストレージと生活魔法以外は、見せていない筈なんだけどね?あ、回復魔法も……だった!

 「僕には、女神トゥエルティス様の使徒という事で、生まれ持ったギフト以外に…特別なギフトが授けられているんだよ。」
 「あれ?ホーリー君って、女神トゥエルティス様の信徒じゃなかったの?使徒だったっけ?」

 あ、やば!
 そうだ、使徒じゃなくて、信徒だった。
 う~ん…?
 この際に正直に言うのも、手ではあるんだけど…?
 異世界転生をして来た…なんて言う話は出来ないしなぁ。
 どうしよう?

 「此処で正直に話すよ。僕はこの世界に生まれ落ちる前に、女神トゥエルティス様から加護を授かって生まれたんだ。詳しい内容は話せないけど、僕はこの世界で役目を果たす為に、使徒としてこの世界に使わされた者なんだ。」

 …という理由で納得するかな?
 流石に…この世界に生まれる前に、別な世界で死んでから異世界転生をしたなんて言う話は、どうあってもても出来ないしなぁ?
 この世界でそれがバレているのは、ガーネット位だし。
 
 「それで、女神トゥエルティス様の癒しのギフトを使用して、感謝の光を集めていたのね?」
 「……そうそう!そうなんだよ…ははは~~~」
 「なんか態とらしいね?……他にも何か隠してない?」
 「なぁ~んにも、隠していないよ~~~」

 ラミナは疑いの目を僕に向けて来た。
 隠してないどころか、滅茶苦茶数多く隠しています。
 だけど、そんな話は絶対に出来ない。
 
 「…という事で、旅に着いて来るというのは諦めて欲しい。」
 「うん、分かった…けど、旅の目的って、冒険者ギルドに関係するものだよね?浮気とかしないよね⁉︎」
 「浮気なんかしないよ。ラミナより、可愛い子がいたら考えるけど……って、冗談です‼︎だから、殺意を込めた目付きをするのは辞めて‼︎」
 「ホーリー君には、クリスのおっぱいの件があるからね!おっぱいが大きくて、甘えた子が来たら…?」
 「無いよ‼︎それに、旅は冒険者ギルドの依頼に関係するものだから、遅い時でも1ヶ月位で帰って来るよ。Bランクからは、遠方の依頼に派遣されるのも入って来るからね。」
 
 ラミナは、この説明で納得して来れた様だった。
 だけど、まだ全てを受け入れてないみたいなので、僕はラミナの頬にキスをしてから、耳元で言った。
 
 「ラミナが僕の帰る居場所だから、ラミナは安全な場所で待っていて来れ………」
 「お~い、ホーリー…また、いつものアイツが来……って⁉︎おっと…!」

 クリスは僕とラミナの状態を見て、酷く慌てていた様子だった。
 その行為は、餓狼族では誓いの儀式と言う…婚姻をする為の物だった。
 ……が、人間族や森猫族には、そんな習慣は無い。
 なので、クリスは変に勘繰って慌てていたのだった…って、またアイツが来たのか⁉︎
 何度も何度も断っても断っても、しつこく喰らい付いて来る……という厄介な奴で、診療所内のメンバーは、すっかり顔馴染みになっていた………あ、悪い方の意味でね。

 「分かったよ、クリス。アイツを外で待たせておいて…」
 「お、おう!」
 「はぁ…そう言う訳だから、行って来るよ。」

 僕が立ち去ろうとしても、ラミナからの返答は何も無かった。
 ラミナは顔を真っ赤にして、軽く頷くだけだった。
 そして僕はというと、診療所の外に出ると……多くの人だかりが出来ていた。
 その中で、腕を組んで自信満々のみを浮かべて笑顔を向けている男が立っていた。
 それが僕とクリスが言う、アイツだった。
 僕はアイツを見ながら、溜め息混じりに言った。

 「いい加減に、ケリを付けないとなぁ?本当にしつこ過ぎる‼︎」

 話を詳しく聞いた事は無いが、この際にちゃんと話をしてから、断るとしようか!
 そして…アイツの正体が、次回に明かされる事になる。
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