僕は最強の魔法使いかって?いえ、実はこれしか出来ないんです!〜無自覚チートの異世界冒険物語〜

アノマロカリス

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第二章 冒険者としての活動

第二話 報いを受けさせます!

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 自然界では、生まれたばかりの生物が生きて行くには困難な世界という話を授業で習った記憶がある。
 この世界には、ドラゴン以外にも強い生物が存在する為に、最強種のドラゴンでも、幼少期を生き抜く事は難しいという。
 更に、ドラゴンは産卵をする際に…卵は多くても2つか3つくらいしか産むことはなく、更にその3匹が孵化しても、3匹とも成長するのは難しく、1匹残って成長すれば良い方だと言われている。
 
 「………って、それは本当の話なのだろうか?」

 僕の目がおかしくなければ、遠方に10匹のグリーンドラゴンが昼寝をしているんだが?
 成龍…と呼ぶ程大きくはないが、ドラゴニュートやスモールドラゴンと呼ぶ程には小さくはない。
 ミドルドラゴン…とでも言うべきなのだろうか?
 完璧に依頼書のミスだと判断した。
 その中の1匹倒してから持って帰れば良いのだろうか?
 聞いていた話と随分違っていた。

 「あんのメス犬め、マジで良い加減にしろ‼︎」

 僕はもう1度…グリーンドラゴンの討伐の依頼書を確認する。
 すると、説明文に…全てのグリーンドラゴンの駆除と書かれていた。
 つまり、あれを全部倒さないといけないのか…?
 こちらの戦力は僕1人だけ。
 僕の都合上、あまりオーバーヒールを人の目に晒されたくないので、ソロで活動しているのだった。

 「ちょっと待てよ?依頼書には、グリーンドラゴンの討伐と書かれてはいるけど、説明文には駆除と書かれているなぁ?」

 駆除という言葉には、2つの意味がある。
 殺して取り除く事と、害になるものを追い払うという。
 なら、倒さないで…この場からいなくなれば良いのか?
 あ、でも…生きたままストレージに放り込んんでも、どこで始末するかという話になるな。
 このまま冒険者ギルドに持って行ったら、僕のストレージに生命があるものが入れるとバレるし…?
 寝ている間に始末をしようとしても、1匹始末が終わった後に他の奴等が目を覚ます可能性があるしなぁ。
 僕はまたグレイザングバッファローを数十体融合させてから、品質上昇と威力上昇をフルがけ+最高進化させてベヒーモスを創り出して、ドラゴンの群れにぶつけようかと思った。

 「普通に考えて、これくらいの方法しか思い付かないしなぁ…?」

 僕は何か役に立つ物がないかと思ってストレージリストを見ると、画面左上に包丁(🔪)のマークが表示されていたのを気付いた。
 魔物の解体は、ストレージから取り出して、生活魔法の解体で骨や皮をバラすことができる。
 でも、ストレージの中だけでは解体は無理だったのだ。
 だけど、これで楽に解体を出来る様になったのかな?
 …そう思って、グレイザングバッファローの死体の項目に、包丁のカーソルを移動させたのだが…?
 解体がされる事なく、そのままの状態だった。
 この包丁のマークは、解体が出来るというわけではなかったのか。
 …と、現実逃避をしてしまった。
 そりゃあ、現実逃避もしたくなるよ。
 目の前にドラゴンが10匹もいるんだから…?

 「この包丁は、何の役に立つんだ?」

 僕は試しに、以前にストレージから別の枠に移したグレイザングバッファロー1匹に、品質上昇をフルマックス状態にしたことがあった。
 その時は、診療所が忙しくなったので…そのまま放置をしていたんだけど…?
 美味しい牛肉を食べようと思って、解体をするのを忘れていた事があった。
 例え…最弱のドラゴン種と言っても、10匹には敵うはずもない。
 なので、そのグレイザングバッファローを最後の晩餐として、調理を始める為に…包丁のマークを高級牛?にカーソルを合わせた。
 すると、先程の死体の方では何も無かったのに、今回は…高級牛状態のグレイザングバッファローに、十字架が表示されたのだった。
 何が起きたのかを確認する為に、高級牛状態のグレイザングバッファローを取り出すと、外傷が全く見受けられなかったにも関わらず…高級牛状態のグレイザングバッファローは、息を絶えていた。

