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第一章 冒険者になる迄の道

第二十六話 女神との約束…果たします。

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 「僕は現在…何故か獣人病院の診療所で治療スタッフとして働かされいます。」

 …と、毎回唐突に始まっても混乱しますよね?
 順を追って説明致します。
 
 ラミナの入院している獣人病院に入る前に、僕は雑貨屋でギフルテッドの街で作られていた観光客向けの染め物を何点か購入しておいた物を、バンダナの様に頭を覆っていた。
 これで髪の毛を見られる事はなくなったし、病院内でも怪しまれることも無いだろう…と思っていたが、獣人族の病院では患者と訪問客の確認は、見た目では無くてニオイを確認するみたいだった。
 
 「確かに…人間なら見て判断するだろうけど、相手が獣人なら納得だな。」
 
 僕は病院のスタッフに案内をされて、ラミナの入院している部屋に入った。
 すると、ラミナはベッドの上でお腹を押さえながら丸まっていた。
 月の物が始まって、相当辛そうになっていた。

 「ラミナ、大丈夫…とは言い難いか。」
 「あ、ホーリー君…来てくれたんだ。」

 僕は女性特有のこの辛さは男なので分からない。
 なので、気休めだと思うけど、ラミナにヒールを掛けてあげた。
 すると…ヒールによって少しは効果があったのか、起き上がってベッドの上に座ったのだった。

 「はぁ…毎回とは言え、この辛さだけは何とかならないかな?クリスは全く影響がなくて羨ましいわ!」
 「そうだね、クリスは月の物が来ていても問題なく動き回っているからね。」

 この月の物は種族によって辛さは違うみたいだった。
 ただ単に…その人の体質の問題かとも思ったんだけど?

 「話は変わるけど、ホーリー君は神殿に行けたの?」
 「まぁ、行けたには行けたけど…ラミナは寝ていなくて平気なの?」
 「今は落ち着いているから…それよりも話が聞きたくて、この部屋に居ても何も無くてね。」
 「それなら良いけど…右手のマークについての謎は解けたよ。」
 「そうなんだ?どんな物だったの?」

 あ、まだ完全に解けたと言わない方が良かったな。
 これの説明は非常に面倒な事にしかならない。
 僕が転生者だったり、女神の使徒という話もしなければならないからだ。
 流石にその話をするには…いや、ラミナの事を信用していないわけでは無いんだが?
 ラミナに対してあまり嘘は言いたく無いけど、差し障りない程度で話すしか無いか。

 「この右手のマークは、女神様の信徒の証なんだよ。」
 「え?女神様の信徒って…どの女神様?」
 「十二神の女神トゥエルティス様なんだけど…分かる?」
 
 …だったよな?
 女神女神としか言っていなかったから、名前がうろ覚えなんだが…間違っていれば、ラミナが修正してくれるだろう。

 「あぁ、癒しの女神のトゥエルティス様ね。だからホーリー君は、回復魔法を使えるんだね!」
 「そうそう、だからこの右手のマークはその証という訳なんだ。」

 良かった、名前を間違えていた訳じゃなかった。
 女神の名前だけは、どうも印象が薄くて…?
 ラミナの話によると、トゥエルティス以外にも別な女神も回復魔法が使えるギフトを授けてくれるらしいのだが、立場的にそちらの女神に方が知名度は高くて、トゥエルティスの立場は低いらしい。
 
 「ホーリー君が女神トゥエルティス様の信徒なら、感謝を表した方が良いよね?」
 「そうしてくれると助かるよ。」
 「癒しの女神トゥエルティス様、私の苦しみを和らいでくれた事に感謝します!」

 ラミナは祈りを捧げると、ラミナの身体から光の玉のような物が飛び出して…僕の右手の紋章に吸い込まれて行った。
 そう言えば…僕を転生させる前に、女神はこんな事を言っていたな?
 末端の力の弱い神だから、感謝の祈りをしてくれる者達が多いと、神格が上がるとか?
 もう少し神格が上がっていれば、僕に能力をもう少し授けられたのに…と。
 でも、無双が出来る能力を与えられないとかで、僕はそれ以上に望まなかったんだが…?

