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第一章 冒険者になる迄の道

第十七話 戦いは…暴力だけじゃ無い!

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 公爵家のルビーとトパーズの一件以降…
 もう、あんな出来事は無いと思っていた。
 現在、ドリース商会では…四大公爵家の内の1つであるグラハムハート公爵家とは縁が切れた。
 …そう思っていたんだけど、どうやら…ルビーとトパーズが勝手に行動を起こした様だった。
 あの…馬鹿姉弟が再び前に現れて来たのだ。
 今度は、長男のサファイアと長女のガーネットを連れて来たのだった。
 今回は運悪く…マルザリィが遠方の商談があり、ここ数日間は不在だった。
 
 「これは…僕が応対をしなければならないのかな?」

 僕は理不尽な貴族の相手や気難しい貴族の相手が上手いと言うことで、貴族の相手を僕に一任されていた。
 いや…頼られるという事は、大変有り難いし、それだけ評価が高いという事なんだろうけど…?
 はぁ…面倒毎になる予感しかしない。

 「当ドリース商会では、グラハムハート公爵家との商談の類は一切を破棄され、今後のお取り引きはなくなったと記憶しておりますが…何用でいらっしゃったのですか?」
 「商会とか関係ない!俺達は…お前に用事があって来たんだ‼︎」
 「それは…グラハムハート公爵家の総意という事で宜しいのですか?」
 「だから、関係ないと言っているだろうが‼︎」

 ダメだ…何故か代表としてトパーズが話し掛けて来たが、この馬鹿では話にならない。
 代わりに、サファイアかガーネットが話をしてくれると助かるのだが…?
 だけど公爵家にいる時に、この2人と会話をした事が殆ど無いんだよなぁ?
 ルビーとトパーズに更に輪をかけた性格じゃ無いと有り難いのだがな。

 「貴様が…テクタイトなのか?」
 「いえ、何度も違うと申し上げておりますのに、そちらの方が…」
 「まぁ、そんな事はどうでも良い!貴様は我の妹と弟に恥をかかされた。その代償は支払って貰うぞ‼︎」

 なるほど!
 サファイアはトパーズとは違い…人の話を聞かないタイプか。
 ガーネットもそういうタイプでは無いと思いたいが…?
 先程から扇子を広げて口元を押さえていて、一切話そうとはしないな。

 「このまま…黙っていてくれたら有り難いんだがなぁ?」

 いや、それは無いか。
 転生前に教わった知識では、爵位が上位である程…貴族は礼節を紋ずる物だという話だったけど…?
 コイツ等には、そういった物が見当たらないな。
 まぁ、公爵家に生まれたというだけなので、爵位を持っていないコイツ等は僕と大差が無い。

 「さっきから、何をブツブツ言っている‼︎」
 「いや、どうしたものかと思って……あ!」

 そうだ!
 アレを出せば…大人しくなって貰えるかな?
 前回にルビーとトパーズが破壊した店の商品を見積もり中で請求出来なかったんだけど、丁度良いし…この場で御披露目しますか!
 だけど、誰に渡したら良い物かな?
 馬鹿2人に渡しても金銭感覚がわかっていないと思うし、サファイアは…どうだろうな?
 ガーネットとも…あまり話した事がないので、どういう性格なのかが分からないが…?
 この中では唯一まともだと…まともだと…まともだと………?
 まぁ、出たとこ勝負だ!

 「失礼しました。前回、グラハムハート公爵様と御一緒にルビー様とトパーズ様が、我が商会の商品を破壊し尽くした請求書をお渡ししたいのですが…」
 「請求書?」

 僕はガーネットに、今回に馬鹿2人がおこなった請求書を提示した。
 ガーネットは請求書に書かれている金額を見ると、目が飛び出しそうな勢いで見つめていた。
 
 「ちょ…これって、本当ですの⁉︎」
 「はい、本当です!これがお支払いただけない場合…他の四大公爵の三公爵様達は、如何思うでしょうねぇ?」

 前回の商品の破壊についての弁償金は、元々は金貨800だった。
 それに加え、猛毒酸の瓶が白金貨2枚×2=白金貨4枚、ラミナと他の従業員に対する治療費と名誉毀損の損害賠償で白金貨5枚と金貨200枚で、トータル白金貨10枚となっていた。
 ただ…?
 猛毒酸という薬品が値段が高いという話は聞いた事がある。
 鏃に少し塗った矢を魔獣に向かって放つと、魔獣の動きを止めるという物だと聞いた事があるけど…?
 それにしたって、白金貨2枚は流石にしないだろう。
 あと、ラミナと従業員に対する治療費と名誉毀損の損害賠償で…白金貨5枚と金貨200枚はぼったくりの様な気がする。
 まぁドリース商会では公爵家以外に、王族も使用しているという御達の店だから…それなりに吹っ掛けても問題はないのかな?
 だけど、流石にこの金額にはガーネットも大変驚いたらしく、面白い表情をしていた。

 「はい、現在はこの請求額です。」
 「現在…は?」
 「前回にやらかしてくれたお2人様がまたやって来られました…となると、タダでは済まない状況に陥る事になるでしょう。そうなってしまった場合、現在の請求金額よりかなり上乗せされた請求書が送られる事になるでしょうね。」
 
 ガーネットは焦り出した。
 サファイアは脳筋なので、今回の騒動はルビーとトパーズが適当に捏造して連れて来られただけだと思う。
 ただ、ガーネットの真意だけは分からないが…請求書の金額と兄妹達を見る限り、冷静な判断が出来ていると思いたい。

 「ここで素直に後退して下さるのであれば、契約を無視してこちらに伺った事については不問に致します。ですが、事を荒らげた場合は…」
 「いえ、私達はこれで失礼致しますわ!」
 「ガーネット姉様!」
 「ガーネット姉さん!」
 「おい、ガーネット!どういう訳だ⁉︎」

 この状況の把握が出来ているガーネットに、それに対して不満を漏らす馬鹿2人、状況が全く分かってない脳筋は、ガーネットに連れられて馬車に乗り込もうとした。

 「ここだけの話にちゃんとして下さいますよね?」
 「御安心下さい。我等商会員達には守秘義務が御座いますので…ただ、人の口に戸は建てられない…という言葉がある様に、誰から漏れるかまでは分かり兼ねますからねぇ?」

 僕がそう笑って言うと、ガーネット達の馬車は慌てて走り出して行った。
 今回の騒動は、特に事が起きたわけでも無いので心にしまって置く…訳も無く、遠慮無しにマルザリィにチクっておいた。
 マルザリィは憤慨した姿を見せて、グラハムハート公爵家に請求書と一緒に抗議文が届いたと言う。
 それによって、ルビーとトパーズには…2度と商会には足を運んではならないと言う約束を破った事で、戒めという意味を込めて…以前僕が入っていた牢屋に放り込まれるのだった。
 更に、何処から漏れたのか分からないが…?
 今回の騒動の話が他の公爵家にも伝わり、グラハムハート公爵は肩身の狭い思いをする事となった。

 これぞ因果応報、自業自得です。
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