 「この包丁のマークは、ストレージの中に放り込んだ魔物に対して、息の根を止めるというマークだったのか⁉︎」

 これが分かれば、やる事は決まった!
 僕はグリーンドラゴンに次々と触れて行き、片っ端からストレージに放り込んだ。
 これで、包丁でトドメを刺そうかとも思ったんだけど…?
 念の為に1匹だけ複製をしてから、10匹を包丁マークでトドメを刺した。
 すると、何故かレベルが上がった。
 先程の高級牛状態のグレイザングバッファローでは、レベルなんか上がらなかったのに…?
 流石、ドラゴン種という事だろうか?
 僕のレベルは一気に27上がって、レベル68まで上がっていた。

 「こんな楽な方法があったとはねぇ~?これならどんな魔物だろうが、魔獣だろうが、ストレージの中に入れて始末し放題だな‼︎」

 …と、安易に考えていたのだが?
 包丁のマークを押し続けると、包丁のレベルが2を表示されていた。
 つまり、グリーンドラゴン以上の強さには、効果がない場合があるみたいだ。
 世の中は、そう都合良くは行かないらしい。

 「さて、グリーンドラゴンの件は終わった訳だし、次は墓場に出て来る大量のアンデットなんだけど…?場所は、街の反対側か…なら、1度街に戻って…冒険者ギルドに納品して来るか‼︎」

 待っていろよ、あのメス犬…!
 僕を欺いた罪は、それ相応に償って貰うからな‼︎
 僕はフリークスの街に戻ってから、冒険者ギルドに赴いた。
 すると、受付嬢のテリアが駆け寄って来た。

 「ホーリー君、グリーンドラゴンの討伐はどうなりました?」
 「見事に討伐して来ましたよ。」
 「本当ですか!やはり、ホーリー君に任せて良かったです。」
 「ですが、グリーンドラゴンの討伐証明部位が分からなくて…ここに出しますので、査定をお願いします!」
 「え…?」

 本当は依頼書には、討伐証明部位の欄に、ドラゴンの角と表示されていたのだが…?
 そんな事は、僕の知った事ではない‼︎
 僕は悪どい笑みを浮かべながら、ストレージ内のグリーンドラゴン10匹を受付前に広場に放出した。

 「な!ちょ……ちょっと⁉︎」
 「先程討伐したばかりのグリーンドラゴン10の査定をお願いします‼︎」
 「じゅ…10匹⁉︎」
 
 流石のメス犬……受付嬢のテレサも、討伐する対象のグリーンドラゴンが10匹とは思ってはおらず、目の前で唖然としていた。

 「こ、このグリーンドラゴンなのですが…?外傷が全くありませんが…どうやって始末をしたのですか?」
 「大道芸人にマジックのタネを聞いて、答えてくれると思いますか?」
 「そうですよね…?コホン、こんなに綺麗な状態ですと、査定はかなり高額になりますが…正直言って、全てを買い取る事は可能ですが…現在ではそこまでお支払い出来るお金がなくて、後日に銀行に振り込む形になりますが…」
 「僕は目の前に形になっていないと満足出来ないんです。それに…出発前に僕を欺いて、グリーンドラゴンの討伐をさせようとしたのは、テリアさんですよね?1度欺いた人は、再び欺かないという保証はありませんので…今すぐに査定金額と報酬を用意して下さい‼︎」
 「く…クゥ~ン」

 どうだ…特大ブーメラン返し‼︎
 こう言われたら、返せる言葉も無いだろう?
 さぁ…どうするんだ、メス犬…?
 
