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第六十話 決着…

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 『貴様~~~いい加減にしろ~~~!!!』

 「あ…おちょくり過ぎちゃった。」

 どれだけ魔法をぶっ放せば倒せるのかと思っていたんだけど、あまりにも強靭でダメージを負っている様に見えなかったので…

 間髪入れずに初級魔法を浴びせまくっていたら、流石にキレたみたいだった。

 『舐めやがって…この人間風情が‼︎』

 「だってぇ~力で攻め込まれたら、こちらはなす術ないし…」

 『だからと言って…此処まで魔法を連続で使用するなんて、他の魔王でも此処まで出来る者はいないぞ‼︎』

 この脳筋筋肉ダルマの魔王以外にも、やっぱり魔王っているのねぇ。

 それにしても全属性の初級魔法とはいえ、此処まで防がれたのは初めてだったわ。

 …と思ったけど、よく見ると少しよろけている感じだった。

 「あ、少しは効いていたんだ?」

 『あぁ…だがな! これでは一切効果が無くなるぞ‼︎』

 そう言って魔王は全身を震わせて姿を変えた。

 人型からケンタウロスの様な見た目に変化をしたのだった。

 私は試しに、炎系中級魔法のエクスプロードを放ってみた。

 魔王の身体が炎に包まれたけど、腕を振った事により炎は掻き消された。

 次に氷系中級魔法のブリザードを放ってみたけど、これも同じ様に効果は無かった。

 『だから、無駄だと言っているだろうが‼︎』

 「ふ~ん…ならこれは? ストーンバレット!」

 『無駄だと言っておろう………いだぁぁぁぁぁ‼︎』

 私の放ったストーンバレットは、人間で言うスネの部分に当てると…魔王は悶え苦しんでいた。

 『何故だ! この形態になれば…魔法は一切効かないはずなのに⁉︎』

 この魔王は何を言っているんだろう?

 先程自分で魔法で作り出された攻撃は効かないと言っていたじゃん。

 炎魔法や氷魔法は…魔力によって発生させた物だけど…

 ストーンバレットなどの地属性魔法は、魔法で生み出したわけではなく…

 魔力を使って小石を纏めさせて放った物なのだから、完全に魔力で生み出した物ではないので別物というわけだった。

 つまり…自然界に存在する物だったら、この魔王には効果があるという事だった。

 私は続けてストーンバレットを連射した。

 私から放たれたストーンバレットは、四本の足のスネを目掛けて放ったので…直撃すると痛みで転がり回っていた。

 「やっぱり魔王でも、アソコは痛いんだね。」

 でも、それによって有効な手段が見つかった。

 私は地面に手を当ててアースクラックの魔法を再度使うと、魔王の足元に巨大な穴を出現させた。

 人型の時は、どうやって浮いていたのかはわからないけど…?

 人馬の姿だと浮かずに地面に足をついていたという事は、浮くことはできないのだろう。

 なので当然、穴に落ちて行った。

 穴の底に落とすのが目的ではなく、先程の軍勢の様に溶岩に落とすのが目的だった。

 …なんだけど?

 穴の中を覗くと、魔王は穴の壁にしがみ付いていて、必死になって登ろうとしていた。

 「しぶといなぁ、さっさと諦めたらいいのに…」

 『魔法で作り出されていない物だと、底に落ちたら終わりではないか‼︎』

 「流石に溶岩の熱に耐え切れる生物はいないだろうしね。」

 私は穴の壁にしがみ付いている魔王に対して、天空魔法のメテオストライクを放った。

 放たれたメテオストライクは、魔王の顔面に直撃したんだけど…それでも手を離す事はなかった。

 私は続けて何発ものメテオストライクを放ったんだけど、幾ら直撃しても壁から手を離す事はなかった。

 「本当にしぶといなぁ?」

 『何故だ! 魔法で作り出された攻撃は一切効かない筈なのに⁉︎』

 「宇宙にある隕石を魔力で引き寄せて攻撃しているからね、完全な魔力だったら効果は無いだろうけど。」

 『だから、先程の攻撃という訳か‼︎』

 「だって色々とヒントを出し過ぎなんだもん。 効果が無い魔法攻撃を無駄に放つ様な真似をする訳ないじゃ無い。」

 私は攻撃の方法を変えることにした。

 収納魔法の中から大量の小麦粉を穴の中に散布した。

 『ゴホッ! ゴホッ! 一体なんだこれは⁉︎』

 「これ自体はなんでも無いのよ~、これの後にある事をすればね!」

 私は穴の中の壁で咳き込んでいる魔王に対し、篝火の松明を取り出してから穴の中に放り込んだ。

 すると、松明から穴の中に充満している小麦粉に引火して…穴の中で大爆発が起きた。

 その衝撃で穴の中の壁が崩壊し、魔王はそのまま溶岩の方に落ちて行った。

 遠視魔法を使用して溶岩の方を見ると…?