 「さっきね、ラミナが女神トゥエルティス様に祈りを捧げた時に、ラミナの身体から光の玉の様なものが出て来たんだけど…身体はなんと無い?」
 「身体は別になんとも無いけど?それって、私の感謝の気持ちが形になったって事じゃ無いかな?その後に光の玉はどうなったの?」
 「僕の右手のマークに吸い込まれたみたい。」
 「なら、ホーリー君が人々を助けて…それで女神トゥエルティス様に感謝を捧げれば、女神様も喜んでくれるんじゃ無いかな?」
 
 なるほど、確かにそんな事をすれば…感謝の祈りをしてくれる者が増えるだろうな?
 そうすれば、もしかしたら…僕に新たなギフトが⁉︎

 「だけど、助けるって言っても…?」
 「ホーリー君、此処がどこだかは分かるよね?」
 「獣人病院だよな?」
 「この獣人病院は、様々な患者が治療の為に診療所を訪れて来るの。私の様な症状の人もいれば、怪我して来る人もね。」
 「なるほど、ラミナの言いたい事が分かったよ。」

 確かに、病院なら怪我人は多く来るだろうな。
 それを回復魔法を使って癒しをし、女神トゥエルティスに感謝の意を捧げれば…?

 「それに私も…ホーリー君が近くに居ると思えば、寂しくは無いかな?」
 「分かったよ、商会に帰るまでの間はここのスタッフに話をして、協力をするよ。」
 「そして終わったら、私の見舞いに来てくれる?」
 「分かりました。ただし、月の物が終わるまでね…月の物が終わったら、暫くは顔を出さないから。」
 「その方が良いかもね。私はその時は…どうなっているか分からないから…」
 
 ラミナの月の物が終わったあの状態を…発情期とでも言えば良いのだろうか?
 もしくは、狂戦士化バーサーカーモード
 まぁ、どちらにしても…この子供の身体では太刀打ち出来ない。
 僕がこの世界で言う成人16歳になれば、いつでも相手になってあげますよ。
 発情期だけじゃ無くて、普段からいつでも…‼︎
 そんな邪な事を考えていた所為か、ラミナが言って来た。

 「なんか…いやらしい事を想像してない?」
 「いやいや、ラミナの暴走は僕が成人になったら…ってね。」
 「そうね、その頃ならホーリー君も私の暴走の対処は出来る…って、もしかして違った?」

 ラミナは勘が鋭いな。
 僕は誤魔化す為に話を戻した

 「とりあえず僕は、病院のスタッフに伝えて来るよ。すぐに働かせられるかも知れないけどね。」
 「でもそのお陰で、女神トゥエルティス様のお手伝いが出来るなら…」

 ラミナには本当に感謝だ。
 僕では、その発想は思い付かなかったからな。
 それで僕は、ラミナの部屋を出て病院のスタッフに告げると、早速診療所に連れて行かれる事になった。
 次々に運ばれて来る怪我人を回復魔法で治療して行き、その感謝の意を女神トゥエルティスに捧げて…というと、怪我が治った者達は跪いて祈りを捧げていた。
 そしてそれぞれの身体から光の玉が出ると、僕の紋章に吸い込まれて行った。

 「これが…女神に届いていれば良いんだが?」

 その後、ラミナが退院する迄の間は、次々と治療を行なっていった。
 その数は300人くらい居ただろうか?
 風吹けば桶屋が儲かる…では無いけど、怪我する者が多ければ多い程…僕は女神トゥエルティスに貢献出来たと思う。
 …多分。
 そして数日後に、その結果がわかりやすい形で現れるんだけど…?
 
 僕はそのギフトを楽しみにしていたのだが、やはり攻撃に関する物ではなかった。
 ただ…これって使い道があるのだろうか?
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