 「ぎ…」
 「ぎ?」
 「ギルドマスターに相談して来ます~~~」

 メス犬は、そう…遠吠えの様な声を上げて、走り去って行った。
 その姿は、まさに負け犬の遠吠えという感じだった。
 僕はその姿を見て、ざまぁ!と思った。
 それから数分後、メス犬…もとい、テリアはギルドマスターらしき人物を連れて来た。
 フリークスの冒険者ギルドのギルドマスターは、エルフの女性だった。
 
 「ホーリー君、今回のグリーンドラゴンの討伐依頼に関しては、本当に済まなかった。」
 「済まなかった…という事は、今回の件をお聞きになったのですか?」
 「あぁ…君はソロで活動をしているというのに、グリーンドラゴンの討伐を依頼したと聞いて…」
 
 僕はテリアを見ると、テリアは視線を逸らした。
 このメス犬め…真実を話していねぇじゃねえか‼︎
 どおりで、連れて来るまでに数分掛かった訳だ。

 「あの、真実を話します。」
 「しんじ…つ?」

 ギルドマスターは、テリアの方を見た。
 テリアは、冷や汗をだらだらと流しながら…僕に「黙っていて…」と口をパクパクしていた。
 僕はテリアの気持ちを汲んであげながら言った。

 「分かりました、テリアさん!話してくれ…ですね?」
 「ち、違っ!」

 僕はテリアが制止しようとする前に全てを話した。
 最初に墓場に大量出現したアンデット討伐の依頼をしようかと思ったら、テリアさんにしつこくグリーンドラゴンの討伐を依頼された事。
 断っても断っても、執拗に勧めてきた事。
 更には、アンデットの討伐依頼書を渡した際に、受理したと言って…バレない様に重なっていた2枚目を見たら、グリーンドラゴンの討伐も一緒に受理されていた事を。
 それを聞いていたギルドマスターの表情は、どんどん険しくなって行った。

 「おい、テリ……」
 「はいストップ!怒鳴る前に、こっちの査定と報酬の支払いをお願いします。」
 「はぁ、その件で呼び出されたのだったな!しはらいをしよう…と言いたい所だが、これだけの数を査定は出来たとしても、支払いは銀行で後日になってしまうが…構わないか?」
 「ギルドマスターがお約束をしていただけるのなら、僕は一向に構いません。テリアさんに任せなければ…」
 「テリアに任せたらダメなのか?」
 「だって、依頼書の件で欺かれたばかりの人を、どうやって信用したら?適当な理由を付けられて、ちょろまかす可能性だってあるじゃ無いですか!」
 「まぁ…」

 僕とギルドマスターは、テリアに冷たい目線で見た。
 テリアは小さくなりながら、「クゥ~ン」と声を発していた。

 「分かりました。この件は、ギルドマスターとして約束をしよう。後日に呼び出す事になると思うので…」
 「構いません、その時は…シャイニング診療所(仮)に来て下さいね。」
 「シャイニング診療所…最近話題になっている診療所か!」

 そう言うと、ギルドマスターはその場から去って行った。
 そして僕も、次は墓場に大量に出現するアンデット討伐の為に、冒険者ギルドを出て行った。

 それから、暫くした後の冒険者ギルドでは…?

 「これを…あのシャイニング診療所の若先生が討伐したのか⁉︎」
 「あの若先生って、ソロだろ?」
 「グリーンドラゴンは、ドラゴンの種類の中では最弱とは言っても、倒すのには最低でもパーティーを組まないと倒せないぞ‼︎」
 「しかも、それを10匹もか…ベヒーモスを倒した英雄は、グリーンドラゴン10匹なんか余裕なんだな?」

 ホーリーが出て行った後に、冒険者達は山の様に積まれていたグリーンドラゴン10匹を見て、そんな事を話していた。
 今回の件でホーリーは、更に知名度も上げたんだけど?
 更に墓場に大量出現したアンデットを見事に葬り去った事で、2つの大きな依頼を達成した事により、1つランクが上がってBランクになったのだった。
 その事により…シャイニング診療所(仮)には、患者以外に…ホーリーをパーティーメンバーに加入して欲しいと言う話が来る事になったのだった。

 ~~~~~おまけ~~~~~

 ストレージの中に1匹だけ複製したグリーンドラゴンはどうなったのかと言うと…?
 解体されてから、肉を晩御飯の食材に、革と鱗と骨は、商会で販売する事になった。
 そして残った血は、ポーション作りなどの薬品の材料に回されたのだった。
 ドラゴンは、捨てるところ無し!
 例えフンでも、使い道はありますからね。
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