 魔王はすっかり溶岩の海に浸っていた。

 私は地面に手を置いてから穴を塞ごうとすると…穴の中から黒い影が飛び出してきた。

 そう…大火傷を負った人型に戻った魔王だった。

 …なんだけど、魔王は全ての力を使用して戻って来たせいか…もう浮かぶ力は残ってはいなかった。

 「まだ生きているの? 本当にしぶといなぁ…」

 でも、人馬の形では無いのなら魔法は通じる筈?

 なので…と思ったけど、用心のために魔法は一切使用せずに、収納魔法から大量の塩水で魔王の身体全体に覆った。

 「ファスティア、この水は何?」

 「メナス! 良かった無事で‼︎」

 「うん、ママに庇って貰っていたから大丈夫だったんだけど…」

 メナスは魔王に覆われている白い水を指さして聞いてきた。

 「アレは塩湖の水よ。」

 「塩湖って…旅の途中で立ち寄った湖で見つけたアレ? 塩を作るのに最適とか言って、ファスティアが収納魔法に入れた…」

 「そう、それ! 忙しくて作る暇がなかったから、ストックしたままだったんだけどね。」

 「そうなんだ…って、火傷した傷に塩水って…死ぬわよ!」

 「分かっててやっているからね!」

 魔王は身体全体に覆われた塩水の中でもがき苦しんでいる。

 ※火傷に塩水はマジで死ぬので、絶対に真似をしないで下さい。

 「中々しぶといねぇ…」

 「でも、何か話している…叫んでいるみたいだけど、ゴボゴボという音だけで何も聞こえないからなぁ。」
 
 身体から頭のテッペンまで塩水の中に浸かっている状態なので、話をしようとしてもゴボゴボとしか聞こえなかった。

 暫くすると…頭が項垂れて静かになった。

 「死んだのかな?」

 「いや、死んでは無いでしょうね。 口から泡を吐く量があまりにも少な過ぎるから…」

 死んだと思って確信して油断を誘うという手はよくある事。

 流石に魔王がそういう事をするとは思えないけど、いや…なまじ知恵がある者こそやりかね無い可能性がある。

 私は水の中にいる魔王の顔を見た。

 今はまだ本当に死んだ様に静かなんだけど、段々と眉間に皺が寄っているのが見えた。

 更に息を止めて苦しそうなのか、顔の方も険しくなっていた。

 すると、魔王は口から大量の息を吐いて今度こそ…?

 「今度こそおしまいみたいね。」

 「いえ、まだよ! 演技の可能性があるから…」

 私は暫く見つめていた。

 大量の空気を吐いていたから、流石に死んだと思って魔法の解除する…のは三流のする事。

 真の一流は、完全に没するまでは油断したりしない。

 「ほら、全然動か無いし…」

 「そうね、そろそろ魔法を解除しましょうか!」

 魔法を解除…という言葉を話をした時に、魔王の口元が少しだけ吊り上がったのを見逃さなかった。

 なので私は、魔法を解除する…事はせずに、そのまま見送っていた。

 魔王には此方の話が全て聞こえている感じだったからだ。

 すると、いつまで経っても魔法が解除され無いことに気が付いた魔王は、気絶したフリを辞めて私を指差してジタバタと暴れ始めていた。

 私はトドメを刺す為に、水を操作して魔王のボディーに重たい一撃をお見舞いした。

 だけど魔王はそれに耐え切っていたので、何度も何度も攻撃をするのだけれど?

 「苦しそうにしているのはわかるけど、本当にしぶといわね?」

 「ねぇファスティア、魔王にも性別ってあるのかなぁ?」

 「それは分から無いけど、以前も魔族で女性と戦った事があるし…性別があるのかもしれ無いわね…」

 するとメナスは、私の耳元で小声で話をして来た。

 あ~なるほどね。

 私はボディーの攻撃を辞めて、別な箇所を攻撃する事にした。

 「下から突き上げて捻り込む様に…打つべし! 撃つべし! 討つべし‼︎」

 そう…私の狙った場所は、魔王の股間でした。

 流石の魔王も、この攻撃だけは耐える事ができずに…少しずつ吐き出す空気も多くなっていた。

 「まだ耐えるか…」

 「アレでもダメなの⁉︎」

 そう思っていたんだけど、最後の一撃により大量の息を吐いたと思ったら…そのまま浮かんでいた。

 今度こそ勝利をした…と思うんだけど、周りの人達を見ると、皆股間を押さえて青い顔をしていた。

 まぁ、どうであれ…戦いには勝利したので問題は無いでしょう。

 これで終わり…と思っていたんだけど、最後に厄介な事が待ち受けていた。

 「まだ何かあるの~?」
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